2020年07月06日

2020 7月第1週海外GⅠ レース回顧

 では予告通りに、週末の海外GⅠ回顧を進めていきましょう。
 今年のエクリプスSは、時間帯もメンバーも良かったとはいえ、あの少頭数で15億もの売り上げがあったようで、やはり強い馬が出で来るレースは世界共通で注目度が上がる、と言えます。
 この週は、おそらく今年も順調なら馬券発売があるであろう凱旋門賞に向けて、参考になるレースが非常に多かったですし、その点からもしっかり今の内に丁寧に回顧し、唾をつけておきたいものですね。



 映像については一応リンク張っておきますが、普通にJRA公式で見られるグリーンチャンネル実況付きの方が我々日本人にはわかりやすいとは思います。

 ともあれ、絶対女王の2年続けての復帰戦となったエクリプスSですが、今年は改めて最強伝説の発進、とはいかず、ここに向けて万全のローテーションとコンディションで迎え撃ったガイヤースが、馬場も味方にスイスイと逃げ切ってみせました。
 スタートはかなりエネイブルもスッと出たように見えたのですけれど、レース展開は外枠勢の方が出足が良く、ガイヤースが予想通り少し立ち遅れたところから二の足でリカバーしてハナ、それをジャパンと、そして我らがディアドラが積極果敢に追いかけていって、エネイブルは外の馬を行かせて丁度中団の4番手からのレースになります。

 道中はその隊列のまま淡々と流れ、直線を向いて半ばからエネイブルもスパート開始、一旦はジャパンと一緒にガイヤースの直後まで迫り寄ったのですが、そこからガイヤースが素晴らしい二枚腰を発揮、ジリジリと再度2頭を突き放してのGⅠ連勝にとなりました。
 イギリス競馬なので正確なラップはわからないのですけど、勝ち時計2,04,48で、公式ページだと約1秒ちょっとのハイバランス、という記載があります。
 実際に主導でラスト3Fだけでも測ってみると、勿論不正確ではありますけれど、大体12,3-12,8-13,6=38,3くらいかかっている感じで、総合的に見て前半からそこそこ流れ、後半の仕掛けも早くラストはかなり消耗しているレース、というのは見て取れます。

 正直、こういうハイバランスの逃げでガイヤースは甘くなるのでは?と思ったのですけど、距離短縮でそれがフォローされた事、かつ後続もこの消耗戦で削がれて思いのほか伸び切れなかった、というのはありそうです。
 かなり綺麗な良馬場で、今年は古馬の斤量も軽めに設定されていたと考えると、少なくとも去年のエネイブル&マジカルのパフォーマンスより上か?となると微妙なラインかな、と思いますし、ガイヤースにとっては10Fの方が走りやすい部分はあるかも、なので、この勝利で古馬の大将格に躍り出た、と見做すのは早計か、とは感じます。
 ただ勿論、良馬場ならばどんなペースでもしぶとい、という所を見せられたのは収穫ですし、おそらくあと1戦経由して凱旋門賞リベンジが本線になるでしょうけど、馬場が噛み合うようなら楽しみですね。

 2着のエネイブルは、戦前噂されていたように、走っている映像を横から見ている感じでも、確かにまだいい頃よりは太いな、と感じさせる立派な馬体ではありましたね。
 その分スタートからの俊敏性や、直線の持続性で少し物足りなさを見せてしまいましたし、この並びであの位置というのも、外からの2頭が頑張ってのはあれらしくはない感じですが、それでもこれを使って変ってくる感覚は持てるレース内容でした。
 しっかりジャパンを競り落とした辺りは流石でしたし、改めて2400mのキングジョージでどういうレースが出来るのか、史上空前の3勝目を凱旋門賞より先に達成できるのか、明確な力の衰えはないと思うので楽しみに見守りたいと思います。
 今のところ最大のライバルはマジカルになりそうですけど、或いは強い3歳馬の参戦もあるかもですしね。

