2020年01月03日

私的名馬列伝 第二十七話 ジャイアンツコーズウェイ

★はじめに

去年は欧米で、ジャイアンツコーズウェイの血を引く馬が大活躍しました。
 欧州では直仔シャマーダルの産駒が2歳戦で大爆発、特にピナトゥボはナショナルSで破壊的な強さを発揮し、史上最強の2歳馬という評価を得て、この時点で将来の種牡馬入りは確約された存在です。
 アメリカでは、芝路線で直仔ブリックスアンドモルタルが連戦連勝、GⅠ5つを含む破竹の7連勝で現役生活に幕を閉じ、この春からは日本で種牡馬としての活躍が大いに期待されています。

 それ以外にも、シャマーダルの血を引くウーマンズハートやトリプルエースなどもそこそこの活躍を見せていたり、世界中で結果を残してきた万能種牡馬の血の威力が、いよいよ日本でも本格的に発揮される可能性はかなり高い、と感じられます。
 ですので、その根幹となったジャイアンツコーズウェイの現役時代の軌跡を振り返ってみるのも丁度いいタイミングかな、と思いますし、流石に結構古い時代、日本で言えばエアシャカール世代ですから、色々情報なども足りない部分はありますが、その辺りは上手く補いつつ、なんとか一稿にまとめてみましょう。

 生涯通算成績は13戦9勝2着4回https://racedb.com/p/007333.htmlと、一度も連対を外した事のない非常に堅実な成績であり、また連戦を厭わない強靭さと、ゴール前の勝負強さで、当地ではIron horse、鉄の馬と評されていました。
 この馬の走るところ、全てが接戦の名レースになるという、不思議な魅力を備えたその蹄跡、しっかりと見ていきましょう。



★未勝利戦~グラッドネスS <栄光への階梯を順々に>


 しっかり見ていきましょう、と書いておいてなんですが、流石にこの若駒時代のレース映像は、全ては見つけられませんでした。
 リンクを張らせて頂いた映像は、一応この馬の2~3戦目と、5戦目から引退までの、全部で11レースが収録されています。
 基本的にジャイアンツコーズウェイは、判を押したように逃げ先行する馬で、栗毛の流星、真黒な勝負服ですので、画像そのものは流石に鮮明とは言い難いですが、判別はしやすいと思いますので、その都度横目で見て頂ければ、と思います。

 アメリカでの生産馬ですが、欧州の名門・オブライエン厩舎からデビューし、鞍上は1戦を除いて、日本でもそこそこ馴染みのあるキネーンJが務めていました。
 デビューは2歳の7月、6Fの未勝利戦で、ここは映像がないので何とも言い難いですが、前々から進めて7馬身差圧勝、この時点でオブライエン調教師に特別な馬、と言わしめたようです。

 2戦目はカラでの7FのGⅢフューチュリティS、これは映像が収録されていますが、道中は2~3番手を追走、直線で楽に抜け出して後続を寄せ付けずの完勝ですね。
 そして3戦目はフランスに遠征して、7FのGⅠサラマンドル賞に出走すると、ここではスタートから果敢にハナを切り、不良馬場をものともせずにそのままスイスイと押し切って、デビュー3戦目で見事にGⅠタイトル獲得と、順調にエリートコースを邁進していました。
 走りを眺めていても、この時期から競走馬としてのセンスが卓越していて、肉体面のみならず、精神面が早い時期から成熟していたのだろう、という印象は受けますね。

 2歳シーズンは3戦で終えたジャイアンツコーズウェイは、当然3歳シーズン最初の目標を英2000ギニーに定めていきます。
 そのステップレースとして選んだのが7FのGⅢグラッドネスSですが、このレースは実は古馬混合戦で、他にも世代限定のステップレースはある中で、敢えてここにぶつけてきたあたりは、馬の精神面に対する陣営の圧倒的な信頼が窺えますね。
 ここもレース映像がないので着差で判断するしかないのですが、ある程度先行したのは間違いなく、最後はそこそこ詰め寄られるものの3/4馬身差で振り切っての勝利、そのあたりから、後の鉄馬の片鱗というか、接戦に強いところが出てきているのかな、とも感じます。

