2019年11月14日

短期外国人ジョッキーの実績と傾向を軽く探ってみる記事

★はじめに

 毎年秋から年末にかけてはかなり豪華な顔ぶれの短期外国人ジョッキーが集まるのがもはや恒例になっていますが、それにしても今年はより豪華な印象です。
 例年参戦していたC・デムーロJが今年は弾かれてしまったのか、それとも今年は元々その意向がなかったのか、そのあたりは不透明ですけど、最大人数枠上限までこれだけの腕達者が揃うと壮観ですし、去年同様にGⅠレースを席巻してしまうだろうな、という危機感も当然あります。
 その辺りも含め、改めてそれぞれが海外でどういう騎手なのか、近年どんな実績を残しているのか、サラッとまとめてみるのもいいかな、と思いますし、丁度忙しくて時間の足りない日なので、穴埋め記事として参考程度に見て貰えれば、と思います。


★C・スミヨンJ

 とりあえず来日している順に、という事で、既に日本で3週間参戦し、スワンSのダイアトニックや先週のラッキーライラックなど、随所に鮮やかな手腕を見せているスミヨンJからですね。

 元々スミヨンJは、初来日が20歳の時の2003年と、かなり早い時期から実績を残していた騎手でもあり、去年まででフランスリーディングを10回獲得、数多の大レースを制している、近代フランス競馬における最高峰の騎手の一人、と評して間違いないでしょう。
 2010年代初頭に何年か本格的な短期来日があり、ブエナビスタとのコンビで秋古馬三冠をフル参戦、その時のJCの降着による騒動が、結果的に日本の降着制度を変化させる一因になったのは記憶に新しいところです。

 また、私御贔屓のエピファネイアを、JCで目の覚めるような勝利に導いてくれた騎手でもあり、素行や言動などで物議を醸す事は多々あれど、超一流の騎手である事は疑いありません。
 あと、人には厳しいのかもしれませんが馬には優しいイメージで、コンビを組んで多々の大レースを制したセン馬のシリュスデゼーグルを、引退後自分の家で繋養しているエピソードは良く知られているところですね。

 元々173cmと騎手にしては高身長で、体重管理が難しくなった事もあり、しばらく短期免許での来日は控えていました。
 またフランスリーディングにも強い拘りを持っていて、一昨年ブドーJが年間最多勝記録を更新すると、去年は年初からその更なる更新を目標に一年間我武者羅にレースに乗り続け、デットヒートの末に見事新記録とリーディング奪還を果たしたように、負けず嫌いは生来で、時に荒くなる騎乗スタイルが日本の公正競馬の中で厳しい目を向けられがちなのも、敬遠していた理由にはなるのかもしれません。

 ただ今年からは、食生活の改善で体重管理が楽になったようで、また今年は最初から家族との時間を大切にするためにリーディングを狙っていなかった事も含め、かなり長期間での来日が実現したようです。
 まあ実際、そろそろ勝ち星より内容を問う年齢に差し掛かってはいますし、日本でも騎乗数はさほど多くないですが、乗る限りは常に勝ちに行く勇猛果敢な姿勢がここまでも随所に光っていますね。
 今年は特に、地元であまり目立った成績を上げられず、大レースはサンタラリ賞程度、後はドバイワールドカップをサンダースノーで制したのが目立つくらいなので、そのあたりでも心中期するものはありそうで、本人が明言している通り体調も万全、モチベーションはとても高いと思います。

 ここまでの4週間で勝率0.286、3着内率0.629は流石、としか言いようのない成績ですし、といってどれもが勝って当然レベルの人気の馬でもないので、今後もスミヨンJが乗る馬は警戒を怠らない方が無難なのは間違いないですね。
 やはり海外の乗り手ではあり、ある程度ポジショニングの意識が強く、また折り合いと要所でスッと動かす技術が卓越していますので、どちらかと言えば持続型の馬より、瞬発力が武器になる馬の方がマッチするかな、と思います。
 無論レース自体と噛み合うかはありますし、それが上手く行ったのがラッキーライラック、逆にレース質に噛み合わなかったのがサートゥルナーリアと思えば大まかな傾向は感じ取れるはずで、年末までいい馬が揃ってますからその取捨選択は非常にシビアなものになりそうです。


