2018年01月17日

縦のスペース・横のポジショニング

★はじめに

 今週はそこまで書くべきこともないため、折角なので先週末に格好の教材が出ている、縦横のポジショニングの重要性と合成について考えてみましょう。
 これは競走馬の能力というよりは、騎手の創造性の部分に大きく依拠する要素ではありますので、あくまでも一例的に、という見立てになるのはご承知おきください。


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2017年07月26日

競馬における斤量の影響についての一考察

**★はじめに**

 リクエストをいただいたので、斤量とハンディキャップに関する個人的な見解などをつらつら語ってみようと思います。
 ただお断りさせていただきますと、私はデータ収集には伝手のない人間ですので、今回語ることはいつにも増して説得的なエビデンスがあるわけでもなく、あくまで長年競馬を見てきて、現状私が能力分析に用いているツールの範疇での印象論になります。そのあたりはご了承くださいませ。

**1.古来言われる1kg1馬身は正しいのか?**

 古くから伝わる競馬の格言に、斤量1kgで1馬身差、というものがあります。
 私達も普段からなんとなく、この計算尺度を当て嵌めて、この斤量差でこの着差だったから、今回の斤量なら通用する、など考える向きがありますが、果たしてこれはそこまで万能の尺度なのでしょうか?

 或いは全ての条件を糾合して考えた時には、この尺度に近似した数字になるのかもしれませんが、しかし競馬のレースは常に一期一会、距離も馬場も展開も全く違う中で、果たしてこの要素が一律で通用するのか、というと、やはりそうではないと思います。
 といって、どの条件なら斤量差があまり出ないか、逆に大きく出るか、出るとしてその幅はどのくらいなのか、という点に、明確な答えを与えられるわけではありませんが、純粋な能力適性面でもいくつか、斤量の影響が大きいのでは?と感じる要素はあるので、そのあたりから掘り下げていきましょう。

**2.加速力と瞬発力に対する影響を考える**

 重い斤量を背負った馬の敗因としてよく耳にするのが、思ったようなポジションを取れなかった、或いは勝負所でもたついてしまった、というものです。

 競馬におけるポジショニング争いとは、雑にまとめてしまえばレース2F目での加速にどれだけスムーズに対応できるか、であり、勝負所の動き出しにしても概ね加速ラップが問われている、という視座で言えば、斤量は加速力の面にはかなり大きく影響を与えると考えられます。
 人でも重いものを持っていれば、即座に素早く動くのは難しくなりますし、普段通りの動作に至るまでの準備加速に時間がかかるのは当然なので、このあたりは競走馬にもストレートに反映する部分ではないかと思います。

 丁度先週、マルターズアポジーが重い斤量を背負って七夕賞に出走し、序盤にフェイマスエンドに頻りに絡まれてペースを上げさせられ、直線を待たずに失速する、という例がありました。
 元々加速性能に非常に優れた同馬ですが、ここではレース2F目に10,5というスプリント戦並のダッシュを問われていて、その負担がレース後半に大きく圧し掛かった可能性は高いと思っています。3コーナーから被せられたとはいえ、流石に本来あんなに早く失速する馬ではないので、序盤のペースアップに斤量負担の相乗効果があった、と見てもいいのではないでしょうか。

 要するに重い斤量を背負う馬にとっては、普通のレース以上にラップの波が大きくならない方がいい、というのは言えると思います。
 今週の函館記念でも、近年で57kg以上を背負って連対したのはトウケイヘイローとダークシャドウくらいしかいませんが、どちらのレースもかなり波が少なく、後半の加速要素も最低限に留められた一貫ペースのレースでした。

 重い斤量を背負った馬にとって難しいのは、後半でも加速要素を少なくしたいから、出来るだけいいポジションは取りたい、けれどいいポジションを取る為には最序盤にある程度頑張って加速しないとならない、その2箇所の加速地点におけるエネルギー分配のバランスを取ることでしょう。
 それに対しては、結構レースロケーションが影響を及ぼす面も強いと思います。
 具体的には、最初のコーナーまでの入りが長く、テンのスピードが上がりやすいレースは、その分だけポジション争いが厳しくなり、ポジションとペースのバランスを守りにくい、と考えられます。

