2020年09月14日

2020 9月第2週海外GⅠなど レース回顧(part・Ⅰ)

 今週は週末の重賞が日・月の変則開催で、そこそこ記事枠に余裕があります。
 一日は名馬列伝やるつもりなのですけど、残り一日どうしようか、という所で、先週末は本当に海外で面白いレースがてんこ盛りだったのですよね。
 厳選してまとめてしまっても良かったんですけど、取り捨てるには勿体ないレースも多いので、今週はこの記事を二分割して、後編は水曜か金曜あたりに出す形にしました。
 今日に関しては、基本的に凱旋門賞へのステップレースを中心に見ていこうと思っています。


★愛チャンピオンS https://www.youtube.com/watch?v=dW_ZAz1eGeQ

 先週の白眉としては、やはり一番にこのレースを持ってこないと、と思います。
 今年に入って4戦無敗、GⅠ3連勝中の無敵の逃げ馬・ガイヤースが出走した今年の愛チャンピオンS。
 しかし見事に勝利を収めたのは、去年の覇者でもあるマジカルでした。終始ガイヤースをピッタリとマークして、決して楽をさせずにプレッシャーをかけ続けて、最後に競り落とした内容はもう素晴らしい!というしかなく、レース質としてもレベル高く、非常に迫力のあるものでしたね。

 時計的にも、少し渋りが残っての良馬場というのは去年と同じ表記で、その中での2,05,08は優秀だと思います。
 単純に去年よりも1秒以上速いですし、おそらくレースの形からしても、極めてハイペースではないにせよ、道中全く緩みのないタフな持久力勝負だった事は想像に難くありません。
 おそらく競走馬としての絶対能力だけならガイヤースのほうが上、ではあるのでしょう。
 ただタフなローテーションとペースをものともしない強靭な心身のマジカルの本領を、陣営がこれ以上なく引き出す徹底的な戦法を打っての撃破は本当に盛り上がりましたし、改めてマジカルの強さに頭が下がりますね。

 もっとも、元々2000mがベストの馬ですし、ここは去年以上に厳しいレースをしてしまったので、凱旋門賞には向かわない可能性は高いと思います。
 おそらく英チャンピオンSになるのではないでしょうか。どうあれ流石に改めての引退も間近、という中で、益々輝きを放つマジカルの走りからは、常に目を離す事が出来ませんね。

 勿論2着のガイヤースも、チャンピオンに相応しい力強い王者の走りではあったと思います。
 ただ逃げ馬の宿命として、前半からずっと絡まれてプレッシャーを受け続けるのは楽ではなかったでしょうし、この先は各陣営のラビットとの兼ね合いも出てくるはずで、改めて欧州で逃げ馬が勝ち続ける事の難しさを感じさせた一戦でもありました。
 そしてこちらも、コロネーションCでの復帰からコンスタントに月一ペースで主要GⅠを走っていますし、今後のローテーションは不透明ですね。
 個人的には2000mより、楽に主導権が握りやすそうな2400mで見てみたい気持ちは強いですし、昨日みたいなパリロンシャンの馬場なら尚更、とは思います。
 ただ当然相手は強く、ラビットも出てくる確率が高い中での立ち回りの難しさはありますし、ローテーションも楽ではないので、こちらも英チャンピオンSかBC、というチョイスになるかもしれませんね。

 3着のアーモリーは唯一の3歳馬でしたが、10F戦のペースと立ち回りに慣れてきたようで、じわじわと力をつけていますね。
 ソットサスを最後にしっかり差し切れたのは大したものですし、タタソールズゴールドCのマジカルとの差は縮めていますから、今年はまだしも来年の飛躍は楽しみな一頭です。
 ソットサスも地元の前哨戦を捨てて強気の遠征でしたし、悪くない内容だったとは思います。乗り慣れた鞍上ではなかった、というのもあるでしょうし、距離は2400mのほうがいい馬だと思うので、本番内枠を引けたらの一発には警戒しておきたいです。


★英セントレジャー https://www.youtube.com/watch?v=7kTf3XwA7kg

 伝統の英セントレジャー、今年はゴール前大激戦の、非常に盛り上がるレースでしたね。
 その中で勝ったのはオーストラリア産駒のガリレオクロームで、これで今年の6月に未勝利を勝ってから、あれよあれよの4連勝でのGⅠタイトル奪取となりました。