★O・マーフィーJ

 去年の冬に初来日した時点では、ほとんどの日本人にとっては、「マーフィー、who?」だったと思います。
 実際に欧州でも明快に台頭してきたのは昨年、サクソンウォリアーとのライバル対決で話題になった、欧州年度代表馬ロアリングライオンの主戦騎手として2000mの大レースを席巻し、一躍トップジョッキーの座に躍り出たその実力は、年末年始の日本でも遺憾なく披露されました。

 前回は関東圏のみの参戦だったものの、週を追うごとにしっかり日本の競馬にフィットした、それでいて若手らしい積極果敢な強気のレースを展開し、最終週にはコパノキッキングで重賞も制覇、1日5勝の固め打ちで締めてきたのはインパクト充分でした。
 とにかく非常に向上心があり、研究熱心で、世界のどこでもしっかりアジャストしてくる柔軟性と、それを可能にする高い技術を持った騎手なのは間違いありません。

 今年の欧州での実績は、流石に去年ほどの華々しさまではないものの、地道に勝ち鞍を重ねてのぶっちぎりの英国リーディング獲得に加え、GⅠもファルマスS、日本人にとっては一番印象深いナッソーSのディアドラ、そしてシーズン最終盤のフューチュリティTSもカメコで制し、来年も大舞台での活躍を予感させる尻上がりの成績を残してきたと言えそうです。
 騎乗スタイルとしては、当たりがそこそこ柔らかくて、強く促さずともしっかり馬に前進気勢を作らせるバランス感と、とにかく脚を余さない強気の仕掛けは目立ちますね。

 この秋の来日は、最初の週がともにはじめての京都で、流石にあのトリッキーな淀の外回りでは仕掛けのポイントなどに苦戦している様は見受けられました。
 ただ今週の土曜は既に特徴を掴んでいる府中からですし、そこで勢いをつけて再度日曜に淀に挑戦、という中で、どういう進化を見せてくれるのか非常に楽しみではあります。
 流石に綺羅星の如き今回の来日組の中では、実績や騎乗の引き出しなどの部分で見劣るところはあるでしょうが、来日後の騎乗依頼数を見ても関係者の信頼は厚く、今回もコツコツと数字を積み重ねていくとは思いますね。

 基本的に狙うとすると、持続力のある馬がフィットするのは仕掛け傾向からも間違いありません。
 勿論小回りでも噛み合う所はあるはずで、ただ府中みたいに常に高速馬場ならば、速く仕掛けても3F脚が持つパターンはありますし、逆に現実的にタフな淀みたいなコースだとフィットしきらない懸念は出てくるので、その辺り馬の適性やポジショニングセンスとセットで、上手く上げ下げして付き合っていきたいところです。


★R・ムーアJ

 こちらは来日経験も豊富で実績も充分、泣く子も黙るクールモアのファーストジョッキーであり、ここ数年で制したGⅠの数は一々列挙してたらそれだけでひとつの記事になってしまうほどです。
 印象通り非常に生真面目で紳士、競馬にもストイックですし騎乗技術も最高級なのは間違いないですが、トリッキーな展開になる事も多い日本の競馬の中ですと、若干柔軟性の点で適性が噛み合わないシーンもあり、狙うべき時とそうでない時がはっきりしているタイプの騎手だと思っています。

 またクールモアは世界中の大レースに馬を出してきますし、その度にファーストジョッキーであるムーアJは契約で優先騎乗が求められるので、近年は来日しても、地に足がつかないまま滞在切り上げ、なんて事も多く、元々天才肌ではなく、コツコツ状況を分析して蓄積でアドバンテージを作るジョッキーでもあるので、その点が今年はどうなるか、でしょう。
 少なくともクールモアは、ムーアJがあまりホイホイ日本に呼ばれて乗るのをそこまで快く思っていない感じは強くあって、その辺の政治的駆け引きも含めて本気度を推察しないといけないのはありますね。
 実際、元々エリ女週からの参戦だったのが、急遽マジックワンドがマッキノンSに出るから、という事で1週キャンセルになったのはありますし、まあそれできつちり向こうで勝ってくるのが流石と言えばそうなのですが。。。

 ただ今年に関しては、JCにクールモアは一頭も出してこない、おそらく情勢的に香港も回避すると思うので、ここ2~3年の中では腰を据えて日本で乗れる状況が整っているのではないかと見ています。
 今年も堀厩舎が続々いい馬を乗せてくるでしょうし、早速サリオスとの朝日杯も発表されていて、やはり大舞台でどこかひとつくらいはしっかり勝ち切ってきそうな雰囲気です。
 馬のタイプとしては、とにかく追えば追うほど伸びる、というのが一番目立つ部分ではあり、そこに至るまでのレースの組み立ても上手ですが、急加速的な競馬にはあんまり噛み合うイメージがないので、その点狙い目としてはスミヨンJの反対になるのかなと思います。持続力型で、広いコースで参戦してきた時はプラス評価、逆のパターンはそこまで信頼せず、でいいのかなと見ています。


