2020年07月31日

2020 7月第4~5週海外GⅠ レース回顧

 今週はナッソーSが終わってから書こう、という事でここまで待っていたのですが、ディアドラは非常に残念だった一方、ディープインパクト産駒のファンシーブルーが快勝と、日本の競馬ファンにとっては嬉しいようなもどかしいような結果でしたね。
 細かい部分は本編に譲るとしても、やはり没後1年が過ぎて、それでもまだまだディープインパクトの偉大さ、存在感は競馬の歴史に燦然と輝いているのだなと改めて感じる一幕でした。


★キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS https://www.youtube.com/watch?v=kYM6IWPh0Zw

 今年はなんと僅か3頭立てになってしまったキングジョージですが、その物足りなさをあっさりと払拭するようなエネイブルの快走で、見事に史上空前のキングジョージ3勝目を達成しましたね。

 馬場は良だったのですが、直前で結構強い雨が降っていて、滑るような馬場になっていた、という報道もあります。
 レースは去年の愛ダービー馬のソヴリンが逃げて、それを少し離れて真ん中にエネイブル、それをマークしてのジャパン、という隊列になっています。
 ラップタイムは非公式のもので、実は他の映像でみるものと微妙に違ったりもするので参考程度、と考えた方が良さそうですが、ただ基本的にはハイペース展開になっているのは間違いありません。

 ソヴリンがスウィンリーボトムまでしっかり飛ばしていって、前半1000m通過が61,5くらい、中盤が25秒ちょっとなので、公式の勝ち時計から逆算すると、後半5Fは62,5くらい、ラストは12秒後半を続ける消耗戦になっている感じです。
 もっとも残り800mくらいまでは前と結構離れていたので、エネイブルの位置では平均くらいの走破かもしれませんが、その分仕掛けが早く、ラストはこの馬でも消耗、でも後続はもっとバテてしまっているイメージですね。

 他のレースを見ても、良発表にしては時計は結構掛かっているので、2,28,94の勝ち時計は妥当なラインでしょう。
 エネイブルは明らかに前走よりもフットワークが軽い感じではありましたし、直線前を捕まえに行く時の脚色がいかにもこの馬らしい迫力で、予定通りに叩き2戦目で調子を上げてきたのは間違いないと思います。
 正直ソヴリンがどのレベルの馬か、の物差しがあまりないのと、ジャパンが諦めて負け過ぎになったので、レベルを推し量るのが難しい一戦ではありますが、まあ少なくともエネイブルらしい走りは見られましたし、大きな衰えがないのは確かでしょう。

 後で触れるように、今年の3歳牝馬勢は結構全体レベルも高そうなので、凱旋門賞ではラヴを筆頭にここが一番のライバルになると思います。
 この馬自身はある程度使ってよくなるタイプでもあり、間隔を空けたくないので今年もヨーク開催に参戦するかも、という話で、そうなると本番の前に、ヨークシャーオークスでラヴとの直接対決があるかもしれず、どうあれ若い力との鬩ぎ合いは本当に楽しみですね。

 ソヴリンも良く走ったとは思いますが、タイプ的にこれが限界でもあり、脚質的にガイヤースとも被るので、最上位レベルで勝ち負けするのは中々難儀でしょうね。
 ジャパンはむしろこのペースならもう少し頑張らないと、と思うのですが、短い間隔と、滑る馬場が合わなかったのかもしれません。ただ前走でもエネイブルには敗れていて、ちょっと凱旋門賞路線で勝ち負け、というレベルには感じられなくなってしまいましたね。


★タタソールズゴールドカップ https://www.youtube.com/watch?v=0hvD7W4ECR8

 このレースも、キングジョージを回避して身より実を取りに来たマジカルが、逃げてそのまま楽に押し切り同レース連覇、GⅠタイトルとしては6勝目を獲得しましたね。
 まあ流石に地元アイルランドの競馬で、相手関係も弱いと言うか殆ど同じ厩舎の馬ですし、その中で楽に逃げて押し切りなので内容としては前走に引き続き、特に上積みが感じられるほどではないかと思います。

 確かにこの馬は10Fがベストで、12Fはちょっと長いのはあるので、この路線に専念するのかな?という感じにはなりますし、そうなるとエネイブルとの最後の激突はないかも、なんですよね。
 まあ愛チャンピオンからでいいので、今年も凱旋門賞に参戦してくれれば盛り上がるのですけど、そのあたりは厩舎戦略や鞍上問題もあるでしょうからね。

 2着のサードラコネットも斤量を背負う中でしぶとく外から伸びていますが、今後を考えると3着のサーチフォーアソングの方が楽しみかなと思います。
 この馬は去年の愛セントレジャーでキューガーデンズを寄せつけていないように、長距離の適性も高いので、ストラディバリウスが凱旋門賞路線に回るなら、その間隙を突く形でそちらでの活躍はあるかなと見ています。
 アーモリーは少し距離が長そうでしたね。全体的に堅実ですけど明確な強みのないタイプではありますねー。