 鞍上のマーカンドJは、これが英クラシック初勝利だったようです。
 マーカンドJと言えば、今年の英ダービーで有力馬イングリッシュキングの主戦でありながら、直前でデットーリJに乗り替わりを宣告され、けれど伏兵馬で2着をもぎ取ってみせた事が記憶に新しいですね。
 そしてこの日も、本来のガリレオクロームの主戦騎手が、直前でコロナ陽性となってしまった事による急遽の乗り替わりをものにした格好であり、大舞台でのドラマ性と勝負強さがあって、来年以降の飛躍が楽しみになる騎手です。

 ともあれレースとしては、映像のラップ推移を信じる限り(正直イギリスのラップ計時はあまり正確ではない感じはするのですが)、全体としてはややスロー、くらいの流れです。
 ステイヤー戦らしく、残り1000mくらいからじわっとペースアップして、直線は12,15-11,96-12,83なので、しっかり脚を出し切っての持久力戦、という事でしょう。
 相手関係も、グッドウッドC3着の愛ダービー馬・サンチアゴや、前哨戦のグレートヴォルティジュールS勝ち馬のパイルドライバーなど、骨っぽいメンバーは揃っていたので、それらとの競り合いを制して、という内容は中々に価値があると思います。

 まあ正直、今年の3歳牡馬は全体的にやや低調かな、という感じではあります。
 その中で接戦を制して、というラインでは、余勢を駆って凱旋門賞などの大きな舞台を目指す、となっても流石に厳しい感じはあるでしょうか。素直に英ロングディスタンスあたりを目標にするのがいいのかなとは思います。

 レース質的にも、時計的にも、流石に去年のロジシャン程のスケール感はなかったですしね。
 ちなみにロジシャンも先週、一年ぶりにリステッドでレース復帰して見事勝利、無敗を継続はしているものの、2頭立てで相手も弱かったので、果たしてどこまで強いのかは未だにヴェールに包まれたままですね。
 流石にそこから凱旋門賞、という無茶はしないでしょうし、ロジシャンの真価が見られるのは来年になってしまいそうです。



 このレースは愛チャンピオンSと同日の牝馬限定マイル戦なので、あまり凱旋門賞路線には関連が高くないですが(このレースからウィンターが出走した年もありましたけど)、日本に所縁のある馬が多く走ったレースでもありますし、前半戦で取り上げておきましょう。

 勝ったのはエルザーム産駒(その父リダウツチョイスですね)のシャンペルゼリーゼでした。
 2歳時は5戦1勝と並の馬でしたが、今年に入り、復帰戦からリステッド・GⅢととんとん拍子の3連勝、そして初のGⅠ挑戦となったこのレースでも、目の覚めるような素晴らしい末脚を発揮しての勝利となっています。
 日本でも騎乗経験があるムルタ調教師は、これが初のGⅠタイトルだったようですね。

 レースはラビットの後ろにロードカナロア産駒のノウイットオールと、愛1000ギニー覇者ピースフルが続き、ファンシーブルーはスタートで後手を踏んで後方3番手くらい、そして勝ったシャンペルゼリーゼは、それをマークするように更に後ろに位置していました。
 直線はスッと正攻法の競馬で抜け出したピースフルを、外から鬼脚でシャンペルゼリーゼが一気に交わし去っていて、時計的にもおそらくスローペースは間違いないので、相当に強い勝ち方だったように思えます。

 ピースフルはマイルで安定して強い馬ですし、それに並ぶ間もなく、というのは簡単にできる芸当ではないでしょう。
 また、同じような位置にいたファンシーブルーを一瞬で置き去りにした加速力と瞬発力も圧巻で、これはちょっと牝馬路線で楽しみな馬が出てきたな、という感じです。
 距離はこの日が初マイルだったくらいですが、もう少し伸ばしてもやれそうですし、今後の活躍に大いに期待したいです。

 ピースフルはやはりマイルに戻って安定した強さを見せてくれましたね。
 逆にファンシーブルーはやっぱり、マイルでは少し全体的に忙しい感じです。
 後方からでも脚は使える馬ですが、今日に関しては前のピースフルを捕まえられず、後ろのシャンペルゼリーゼに差されて、という内容ですから、完敗と言っていいでしょう。
 その点こちらは今のところ10F路線がベストになりそうで、次走はオペラ賞あたりが現実的、その上でのBC遠征が出来るか、という所でしょうね。
 ノウイットオールも着実に力をつけていますし、この2頭の日本血統馬も今後はとても楽しみです。



 今年は変則開催で、パリ大賞典はニエル賞の代替として凱旋門賞の前哨戦に位置付けられることになりました。
 勝ったのはガリレオ産駒のモーグルで、去年の全兄ジャパンに続き同門連覇達成となりましたね。
 そして相変わらず、仏ダービー組はほぼ参戦がなく、5着のボートギヨームが地元の期待を集めて人気していましたけど最下位と、やっぱりどうにも気勢の上がらない結果になっています。