 それこそ函館記念など典型的なレースとも言えて、テンのペースが上がりやすく極端に外枠不利な条件では、重い斤量の馬が好走するためのスポットはより一層狭くなってしまうでしょう。
 逆にスタートしてすぐコーナーで、テンのペースが上がりにくいコースならば、相対的にポジショニング面に無理がないですが、その分レース全体がスローになりやすいので、仕掛けどころで急加速を問われないような工夫が必要になってくる、と思います。

 加えてもうひとつ思うのは、やはり瞬発力面における最大速度は、斤量によってある程度削がれてしまうのではないか、という点です。
 こちらはレースの中で、常に最大速度が問われるほどスローになるのは稀、とまでは言いませんが、ポンポン頻発するわけでもないので、判断要素としての優先度は加速度には及ばないと思います。
 ただ新潟外回りのように、ほぼ必ず400-200m地点が最速になり、非常に高いレベルでの瞬発力が問われる条件もそれなりにはありますし、その切れ味の質の差がレースの結果に直結しやすい舞台では、頭に入れておいていいと思います。

 本当にこの辺りの話は統計を取っているわけではないのでなんともですが、少なくとも斤量の重い馬が好走しやすいコースと好走しにくいコース、というのは厳然として存在するとは思っています。
 それは突き詰めれば、斤量が重い場合に一番走りやすいのは、結局平均ペースの底力勝負という平凡な結論になってしまいますし、そういうレースが現出しやすい条件とそうでない条件を振り分けてみる、という考え方はアリだと考えます。

**3.基礎的な速度面への影響を考える**

 2で考察したのは、あくまでもレースの一部分の特殊条件においての影響でしたが、それとは別に当然レース全体での負担、というものも考えられます。

 今週は函館記念で、サトノアレスの年齢アローワンスの是非が多く語られていると感じますが、その是非はひとまず置いておいて、現在のJRAの基準でもレース全体の斤量の影響が長距離>中距離>短距離と、距離延長に伴って大きくなると考えられているのは、この年齢アローワンスのズレからも顕著にみられるといえます。
 日本では現状、58kg以上の斤量を背負う条件は障害戦くらいしかありませんが、欧州では60kg以上を背負う平地レースもザラで、特に格の高いスプリント戦などは62kgが基本の負担重量になっていたりもします。
 つまり、長い距離を走るだけ、斤量による消耗度は大きいと見做せるわけで、この蓄積が前述の1kg1馬身とも通じるところなのでしょう。

 この点においての個人的な印象としては、楽走、つまり息が入るラップの下限に一番影響が出るのではないかな、と見ています。
 本来なら息を入れられるくらいに緩んでいても、重い斤量を背負っていると息を入れて走りにくくなったり、或いは一度息を入れてからのひと踏ん張りが効きにくくなることで、相対的に軽い斤量の馬と余力の差が出てしまうイメージです。

 2でも触れたように、そうなるくらいなら一貫ペースの底力勝負の方が条件的に平等に近くなる、と個人的には思っていて、それは総合的に言えば、ハイペース適正、スローペース適正の幅が狭くなると考えてもいいのではないかな、と。
 スプリント戦の場合は、基本的にスタートからダッシュを効かせてその惰性で乗り切る、というのが基礎的な概念(近年は必ずしもそうではないですが)なので、斤量の影響が最序盤の加速地点に大きく掛かり、限定的と考えることも出来るでしょう。

 とはいえ、レース全体を考えた時にもうひとつ言えるのは、極端な脚質の馬はそれだけで不利、という事にはなると思います。斤量とうまく付き合うコツは、極端なバランスで走ったり、加減速を頻りに繰り返したりせず、淡々と一定のペースを刻む方がいい、というところで、このあたりは鞍上の体内時計の正確さなどにも関わってくる点と思います。

**4.騎手による斤量の影響の違いについて考える**

 前項で重い斤量を背負った時はより騎手の腕、判断力が問われやすいと指摘しました。
 それに加えて昔からちょっと思っているのは、騎手の体重と負担重量に相関関係はないのかな?という部分です。