 3着のジャパンは、結果的にかなり流れてくれて、この馬としては得意なハイペースになった事と、前半のポジショニングでかなり攻めて入れた分だけ、そのポジション差で粘り込めたのかな、と思います。
 並び的にエネイブルの後ろかな、と踏んでいたので、その想定通りなら着差はもっと開き、3着争いも危うかったでしょうが、その辺は流石ムーアJだな、という印象でした。
 ただ逆に言えば、得意の展開でガイヤースと、まだまだ万全には遠いエネイブルに完敗したわけで、この馬も2400mの方がいいとはいえ、流石に彼我の力関係の中で、逆転の絵図を描くのは簡単ではなくなってきた感じですね。

 4着マジックワンドは逆に位置取りが後ろになり過ぎたかな、とは思いますし、この馬らしい足は使えていますけど、流石に超一線級相手に正攻法の差す形では苦しかったですね。

 5着ディアドラは、いいスタートを決めていい位置を取ったのですけど、この馬の場合実のところあまり前半でペースに関わらず、前に行かない方がいい気はするのですよね。
 結局エンジンの掛かりが悪い馬なので、こういうコーナー出口から自然にみんなが加速して、という形で前受していると、そこの反応で明らかに置いていかれてしまいますし、それをフォローする意味では、やや後ろからじわっと早めにエンジンをかけていく方が噛み合うのだろうと思います。

 ラスト1Fはジリジリ盛り返しているように、内容としてこの相手に悲観するものではないですけれど、本番は出来れば中団のインくらいでじっと我慢しつつ、上手くオープンストレッチを利用してのレースをしないと、善戦するのは難しいかな、というイメージではありますね。
 前哨戦は個人的にはヨークシャーオークスがいいと思います。ローテーションが一番バランスがいいですし、距離も2400mが試せて、ディアドラが得意の左回りでほぼ平坦のヨークですからね。もっとも去年同様エネイブルや、強い3歳牝馬勢も出てきてしまう可能性はあるので、そこで勝ち負けも中々容易くはないと思いますが、不屈の精神で頑張って欲しいものです。



 一カ月遅れの開催となった今年の英ダービーは、凄まじい大波乱の決着になりましたね。
 一週間前に未勝利を勝ったばかりの、連闘で臨んだガリレオ産駒のサーペンタインが、オブライエン勢のラビットとしてスイスイ飛ばして逃げるものの、直線に入ってもまったくその脚色は衰えず、後続の人気勢に影も踏ませない逃亡劇で戴冠してみせました。
 今年の場合はローテーションも特異になりがちとはいえ、やはりこのエプソムの12Fの特異性、適性はやってみないとわからない、という怖さが存分に出たレースです。
 こういうのを見ると、わざわざ持久力型の種牡馬を好んでつけているのだし、岡田総帥は口だけでなく、ある程度実績としては物足りない馬でも、適性があると思ったら英ダービーに遠征・挑戦させてみたらいいのに、なんて思ったりもしますね。

 余談はともかく、馬場は良で勝ち時計は2,34,43、ペースバランスは公式を信じるなら平均ペースらしいので、勝ち馬は本当にペースメーカーの役目を忠実に果たしたら、それが自身の適性にドンピシャ嵌ってしまった、という感じになるのでしょう。
 逆に人気勢は、道中7~8馬身は後ろからの追走なのでまあスローバランスですけど、そこから決め脚を引き出せなかったように、距離適性やコース適性、そもそもの能力面で足りないものがあったのでしょう。

 カメコあたりはやはり2000mまでかな、という止まり方でしたし、イングリッシュキングも今年は異端のロイヤルアスコットからのローテーションで、適性面でどうかも読みにくい中、デットーリJ乗り替わりもあり、人気し過ぎていたのかなとは思います。
 一方そのイングリッシュキングを降ろされたマーカンドJが、超人気薄で2番手からそのまま2着に粘り込んで大波乱の片棒を担いだというのも、意地を感じさせて面白い要素でしたが、レースレベルとしてはやはりさほどではない、という評価に落ち着くと思います。



 というのも、今年は同日開催となった英オークスの方で、圧倒的なパフォーマンスで牝馬二冠を達成したラブの走りを見てしまえば、という話になります。
 こちらもペースメーカー2頭が後続を引き離してかなり飛ばしていく展開、ラップバランスは平均くらいですからダービーと同様と見ていいのですけど、それを中団から物凄い差し脚を繰り出し、一気に突き抜けてきたラブの強さは圧巻の一言でした。
 時計的にも2,34,06とダービーを凌駕、しかも最後は流し気味でしたし、同斤量での内容なので、もしも一緒のレースで走ればこちらのほうが1~1,5kgは軽くなるわけで、流石にちょっとこの2レースの中ではこの馬だけ物が違うな、という感じになるのは仕方ないでしょう。
 オークスとしてもエネイブルのレースレコードを更新しての勝利ですし、間違いなくエネイブルの最大のライバルになり得る逸材だと言えます。