 ともあれ、4戦4勝と非の打ちどころのない戦績を携えて、ジャイアンツコーズウェイは一躍クラシック路線に歩を進める事となります。


★英2000ギニー~セントジェームスパレスS <敗北を糧に、伝説の始まり>

 迎えた英2000ギニーですが、この年はなんと27頭という多頭数での競馬になりました。
 これは戦後においてもこのレースの最多出走頭数であり、それだけこの年は素質馬・色気を持っていた馬が出揃っていたという事なのかもしれませんが、その錚々たるメンバーの中でも、ジャイアンツコーズウェイは僅差ながら1番人気に支持されての出走となります。

 レースでは、いつものようにいいスタートを決めて、先行集団の中で機を窺い、残り600mあたりからスパートして、ジリジリとその集団を引き離していくあたりでは、一瞬勝利の絵面が見えたのですけれど、しかしその時、離れた外から一頭すごい勢いで飛んでくる馬がいました。
 それがキングズベストで、日本ではエイシンフラッシュの父、として有名ですが、後々の成績からも並んだら非常にしぶといジャイアンツコーズウェイに対し、一気の切れ味で出し抜いてあっさり交わしていくと、そのまま3馬身半の差をつける圧勝、ジャイアンツコーズウェイはしぶとく粘り込むものの2着と、はじめての敗戦を喫する事になります。

 このレースに関しては、多頭数でマークする馬を見出すのも難しい、というのもありましたし、これだけ頭数が多ければ必然的にペースもポジション争いの関係でシビアにはなっていたはずで、仕方ない負け方なのかな、とは思います。
 キングズベストが、この次に愛ダービーで惨敗し、そのまま引退してしまったので、リベンジの機会はなく、果たしてマイル路線ならどこまで強かったのも闇の中なのですけれど、少なくとも切れ味が武器ではないジャイアンツコーズウェイにとって、こういう競馬を出来る馬は天敵だった、とは言えますね。

 目標のレースで苦杯を喫したジャイアンツコーズウェイは、捲土重来を期して愛2000ギニーに向かいます。
 この馬に対する評価は、一度の敗戦でそこまで落ちることはなく、勿論キングズベストがいなかった事もあるでしょうが、ここでも1番人気に支持されました。
 ライバルは仏2000ギニーの覇者バチアーに英2000ギニー3着のバラゼアゲストあたりで、不良馬場の中、いつものように道中2~3番手で進めたジャイアンツコーズウェイは、直線で逃げたバチアーに並びかけていこうとします。
 しかしここではバチアーがしぶとく、半馬身から中々差が縮まりそうで縮まらず、最後は首差、相手に残されてまさかの2連敗を喫する事となってしまいました。

 このレースも、接戦に強いジャイアンツコーズウェイ、という評価からすると意外な負け方ではあるのですけれど、ただ実のところ、この後のレースを見ても、負けパターンは英2000ギニーのように出し抜かれるか、或いはこの愛2000ギニーのように前の馬を捕まえ切れないか、ではあるのですよね。
 そのあたりから浮かんでくるのは瞬発力不足で、先にライバルに足を使わせてから、消耗地点で差し返すのは得意でも、前にライバルを置いて、自分から加速していって差す、という競馬は不得意だった、というのは考えられるところです。
 元々血統的には、母系にグロリアスソングが入っているとはいえ、それ以外はストームキャットにロベルトですから、タフな消耗戦、アメリカ型の競馬に向いていた馬ではあり、その弱点を先行力と競馬センスで補っていたのが、高いレベルでじわっと露呈してきたのがこの2戦、と考えていいのではないでしょうか。

