2020年05月24日

2020 オークス レース回顧

 不撓不屈――――。

 絶好の初夏の陽気の中、無観客での開催となった今年の優駿牝馬・府中2400mの決戦は、無敗の桜花賞馬で圧倒的な支持を受けたデアリングタクトが、道中やや後方の苦しい位置から、直線馬群を割って鋭い脚で一気に差し切り、見事に史上2頭目の無敗の牝馬二冠を達成しました。
 レースとしては3歳牝馬の一戦らしく中々トリッキーな展開にはなっていて、その中でのレベルや能力関係など難しい内容にはなっていますが、多角的なファクターで丁寧に回顧、していきましょう。


 今日の府中の芝ですが、昨日を上回る超々高速馬場レベルだったのではないかと感じます。
 正直散水すると思っていたのですが、どうもやらなかったようで、含水率的にも明らかに昨日より低い13%台、より乾いてスピードが出る馬場になっていたのは間違いないでしょう。
 3歳1勝クラスのマイルが45.5-46.2=1.31.7、古馬2勝クラスの1800mで1,44,8、フリーウェイSもややスローバランスで1,19,7ですから、時計勝負の見本市みたいな状況でしたね。

 馬場のバイアス的には、少しずつ外からの差しも決まりつつはあったものの、それでも総合的には前目内目が優位なのは揺るがず、外からと言っても同中はタイトに、ずっと外々からという競馬ではかなり苦しかった馬場だと判断しています。
 その中での勝ち時計2,24,4は、近年のオークス、というより府中2400mのトレンドとしてははっきり遅く、ラップ的にも淀みが大きくて、昔ながらのオークスに回帰したイメージではあります。
 その分だけ台頭してくる馬も違ってきたイメージではありますけれど、それにしてもウインウインとは……ですね。

 正直あの形でクラヴァシュドールがあんな負け方をするとは微塵も思わなかったですし、正直昨日のヴェンジェンスくらい余裕を持って見ていたので目が点でもありましたが、結果論的にやはり本来の形とは違う、超タフな馬場での桜花賞の消耗ラップは、並の馬には厳しかったと思うべきなのでしょう。
 実際にデアリングタクトは除くと、桜花賞上位組は、桜花賞でいい着順だった馬の方がここで適性関わらず走れていない感じですし、結局この世代の牝馬では、デアリングタクトとレシステンシアだけが化け物だったという判定で良さそうですね。

 レース展開は、注文通りのスマイルカナの逃げでスタート、それを内からクラヴァシュドールとアブレイズがかなり積極的に追いかけていき、それを外から果敢にウインマリリンも先行して、1コーナーで交わし切って単独の2番手、内目を取り切る辺りが流石の横山Jでした。
 その後ろにホウオウピースフルとフィオリキアリが続き、ウインマイティ―ん゛クラヴァシュドールの後ろ、最内を取り切って3列目、リアアメリアとウーマンズハートが中団のやや外目にいて、注目のデアリングタクトは五分のスタートからニュートラルに流れに乗っていくものの、1コーナーで少し狭くなって中団よりは後ろの内目からの競馬となります。

 その辺りにミヤマザクラ、意識的に抑える競馬だったマルターズディオサが続き、デゼルはやはり二の足つかずに後方から、少し外に持ち出してデアリングタクトを見る位置、スタートで煽ったサンクテュエールも折り合いを意識しつつデアリングタクトに蓋をする意識は持っていた感じです。
 その後方にマジックキャッスルと大きく出負けしたリリーピュアハート、最後方にチェーンオブラブ、という隊列でした。

 ラップは35,4(11,80)-37,1(12,37)-37,7(12,57)-34,2(11,40)=2,24,4(12,03)という推移になっています。
 近年は馬場の高速化と騎手の意識の変化で、牝馬戦でもタイトに流れるパターンが多かったのですが、今年は一昔前のオークス、という感じで、テンこそ速いものの第2、3ブロックでかなり明確に緩み、そこから後半の3F特化のヨーイドンに近い競馬になっています。
 後半5Fが12,6-12,1-11,2-11,2-11,8なので、正直今年の場合あまりコーナーでのロスは問われていないはずなのですが、結果的に前目内目にいた馬が上位、というのも含めて、なんともレースレベルとしては煮え切らないところはある内容です。

