2020年06月07日

2020 安田記念 レース回顧

 全貌覚醒――――。

 GⅠ馬10頭が出揃った超豪華メンバーの安田記念は、去年の桜花賞馬・グランアレグリアが、道中中団外目から直線早めに抜け出し、そのまま絶対女王の追撃を歯牙にもかけずに振り切り、見事にGⅠ2勝目を完璧なるジャイアントキリングで飾りました。レースを振り返っていきましょう。


 今日の府中の芝は、昨日の夜から朝方にかけての雨で、やや渋った状態でした。
 朝の時点では重馬場、それが午前中で稍重には回復したものの、そこからの回復はあまり進まず、時計的に見ても完全な良馬場、という雰囲気ではありませんでした。
 8Rの1勝クラスが34,9-11,8-34,8=1,21,5、9RのホンコンジョッキーTが61,0-59,2=2,00,2と、流石に昨日よりは1秒くらい時計が掛かっていたのではないか、と感じます。
 またその分、ある程度仕掛けの意識が早くなればラスト1Fのラップが落ち込みやすい傾向は出ていて、馬場のバイアスはフラットに近かったと思うのですが、結果的に脚を溜めての外差しもそれなりには決まるようになっていた、という印象ですね。

 馬場を考えると1,31,6はまずまず優秀、実質レコードタイくらいの内容だと思うので、グランアレグリアが化け物的に強かったのはまず間違いない所で、同時にアーモンドアイが前走ほどは走れていないのも確かだろうと感じます。
 その辺りの要因なども踏まえつつ、細かく見ていきましょう。

 レース展開は、まずスタートでアーモンドアイとノームコアが出負け、クルーガーも立ち上がってしまい、ややバラっとした形になりました。
 対照的に絶好のスタートだったのがアドマイヤマーズで、この馬とミスターメロディがハナを窺うところ、やはりチームオーダーがあったのか、外からダノンスマッシュが一気に勢いに乗せていって先頭を奪い切ります。
 内からは五分のスタートのダノンプレミアムとダノンキングリーも先行策で、外目から今日はスタートを何とか整えたヴァンドギャルド、セイウンコウセイあたりも先団には取り付き、その後ろ、丁度中団に、ニュートラルな感じでグランアレグリアが追走していました。

 インディチャンプもそこまでいいスタートではなく、少し下げて中団のインからの競馬になり、その後ろにリカバーしてきたアーモンドアイですが、前走と違い押っ付けながらの、去年と同じような余裕のない追走になります。
 その外にケイアイノーテックがいて早め進出を開始、ペルシアンナイト、ノームコアが後ろからで、最後方をクルーガーがついていくという隊列になりました。

 ラップは34,2(11,40)-23,1(11,55)-34,3(11,43)=1,31,6(11,45)という推移でした。
 馬場の回復具合を考えても、かなりしっかり淡々と流れたな、という印象で、ハーフでも45,7-45,9、中盤もほとんど緩みなく、追走面を問われてからの高速持久力ラップになっていると思います。
 ただこの流れで直線は結構しっかり加速していて、11,4-11,0-11,9という上がりになっており、この淀まない総合力勝負の中で、更に一段加速する余力を残せていたかどうか?という事になります。

 おそらくこの400-200m地点でグランアレグリアが突き抜けていて、この馬自身が10秒台のラップを踏んできた故にレースラップ自体もこんな加速度になった、という感覚で、まぁ正直化け物じみた競馬だなぁ、と率直に思いますね。
 馬場のバイアスも刻々と変わっていたので読みにくいところはありますが、基本的には道中内目、直線そこから外目、という馬が一番走りやすかったのかなと思いますし、その辺りを踏まえての個々の評価を加えていきましょうか。

 勝ったグランアレグリアは、こういう淡々としてラップの波が少ない高速持久力戦で強い、という確信はあったのですけど、それにしてもここまでか、と、想像の更に一段上のパフォーマンスを見せてきたと感じています。
 スタートはしっかり決めたものの、折り合いが難しい馬なのであくまで序盤は馬任せ、ニュートラルに入っていって、丁度中盤くらいは前後に馬がいないクリアでノンストレスなポイントに綺麗に嵌れていたな、とは思います。
 ただそこで下手に内に入れずに、ある程度出し切る意識を強く持ってコーナー中間からじわっと外に持ち出しており、その分だけケイアイノーテックが早めに外を捲ってきた時に即座に対応して、その内から、それでも4頭分くらい外を通して一気に進出していきました。

