2020年09月07日

2020 9月第1週海外GⅠなど レース回顧

 今日はアメリカ競馬を中心に、先週末の海外GⅠを振り返っていきましょう。
 先々週と打って変わって名のあるレースも多く、名馬同士の激突も堪能出来て、海外ファンとしては垂涎の週末だったと言えるでしょう。
 その分まともに全てGⅠ格のレースを追いかけていくと紙幅がとめどなくなるので、ある程度は厳選してお送りします。格はGⅢでも、紹介は外せないレースもありましたしね。


★ケンタッキーダービー https://www.youtube.com/watch?v=S2j2AhlEUr8

 ティズザローの二冠達成なるか大注目の、四カ月遅れの開催となった今年のケンタッキーダービーは、大外枠から果敢な逃げを打ったオーセンティックが、ゴール前で一度は並びかけてきたティズザローを突き放す強い競馬で栄冠を手にしましたね。

 チャーチルダウンズの馬場は良で、ただ他のレースを見ても、本来のケンタッキーダービー施行時期よりも時計の出る馬場になっていたように思えます。やはりこれは季節の問題もあるのでしょう。
 ケンタッキーダービーとしては、15番枠から外が二つ目のゲートで、その隙間の分だけ外枠が余計に不利になりやすい、という曰く付きのレースでもありました。
 ただどうやら今年からは、遂に20頭立て用のゲートを確保したようで、18頭が出走したレースにおいて、勿論馬の実力があって、とはいえ、大外の2頭が1~2着したというのも、色々特例な開催を象徴する出来事だったな、と思います。

 人気はティズザローが圧倒的、それをオナーエーピーとオーセンティックが追いかけて、構図としては1強+2強くらいの位置づけでした。
 その3頭が揃って外枠に入って、より注目されたスタートは、ティズザローがいつも通り綺麗なスタートを切ったのに対し、オーセンティックとオナーエーピーは少し出負け気味でした。
 特にオナーエーピーはかなりバランスを崩して二の足も効かない感じでしたが、オーセンティックは逆に大外だったのもあり、しっかりリカバーして一気にハナまで進出する事が出来ましたね。
 ティズザローが好位外目の3~4番手から早めに前を捕まえに行く形で、結果的には3~4コーナーから完全に前の2頭の一騎打ち、という様相でした。

 ラップは22,92-23,49-23,82-24,79-25,59=2,00,61という、実にケンタッキーダービーらしい一貫減速消耗戦になっています。
 ただ、馬場自体はそこまでタフではなかったので、ハイペースでも極端なバランスではない、とは言えます。まあ58,3-62,3くらいですから厳しい流れですけど、ケンタッキーダービーとしてはこれくらいは日常茶飯事、というのも間違いないですからね。
 勝ち時計を過去の同レースと比較するのは、伸び盛りの3歳馬のレース、と思えばナンセンスですけれど、前日のオークスなどの比較からしても優秀な部類ではあると思います。
 ここは素直に上位2頭が抜けて強かった、と見ていいですし、その上で10Fのティズザローをオーセンティックが凌げるとは……というのが本音にはなりますね。

 結果的に外から強引にハナを奪って、かなりのハイペースに持ち込んだことで、アメリカなりに後半を活かす競馬で強さを見せつけてきたティズザローの末脚を削いだ、という格好になるのだと思います。
 ティズザローの方がいいスタートでしたけど、やや上品な競馬に終始した結果、道中外々のロスもありましたし、3~4コーナーで早めに動いて並びかけに行った分だけ、最後足が上がってしまったのかな、という感覚ですね。

 今年はかなり三冠濃厚だと見ていただけに残念な気分でもありますが、オーセンティックが強かったのも事実なので、いいレースが見られた、という高揚もあります。
 プリークネスSもまた2頭でいい競馬を見せてくれれば、と思いますし、この2頭ならBCクラシックでも、というイメージは持てますね。それにしても、前走のラストの止まり方から、オーセンティックは10Fは長そうに思えたのですけど、競り合う相手がいる方が力を発揮出来るタイプ、という事なのかもしれませんね。


★ケンタッキーオークス https://www.youtube.com/watch?v=b6obwV9UOv4

 こちらは戦前、ガミーンvsスイススカイダイバーの一騎打ちが期待されていました。
 レースでもガミーンが逃げて、スイススカイダイバーがピッタリと3番手を追走となったのですが、しかししかし、勝ったのはこの2頭のどちらでもなく、間の番手でレースを進めた伏兵のシーデアーズザデビルでしたね。

 馬場は良で、ラップは23,39-24,53-24,20-23,65-12,41=1,48,28という推移になっています。
 こちらはケンタッキーオークスとしては比較的緩い流れになっていて、全体のバランスとしてもややハイペースかな?くらいです。
 その分3~4コーナーでそこそこペースアップしていく、前の馬に有利な展開なのは間違いなかったのですが、それでガミーンが早々に脱落、スイススカイダイバーも差し込めない中で、力強くシーデアーズザデビルが突き抜けていくのですから、本当に競馬はやってみないとわからないものですね。