 馬場は良、発表なのですが、時計が異常に速いです。
 このレースにしても、1400m通過が1,26,64なので、決してハイペースではないのですが、それでいてレコードに肉薄する2,24,76という勝ち時計は中々ビックリしました。今年はそれだけ馬場状態がいいのでしょうけど、なにもこういう日本馬が遠征できない時にそうならなくても、とは思ってしまいますね。。。
 後半は22,13-12,15-11,69-12,15なので、フォルスが異常なくらいに速くなっています。
 他の2レースに比べれば断然流れたのに、レースの仕掛けもやたら速い底力勝負にはなっていて、インベタで出し切る競馬になったことが、勝ったモーグルには丁度良かったのかもしれませんね。

 まあもっとも、時計だけを鵜呑みにすれば素晴らしい、となるのですけど、ここは確実に出し切ったレースではありますし、展開としてもかなり特殊です。
 勿論本番も厳しい流れにはなるでしょうが、さすがにここまで変則的な仕掛けはどうかな?と思いますし、本番でも同じように嵌る走りが出来るか?となると疑問符の方が大きいです。ここで走り過ぎてしまったのもあるでしょうしね。
 陣営の談話的にはそもそも、モーグルは凱旋門賞を回避、4着の英ダービー馬・サーベンダインの方をぶつける公算のようですけれど、セントレジャーでも触れたように欧州は3歳牡馬全体のレベルが疑問でもあるので、あまり高く評価しない方がいいだろう、と個人的には感じています。



 牝馬限定の前哨戦・ヴェルメイユ賞は、アイルランドの4歳牝馬、シャマーダル産駒のタルナワが後方外目から抜群の瞬発力で抜け出しての完勝でしたね。

 ラップ的には89,20-23,32-11,58-10,95-11,37=2,26,42なので、パリ大賞典よりもかなりスローで、後半はもう少し穏便に分散されての5Fロンスパ勝負、かつ二段階加速戦、という趣でしょうか。
 一応フォルス平均が11,66なので、外から動いていくのがベスト、とまでは言えない展開でしたけど、仕掛けが早い持続力戦の分、その面に秀でた差し馬が最後は台頭してきた、という格好ですね。

 勝ち馬はここまで目立った戦績ではなく、これがGⅠ初制覇ですが、その割には強い勝ち方でした。
 瞬発力が生きる馬場での上がり特化、という競馬にフィットした面はありそうですけど、最速地点で外から一気に飲み込んできたように、特に要所の瞬発力は中々のものがあったと思います。こういう脚を内々で我慢して使えるようなら、本番でも展開次第で圏内食い込みくらいのチャンスはあるかもしれません。
 2着がラービア―で、この馬は仏オークスで僅差4着だった馬なので、そのレベルの馬がここまで簡単に負けてしまうのは、仏オークス組が中長距離路線としてはイマイチなのか、或いは勝ち馬が相当に強かったか?とはなるでしょう。
 個人的には時計的にも前者の可能性が高いイメージで、やはり今年の3歳勢は、ラブ以外はちょっと太刀打ちできないかもですね。多分ローテーション的にタウキールは出てこないでしょうし。



 古馬牡馬の前哨戦となるフォワ賞は、ふざけたレベルの超スローからの3F特化戦で、逃げ番手でレースを進めたアンソニーヴァンダイクとストラディバリウスの一騎打ちでした。
 ラップは96,53-23,47-11,47-10,68-11,12=2,33,27となっています。
 まあ前哨戦でスローが悪い、とは言いませんけど、この馬場で、パリ大賞典よりも1400m通過が10秒も遅いのは流石にやり過ぎ感満載ですね。
 それでいてフォルスもさほどペースアップせず、より純然たる3F戦、むしろ2F瞬発力特化戦と見てもいいかもしれません。

 レースの上がりが33,27ですし、前の2頭は実際にそのくらいのラップは踏んでいるのでしょうが、多分ヴェルメイユ賞の勝ち馬も後半ラップは33秒前半で来ていると思います。
 その意味では、超スローの割に切れ味の質を極限まで高めてこれ、となると、こういうレースでは2頭ともあまり強くはない、そしてそれ以上に他の馬も弱かった、とするしかありません。