 このコーナーのラップも11,6-11,4ですから、決してペースが落ちているわけではなく、外々のロスはそれなりに出てくるパターンだと思ったのですが、しかし直線入り口でエンジンを乗せ切ると、坂地点でスパっと更に一段上の切れ味を披露してあっという間に突き抜けてきました。
 この馬自身は残り400m地点で前と2馬身あるかないか、だと思うので、自身の走破は11,0-10,8-11,9くらいになるのかな、というイメージで、この流れを外から動いていって、なおこれだけの切れを発揮できるというのは、それこそVMのアーモンドアイのレースぶりと同じくらいのインパクトあるラップだと感じています。

 さしものこの馬でもラストは11,9まで落としていますが、それでもそこまでで作ったアドバンテージがもはやセーフティでしたし、実際にこのラスト1Fでこの馬よりいい脚を使えていたのはノームコアくらいですからね。
 少し時計が掛かる馬場だった事も含めて相当にえげつないレースをしていますし、本当にこの馬はスムーズに自分の競馬が出来るととんでもない強さを見せてくれますね。
 正直VMの時のアーモンドアイとあの馬場で戦わせてみたかった、という感覚にもなります。

 ただ距離の上限はこの馬はここまでかな、と思いますし、時計の掛かるマイルだとちょっと苦しいかもで、ベストが1400mなのは確かだと思っています。
 その意味で1200mも守備範囲ですが、スプリンターズSだと前半のポジショニングで少し苦労するかも?というのはありますね。
 マイルCSは今年は阪神だったと思うので、京都よりは噛み合うかなとも思うのですが、ともあれ最大上限の幅はさらに更新してきたものの、それが常に発揮できるかどうか?ですよね。
 安定感の部分ではまだ危なっかしさも残ると思うので、その辺りの弱点も解消してくれば、この馬も歴史に残る名牝になり得る素材ではあるなと感じました。

 2着のアーモンドアイの敗因としては、ひとつはシンプルにグランアレグリアが、自身のVMと同じくらいに強いレースをしてきた事、もうひとつはやはりこの馬自身がパフォーマンスを落としていた、というのはあるかなと思います。
 奇数枠だったので少し嫌な予感はあったのですが、今年もはっきりと出負けしてしまって、序盤からリカバーしながらの追走になり、そこで前走よりはリズムが狂っていたのは否めません。
 ただ4コーナーでは内から2頭目あたりで我慢し、直線入り口で外に出して、全くノーブレーキとまではいわないものの、特に無理なくケイアイノーテックの外に持ち出せたので、この辺りは去年より余程スムーズに進められた気はします。

 ただ、エンジンを吹かしながら入ってこられた前走と違い、今回は坂の上りで一気に加速を問われた面もあり、それでもしっかり反応はしているのですが、その分もあるのか、ラスト1Fがあまりにもアーモンドアイらしくありませんでした。
 こういう形でも異次元の持続で最後まで食らいつくのがこの馬の最強たる所以だと思っていたのですが、ここではやっとこインディチャンプを交わせた、という程度で、グランアレグリアとの差は全く詰められず、ノームコアには危うくもうちょっとで差されそうになってしまいました。
 馬群の中から一気にトップスピードまで持っていった事で、本来の持続面も削がれたのか?とも思いますし、この馬自身は推定46,5-45,5くらいの走破ですけれど、出負けして押っ付けながらの46,5は、前走のパンパン馬場でのニュートラルな46,5とは消耗度が違ったのかもしれません。

 後はやはり、見た目には大丈夫に見えても、本来レースでギリギリまで振り絞ってしまう馬だけに、あの時計で走った後の中2週は楽ではなかった、という帰結になってしまうのでしょうね。
 グランアレグリアがべらぼうに強かったので負けたのは納得できるのですが、やはりラスト1Fであそこまで抵抗できなかったのはこの馬らしからぬ姿であり、ちょっと先に向けての不安もよぎる内容だったと思います。
 それにしても、やはりルドルフの呪いは強烈ですね。まあダノンの呪いも中々のものですけれど。。。

 3着のインディチャンプは、去年よりややスタートが悪く、枠の並びも悪い中で、縦の位置が一列後ろになった分だけ、アーモンドアイに差されたという感じでしょうか。
 この馬はやはり持続面ですさまじさがあるわけではなく、要所の反応が武器なので、実際に馬群を捌きつつの坂地点での鋭さは流石、だったのですけど、外々を回してそれ以上に切れたグランアレグリアがいては手も足も出ない、というところでした。
 こちらは道中インベタで最短距離を通せていますし、その意味ではこの舞台では着差以上の力の差は感じる内容でもあったと思います。