 一般に、騎手の体重と馬具の重量で足りない分は、騎手自身の身体や、馬の鞍に鉛を入れて調整する、と聞き及んでいます。
 でもこういう調整って、微弱な差であったとしても、馬自身に騎手の体重とは別のベクトルで重さを感じさせる要素になっていないのかな?と思うところはあるんですよね。

 例えば、最低斤量の48kgにも乗れる、体重46kgの騎手が55kgの負担重量の馬に乗るとしたら、おそらくその補正重量は7kgくらいになるでしょう。
 対して、55kg以下の馬には乗らないムーアJだったら、当然55kgの馬にはほぼ余計な補正重量なしで乗ってきます。

 基本的に騎手は、いかに自分の体重を馬に感じさせずに走らせるか、という技術を磨いているわけですが、乗れる斤量の幅によって微細な調整が必要になる場合、自身に重りを載せるにしても、馬に負担させるにしても、常にベストのバランスを保ち続ける、というのは中々難しい事ではないかと感じます。
 トップジョッキーが上位条件でしっかり結果を出すのは、そのあたりの補正幅を小さく保っていても騎乗馬が集まり、そのブレを極力減らす技術を体得できるから、という印象は結構あるのですよね。

 ともあれ、普段軽い斤量でも乗れる騎手が、重い斤量の馬に乗っている場合は、より負担が大きくなる懸念がある、という指摘です。

**5.馬自身の馬体重の差による影響を考える**

 これも昔からよく語られますが、400kgの馬と550kgの馬が同じ斤量で走るのが不利ではないのか?という観点です。
 私の考えとしては、当然全く影響がないとは考えませんが、それ以上に馬の適正タイプの影響度の方が大きいだろう、とは思っています。

 上で触れたように、斤量差が一番覿面に出やすいのは加速力面において、と思っていますので、その文脈で言うなら当然器用さで勝負する加速力/瞬発力タイプは斤量の影響を受けやすく、底力を高く持つ持続力/持久力タイプは比較的影響を受けにくい、と考えます。
 また、軽量馬でもカンカン負けしない馬、重量馬でもカンカン負けする馬、というのはいますし、体重そのものよりは個体差、その適正面を考えた方が有益かな、とは思っています。ただ当然ながら、同じような適正なら馬体の大きい馬の方が有利と考えてもいいでしょう。

**6.馬場状態の差による影響を考える**

 これも昔から、重馬場の時は斤量3kg増、なんてまことしやかに語られていますが、個人的にはそれは眉唾に思っています。
 そもそも斤量による機動力の減衰と、馬場状態によるそれは別個のファクターかな、とは思っていて、どちらも苦手、という馬なら相乗効果で全くダメ、なんてパターンもあるでしょうが、馬場をこなせる馬なら斤量による影響は特に加算されないと考えます。

 ただ、基本的に重い馬場になれば後ろから加速するのが難しいのは当然ですし、その分前半に無理してしまってバランスを崩す、というパターンは良馬場の時より多いでしょうから、そのあたりでも重い馬場だと重斤量の馬が崩れやすい、というイメージが確立しているのかもしれません。

 逆に超高速馬場の時の方が、斤量の影響は出やすいと思っています。
 それは相対的に平均ラップが上がることと、ほぼ確実に後傾ラップを踏む流れになるので、後半の加速要素や瞬発力要素が強く問われるからですね。

**7.斤量経験の必要性について考える**

 競馬において、レースでしか本質的に鍛えられない能力というのはあると思っていて、例えば追走力などはその代表例として考えていますが、斤量経験もその範疇に入ってくると思います。
 やはり馬自身が酷量をどこまで経験しているか、どこまで耐えられるかというのはありますし、それを一度経験することで克服する可能性も当然あると思っています。

 近年の春の天皇賞で、58kgがはじめての4歳馬が勝ち切りにくいのは、ここまで語ってきた様々なファクターが絡み合っていると思います。
 まず距離が長く、その分だけ斤量の影響が大きい事、そして基本高速馬場開催で、中盤に大きく緩んで後半加速する展開になりやすい事、その場合に加速度や瞬発力の質も高く問われる事などが、はじめての斤量の馬には辛い条件になりやすいと見做せます。
 近年4歳で、はじめての58kgで勝ち切ったのはスズカマンボとフェノーメノくらいですが、この2頭の時は馬場が渋っていたり、超例外的にレース全体が一貫ペースになったりと、斤量の影響が出にくい展開、条件になった事も影響していると思います。

