2019年04月28日

2019 香港チャンピオンズディ レース回顧

 日本馬が出走する平成最後のGⅠで、見事なドラマが待ち構えていた今年の香港チャンピオンズディ、即席でざっくりにはなりますが、明日以降も書くべき記事が多いので今日の内に回顧しておきましょう。

 JRAの公式でもチャンピオンズマイル以外はレース映像が日本語実況で見られますけど、一応香港の公式サイトのリザルトも貼っておきますね。





★チェアマンズスプリントプライズ

 このレースを制したのは、ミスタースタニングの回避もあり圧倒的な人気に推されたビートザクロックでした。

 今日の香港の馬場は良、ただGOOD表記ですからこれでもパンパンの良ではなかったはずで、しかしその割に全体的に時計は出ており、ここ最近の土台の高速化を更に感じさせる一日になりました。

 その中でのこのレース、何が逃げるのかと思いきや、なんと外枠のラタンが好発を決めて思い切ってハナまで取り切る積極策を展開、一方でナックビーナスはスタートで出負け、そこからリカバーして番手まで押し上げては行くものの、ラタンの得意の流れの支配を崩すまでには至りませんでした。
 その後ろにビートザクロックとリトルジャイアントがつけて、オーストラリアからの参戦となったサンタアナレーンはほぼ最後方から、という競馬でしたね。

 ラップが24,18-22,19-21,79=1,08,26という推移で、これは流石に前哨戦のスプリントCよりは流れたものの、それでも相当のスローバランスです。
 日本式にテンから1秒引いて、中盤がフラットと仮定してのラップバランスが大体34,3-33,0くらいになりますし、後半の瞬発力&持続力特化戦になっていますから、前目内目の地元勢が上位独占も当たり前、という、やや面白みのない結果になってしまいましたね。

 その中でビートザクロックは、流石にここでは地力上位、というのを示す勝ち方だったと思います。
 レース質的にはラタンにとってベストに近い形に持ち込まれてしまいましたが、その持続力特化の中でもラスト1Fでしっかり違いを見せての差し切りはやはり強いですし、この馬の安定感は本物ですね。
 モレイラJも香港に戻ってからはあまり乗れていない感じでしたし、このレースも少し慎重に乗り過ぎて危うさもあったのですが、それでも勝ち切った事に意味があるでしょう。

 ラタンは正直軽視していたのでやられた感が強いですね。
 この枠でまさか逃げる競馬が出来るとは思いませんでしたし、ナックビーナスの出遅れも僥倖でしたけど、しっかり自分のペース、後傾バランスに持ち込めば絶対的な追走面はクリアしてきた、というあたりで、少し甘く見過ぎたと反省材料ではあります。
 ただやはり完璧に噛み合わせ切っても勝ち切れなかった事、今後もペースに左右されるところは出て来るでしょうし、スプリントの最上位クラスに肉薄できるかはレース慣れと成長次第、特に速い流れに適応できるようになれば、というところでしょう。

 リトルジャイアントは好枠を活かしての器用な立ち回りが出来ましたし、この馬もスローバランスが向いていますね。
 サンタアナレーンはある程度は流れる想定で強く狙ったのもあり、このラップバランスで後ろからは流石に厳しかったと思いますが、それでも最後しっかり来ていて、能力の確かさは見せたといえるでしょう。
 今後もオージーからの参戦があれば香港は盛り上がりますし、その点は楽しみですね。

 ナックビーナスはスタートが致命傷だったのは間違いないでしょうね。
 後半要素では持続面で足りない馬ですから、このラップでラスト1F甘くなるのは必定で、といって中盤から更につついていく形は無理筋ですからねぇ。武Jの果敢な逃げを期待したのですが、今日はディアドラ含めて武Jの日ではなかったようですね。


★チャンピオンズマイル

 このレースだけは海外からの参戦もなく7頭立て、もう既に勝負付けの済んだ馬ばかりと、そろそろウィンクス並みに相手がいない状況になってきたビューティージェネレーションが、なんら問題なく無風でこのレースの連覇を達成、連勝を9に伸ばしました。

 内枠を引いてスタートを決めた時点でもう波乱の余地はない、という感じに、馬なりで先頭に立って最後まで殆ど馬なり、後続も最初から勝ちに行く気はなくて2着狙いが見え見えでしたし、盛り上がり、という意味では、スターホースが勝った、以外の価値はあまりないですね。