 ここは欧州長距離の絶対王者・ストラディバリウスに、新進気鋭の愛ダービー馬・サンティアゴが挑む、という構図でしたが、勝ったのはやはり絶対王者でしたね。
 レースはネイエフロードが逃げて、サンティアゴが番手、ストラディバリウスはそれをマークする位置におり、ペースはスロー気味で流れて直線勝負になります。
 映像を見てもわかる通り、サンティアゴのムーアJが巧みにネイエフロードなど他の馬を使いながらストラディバリウスの進路を合法的に塞いでいて、中々前が開かずどうなるか?というところ、残り200mでやや強引に外に持ち出してストラディバリウスが進路を作り、そこからは持ち前の持久力を存分に生かして、文字通り捻じ伏せる感じでのこの馬らしい勝利でした。

 サンティアゴは最後逃げるネイエフロードにも突き放されているように、ちょっと距離適性と現時点での能力が足りなかったかな、という負け方で、やはりこの路線、中々牙城を崩す馬は出てきませんね。
 ただストラディバリウスは、この秋フォア賞から凱旋門賞路線を計画しているようなので、王者がいない舞台でどういう馬が台頭してくるかは楽しみです。



 今年のグッドウッド開催でもっとも豪華なメンバーが揃った、と言われた今年のサセックスSは、クラシック勝者の2頭の3歳馬が人気を集めていましたけど、勝ったのはこれがGⅠ初勝利のムハーザー、2着もサーカスマキシマスと、古馬が意地を見せる形になりましたね。

 一番スタートが良かったのが内のカメコで、ただその外からサーカスマキシマスがじわっと出していって先頭、ウィチタが番手外と、オブライエン勢の2騎がレースを作っていく形になります。
 カメコはその中でポケットに入り、その横にムハーザー、後ろにシスキンという隊列でした。

 直線を向いてもサーカスマキシマスとウィチタはある程度並走していき、カメコは延々と内に閉じ込められてどうにも進路が作れない状況に陥り、当然その後ろにいたシスキンとムハーザーも中々進路がなく、外に活路を求めていく形になります。
 先に外に出したのがシスキンで、そこから一気に伸びてくるかと思いきや最後ジリジリ、逆にもうワンテンポ遅らせて大外まで持っていったムハーザーが素晴らしい伸びを見せ、インで粘り込むサーカスマキシマスを一気に捕まえる形になりました。
 結局カメコはゴール前に至るまでまともに真っ直ぐ進路を確保出来ずに4着と、まともならどこまで?というイメージだけは残しつつの不完全燃焼のレースでしたね。

 ムハーザーはここまでGⅠ戦線ではイマイチでしたが、去年のグリーナムSを圧勝したころから素材は評価されていた馬で、今年も休み明けのクイーンアンSはダメでしたが、前走のサマーマイル、そしてここと素晴らしい末脚を披露していて、いよいよ本格化を感じさせます。
 カメコはまともならわからなかったにせよ、シスキンを楽に差してきたのは中々のインパクトですし、まだキャリアも浅い馬なのでここからの活躍にはかなり期待出来そうですね。

 サーカスマキシマスもマイルでは実に堅実でしぶといですし、ある意味でこの路線の物差し馬だなあと思います。
 シスキンはこの馬も差せなかったので、正直少し期待外れかな、という感じで、この初黒星を糧にもうワンランクパワーアップして欲しいですね。カメコは次こそまともなレースで、と思いますし、スタートセンスなど見てもやはりマイルがベターっぽいのは確かですが、10Fまでならそこそこやれるかもですね。



 最初にも書いた通り、今年のナッソーSはディープインパクト産駒のファンシーブルーが番手から抜け出して、伏兵ワンボイスの追撃を辛くも凌ぎ切り、父の命日に手向けるGⅠ連勝を達成しました。

 レースはデットーリJが騎乗したマジックワンドが逃げて、番手にファンシーブルー、その内にワンボイスで、外からじわっとディアドラも進出、ナジーフがその後ろくらいの位置取りでしたね。
 直線は早めにファンシーブルーが抜け出し、ディアドラもそれを追撃しますが早々に失速、内でスペースが開くのを待っていたワンボイスが一気に伸びてきて先頭に肉薄するものの、並びかけられてからもうひと踏ん張り、という勝負強さを見せてのファンシーブルーの勝利でした。
 ナジーフも残り200mから馬群の中に突っ込んで最後はしぶとく伸びてきて3着、マジックワンドは逃げが良くなかったのかこの馬らしい粘りが見られず5着、ディアドラは最下位7着と、やや世代交代の空気を感じさせるレース内容でしたね。
 というか、6歳牝馬でまだあれだけ強いエネイブルがつくづく規格外すぎる、というのはあるでしょうが。。。

 ともあれファンシーブルーは、スタートもポジショニングも良く、そこからの機動性も高くて、特に派手さはないのですけど、最後までしっかり自分の脚を使ってくる堅実さ・しぶとさはここでも感じさせましたね。
 仏オークスも大接戦を制していますし、並ぶと強い、シンハライト的なタイプなのかもしれません。
 更なる距離延長がプラスかはなんともですが、少なくとも折り合いに不安なく、コース問わずに強い競馬が出来ていて、ここまで5戦、全て違う騎手が乗っても全連対ですから、そういう意味でも優等生だなと感じます。