 一応3F勝負での持続戦ですけれど、他のレースのラップを見てしまうともう少し後半だけでも引き上がっていい感じで、実際にそこまで爆発的な切れはまず持っていないウインの2頭がここまでスタミナと操縦性で頑張れてしまったレース、とは感じます。
 ただ当然、そういう前が支配するレースで後方からびっしりマークにあって動くに動けず、直線も窮屈な位置取りから猛然と差し切ってみせた勝ち馬だけは次元の違う競馬でしたね。

 しかし本当にデアリングタクト、しみじみとすごい馬ですね。
 レース前のテンションの高さはかなり不安でしたし、レース中も少し間違えると折り合いを欠きそうな中で、松山Jが返し馬から本当に丁寧に丁寧にエスコートしていたのが印象的ですし、道中出来る限り無理をさせず、最後の脚に賭けた胆力も含めて素晴らしかったですが、それにきっちり応えた馬がやはりえげつなかった感じです。
 インタビューでも馬に助けられた、コメントは出ていましたし、実際祖母のシーザリオみたいな厳しいレースでしたから、それだけ馬の絶対能力と精神力が抜けていた、という事にはなると思います。

 この馬としては内枠で下げ切るわけにはいかない、でもある程度出していきたいところでブロックに遭い、外に出そうにも出せない苦しさは道中ずっと続いていましたし、レース全体のレベルに寄与できる状況ではなかったので、そこは考えなくていいでしょう。
 ただ凄かったのは、今までこの馬が見せた事のない切れ味勝負でもしっかり対応してきた事で、特に直線、中々進路が見つからず、外に出そうとしても狭くなって、そこからようやく内に進路を見つけて切れ込んでからの爆発力は見事でした。
 残り400mでは確実に前と6馬身くらいはあり、それを200mで3馬身ずつ詰めている感じなので、この馬自身の上がりは大体11,0-10,8-11,3くらいになると思います。

 これまで問われた事のない坂加速と10秒台の切れ味をいとも簡単に引き出してきたその加速性能と絶対スピード、更にそれを最後まで高いレベルで維持してくる持続性能と、後半要素の全てが文句なしに特級品で、着差は僅かですが本当に強い競馬でした。
 勿論この馬の場合、淡々と流れて底力勝負になってくれた方がもっと楽だったでしょうし、これで追走面も不安なしなのですから手が付けられませんね。
 ただ今日は直線の長いコースで良かった、というのも確かで、今後高いレベルで戦う事を考えると、やはり前半のポジショニングは少しずつでも改善していきたいでしょう。
 秋華賞は直線が短いので、あまり後ろからだと厳しいのも事実ですし、まあこの馬の能力ならアーモンドアイみたいな勝ち方してしまいそうですけれどね。

 ともあれ同世代ではもう簡単には負けないでしょうし、牡馬や古馬との戦いでどこまでやれるか、にはなるでしょう。
 やはりコントレイルやアーモンドアイとの激突は一度くらいはあって欲しいですね。まだまだ伸び代もあるでしょうし、本当に先々が楽しみ、種牡馬エピファネイアの未来も大きく切り拓いてくれた孝行娘です。

 2着のウインマリリンは、もうこれは横山Jの胆力勝ちというべきか、あの位置を外枠から取り切った時点でやる事はやった、という感じでしたね。
 スマイルカナのレースメイクも、ある程度やはりウイン2頭が前目にいて、淀みを作って底力勝負にはしない、機動力と操縦性、スタミナ面を上手く噛み合わせる為に敢えて、という点もあったのかなと思いますし、馬自身それでもここまでスローバランスの競馬は初めてながら、しっかり一定ライン引き上げてきたのは素晴らしいです。
 この馬とてフローラSがかなりのハイペースで苦しい競馬だったはずですが,タフで素直でいい馬だなと思いますね。
 強いて言えば直線少し待たされるところがあったのと、最内に潜っての最速地点で流石にスパッと切れる脚は使えなかった、それが最後に差されてしまった要因にはなりますが、ラストの持続、しぶとさも見せていますので、これは秋華賞の舞台なら、今日くらい完璧に立ち回ればワンチャンス、というイメージは持てる馬になってきたと言えるでしょうか。