 ただ、負けたままでは終わらせないのがジャイアンツコーズウェイの真骨頂でもあります。
 続いてエントリーしたのは、伝統のロイヤルアスコット開催初日の目玉レース、3歳牡馬限定のマイルGⅠ・セントジェームズパレスSでした。
 ここでは愛2000ギニーで屈したバチアーに、上がり馬のシボレス、サラファン(中山のJCでファルブラヴの2着に来た馬ですね)、メディシアン、仏2000ギニー3着のヴァレンティノあたりがライバルと目されていましたが、それでもジャイアンツコーズウェイは1番人気と、この馬の堅実さとしぶとさ、素質が高く評価されていたのがよくわかります。

 そしてレースでは、内目の枠から先行し、道中はバチアーとほぼ馬体を接する形で先頭、直線でも入り口からバチアーとの熾烈な競り合いとなります。
 内からしぶとく脚を伸ばし、ようやくバチアーを振り切ったのが残り150m付近でしたが、そこに2頭が叩き合いで消耗するのを待っていたように、後続が一気に殺到してきます。
 特にヴァレンティノの脚色がよく、少なくとも映像では完全に一度差されたように見えるのですが、しかしそこから目標を切り替え、ヴァレンティノに馬体を合わせていくと、類い稀なる勝負根性が遺憾なく発揮され、最後の20mでグイっと差し返して見せたのです。

 苦しいレースながらもライバルに借りを返し、ようやく3歳シーズン初のタイトルを手にしたジャイアンツコーズウェイですが、しかしこの勝利はこの先に待つグロリアスロードの序章に過ぎませんでした。


★エクリプスS~インターナショナルS <名勝負メーカーの神髄>

 ここまでの3歳シーズンを、復帰戦から2カ月半で4走と、中々の密度で駆け抜けてきたジャイアンツコーズウェイですが、しかし休む間もなく、中1週半というタイトなローテーションで、古馬混合の10FGⅠ・伝統のエクリプスSにエントリーしてきました。
 これまでの世代戦では、一貫して1番人気に支持されてきたジャイアンツコーズウェイですが、ここは厳しいローテーションに、強力古馬が出揃った事、はじめての10F戦、更に主戦のキネーンJが負傷で乗り替わりと、負の条件が複層的に積み重なった事で、はじめて5番人気と評価を落としての出走になります。

 実際にライバルも超豪華で、人気順に見ていくと、同年英ダービー2着馬で、翌年凱旋門賞を圧勝するサキー、クイーンアンSの覇者で、同年英チャンピオンSとブリーダーズカップターフを連勝するカラニシ、タタソールズ金杯の勝ち馬で、日本生産馬でもあったシーヴァ、まだ本格化一歩手前ながら、この後にGⅠを6勝するファンタスティックライトと錚々たる顔ぶれになっています。
 流石にこのメンバーに入っては、8Fまでしか経験のないジャイアンツコーズウェイには苦しい戦いになる、と思われていたのでしょうが、しかしジャイアンツコーズウェイは、そんな下馬評をあっさり覆す素晴らしい走りを披露します。

 いつものように道中は2番手につけて、いつでも抜け出せる態勢でレースを進めていきますが、直線入り口から強豪が入れ替わり馬体を合わせてきます。
 それでもジャイアンツコーズウェイは、まずサキーを競り落とし、最後に外から飛んできたカラニシに、やはりここでも一旦前に出られるものの、もう一度馬体を合わせてからぐいぐいと差し返して、まるでセントジェームズパレスSのリピート映像の様な勝ちっぷりで、見事に超豪華メンバーの10F決戦を制してみせたのです。

 そして、大して休む間もなく、ジャイアンツコーズウェイが次のターゲットに定めたのが、真夏のグッドウッド開催(去年のディアドラのナッソーSで、日本でも話題になりましたね)の伝統のマイルGⅠ・サセックスSでした。
 ここでのライバルは、クイーンアンSでカラニシの僅差2着だったダンシリ、前年のマイルGⅠを2勝しているアルジャブル、セントジェームズパレスS2~3着のヴァレンティノにメディシアンあたりでしたが、得意のマイルに戻ってのここは、指定席の1番人気での出走となります。