 相手関係的にも、マジックワンドとディアドラがあまりにも走らなかった面はあるので難しいですが、3歳牝馬のワンツーではあり、ナジーフも10Fは初とはいえ、前走ファルマスSまで6連勝してきたほどの馬ですから、それらを歯牙にもかけなかったのはやはり大したものです。
 ワンボイスは前走アイルランド9Fの世代限定GⅡ戦で5着に負けているくらいで、これまで大レースの出走もほぼない馬なので、この舞台がとびきりマッチした、というしかないでしょうね。実際インで楽な競馬は出来ていますし、距離伸びての良さは今後も期待出来そうです。

 ナジーフもやや進路取りなど勿体ない面はありましたが、最後までしぶとく伸びてきたあたりから距離の不安は少ないですね。
 序盤距離を意識して後ろから入り過ぎたのもマイナスだったと思いますし、牝馬戦線ならマイルから10Fまで高いレベルでやれると思います。

 マジックワンドも流石に鉄の女ぶりにほころびが出てきたのか、それともフランキーとの手が合わなかったか、らしくない競馬ではありましたね。
 ディアドラは前走でも指摘しましたけど、前半から急かす競馬がマッチしていない、馬自身が前向きさを失っているかも、という部分も含めて、一度元々のスタイルである後方一気に戻してみた方がいいとは思います。





posted by clover at 18:24| Comment(6) | レース回顧・海外競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
回顧お疲れ様です!

今週も色々と海外競馬が盛り沢山で何を話していいか迷いますが…笑 前もFancy Blueについてコメントした記憶があるので、Fancy Blueを盛大に褒めたいです。

今回は前回と違ってNazeefやMagic Wand、そして日本のディアドラ等の古豪が相手なので流石に厳しいか…と思いましたが、前が潰れる展開の中1頭粘り後ろからのOne Voiceを凌ぎ切りましたたからね… 着差以上の強さだったと思います。One Voiceも前走のGII
Posted by Kid at 2020年07月31日 19:09
すいません、途中でコメント送信してしまいました。続きから。

前走のGIIギルボイエステイトSは結果こそ五着でしたが、これは内でドン詰まりしてのもの。
しかもゴール直前まで本当に進路が開かない中、ラスト30mで開いた時の伸び脚は凄まじく、普通に進路を取れていれば楽に勝ててたと思う脚でしたからね。

Fancy Blueはドナカが1600~2400までいけ
Posted by Kid at 2020年07月31日 19:18
本当に申し訳ないです、また途中送信…
途中から。

Fancy Blueはドナカの1600~2400まで行ける発言や、R.ムーアの「世界レベルの馬になっていく」のコメントを見ても更に期待を持てる馬になった事は間違いないでしょうし、今後が実に楽しみです。
Posted by Kid at 2020年07月31日 19:24
>kid様

 いつもコメントありがとうございますー。

 ファンシーブルーは正攻法で強い競馬でしたよねぇ。
 ここはタウキールが回避したとはいえかなりの豪華メンバーで、仏オークス自体はそこまでレースレベルは?と思っていたので半信半疑でしたけど、正攻法で踏ん張り切るあたり、少し素材を見誤っていたようです。

 キルボーイエステートSはちゃんと映像見ていなかったので、改めて検索して見てみましたけど、確かにカメコばりのインどん詰まりでしたね。
 その前はレパーズタウンで快勝していますし、こちらもやや頓挫のあった素質馬がようやく開花、という見立てで良さそうです。
  
 ファンシーブルーの今後の選択肢は広がりましたし、本当に楽しみですね。
 エリ女参戦プランは眉唾ですけど、今年に限って言えば欧州競馬はほとんどが賞金減額での開催なので、そこが維持されている日本競馬は、輸送面でのアレコレが解消されれば魅力的なのでしょう。
 ただ秋になっても、現状を見る限りホイホイと外国からの入国緩和が為されているとは思いにくいですけどね……。
Posted by clover at 2020年08月01日 03:58
cloverさんおはようございます♪
 
ディアドラには悪いですけど
ファンシーブルーの勝利には歓喜しました
ディープの命日にまさに衝撃ですよ〜
コントレイルを含む数少ない産駒から
私達に最後の衝撃波をくれるかを
期待してます!!
Posted by カズ at 2020年08月01日 08:29
>カズ様

 いつもコメントありがとうございますー。

 ファンシーブルーは見た目こそそんなに父親っぽくないですし、脚質も優等生、という感じですけど、純粋な性格の良さと能力の高さははっきり伝わってきますよね。
 これで陣営のコメント通り、2400mもこなせるようなら夢が広がりますし、日本でも海外でも死後に最高傑作が出てくるというのは本当に素晴らしい話です。
 残りの産駒は数少ないですけど、これ以上に、という期待も持てますし、ファイナルインパクトまで楽しみに追いかけていきましょう。
Posted by clover at 2020年08月01日 15:17
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