 キタサンは大阪杯で58kgを経験済みでしたし、それ以降、90年代の馬は大抵前哨戦で58~9kgを背負ってからの参戦になっていたので、このあたりは斤量面でスターホースに甘い近年の傾向の影響が反映していると考えられますね。

 ついでに凱旋門賞についても考えてみましょう。
 そもそも海外の年齢アローワンスは、このレースに限らず3歳馬有利に作られています。
 けれど凱旋門賞ほど顕著に3歳馬有利のレースはそこまで多くはなく、それを鑑みるに、ロンシャン開催での当レースが、基本的には超スローで入り、フォルスストレートでも上がり切らずに、結果直線600mの加速力/瞬発力勝負になっている要素が大きいのだと思います。

 実際去年のシャンティイ開催では、例年にないハイペースで展開した結果古馬の上位独占でしたし、ああいう一貫ペースの方が斤量差が出にくい、というひとつの証左にもなるのではないでしょうか。
 基本的に59,5kgなんて酷量の経験はない日本馬が、重馬場の時にしか好成績を出せていないのも、要所の加速力が問われにくい展開になりやすいから、とも考えられて、その意味ではやっぱり、本気で凱旋門賞を勝ちたいと望むなら、事前に斤量面でのチャレンジはしておくべきだと思うんですよね。

 ここまでのスケールではなくとも、はじめての重い斤量が、その数字以上に負担になるパターンは当然ある、と考えておくのが無難でしょう。

**8.ハンディキャップの在り方について考える**

 ハンディキャップ戦は当然ながらギャンブル的な面での面白さがあると同時に、ちょっと力の足りない馬の救済措置にもなっていて、来年以降降級制度がなくなるという話もありますし、その存在意義は増していくかもしれません。
 それだけにこの時期に、改めてハンデの適正さについて考えてみるのも意義のあることにはなるでしょう。

 まず馬齢によるハンディに関してですが、上で触れたように短距離と長距離では2ヶ月の移行期間のズレを設けています。
 ただ巷間でも言われるように、短距離路線に関してはもっと早い段階で斤量差を縮めてしまってもいいのではないか、と個人的にも思います。

 というのも、基本的に3歳馬は春は概ねクラシック路線を指向するわけですが、それは本来の距離適性を撓めている部分も大いにあり、大体の馬はクラシックディスタンスより本質的な適性は短い、という事になります。
 つまり距離短縮で出てくる馬の方が、基本的に本来の適正に噛み合う可能性は高くて、かつ上でざっくり考察したように、加速のタイミングが序盤と終盤2回発生しやすい中距離以上のレースより、一貫してスピードが落ちないスプリント戦の方が斤量の影響は小さいので、今よりもう少し差が小さくなったとしても、スプリント適正が高い馬なら問題なく古馬と伍して走ってくると思います。

 中長距離に関しては、現状で妥当と思っています。
 今週のサトノアレスがこの絶好枠と54kg(実質は58kg)でどうなるか、は興味深いケースになりますが、そもそも夏場からの出走自体がスプリント戦より少なめですし、斤量の影響度も大きい、適正面でも噛み合ってくる馬がスプリント戦程ではないでしょうから、むしろ挑戦を奨励する意味でも現状維持を支持したいですね。

 ハンディのつけ方についての是非は、現行のやり方に不満があるとしても、じゃあもっとロジカルにそれを決定できる方法論があるか、と言われればそれはないので難しいところです。
 ただまぁ、ハンディが一番明確に可視化された有利不利だとすれば、競馬には馬場状態や枠、騎手や適性など、見えにくい有利不利のファクターも多数あるわけで、結局出されたものに対して偏りがあると思っても、それを前提に考えるしかないでしょう。
 この辺は馬券派はシビアに見られるかもですけど、観戦派としては期待・応援している馬が不当なハンディだったりするとうーん、ってなりますけど、それも含めて競馬ではありますしね。