 勿論レースでもいつもながらの取り口を披露、先行して早め先頭から、外目を急襲してきたダンシリに一瞬の勢いでは一気に交わされそうに見せながら、そこから馬体を合わせると楽に伸び返して、3/4馬身差をつけての勝利でGⅠ3連勝を達成します。
 ダンシリは結局、自身はGⅠを勝てないまま引退でしたが、種牡馬としては優秀で、ディープインパクトが敗れた凱旋門賞の勝ち馬レイルリンクや、そして今日本で一定の地位を築いているハービンジャーなどを輩出しています。
 3着に食い込んだメディシアンも、翌年マイルGⅠを3勝するように、決して弱いメンバーではなかった中で、それを弄ぶようなレースぶりで捻じ伏せてくるこの馬の凄味は、数字では表れない所にあった、と言えそうですね。

 更に更に、そこから中2週で、今度はヨークのインターナショナルSに駒を進めていきます。
 ここは頭数も少なく、ほぼカラニシとの一騎打ち、というレースで、お互いにペースメーカーを出走させて、道中も探り合いながらの展開となりますが、例によって先に抜け出したのはジャイアンツコーズウェイでした。
 エクリプスSで、馬体を並べたところで差し返されてしまったカラニシ陣営は、ここではより外から一気に差す、という戦法を取ってきて、実際に直線半ばまではかなり離れた位置での競り合いになっていたのですけれど、馬の習性などもあるのか、最後はお互いに寄せ合っていっての叩き合い、となればやはり最後に軍配が上がるのはジャイアンツコーズウェイなのですね。

 改めてマイルでも10Fでも現役最強クラスのパフォーマンスを披露するジャイアンツコーズウェイの快進撃は、まだまだ止まる事はありません。


★愛チャンピオンS~ブリーダーズカップクラシック <万能の極み、されど究極にあらず>

どこまでも疲れを知らないアイアンホースの次なるターゲットは、アイルランドで最高の権威を誇る10F戦の愛チャンピオンSでした。
 グラッドネスSでシーズンをスタートしてから、奇しくもこの日で丁度5ヶ月でしたが、その間に8戦、しかもGⅠを7戦するというローテーションは、流石オブライエン調教師というべきか、少なくともこの馬での経験が、後々タフなローテーションでもしっかり結果を残してきた馬達の礎になっているのは間違いないですね。

 そしてこのレースにおいては、相手関係はかなり楽になっていました。
 ライバルが英ダービー4着のベストオブザベスツ、善戦マンをようやく前走ドイツGⅠの勝利で脱したグリークダンス、ガネー賞勝ち馬のインディアンディンヒルあたりでしたけれど、流石にここまでの相手に比べれば1~2枚落ち、ここは勝って当然というメンバーではあります。
 ただそれでも接戦にしてしまうのがジャイアンツコーズウェイという馬で、実際にオブライエン調教師も引退後に、この馬は大差をつけて勝つのが好きではなく、並んできた馬をもう一度突き放す勝ち方を好んでいた、という談話を残しているくらいで、その点でも奇特な、色々な意味で歴史的名馬だったと言えます。

 レースでは、判を押したように先行策から、直線入り口でペースメーカーを内から交わして先頭、そこにまず挑んできたのがデットーリJ鞍上のベストオブザベスツで、この馬との長い叩き合いの末、残り100mで振り切ると、今度はグリークダンスが外から飛んできますが、そちらも楽に凌ぎ切って半馬身差での勝利、見事にGⅠ5連勝を達成したのです。

 そして、次に出走してきたのが、中1週でのクイーンエリザベスⅡ世Sで、ここまでくると、24時間働けますか?とか、月月火水木金金とか、そんなフレーズが頭に浮かんでくるほどです(笑)。
 ちなみにまだこの時代は、チャンピオンズディの体系は確立しておらず、このレースもアスコットではありますが、オールドコースで開催されているのが印象的ですね。