 福永Jはやはり今乗れているな、というか、冷静にスペースを拾いつつこの馬の競馬は出来ていると思いましたけど、やはり本質的には高速府中よりはタフな京都のマイルの方が合うのだろうとも思います。
 牝馬2頭の軍門に下り、牡馬の沽券、という意味では形無しではあるのですけれど、それでも去年のマイル王としてのしっかりしたレースは出来ていると思いますし、また秋にグランアレグリアには阪神でリベンジですね。

 4着ノームコアは、枠が良かっただけに出負けが痛恨でしたね。
 本当はインディチャンプくらいの位置が取れれば、だったのでしょうけど、腹を括って4コーナー出口まではインベタ、そこから理想の角度で外に持ち出していくノリスペシャルな競馬で、最後はかなりしっかり伸びているだけに勿体なかったです。
 この馬の場合は持続性能は本当に非凡で、府中マイル適性も抜群ですが、強いて言えば前走も今回も、坂地点で10秒台を前が踏んできている、そこで置かれてしまっている面はあります。
 去年のVMは極限的なハイペースになってくれた分、その弱点が出なかったので届いた、という面はあり、その意味ではもう少し渋りが残っていた方がこの馬にはベターだったかもしれませんね。

 5着ケイアイノーテックは、調教が良かったのは確かですけど、前走から比べるといつにない行きっぷりの良さで、コーナー中間から外目を押し上げていく強気の競馬で見せ場を作ってきましたね。
 この馬も持続性能はかなり高いのですけど、ただあれだけ早めに仕掛けても、それでも最速地点の切れでは全く最上位に敵わないわけで、そういう部分がどうしようもない中では、最高にこの馬の力を引き出す競馬を津村Jはしてくれたんじゃないかなと見ています。
 意外と追走面は持っていますし、エプソムCで同じくらい強気の競馬が打てれば勝てて不思議なかったとは思いますが、まあGⅠ馬ですしね。

 6着アドマイヤマーズは、川田Jに替わって2歳時の様ないいスタートを切ってきたのは良かったですし、ある程度つついていってタフな流れを目論んでおり、やりたい事はよくわかる騎乗だったと思います。
 ただこの馬もやっぱり、最速地点で10秒台に入ってしまうと足りないんですよね。元々デイリー杯あたりでも、メイショウショウブあたりに切れ負けしていた馬ですし、この馬場だとこのペースでも最上位は坂で10秒台を繰り出せてしまう、そうなるとそこで抵抗できないのは仕方ないのかなと感じます。
 といって、もっとハイペースに持ち込んでというのも難しい話ですし、やはりマイラーとして強さはあるものの、ある程度常識的に時計の掛かる馬場の方がいいでしょう。その点秋の方が楽しみは大きいと思いますし、このスタートの良さは今後維持して欲しいですね。

 7着ダノンキングリーは、立ち回りとしては特に文句ない感じでしたけど、この斤量と追走面で少しずつ足りなかった感じですね。
 外に持ち出してからの坂地点での反応が明らかに足りなかったですし、最後はジリジリ来ているように持続面はやはり悪くないのですけど、府中でも2000mのほうがいい、というのは改めて感じました。
 結果的にもう少し溜める競馬でも良かったのかなと、最序盤頑張り過ぎたのがネックだったかもですけれど、その辺りは克服して欲しかったのでちょっと残念な競馬でしたね。この馬も強い時は強いものの、スロー専用と言うか、スポットが狭いと認めざるを得ない負け方だったと思います。

 券種的にはまぁ、アーモンドアイが2着は外さないだろうし、三連複でばらけさせるよりは、という中での、もしも化け物だったら、のパターンでの保険が辛うじて効いてくれて助かりました。
 ただ正直、チームダノンの戦略としては想定通り、ペースや馬場も予想の範疇で綺麗に嵌っていて、それでいてこのダブルダノンのダメっぷりは、そのまま自分の見る目のなさを露呈しているとも言えるので、反省要素が大きいレースではあります。
 やっぱり近代競馬って、一戦ごとの消耗度がかなり大きいので、それを踏まえての上げ下げは大切ですね。プレミアムなんかはやっぱりいつも以上に過酷な検疫体制での海外明け、というのは苦しかったのでしょうし、アーモンドアイにしてももう少し中2週は懸念しないといけなかったのだろうと痛感しています。


posted by clover at 16:58
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