 強いて言うなら、ハンディキャッパーがハンディをつける際に明確に基準にしているツールがあるならば、それを公開して欲しい、というのはありますけどね。
 そうすればそのツール自体の不備や疑問に声を上げることも出来ますし、上でも触れたように、今後降級がなくなる中で、能力的に頭打ちの馬にとってのハンディキャップ戦の救済性はより強くなっていくはずで、そこで公平を欠くようなイメージを抱かれるのは、胴元としてもマイナスではないか、って思います。

**★終わりに**

 正直あまり深く考えた事のない論点でしたので、まとまりに欠いた茫洋としたものになってしまいました。
 ダラダラと書いた割に中身は少ないですが、今後夏のハンディキャップ競争が続く中で、ほんのささやかでも指針になってくれれば幸いです。
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2017年02月03日

加速力の種類と見極め、瞬発力と持続力・持久力の相関関係について

**★はじめに**

 前回の能力分析記事で触れた、後半要素の中でも特に重要な四項目の内の残り二つ、加速力と瞬発力の考え方について、色々と私見を語っていきたいと思います。
 特に現代競馬では後半勝負の比重はかなり高く、その上でコースロケーション次第で、後半四要素のどれを重視していくべきか、というのは当然違ってきますし、調教のスタイルなどでもより重点的に鍛えられる資質は異なってくると思いますのでねそのあたりの話も加味しつつ考えていければいいなと。

**★加速力の見極めの意義**

 競走馬は基本的に、様々な鞍上の合図によって制御できるように訓練されています。
 それを気性面の難しさで十全に発揮できない馬もそれなりに多く見受けられますが、特に加速力においては、言い換えれば勝負所で余力がある場合において、どれだけ騎手のゴーサインに従順に、即座に反応できるか、という側面もかなり強いと思っています。

 加えて、当然身体的な特色、体幹のバランスなどの要素もあり、前回に持続力型と加速力・瞬発力型のフォームのざっくりした差異も検討しましたが、そのあたりが総合して反映する能力であり、この後考える瞬発力がかなり絶対的な能力の指標であるのとは違い、厩舎力なども含めた馬の作り方のロジックがそれなりに波及しやすい能力であるとも考えています。
 また、スムーズな加速には適正なフォームや下準備段階が必要とも考えるので、それを上手く引き出せる騎手と、そうでない騎手がいるのも必定で、そのあたりの相乗効果、マイナス効果も加味して考えると、非常にこの馬固有の得意性を見極めるのは難しいポイントにもなってきますね。

 特に近年はスローペースから段階的でなく、ハロン区間ひとつで1秒、時には1,5秒以上の加速を問われるレースもありますし、そこでは加速力に特化した馬が、それにやや乏しい実力馬を綺麗に出し抜いて押し切る、なんて光景もザラに見受けられます。
 特にレース展開でスロー必至と読めた時に、前受で加速力に秀でた馬がぽっかりと穴馬券を運んでくる可能性はかなり高いので、総合的な能力としては劣るものの、加速力が鋭い馬というのは、惨敗続きでもスポットに入れば狙い打てる、という利点があるので、しっかりその個性を見定めておくことは大切になってくるでしょう。

 現役でも屈指の加速力の持ち主はやはりイスラボニータ、アルビアーノもそれに近い一瞬の加速を持っていましたが、残念な事に今日電撃引退が発表されていましたね。
 こういう総合力も兼ね備えた馬は常に人気になるので妙味はありませんが、例えばこの前のつばき賞で紹介したタガノアズワドあたりが、次走で距離短縮を選び、追走で苦慮して惨敗したとしても、その後に2200~2400m戦に出てきて、スローでレースを支配できそうなら、このレースで見せた素晴らしい加速力が生きる可能性が大きく出てくるでしょう。

 その意味では、距離短縮よりは延長でより可能性が問われやすい資質になりますし、過去のレースラップの踏み方で加速力の裏付けはあるけれど、マイル戦付近では追走力で後半要素を削がれる馬が、次に距離を伸ばしてきた時は狙い目が立ちやすいとも言えます。