 このレースでジャイアンツコーズウェイは、歴史的名馬のミルリーフが30年近く前に達成した、GⅠ6連勝の欧州記録に挑む事になります。
 ここでのライバルはムーランドロンシャン賞の勝ち馬インディアンロッジに、前走でこの馬に食い下がったベストオブザベスツ、いつものメディシアンに、牝馬路線の強豪でナッソーSを勝っているクリンプリン、同年安田記念2着のディクタットも名を連ねていました。
 レースはいつものように積極的な先行策から、コーナー出口で仕掛けていって早めに先頭に立つジャイアンツコーズウェイ、しかしこの日は、直線入り口で競り合ってくる馬がおらず、しばし直線一人旅の中で、少なからず闘争心に火が付き切らない状況となり、それを見澄ましたように一頭の伏兵・オブザ―ヴァトリーが遠く離れた外から飛んできました。

 この上がり馬を管理していたのは、今ではエネイブルを管理し、デットーリJとのコンビで世界中のGⅠを席巻するゴスデン師で、当時はヴァレンティノも管理しており、叩き合いに持ち込んで交わされたセントジェームズパレスSの教訓を胸に、ここでは大外から決して馬体を合わせずに一気に交わすという作戦を練っていたのです。
 直線で少しふわふわしていたジャイアンツコーズウェイは、その急襲に咄嗟に反応する事が出来ず、しかも応戦態勢に入った時にはもうゴール板前、抵抗の暇を与えられずに半馬身交わされて、偉大なるミルリーフの記録に肩を並べることには失敗してしまいました。
 この勝ち馬も、翌年イスパーン賞も勝つように決して弱い馬ではなかったでしょうが、それでもいつものように叩き合いに持ち込む形が作れていたらどうだったのか、それは神のみぞ知るところです。

 ちなみにですが、欧州のGⅠ連勝記録はこの2年後に、ロックオブジブラルタルが7連勝を達成し、そして2011~12年にかけて、史上最強馬のフランケルが9連勝にまで更新しています。流石にこの記録に肩を並べる馬が出てくるまで、どのくらいの時間を要するのかわかりません。
 敢えて言えば、GⅠ出走機会、という括りならばエネイブルが10連勝しているのですけど、この馬はセプテンバーSに出ているので、厳密には連勝でないのは惜しまれますね。

 ともあれ、伏兵の渾身の一刺しで破竹の連勝が5で止まってしまったロックオブジブラルタルは、その後更に中1週で英チャンピオンSに出走するプランもあったそうですが、ここはモンジューが出てくる、という事になって出走を自重し、ターゲットをアメリカに移します。
 ちなみにこの年の英チャンピオンSを勝ったのはカラニシで、モンジューは2着、この時点のモンジューは大分衰えていたと思うので、この馬が出ていればどうだったか?というのを考えるのも一興ではありますね。
 そして、この戦績の馬であれば、普通はブリーダーズカップマイルをチョイスするのが無難なのでしょうけれど、オブライエン調教師が選択したのはダートのBCクラシックへの挑戦でした。

 欧州馬にとって、問われる適性がまるで違うダートのBCクラシックは、けれど日本馬にとっての凱旋門賞のように、ステータスとしてどうしても取りたいタイトルのようです。
 実際にBCクラシックの創設以来、数多くの欧州の名馬がこの未踏の地に挑戦し続けていますが、未だにタイトルを手にする事は出来ていません。
 いえ、厳密に言うなら、一度レイヴンズパス(タワーオブロンドンの父ですね)が制した事はあるのですが、あの時はたった2年だけ施行された、AWでのBCクラシックでした。
 AWであれば、ドバイワールドカップをヴィクトワールピサが勝ったように、適性の差はダートほど大きくは問われない、というのはあり、その意味で、ダートで開催されるBCクラシックを勝ってこそ、というのは確実にあるだろうと思います。