 ラップ的にも48,29-45,34=1,33,63という、日本式に直しても2秒以上の超スローで、それこそこの前のマイラーズCみたいな感じではあります。
 正直パートンJとしても、今後を考えつつ出来る限り楽に勝つことに徹していた感じで、スローに持ち込み直線入り口で少し加速させて出し抜いた時点で勝負あり、とばかりに、後続との差を調整しつつの舐めプでした。

 なのでこのレース自体がこの馬の強さの評価基準としては採用し辛いところはありますし、逆に言えば最近香港ではほぼ本気を出していないので、その意味でも安田記念でガチンコのアジアマイル王決定戦をやって欲しいところではありますね。
 少なくともブリッシュラックやサイレントウィットネスレベルにはやれるはずですし、高速決着のお手のもので、しいて言えば持続面の適性、坂適性が香港の舞台では問われにくいので、それすらクリアしてくれば本物の怪物、と呼んで差し支えないと思います。
 日本の怪物2頭との激突が見られればこれ以上ない幸せですし、その視座ではこの楽な勝ち方は歓迎すべきでしょうね。


★クイーンエリザベスⅡ世C

 ここは一転、13頭立てと質量ともにメンバーも揃い、ペースもタイトに流れていく中で、勝利を収めたのは最内枠から完璧に立ち回った日本のウインブライトで、ルーラーシップのように海外の地で初GⅠ勝利となりました。
 今週はエタリオウの春天の中で、平成最後のGⅠを取るのがステゴ産駒らしい、なんて話もちょくちょく出ていましたが、流石へそ曲がりというか一筋縄ではいかないというか、正に最後の最後、そして自身も唯一のGⅠを制した香港の舞台で、というのが実にドラマチックですね。
 松岡Jも、この馬とのコンビに全てを賭けての渡航でしたし、その執念が実っての制覇は、近年頓に、海外遠征の時は外国人ジョッキーに、という風潮の中で印象深く映りました。

 レース展開は予想通りに外枠からの先行争いが激しくなり、最初はグロリアスフォーエヴァーがハナに立ったものの、それを外からタイムワープが強引に交わしていき、そこそこ速い流れを作っていく事になります。
 その後ろに好発を決めたパキスタンスター、そして香港ダービー組のワイクク、フローレ、ダークドリームも好位で続き、ウインブライトは3列目のイン、リスグラシューは中団馬群の中で、エグザルタントとディアドラ、イーグルウェイは後方から、という隊列でした。

 ラップが24,96-23,07-23,76-23,42-23,60=1,58,81のレコード決着になりました。
 勿論これは香港のレースとしてはかなり流れているのですが、ただ馬場が予想以上に軽かった事で、実のところこれでも平均ペース、だったりはします。
 中間点がフラットでない可能性は当然ありますけど、走りの雰囲気や隊列からして極端に緩んだりはしていないはずですから、ハーフで見ると日本式に補正して59,0-58,8くらい、綺麗な平均ペースで後半もそこまで仕掛けが遅くなく、追走面と後半の総合力が問われた感じですね。
 コーナー地点も23,42と、相対的に見ればあまり落ちていませんので、その意味では横のポジショニング面も大切だったと思いますし、勝ったウインブライトと2~3着馬の差はそこにあるといえるでしょう。

 とにかくウインブライトにとっては、最高のレースの流れになってくれました。
 やや出負け気味だったのは誤算でしょうが、それでも落ち着いてカバーし、枠の利を生かしてきっちりインベタで我慢、その中でレース全体がタイトに流れてくれたことでスペースも詰めずに楽に追走出来ていましたし、4コーナーから直線も、グロリアスフォーエヴァーが思った以上にしっかり反応して伸びてくれたので、その後ろから斜め前に出すだけでノーブレーキで進路確保できていました。
 この馬は持続戦の中で、とにかく手応え以上にラスト1Fは頑張れる馬で、今回きっちり状態面を維持してレースに望めたことで、この強みが最大限に発揮出来た感覚です。

 タイプ的にどんな競馬場でも強い、という感じではなく、特に切れ味が問われる府中向きではないでしょうが、それでも今の充実度なら、ある程度どこでも戦えそうな雰囲気はありますね。
 この後宝塚も使えるようなら面白いですし、後半シーズンは最終目標香港Cでローテを組んでいけば楽しみは大きいはずで、文字通り人馬一体のコンビで次の時代も競馬を盛り上げていって欲しいです。