 そしてこれは懺悔ですけど、私この馬が1000ギニー圧勝した時に、追走力が圧巻過ぎるので明らかにスピード特化型で、オークスは血統的にはともかく、適性的には厳しいのでは?と断定していて、全くもって見る目がなかったと焼き土下座する次第です。。。
 結局この馬、2歳時と3歳時では別馬のように成長している、と見るのが正しいようで、勿論ギニーで魅せたスピードの持続力も凄いのですが、それをしっかりコントロールしつつ後半型の爆発力にも転化できる、というのが更に凄いですね。

 敢えて言えばこのレースもかなり流れてはいて、あくまで相対的な切れ味なので、明確にスローのヨーイドン、凱旋門賞の場合高速馬場になると時に10秒台のラップを問われたりもするので、そうなった時には適性的に微妙かもしれません。
 でもガイヤースがレースを作る、と思えば相当にタイトな流れが想定できますし、その中ではやはりこの馬の追走で殺がれない爆発力は最右翼候補に入ってくるのではないか、と感じますね。
 おそらく凱旋門賞の前にもあと1~2戦するでしょうから、そこでのパフォーマンスも注視しつつ、しっかり適性を吟味していきたい馬です。



 フランスでは例年、どうもオークスの方が地位が高く、レース間隔も含めて優遇されていたりするのですが、今年はスケジュール変更でこちらも同日開催となっています。
 シャンティイの2100m戦である事は変らず、馬場は稍重表記ですけど、時計の出方からするとほぼ良に近い、かなりの高速馬場で、このあたりからもフランスとイギリスの競馬の質の差は見て取れますね。勿論日本競馬との差とは比べるべくもないにせよ、やはり日本馬に取って親和性がまだ高いのはフランス、というのは揺るぎない事実にはなるのでしょう。

 ともあれ、このレースで勝利したのは、メイクビリーヴ産駒のミシュリフでした。
 メイクビリーヴは、今年から日本で新種牡馬として登場、この前函館ダート1000mでレコード勝ちした馬も出したマクフィの産駒であり、またこの馬自身は2走前に、なんとあのサウジダービーでフルフラットの2着しているという、面白いところで日本競馬との接点が多々ある馬です。
 その後イギリスのリステッドを勝ってここに臨んでいましたが、道中は中団のイン、直線やや進路取りに手間取るも、前が開くと矢のような伸びを見せて、仏1000ギニーの1~2着馬を一瞬で置き去りにしての圧巻の勝利でしたね。

 ラップは1100m通過が64,73で、そこから24,17-11,68-11,75-11,66=2,04,01と、後半もそこまで切れ味が問われない、ハイペース寄りの追走力&持久力戦に近い推移かなと思います。
 日本式に補正すれば前半はかなり飛ばしていますし、それでいて後半もさほど緩まず淡々と、という形であり、馬場が軽い分も含めてややスピード色優勢のレースになっているかなと感じています。

 その中で勝ち馬は、道中内目で脚を溜められたのは良かったでしょうけど、それでもこの流れの中でラスト多少とは言え更に加速するラップでフィニッシュしてきた、というのは、高いレベルでのスピード持続力がある、と感じます。
 或いはサウジダービーも超々ハイペースでしたし、ああいう経験がこの馬の追走面を鍛えたのかも?なんて考えたりも出来ますし、どうあれ流れても削がれず、きっちり前が空いたところでスッと動ける俊敏性は中々のものがあるなと思いますね。
 こちらも後半特化でどうか、という課題は残りますが、ある程度全体で流れる想定であれば、凱旋門賞のレベルでも侮れない一頭になってくるかもしれません。