※追記
 コメントでご指摘いただいた通り、1993年のファーブル調教師によるフランス調教馬のアルカングの勝利をまるっと見落としていました。

 ちなみにレース映像 https://www.youtube.com/watch?v=tAz9K1gjUh4

 一応ちゃんと全レース調べたつもりでしたが、先入観とは怖いですね……。
 新年早々の大ポカへの戒めとして、元々の文章と併記して記載させていただきます。大変失礼いたしました。

 そして歴史上、僅かの差でその栄誉を手にしそこなったのが、このジャイアンツコーズウェイと、翌年に挑戦したサキーとなります。
 外枠からのスタートになったジャイアンツコーズウェイは、道中3番手の外で砂を被らずにスムーズにレースを進め、直線では先に抜け出したティズナウに一度並びかけるところまで行ったのですが、最後の最後でティズナウの、ジャイアンツコーズウェイのお株を奪うような粘り腰、二枚差しに屈し、惜しくもクビ差の2着で涙を呑んだのです。

 ここはラップがある程度分かるのですが、23,4-24,0-24,8-48,55=2,00,75くらいなので、正直アメリカ競馬としては比較的緩やかな流れ、ややハイペースくらいになっています。
 実際に完全な前残りレースでしたし、さしものジャイアンツコーズウェイでも、いきなりアメリカ流の超々ハイペースに巻き込まれてどうだったか?は未知数なので、その意味では展開も向いた、けれどやはり後ろからの決め手勝負ではほんの少し甘かった、という事になるのではないでしょうか。

 更に余談ですが、翌年のサキーもハナ差で屈する相手がティズナウなんですよね。
 ただティズナウという馬自身は、このBCクラシック連覇以外は、チャンピオンとまで呼べる戦績を残せていない不思議な馬で、まるで欧州馬にBCクラシックのタイトルを渡さないために生まれてきたような馬、という印象すら受けます。
 日本馬にとっての凱旋門賞も、あと少し巡り合わせが良ければ、なんて思う部分は色々ありますが、そういう所で見えざる力が働くのも、伝統や地域性が持つ不思議な部分、とは言えるかもしれませんね。

 その意味では、異邦人として挑戦するのではなく、その血の風土に同化していく、そういう努力は必要になってくるのでしょう。
 実際サンダースノーやメンデルスゾーン辺りも、BCクラシック以外にも色々なレースに出た経験がある程度活かされての好走、という感じはありますし、でもやはりそれは、適性があるだけではダメで、より図抜けた能力の持ち主でないと、というのがジレンマとして立ちはだかるのかな、などと思います。


★終わりに

BCクラシックを最後に現役を退いたジャイアンツコーズウェイは、当然のようにその年の欧州年度代表馬に選ばれたのですが、実はこの話にも余談があります。
 というのも、普通に考えれば年度代表馬を取った以上、自動的に最優秀3歳牡馬のタイトルもついてくるものなのですけど、この年にそれを受賞したのはシンダーなんですよね。

 シンダーも超のつく名馬で、英愛ダービーに凱旋門賞を制した成績そのものは、充分にタイトルに浴するに相応しいものではあり、路線が違って直接対決の機会もなかった分、その優劣をつけるのに余りある苦衷があった事は察せられます。
 このあたりが人気投票的な側面を持つ代表馬選考の難しさでもありますし、そういう日本的情緒を感じるねじれ現象が欧州でも起きるというのは面白いものです。それだけ、歴史的名馬が並び立ったこの世代が素晴らしかったとも言えますね。