 2着のエグザルタントは、流石に2000mでここまで淡々と流れてしまえば押し上げるのは難しいですし、コーナーでも大外になって苦しい競馬でしたが、それでもリスグラシューを差したのは強いですね。正直この展開でリスグラシューがこの馬に負けるとは思っていなかったのでそこは少しショックです。
 この馬にしても従来のレコードは楽に更新していますし、今が充実期、最盛期なのは間違いないのでしょうね。べストが2400mなのも事実ですが、追走が問われてもそこそこやれるのは武器になりますし、宝塚記念参戦の噂もありますので、もしも実現するなら、去年のワーザーに続きかなり楽しみになりますね。

 3着リスグラシューは、少し道中前の馬とのスペースがなくてリズムを崩すシーンなどもあり、思いのほか外の馬の先行意識が強かった事も相俟って、少しポジショニング面で窮屈さは出てしまった感はあります。
 それでもしっかり勝負所からはタイトに馬群を通して、勢いを殺さず直線に入っていますから、そのあたりはマーフィーJらしい立ち回りだったと思いますし、流れても強い馬、というより、流れた方が強い馬だと思っていたので、完璧に立ち回ったウインブライトはまだしも、エグザルタントに刺されたのは繰り返しになりますが残念です。
 ですが、牝馬の身で、半年もないスパンで香港遠征を繰り返して、ちゃんと安定して結果を出すのですから本当に偉い馬ですし、本質的にはマイルは短いので、個人的にはこの馬も宝塚記念を使って欲しい気持ちはありますね。

 6着ディアドラはやっぱりドバイからの直行ローテが良くなかったのか、調教は良さそうでしたけど、この展開で全くラスト弾けなかったのはやっぱり不満ですね。
 こちらも流れても強い馬のはずなだけに、やっぱり今年は年明け初戦から少しずつリズムが狂っている感じで、次の狙いも含めて不透明ですが、ちょっと様子を見た方がいいのかもしれません。
 少なくとも去年の府中でリスグラシューを差したあの脚はケタ違いでしたし、秋天を目標にしつつ立て直してくれれば、と思います。



posted by clover at 19:18| Comment(4) | レース回顧・海外競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

チャンピオンズマイル、最初の2マイルが25秒台と表示されてコケました。(苦笑)
本当、これは先だっての淀のマイラーズよろしくなスロー展開に上に競争になっておらんと思うくらいなレースでした。
この楽勝劇によって国内連勝レコードへの意欲が増し、シンジゲート内の意見対立から安田記念お流れのオチとかなって欲しくないところですね。
香港を震撼させたカナロアの娘やディープの倅たちが待つ大箱府中で、スタミナを削るスピード競馬しようや!とファン目線から言いたくもなります。(苦笑)

ナックビーナス残念でした、武がレース支配出来る面子の中での一戦だっただけに。
陣営も現地に入ってから気温もありコンディションが上向かずと、レース後のインタビューで答えた杉浦師による表情が印象的でした。
また、宮杯で勝ったエアロベロシティも当時の中京稍重コンディションにより最初3ハロン34秒のミドルペース。
今後、テンからハイに持ち込み香港スプリンターに一泡吹かせるような逸材が出て来て欲しいですね。

そして仰る通り、シャティンの馬場は水捌け良いですね。
レースが進む度にコンディション回復で、クイーンエリザベス二世Cでは問題ない回復傾向と思いました。
その環境の中でましてや初めての海外で、ガッツリ勝つとはステイゴールドの倅と松岡の腹の据わりを称えるしかなく。
Archipenkoの倅たちが、しっかりと逃げてくれてドスローでなく流れる展開を作ってくれて見応えありました。
一完歩が不味く出遅れても慌てず馬の持続能力を信じてインベタで進み、終い直線でヴィクトリースペースがバックリ開いたところを突き抜ける良い脚を見せてくれましたね。
仰る通り、香港Cターゲットのローテを企て挑んで欲しいところであり。

それと、相変わらず外人はストレートな質問をぶつけますね。(苦笑)
国内にはルメールなどトップジョッキーがいるのに、何故乗せないのだ?と、畠山師に問うところは欧米か!ですね。w
畠山師、「彼が乗ると1番よく走る」と返答。
今回の優勝は、陣営とジョッキーとの信頼感で勝ち取った昭和の薫りがする栄冠と思うところです。