★W・ビュイックJ

 こちらもゴドルフィンの現主戦として世界中で活躍、去年もステルヴィオとのコンビでいきなりマイルCSを制するなど、日本での印象も以前の来日時に比べて上書きされたのではないでしょうか。
 それこそ以前の来日ですと、エピファのやらかしが個人的にはやっぱり引っ掛かっていた部分はあるのですけど、ただJCや有馬で人気薄を激走させたり、やはり当時から馬を動かす技術と戦略性は光るものがあり、それが円熟期に入り、世界を股にかける事で更に磨きが掛かったと感じています。

 実は今シーズンは、5~8月くらいまで落馬負傷で実戦を遠ざかっていたのですが、復帰後も変わらぬ達者なところを見せていますし、特にピナトゥボとのコンビで2歳戦を席巻したレースぶりは印象に強く残っています。
 ゴドルフィンの主戦なので、この秋冬は勿論ゴドルフィンの強い馬に続々乗ってくる事になりますし、特に2歳戦のウーマンズハートとトリプルエースはかなり楽しみです。JCのレイデオロも、この難しい馬をどう導くか大注目ですね。

 ビュイックJもレースの組み立てとしては、基本的に常に前半からのポジショニング意識が強く、勝ちに行く姿勢を崩さないのは目立っていて、それでいて全体に浮つきのない冷静な騎乗ぶりと、要所での力強さはやはりインパクトがありますね。
 コース取りなども上手いので小回りでも対応力がありますし、比較的オールマイティなイメージ、絶対の強みは感じないですけどやはりこちらもコンスタントに勝ち鞍を積み重ねてくると思います。


★L・デットーリJ

 もはや世界の騎手の歴史の中でもレジェンドの一人、当代最強のジョッキーである事にはどこからも異論は出ないでしょう。
 まもなく50歳とは思えないパワフルかつ柔軟性のある騎乗で、特にここ数年はゴスデン厩舎とのコンビで世界中のGⅠを乱獲、今年もGⅠだけで19勝と自己最多記録を更新し、老いて益々盛ん、むしろ今こそが最盛期なのでは、と思わせる活躍ではあります。
 技術的には、余人に真似の出来ない卓越したものをいくつも持っており、実際にデットーリJでなければ勝てていないレースというのも数多、日本でもイーグルカフェのJCダートなどはもはや伝説の域になっていますよね。

 ただ、元々浮き沈みの大きい部分はあり、過去にも薬物使用で長期騎乗停止処分を食らったり、大レースでもあまり目立たない低迷期もあったりで、そのあたりはまぁ、一括りにするのはどうかとも思いますがイタリア人らしいムラもある、とは言えるでしょう。
 そしてだからこそ、今回の来日の経緯において、モチベーションがあるのかは地味に疑わしいところではあります。

 秋に入ってからも、それなりにコンスタントに大レースを制してはいるのですが、肝心要の部分でテンションが下がるような要素は多いんですよね。
 勿論その端緒はエネイブルの凱旋門賞敗戦で、更に英チャンピオンズディのストラディバリウスの敗戦もあり、そしてこの前のメルボルンCも、ゴール前競り負けの上に斜行で騎乗停止とどうにもバイオリズムが悪くなってきている感はあります。
 元々はエリ女週から年末までの来日予定だったのが、すったもんだの挙句2週間限りになり、それも社台の吉田照哉代表が再三口説いてしぶしぶ、だったらしい雰囲気なので、物見遊山の参戦になっても不思議はないところです。

 その2週間の中では、社台が用意できる最上級レベルの馬を揃えたとは思いますけど、それでもルックトゥワイスにキベオン、オメガパフュームと、勝ち切るにはかなり工夫が必要な馬なのは確かで、色んな意味で扱いに困る事にはなりそうなんですよね。
 ただ馬を動かす技術が世界一なのは間違いなく、いざ馬に乗れば本気、というパターンもあるので、そのあたりを他のレースの騎乗や戦前の言動などから見極めていかないといけないな、と思います。


posted by clover at 20:42| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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