 種牡馬としてのジャイアンツコーズウェイは、北米を拠点にしつつ、世界各地で優秀な産駒を輩出しています。
 初年度から出たシャマーダルは、仏2000ギニー、仏ダービー、セントジェームズパレスSを3連勝した名馬で、惜しくも現役生活は故障で早期引退でしたが、前述のように種牡馬生活も中盤に差し掛かって、それこそ昨日のハーツクライよろしく、2歳世代が大ブレイクし、直系が繋がっていく予感をしっかりと感じさせます。
 ジャイアンツコーズウェイ自身、超大物こそ少ないものの、コンスタントに色々な条件で優秀な産駒を出し、北米で3度賞金王に輝いて、北米種牡馬の歴代最多獲得賞金の記録も保持しており、競走馬としても種牡馬としても大成した素晴らしい馬、と言えるでしょう。

 ジャイアンツコーズウェイ自身は今年で23歳になるのかな、なのでいい加減種牡馬も最晩年でしょうが、その現役時代のタフさを象徴するように、晩年からもブリックスアンドモルタルという名馬が出てきたのは素晴らしい限りです。
 上でもチラッと触れましたが、ジャイアンツコーズウェイがグロリアスソングとロベルト、ストームキャットという、日本競馬にも馴染み深く、フィットする血統を保持していて、ブリックスアンドモルタルはそこにストームバードのクロスが掛けられてスピードを強化、芝での素軽さを持っているので、おそらく日本での種牡馬生活で、大失敗することはないと思います。

 ディープとストキャのニックスは有名ですし、飽和しつつあるディープ牝馬を筆頭としたサンデー系につけていけば、ヘイルトゥリーズンのクロスも入って面白く、流石にサンデー程、とは言えないにしても、日本の血統地図の一角を塗り替えるくらいの活躍は期待したくなりますね。
 果たして数十年後にジャイアンツコーズウェイの血が残るか否か、今年の競馬はそのターニングポイントになるかもしれないな、などと考えつつ、筆を擱く事としましょう。


posted by clover at 01:00| Comment(2) | 名馬列伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アルカングさんがマイナーすぎる悲しさ
確かに欧州の名馬ではないですけどねw

ジャイアンツコーズウェイに関しては自身の底力を父の父や母の父になって伝えてる感じがあるのでブリックスアンドモルタルが成功してくれないかと思ってます。
Posted by EXE at 2020年01月03日 02:35
>EXE様
 
 いつもコメントありがとうございますー。
 ご指摘も大変ありがとうございます!大変申し訳ありませんでした、めっちゃ凡ミスでしたね……。
 本文にも追記させていただきましたが、ちゃんと調べた上でこの様なので、本当に先入観とは怖いです。

 私が海外競馬に興味持ち始めたのが95年頃からと、微妙にリアルタイムイメージがないのも影響してるのですけど、ずっと長い間そうだと思いこんでいたので、過去記事でもそれを匂わすニュアンスが出ていたこともあったろうなぁ、と思うと慚愧の至りです。

 ただ改めてレースを調べてみても、確かにめっちゃ地味ですねこの年。
 アルカング自身欧州での戦績もイスパーン賞勝ったくらい、対戦相手のアメリカ馬も歴史に名を残すような馬は少ないですし、メンバーレベルと馬場適性があまりにもバッチリ噛み合ってしまった、という感じはすごくします。
 でも初ダートで3列目のインて砂を被って、それでも怯まずに馬群を割って突き抜ける、というレースぶりは強いですねぇ。引退レース以外にも、もう幾度かダートの大レースに出る機会があれば……とは思わせます。

 ジャイアンツコーズウェイ自身はやはり種牡馬としては少し切れ味が足りない面もあるのかもですけど、それを配合でフォローする事で、本来の底力が上手くミックスされる感じでしょうか。
 日本で言うと、直系は残るか怪しいけれど、母父でしっかりスタミナを伝えているトニービンやブライアンズタイムみたいなイメージはあります。
 ブリックスアンドモルタルはぜひ成功して欲しいですね。今の日本競馬の血の飽和にブレイクスルーを運んでくるのは、やっぱりアメリカ血統だと思いますしね。
Posted by clover at 2020年01月03日 04:03
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