あと今度も、この時期マイルだと短い有力牝馬はドバイや香港クイーンエリザベス二世C挑戦などは良いと思ってしまいますね。









Posted by ギャロップ at 2019年04月29日 00:44
>ギャロップ様

 いつもコメントありがとうございますー。

 ビューティージェネレーションは本当に国内ではウィンクスっぽい立ち位置になってますよねぇ。敢えて誰も喧嘩を売りに行かない感じで、レースとしては面白味が全然なかったです。

 その上で、確かに国内での連勝記録の栄誉と賞金稼ぎのメリットを捨てて、果敢に遠征に打って出てくれるのか、は注目ですよね。
 ただ正直、マイル路線はこの後香港では目標にすべき大きなレースはない、というのも、トップマイラーが安田記念に参戦する動因ではありますし、普通に勝ち負けは出来るはずですから、JRAも全力で来日誘致をして欲しいところです。

 むしろこのまま香港に引き籠るなら、ダノンプレミアムが香港マイルに乗り込んでしまえば、とも思いますけどね。。。勿論そこまでに、ダノンプレミアムが国内マイル路線に君臨していれば、ですけれど。

 ナックビーナスはスタートさえまともなら、もう少しは粘れたはずなんですけどねぇ。
 ただやはり、初の海外での体調管理の難しさはあったでしょうし、その意味では逆にウインブライト陣営は良くやった、というべきか、それ以上に馬の成長と胆力を誉めるべきか、って感じですね。

 とりあえず年末の香港スプリントに関しては、もしもしスプリンターズSをモズスーパーフレアが逃げ切るか、2~3着まで善戦出来たなら、その足で連れていって欲しいです。
 このレベルの快速馬がブンブンテンから飛ばしていけば、ラタン的なスロー専用の後傾スプリンターはさぞ面食らうでしょうし、昨日の馬場を見ても、全力で飛ばしていけば7秒半ばのレコード寄りの時計は出そうですから、その点でもモズには向くと思うのですけどね。

 しかしメインはまさかレコードとは驚きましたね。日本式で言えば57秒台決着ですし、イメージとして皐月賞みたいなレースでした。
 ウインブライトが負けた皐月賞も59,0-58,8の平均高速勝負で、あの頃はそのスピードに太刀打ちできなかったのが、今は内枠の利が大きかったにせよ余裕綽々の追走からしぶとく長く脚を使えて、本当にこの血統のタフさをしみじみ感じさせますね。
 そして本当に、あのアーキペンコの全兄弟は仲が悪いですね(笑)。おかげで流れが向いて、逆に追走力が足りない香港伏兵組が全滅して、日本ファンとしては万々歳なのですけれどね。。。

 どうしても海外ですと、いい馬にはそれに相応しいジョッキーを乗せる、というのが不文律に近いところはありますからね。
 その意味でもいいチャレンジだったと思いますし、しかしその騎手実績の乏しさもあるのか、香港オッズではウインブライトの単勝48倍、三連複でも72倍ですからねぇ。
 どちらも日本オッズでは1/6ですから、改めて日本オッズで買うと損だ、というのは浮き彫りになる結果でもありましたね。
Posted by clover at 2019年04月29日 04:37
こんばんは★

ウィンブライトのエリザベス二世カップ制覇にはジーンと来ましたねえ。

もう、昨年の春先とはまるで別馬ですね。

有馬でも観たい一頭ですが、適鞍がありそうでない馬なので海外転戦しても面白そうですよね。

ちなみに、春天とエリザベスカップの馬券は見事に外しましたが端午Sとチェアマンズスプリント当てて何とかプラス収支になりました(笑)
Posted by J.N at 2019年04月29日 23:41
>J,N様

 いつもコメントありがとうございますー。

 ウインブライトは去年も中山記念勝っていますけど、それと比較してもやはり後半特化で戦えるレベルが全然違ってきていて、それだけ後輪にパワーがついたということなのでしょうね。
 意外と距離適性が読みにくいところはありますし、2500mでも全然やれそうとは思うのですけど、今回の適性を見れば年末も香港の可能性は高いでしょう。
 余力があるようならば。宝塚でも見たいですね。

 レースの盛り上がりと予想の収支は別物、というか、端午Sは中々難解でしたのに素晴らしいですね。まああの軽い馬場で先行有利なのは見えていましたけども。
 GWもまだまだ先が長いですし、じっくり頑張っていきましょう。
Posted by clover at 2019年04月30日 04:35
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