 3着のウインマイティ―も、正直この渋い血統で今の府中でどうなの?と思っていたのですけど、クラヴァシュドールの早仕掛けで進路取りが楽だったとはいえ、きっちり出し切る形でいい競馬を見せてくれましたね。
 この馬はこういう機動力が一番の武器に思いますし、その為にも序盤出来る限りいいポジションを、という中で、結果的にはウインマリリンより一列後ろだったのが最後の差とは言えますが、それでも大健闘でしょう。
 ここで軽い馬場でも一定やれるのを見せたのは今後の展望が開けますし、明らかにステイヤーなのでその辺りを踏まえてどういう路線を選ぶかも注目です。個人的にこういうタイプ、菊花賞を狙って見てもいいと思うのですけどね。

 4着のリアアメリアは、高速馬場の後半勝負に徹して自分の良さは出してきたのかな、とは思います。
 珍しくそこそこ落ち着いてレースに臨めていましたし、道中も中団、あまり揉まれない位置で、けれどデアリングタクトには楽をさせない、蓋をする位置にずっといたのが川田Jらしいいやらしさではあり、その分道中から外々でしたけど、このラップならそこまでロスはなかったはずなんですよね。
 ただ直線外に出しての仕掛けで、坂地点で少しもたもたし、最後はもう一伸び、という感じで、ここはアルテミスS同様少しエンジンの掛かりが遅い、坂で切れる脚を引き出せなかったと見て取れます。
 正直このラップなら3コーナーから勝負に行ってロングスパートでも良かったのかなとは思いますが、そこはデアリングタクトマークの意識がちょっと強すぎた面はありそうですし、そこまでしっかりブロックしきっても相手が隙間から格の違う加速と切れを見せてしまうわけですからね。

 結局のところ絶対能力そのものもやはりそこまだ高いわけではなく、このレースは結構噛み合っていると思うので、その中でのこの結果は素直に受け止めるべきでしょう。
 ただ距離はマイルは短い、と思いますし、気性面のコントロールをしっかり身につけてこないと、高いレベルで安定して、というのは望めないタイプでしょうね。それとどうも、中内田厩舎は長い距離を走る馬を作るのが上手くないのかな、とも感じますね。

 5着のマジックキャッスルも後半特化に徹して、この馬の持ち味は引き出せていましたね。
 勿体なかったのは直線、1頭分の隙間にほんの一瞬の差で先にデアリングタクトに入られてしまい、1~2秒待たされてしまった事で、そこがスムーズだったらもう少し際どく肉薄できたかもしれません。
 まあそういう部分も含めて歴史的名馬との勝ち運の差、とも言えますし、この馬自身は道中はインでじっと我慢して、溜めて溜めての形なので、やはりこの距離がベストとは言い難いのでしょう。

 10着マルターズディオサはやっぱり前行かんのか、に尽きますね。本当に今の田辺Jは勝負勘がまるで冴えてないなぁ、と思いますし、距離不安はあるとしても、ウインマリリンと五分のスタートを切っておいてですからやっぱり残念でした。
 11着デゼルは、どうしても一度下げて外を回してでは苦しいですし、この馬自身の脚は引き出せる淀みはあってこれですから、やっぱりローテーション的にも厳しかったのでしょう。
 素質は間違いなくあるので、長い目で期待したい馬ではありますね。

 15着クラヴァシュドールは、正直あの位置にいてこの失速はもう状態面、としか思えないですよね。
 実際すぐ近くのウイン2頭が2~3着で、ミルコJらしい勝負に行くスタンス、3コーナーの淀みに合わせず1頭分外に出して追いかけていったのも正着だと思いますし……。
 まあハーツ産駒でも距離が長い、という可能性はありましたけど、それにしても最後ここまで止まってしまうのはガッカリで、リアアメリアのところでも触れたように、中内田厩舎の長距離仕様のつくりは信頼が置けないのかなと。
 結局馬体も更にマイナス体重で、桜花賞で厳しいレースをした反動もあったと見るしかないですね。その辺りやっぱりレシステンシアが走れたからと言って、一律に考えてはいけないと反省しきりです。

 券種的にはある程度淡々と流れての立ち回り勝負、かつ持続と切れが使える馬、という決め打ちだったのですが、その方向性で期待した馬の大半が能力を発揮出来なかったという、やっぱりまだまだ不調を引きずる結果になってしまっていますね。
 正直来週は普通に2強でいいよね、と思っているのですけど、私がそう予想するとダメになりそうで怖いです。。。
 まあ先週に引き続き、強い馬の強いレースが見られたことに満足しつつ、しっかり次に繋げていきましょう。


posted by clover at 17:10
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