 ガミーンとしては距離を考えてスローに落とし過ぎた面もあるのかな、とは思います。
 ただエイコーンSなどでも、ある程度緩めてからの再加速で素晴らしさを見せていた馬ではあるので、一概にこの展開が噛み合わなかった、とは言い切れないでしょう。
 溢れる追走面の良さを武器にしきれなかったのは事実だと思いますが、それでもこのラストの甘さは、やっぱり距離的にマイルまでが限界の馬なのか?と感じさせてしまうものでしたね。

 スイススカイダイバーは逆に、スローの流れからの決め手勝負で、要所の反応の鋭さが足りなかった感じはあります。
 牡馬相手にも強い競馬をしていたように、やはりタフな競馬向き、という面はあったはずで、その意味ではガミーンは、この馬が上手く力を発揮しにくい展開に持ち込めていたとも言えるでしょう。
 そういう2強の駆け引きが綾を生んだと言うか、勝ち馬にとってはこの位の距離で、平均ペースで追走に苦労しない形がピッタリ噛み合ったのかな、という感覚ですね。

 元々初夏のファンタジーSでは、スイススカイダイバーに10馬身以上差をつけられて完敗している馬でもあります。
 そこからやや全体レベルは落ちると目されるインディアナオークスを制して、直行でここだったので、その間の成長力がイマイチ見極めにくかったのもありそうです。
 ただレースそのものは正攻法の強い競馬でしたし、人気2頭が完全に力を発揮しきれなかったかも?とはいえ、時計も優秀ですからね。また1頭この世代に面白い馬が出てきたと言えそうです。
 でもこのレベルで、今の古馬牝馬相手にディスタフでどうかな?というのは微妙な気はしますね。最大限にポテンシャルを発揮出来れば或いは、とも思いますが、そもそもガミーンはこれでフィリーメアスプリントに行きそうですし、ちょっと名牝同士の対決ムードはトーンダウンしてしまったのかな、というイメージですね。



 ケンタッキーオークスと同日の古馬牝馬GⅠ、8,5F戦のラトロワンヌSは、離れた3番手を進んだ人気のモノモイガールが、直線できっちりと前を捕まえて、復帰後初のGⅠ制覇となりましたね。
 ここは相手関係は軽かった、とはいえ、元々全盛期でも大きく離して勝つ馬ではなく、いかにもこの馬らしい好位からの横綱相撲で、いよいよ完全復活、という趣です。

 ラップ的にはハイペース展開からラストは落としつつ1,42,14という勝ち時計なので、オークスとの比較でも五分くらいかな、というイメージです。
 ただ本当にどんな展開でも崩れずきっちり走ってきますし、最大マックスのポテンシャルはともかく、すごく高いレベルで安定している馬です。戦績もこれで14戦12勝2着2回、かつ一度は降着なので、未だに準パーフェクトな戦績を残していますし、いよいよのミッドナイトビズーとの再戦、そして同日のオークス勢を筆頭とした他世代との対決も実に楽しみですね。



 こちらはサラトガ10Fの古馬GⅠで、BCクラシックに向けてのステップレースのひとつでもあります。
 5頭立てでメンバー構成もやや小粒、という中、レースは逃げたグローバルキャンペーンが、早めに追い上げてきた人気のタシトゥスを二枚腰で振り切っての勝利となりました。

 ここはラップ的に、48,89-23,01-49,50=2,01,40と、前半スローから中盤で一気にペースアップするスローロンスパになっていて、最後はかなり消耗する面白い形になっていますね。
 タシトゥスはやや追走スピードが足りず、こういう後半のロングスパート・ポテンシャル戦に強いイメージだったので、それをしっかり振り払った勝ち馬は中々見所のある内容ではあったかな、と感じます。
 ただ勿論、前半望外のスローに持ち込めた恩恵は大きいので、メンバーが揃ってペースが上がる本番でこれを再現するのは難しいでしょう。流石にその点からしても、時計的な観点からも、印象としては明らかにティズザローの方が強い感覚はありますけどね。


★ムーランドロンシャン賞 https://www.youtube.com/watch?v=-MM8BMxzGmQ

 パリロンシャンで開催された伝統のマイルGⅠ・ムーランドロンシャン賞は、僅か6頭立てではあったものの、メンバーが超豪華でしたね。
 まず3歳勢が、改めてマイルでも強さを見せたい2歳王者ピナトゥボに、仏2000ギニー覇者のヴィクタールドラム、そして愛2000ギニーの覇者で、前走サセックスSで初の敗戦を喫した屈辱を晴らしたいシスキンと、トップクラスのマイラーがズラリと揃いました。
 古馬勢も、去年の仏2000ギニーの覇者で、今年もイスパーン賞を勝ち、ジャックルマロワ賞は馬場に泣いたもののここで復権を期すペルシアンキングに、去年のこのレースの1・2着馬であるサーカスマキシマスとローマナイズドですからね。
 勝ち馬の全てが二つ以上のGⅠタイトルを保持しており、贅沢を言えばここにパレスビアとアルパインスター、故障で電撃引退してしまったモハーザーがいれば、文句なしの今年度欧州マイル王決定戦、と呼べたのですけど、これでも充分に素晴らしいメンバーだったと思います。