**★坂加速、コーナー加速**

 そして、一口に加速と言っても、どの地点で加速するかによってその資質にも差は出てきます。
 無論の事ですが、直線平坦の地点で加速するのが、馬体のバランス的にも脚力的にも一番楽なのは明らかで、それを証明しているのが新潟外回りコースでの、残り400-200m地点での極限的なレースラップに現れています。
 あのコースだけは条件馬でも10,5を切るような切れ味を見せるし、1秒以上の加速を楽々見せてくるので、その質、加速力を鵜呑みに出来ない条件で、私は基本的に+0,5秒補正をかけて考える事にしています。

 ともあれ、そこ以外のコースで、純粋に長い直線の助走地点があり、その上で最速ラップを踏みやすい地点も平坦、というコースはありませんので、それ以外だとやはり純粋な加速力に+αの要素を問われることになります。

 その大きな要素として考えられるのが、坂加速の適性と、コーナー加速の適正です。
 坂加速とは文字通り、勝負所の加速地点に上り坂が控えている状況で、どれだけ自力で加速できるかというもので、意外とこれを苦手にする馬は多い印象です。
 この条件に適するコースは府中と中京が主で、時に直線が短い中山でも見受けられます。阪神だと特に外回りでは坂減速のラップになることがほとんどなので、そこで更に加速して突っ込んでくる馬、というのは多くはないですね。

 実際に府中などで、坂を上ってから伸びてくる馬は多いですし、けれど逆に坂の地点でグンと出し抜ける馬もいて、それは結構なアドバンテージになる能力です。
 最近だと共同通信杯のスワーヴリチャードなどは、かなり高い坂加速適正がありそうですし、グレーターロンドンもその素養はかなり高そうに感じますね。

 コーナー加速については、遠心力のかかるコーナーでバランスを崩さずに加速できる能力であり、ここは数字以上に見た目の判断が重要になってきます。
 というのも、最内を通した馬と、コーナーで5頭分外を回した馬では、当然走った距離に大きな違いがあり、実際のラップ以上に速度が違ってくるからで、かつ外を回す分だけより外向きの遠心力もかかりやすい事になります。
 よって、コーナーで速いラップを踏んでいる時に、大外をぶん回して前にスピード負けしない馬は、それだけで相当にコーナー加速が得意と考えられます。

 最近ですとコーナー加速が上手いのは、今週出てくるツクバアズマオーにマイネルハニー、先週勝ったマルターズアポジーもそうですね。特に逃げ・先行馬でコーナー加速が上手いと、基本被せられると脆い逃げ馬にとってはかなり大きなアドバンテージになるので、そういうレース展開をプラニング出来る騎手が乗ってくれるか否かは大切な要素になってくると思います。
 以前に注目馬として触れたグレイトパールもかなりコーナー加速の素養は高いと、あの準オープンのぶん回しを見ても確信できますし、特に直線が短いコースではコーナーで置かれないことはかなり重要になってくるので、脚質と合わせて検討材料にすべき部分だと思います。

 逆にノンコノユメやクリノスターオーなんかは諸にコーナー加速が下手ですし、グレーターロンドンも中山戦を見る限り決して得意ではないですね。この辺りは純粋に、公式の3~4角通過順推移を見るだけでもぼんやりわかってきたりもしますし、地方の小回りコースや中山戦の場合はより顕著に出るので要注意です。

 また、そういう弱点を理解して騎手が乗ってくれているか、というのも大切な要素です。
 例えばコーナーをタイトに回るのが苦手なら、少し角度をつけて進入したり、坂加速が苦手ならその前に敢えてスパートして惰性をつけておくなり、上手く弱点を糊塗する意識があればそんなに露呈せずに済みますが、坂加速が苦手な馬がいざ坂に差し掛かったところでスパートの合図を送られてもどうにもならない、という噛み合わなさも時折見かけます。
 テン乗りの場合などはそういう傾向も強く出やすいので、癖馬の場合はそこで割引、或いは加点要素として判断する必要が強くあるなと感じています。