 2着のザサミットに関しては、ギニーよりも距離を伸ばしてポジショニングで優位を作れたのが良かったですし、こちらも追走面を活かしつつしぶとい競馬が出来たなと思います。
 対照的に3着のヴィクタールドラムは、やや後ろから外々の苦しい競馬であり、ロスの大きい中で勝ちに行った分最後甘くなった感じで、こちらは距離もややぎりぎりだったかなと感じましたね。今のところはマイル路線の方が良さそうなイメージでした。



 例年ならば着飾った紳士淑女で溢れる、華やかなりし仏オークスですけど、今年は無観客開催でその魅力は欠いてしまい、けれどもしっかりと実力ある牝馬の熱戦がその穴を埋めてくれたのかな、と思います。
 コロネーションSを勝ったアルパインスターが逃げ、それを愛1000ギニー1~2着のピースフル、ファンシーブルーに、2戦無敗の地元期待のラービアと人気勢が追いかける展開になり、スローからの決め手勝負で、勝ったのはディープインパクト産駒のファンシーブルーでした。

 直線は4頭が横に並んでの激しい叩き合い、名手の腕比べの様相で、本当にレースとしては非常に盛り上がるものでしたし、その中でまた日本紫の血統の馬が本場のオークスを制したというのも感慨深いものがあります。
 無論それも、この時期のシャンティイの馬場の軽さもあって、ではあるでしょうが、それでもやはり環境が織り成す相乗効果で、こうして活躍馬が出てくるのは素晴らしい事です。

 ただし、如何にダービーよりは緩い流れとはいえ、レースレベルとしてダービーと比較するとやや物足りないのも事実だったりはします。
 ラップが1100m通過が66,17、そこからの推移が24,47-11,69-11,42-11,71=2,05,46となり、それでも前半決してスローではないのですが、その分直線手前である程度明確に緩み、そこからの再加速、持続力寄りの終盤、という感じでしょうか。
 人気馬はみんな前目にいたので、揃って同じように加速性能と切れは問われている筈で、この展開の中での力関係はほぼ互角、小さな綾が積み重なっての勝ち馬の凱歌、という印象ですが、この流れでラスト1Fはダービーよりも掛かっており、いずれ斤量面で、という部分はあるにしても、イギリスとは逆に、こちらはダービーの方が総合的なレベルは高かったように思えますね。

 あとこのレース、サンタラリ賞の勝ち馬が出てこなかったんですよね。
 タウキールに5馬身千切られたマジックアティテュードがここでは3馬身差の5着なので、その比較からも、もしも順調に出走出来ていれば、というイメージはあります。
 もっともアルパインスターなどは短い距離でタイトな流れ向き、というのもあるでしょうし、ピースフルも現状はスピード色の方が強いのかなと思います。
 勝ち馬にしてもこの競馬ですと、更に距離延長で2400m、となると流石に厳しい印象ではあり、良馬場なら楽しみはあるかもですけど、それでも凱旋門賞と言うなら更にツーランクくらいのレベルアップは欲しいところですね。


★メトロポリタンH https://www.youtube.com/watch?v=l9IIsP8A16c

 舞台はアメリカに飛んで、古馬マイルのスピード自慢が集うメトロポリタンHを見ていきましょう。
 勝ったのは、ケンタッキーダービーでは距離が長く大敗したものの、そこから長い休みを経て短距離路線で一気に開花、前走のクラークSで初GⅠを圧勝で飾ったヴェコマが、その勢いのままメンバー強化のここも逃げ切っての勝利となりました。

 ラップは45,87-47,01=1,32,88なので、ハイペースですけどアメリカとしては極端ではないくらいのバランスで、この時期のベルモントだけに順当な時計ではあると思います。
 それだけに先週、加速ラップで1,32,55を叩き出した3歳牝馬のガミーンの異常さも際立つのですけど、ともあれこのレースも細かく言えば後半は23,70-23,31と再加速は踏んでいて、レースとしても一旦交わされそうになったところからもうひと踏ん張り、という総合力の高さを感じさせる内容でした。
 外目でのロスが大きかったにせよ、コードオブオナーやマッキンジーという骨っぽい相手を一蹴していますし、これは素直にマイルまでの距離ならかなりいいところまで行くでしょうね。今年のBCダートマイルの大本命候補に挙がってくると思います。


posted by clover at 17:06| Comment(0) | レース回顧・海外競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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