 ただメンバーの豪華さに対して、レース自体はやや淡泊な内容になっています。
 良馬場でそこそこ時計が出る条件でしたが、サーカスマキシマスが逃げて超スローペースを刻み、結果としてヨーイドンの瞬発力&持続力特化戦になりました。
 ラップが39,37-23,44-11,76-10,71-11,45=1,36,73という推移になっています。
 前半超スローから5Fロンスパ気味ではありますが、それでもフォルスでさほど上がり切らず、結果的に直線を向いての二段階加速の幅がかなり大きくなりました。
 最速10,71はやはりかなりえげつないラップで、この一瞬の切れに対応できる馬と、そこからの持続性能に秀でた馬でないと苦しいレースではありますね。

 それこそ昨日の新潟記念のウインガナドルではないですが、サーカスマキシマスで今更こんな溜め逃げしてどうするねん、というツッコミはしたいレースです。
 レースの上がりが33,92で、しかも推移的には下手すると2F戦、と呼んでもいい中で、勝ち馬ペルシアンキングは極上の切れを、2着ピナトゥボは後半勝負に徹しての持続性能を見せてきた形ではあるのかな、と思います。

 それにしても、ペルシアンキングはやっぱり良馬場なら違いましたし、後半特化でここまで鋭く動けるのもビックリしました。
 父のキングマンも、超スローのサセックスSでえげつない決め手を見せて勝利した事がありましたが、こういう血統的な特色も引き継ぎつつ、良馬場のマイル近辺ならペース不問で強い、というのは素晴らしいですね。
 久々にフランスの馬で名マイラーと呼べる馬ではないか、と思いますし、この後イギリス遠征するのか、もしくはBCに行くのかわかりませんが、とても楽しみではありますね。

 2着のピナトゥボもよく追い込んできましたけど、どうしてもマイルでは何かが足りない、というレースにはなってしまいますね。
 ただタイプ的に、ペース如何に関わらず前半は位置取りを我慢して、後半弾けさせる競馬が向いているのは間違いなく、距離も1400mがベストなのは間違いないので、フォレ賞あたりなら楽に勝ちそうです。マイルに拘っていくと、よりタフな馬場では難しさが出てきそうですし、小回り向きとも思えないですからねぇ。
 3着以下は完全に切れ味の質で足りずに離されてしまったので、特殊なレースの中でノーカウント、と見做してもいいかもしれません。しかしこれだけのメンバーが揃って、お世辞にも底力勝負、とは呼べない内容になったのはちょっと残念ですね。


★スプリントカップ https://www.youtube.com/watch?v=8cJkXUxMYU0

 ここはダイヤモンドジュビリーSで2年続けて僅差の2着など、あと少しでGⅠタイトルに手が届かなかったドリームオブドリームズが、好位から力強く抜け出して待望のGⅠ制覇に漕ぎ着けましたね。
 ヘイドックの重馬場で、相手関係も現時点での6Fスプリント路線の主力がそれなりに出揃っていましたが、馬場適性も味方に強いレースだったと思います。
 時計は1,14,07と相当に掛かっているので、改めて良馬場でどうか?とはなりますけど、今年からセン馬になって戦績や走りっぷりが俄然安定してきていますし、まだまだ息長くこの路線で活躍してくれそうな馬ですね。



 エネイブルの凱旋門賞前の公開調教、とも言うべきセプテンバーSも見ておきましょう。
 まあ当然ながら相手関係は非常に弱く、一昨年にこのレースを勝った時はクリスタルオーシャン相手でしたから、それと比較しても断然楽なレースだ競ったのは間違いありません。
 ただこの日は珍しくスタートで失敗して出負け、そこから二の足で即座にリカバーしてハナを切り、そのまま軽く追うだけで突き放す、という内容で、この相手ならともかく、本番でああいうゲートになると命取りかも、とは思わせました。

 去年にしても、凱旋門賞はタフ馬場で前を追いかけ過ぎたきらいはあり、前哨戦で逃げてしまったのがマイナスにならないか?という懸念も当然出てきます。
 今年はガイヤースが出てくるならこの馬が確実に逃げますし、ラブも先行脚質なので、この馬としてはそこに並んでいくのか、それとも敢えて後ろから末脚を引き出す形で勝負するのか、立ち回りの難しさがありそうです。
 ただ能力落ちがない事は間違いなく、出来れば良馬場でガイヤースも出てきて、完全無欠の欧州12F最強馬決定戦が見てみたいですね。ディアドラのおかげで馬券も買えてしまいますし、今から本当に心底楽しみです。



posted by clover at 17:25| Comment(0) | レース回顧・海外競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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