**★瞬発力の絶対価値**

 例え瞬間的にでも最も早く走れる、それは競走馬としてのみならず、生き物として誇れる能力であり、だからこそ鍛錬で鍛える価値も強いのですが、どうしてもここに関しては先天的な特質、素養がより強く出る部分ではないかなと個人的には思っています。
 人間でも、如何に筋肉の質を瞬発型に鍛えようと、白人や黄色人種が黒人の持つ遺伝子からなるバネには敵わないように、血統的な部分での要素が大きく出るのが、この瞬発力と持久力・スタミナの部分になるかなと考えます。

 故にこそそれは希少価値であり、実際に時計面で見れば僅かでも、そこには絶対的な差が出やすい点でもあります。
 もっともレースにおいて、本当の意味での最高速を測られるほどのスローペース、ってのはあまりなく、その意味ではドスローになりやすい新馬戦などで見せた瞬発力の高さは、後々まで評価基準になるとも言えるので、しっかり縦の比較、過去からの推察がより大切になってくるポイントと思います。

 この前の東京新聞杯などは、トップクラスのレースで瞬発力の絶対値が試された稀有な例だと思いますが、流石にああいうレースは早々ないので判別自体は難しいところはありますね。
 特にここ1~2年は、目を瞠るほどの超高速馬場、ってのはあまりお目にかからなくなってきた傾向ですが、いざそうなった時にこの瞬発力の質の高さというのは、レース全体の運びにも影響を及ぼす素養となって現れます。

 基本的には、最速で10,5くらいの瞬発力を持つ馬だと、自身が引き出せるスピードの幅が、最速で11,0しか出せない馬に比べれば断然広い、ということになり、馬場がその最大値を引き出せる条件だと、よりその差が顕著に出る、という考え方です。
 やはりそれだけの質を持っていれば、ハロン12秒くらいの追走においても楽になるし、また持続力と持久力の分水嶺の意味でも、他の馬より優位に立てる、最速11,0の馬が、11,4~5くらいのラップで持続力の範疇に入るのに対し、11~2,3くらいまで持久力の範疇でこなせる、と見立てられるので、やはり質そのものはかなり重要な判断要素になってきます。

 また、その質が高いほど総合的な持続力という観点でも優位性はあると思えます。
 持続力とは、如何に最高速から減速を抑えるか、という能力と定義しましたが、それは絶対的な観点で、相対的に見た時に、減速幅が大きくても、最大速度が速ければ他を凌駕できるのは言うまでもありません。

 例えば最速11,0しか出せない馬が、如何に持続力が高く次の1ハロンを11,1くらいで走れたとしても、最速10,5の馬が、持続力の観点では低く一気に11,4まで減速しても、2Fの総合タイム的には追いつけない、という事ですね。根岸Sのカフジテイクなど、わかりやすくラスト1Fで自身は減速しているけれど、相対的な速度ではそれでもラスト1Fで他の馬よりは速く走れている、というメカニズムでの差し切りでした。

 当然ながら減速幅が小さいほど持続力は高いと見積もれますが、瞬発力の質が馬場質でどこまで問われるかによっては総合的に変わってくる点でもあるので留意は必要になりますし、また持続力で触れたように、その速い脚を使った地点が何ハロン目なのか、という観点と合わせて見極めたいポイントになりますね。
 後半要素でも、加速、瞬発、持続の三つに関しては同時に問われる可能性もかなり高いですので、個々の馬に対してどこが最大の武器なのか、後半の走りの中でしっかり見極め、舞台適性やペース適性の見極めに生かしていきたいところです。

**★終わりに**

 一先ず私が適応している能力分析に関してのざっくりした話は、これで完結という事になります。
 基本的には私はラップ論者の括りに入るわけですが、その中でも掘り下げが深いわけではなく、あくまで趣味の範疇でサッと見極められる水準での観点しか導入はしていませんので、その意味では気軽にツールとして流用できる面はあるかな、と考えます。

 競馬の予想、見方には本当に様々なファクターがある中で、私の感性にフィットする方法論なのは間違いないですし、遅まきながらここが出揃った事で、予想を書く上でも馬の適性のイメージを共有してもらいやすいかな、とは思います。
 もっとも基本的に文章を簡潔にまとめるのが下手ですし、推敲せずに思いつくままに書いている面はあるので、わかりにくい面はどうかご寛恕くださいませ。

 
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