 勿論2頭とも実績のある馬で、タフな流れでも力を発揮できる強みはあります。
 ただ少なくとも軽い馬場のスピード持続戦ですと、コロネーションCでガイヤースに鎧袖一触されています。
 その辺りの比較からも、特にアンソニーヴァンダイクはどう転んでも本番でガイヤースレベルの馬がごろごろいる中での勝ち負けは難しい、となるでしょう。重馬場も苦手ですからね。
 むしろストラディバリウスの方が、渋ってタフな馬場になれば浮上のワンチャンスはあるかも、と思えますが、こちらも軽い馬場では堅実に走れるとは言え、あのメンバーを相手に圏内まで、となると、それこそパリ大賞典の様なスローロンスパで最後にスタミナと持久力が求められるようなトリッキーな展開にならないと厳しいかな、と思います。

 ともあれ、一連の前哨戦が終わって、大体の勢力図は見えてきましたね。
 やはり衆目一致するように、エネイブルとラブの牝馬2強は相当に強いでしょう。
 それにガイヤースが参戦してくればより面白い感じで、それ以外は枠次第で混戦、例年通りなら少し力の劣る地元勢が一頭くらいは絡んでくるので、その辺りを警戒しつつ、になるのではないでしょうか。
 今のディアドラにはかなり厳しいレースになると思いますが、頑張って欲しいものです。


posted by clover at 17:12| Comment(2) | レース回顧・海外競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりですー!
秋競馬も本格化して、夏に競馬資金もある程度溜めたので、そろそろ復活する予定です(笑)

愛チャンピオンSは見所満載でしたね。マジカルの動き的には、ムーアJ騎乗のジャパンをアシストする意味合いもありそうでしたが、やはりジャパンとは役者が違うといった感じでした。
ガイヤースはあの展開であれだけ粘れれば十分ですよね。それにしても、去年ならあの形になれば早々と沈んでいただろう馬が、ここまで強くなるとは本当に驚きですね。
マジカルの次走は今出ているコメントだと、凱旋門賞orオペラ賞らしいです。

メイトロンSのシャンペルゼリーゼは普通に強かったですね。血統的には父も母もスピード血統なので、距離延長はそこがどうか、ですね。

ファンシーブルーはスタートから押しまくっていて、その時点でダメだと感じました。マイルだと脚を溜められる感じがしませんね。まぁ母父Sadler's Wellsでガリレオよりさらに一世代前ですから、スピードが足りなくなるのは当然といえば当然でしょうか。ただマジカルがオペラ賞に回るなら、新しく登録したサンチャリオットSにピースフル共々回される可能性があるんですよねー。ドナカ調教師もレース前からマイルは短いと断言していましたが、そこはクールモアの序列上仕方のない事ですが。

3歳はラブを別にすれば、マイル路線で躍進しそうですね。3歳馬というよりも、ギングマン産駒の天下と言った方がいいですかね(笑)

個人的には、凱旋門賞はラブ優勢と見ています。エネイヴルも相変わらず強いのですが、それでも全盛期より迫力、能力共に下降気味という印象は拭えない感じがします。
Posted by ハル at 2020年09月15日 01:20
>ハル様

 いつもコメントありがとうございますー。お帰りなさいませ。

 マジカルは確かに、チームプレーの上で最悪自分の屍を超えていけ……!くらいの一か八か感はあったかもですね。
 アーモリーが着差を詰められているのも、前がやり合った恩恵もあるかもですし、しかしその中でのジャパンのだらしなさときたら……。

 マジカルは本当に素晴らしいですが、ガイヤースもあれで崩れないのは間違いなく本物で、すごくワクワクする10F戦でした。
 こういう前々でのガチ勝負は、欧州では逆に珍しいとも思えますし、凱旋門賞もそういうレースになって欲しいですね。

 シャンペルゼリーゼの瞬発力は、只者ではない感じはしましたね。
 確かに今は、キングマン産駒がマイル路線を席巻していますけど、そこに3歳牝馬勢がどこまで割り込んでいけるかは注目です。
 ファンシーブルーはマイルの馬じゃないですねぇ。特にサンチャリオットSは例年時計が出やすい舞台ですし、なんとかフランスに持っていって欲しいところです。

 確かに仰る通り、かつての凄味までは感じられない、というのはありますね。
 年齢を考えればあまりにも贅沢な話ですけど。そもそも6歳牝馬が3歳牝馬と互角の土俵に立てる時点で信じられない話ですし。
 凱旋門賞は馬券的にもそこそこ面白いレースになりそうですし、とっても楽しみですね。まあ二頭軸で、変な馬3着に来ーい、でいいのかもですけど(笑)。
Posted by clover at 2020年09月15日 16:50
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