2017年11月01日

2017 マイルチャンピオンシップ プレビュー

**★はじめに**

 今週は秋の古馬マイル王決定戦・マイルチャンピオンシップが開催されます。
 古くは日本で一番堅いGⅠ、と呼ばれた事もありましたがそれも今は昔、様々な路線から馬が集まる中で問われる適性も変化していき、一筋縄ではいかないレースとなっています。
 今年はそれに抜けた実績馬がいないという点も混戦模様に拍車をかけ、未だ時計の掛かる馬場コンディションへの適応など含めて難しいレースになると思いますが、まずは今までの足跡を見ていく中で的中へのヒントを探っていきましょう。

**★コース傾向分析**

 今週から京都はCコース替わりですが、多分これはあまり影響がないと思います。
 昨日の時点でも結構内伸びが顕著で、コース全体が満遍なく荒れている、というイメージでしたので、仮柵が広くなっても基本的にはどこを通しても差はない、フラットな条件でのレースになると考えます。当然ですが、多少パワーの要る馬場に対する適性は重く問われます。

 過去10年の平均ラップは、34,5(11,50)-23,5(11,75)-34,7(11,57)=1,32,7(11,59)という推移になっています。
 基本的に天候が安定していて、稍重より悪化した条件での開催がないので、時計面でもそこまでブレは出ていないですし、基本的には前後半フラットに流れての底力勝負、強い馬がきっちり台頭しやすいレースであるのも、かつては荒れないレースだった要因のひとつにはなるでしょう。

 ただ近年の淀は顕著にコーナーワークでの有利不利が出やすい条件になりやすく、特に高速馬場ですとそれは顕著です。
 今年は昨日の馬場水準から考えれば、流れて1,33,0前後、平均なら1,33,5くらいが目安になってくると思うので、そこまで枠順に目くじらを立てずとも平気かもしれませんが、内を立ち回る器用さがある馬は、基本的に内枠を引ければそれに越したことはない、と言えるでしょう。

 あとラップバランス的に言及しておくなら、過去10年でも前半5年くらいは、平均ラップに程近い波の少ないレースであることが多かったですが、近年は中盤2Fが極端に速いか遅いか、の二極化が見て取れます。
 これはおそらく、4F目に上り坂があるコース形態の中で、先行争いが激化するとペースが緩まず坂に入っていって、逆にすぐに隊列が落ち着けば前の馬が坂でコントロールしようとする、近年に特有の現象だと感じますね。

 今年は逃げ馬がマルターズアポジーで、この馬はどちらかというと中盤を緩めず後続の脚をなし崩しにしてくるタイプではあります。
 ただ近2走のマイル戦がそういう中盤を作っているからといって、京都のGⅠの舞台でコース経験に乏しい武士沢Jがどう出るか、というのは決め打ちするのは怖いところですし、番手勢もウインガニオンあたりではあまりつついていきそうもないので、この辺りは枠の並びなど総合的に判断しないとならない部分でしょう。

 ともあれ、中盤が緩むと中距離型の差し馬が台頭しやすく、緩まないとスピードタイプの前残り、差してくるにしてもタイトにコーナーを回ってきた馬などの条件がつくようになるので、ここのイメージはしっかり持っておいた方がいいと考えますね。
 後はまた週末、特に土曜日に傘マークがついているので、その影響度や馬場の変化にも繊細に注意を払いたいところです。


**★有力馬分析**

・イスラボニータ

 3歳時に皐月賞を制しダービーでも2着に入った、フジキセキ晩年の最高傑作も、古馬になってからはGⅠでは軒並み惜しい競馬ばかりで、タイトルを積み重ねられないまま6歳の秋、競走馬生活の晩秋を迎えています。
 ただ先輩皐月賞馬のロゴタイプも6歳で安田記念を制し、7歳でも惜しい2着と結果を出していますし、この馬もまだまだ能力の減衰は感じられませんので、最適条件のこここそしっかり結果を求めたいところです。

 馬のタイプとしては、マイルでは最低限の追走力と持続力を併せ持ち、かつ若い頃からの最大の武器である要所での瞬間的な加速力、切れ味の質は今も健在です。
 ただその分どうしてもラストはちょっと甘くなる傾向がある為、基本的には前半のポジショニングが非常に大切な馬です。
 馬群を割ってくる器用さは充分以上に持っていますので、この馬の場合はなにがなんでも内枠が欲しいですし、内枠を引いたうえで2年前のような出遅れさえなければ、ほぼ確実に勝ち負けに加わってこられると思います。

 安田記念は包まれる不利などもありましたが、超高速馬場でのスピード決着にも少し適性が向かなかった部分はあったと思っていて、去年同様にかなり重くなって相対的に時計の掛かる馬場は悪くないでしょう。
 前走を見ても、タフな馬場はいいけれど雨で滑る馬場、ノメる馬場はイマイチですので、雨の影響は払拭されて、より時計が掛かる良馬場で内枠、という条件なら本命も考える馬です。外枠なら流石に連下までにすると思います。

・エアスピネル

 前走の富士Sでは馬場を味方に圧巻の突き抜けを披露し、改めてマイル路線ではトップクラスの実力があることをアピールしてきました。
 先週落馬の影響で騎乗を自粛した武Jが復帰できるかも気になるところですが、馬のタイプとしては完全な時計勝負よりちょっと時計の掛かる今の馬場はプラスに思えますし、渋っても問題ないのは心強いところで、現状は連軸としては最右翼の一頭だと思います。

 この馬もラストは甘くなるタイプですし、逆に追走面はほぼ不安がないので、どちらかと言えばガンガン流れて、隊列が広がる中で好位を確保、というのが理想的でしょう。
 前走は内から立ち回れましたが、あれは雨の影響で馬群が大きく広がっていた恩恵もあったと思いますし、内に凝縮する中でタイトに、となると折り合い面含めてちょっと不安がありますので、この馬の場合は極端な内よりは真ん中くらいがベストに思えます。
 当然大外などは嫌ですが、どんな展開でもしっかり一定の力は出せるタイプですので、重い印も当然頭に入れつつ、無印には絶対に出来ない馬だとは思います。

・レッドファルクス

 スプリンターズSを連覇し、春の安田記念でも3着と距離に目途をつけているレッドファルクスが、デュランダル以来の秋のスプリント・マイル路線統一王座を狙って東上します。
 前走は騎乗としてはそこまで噛み合わなかった中でも、一頭だけ次元の違う持続力を発揮しての鮮烈な勝利でしたし、最近亡くなった父スウェプトオーヴァーボードの後継種牡馬として一層の箔をつける為にも、このマイルGⅠは是非とも勝ち取りたいタイトルです。

 馬自身のタイプとしては、坂の下りからのロングスパートになりやすい京都マイルは適性が高いと思います。
 マイルになれば前半のポジショニングも多少楽になりますし、とにかく持続力が段違いに優れているので、早い段階で外目に持ち出して強気に動いていっても最後まで止まらない、そういう競馬が出来れば外から一気に全てを飲み込むことも充分に可能でしょう。

 懸念材料としては、淀自体ははじめてなので、坂の下りで加速していく条件で上手くコーナーワークで脚を使えるか、という部分と、後は安田記念で距離克服はしたものの、あの時は超高速馬場の好時計決着でしたので、少しタフな馬場でのマイルの総合力勝負で削がれないか、というところでしょうか。
 後は当然これまで手の内に入れていたM・デムーロJからの乗り替わりも気になりますが、C・デムーロJもノンコノユメなどを見てもわかるように、兄同様に動くべき馬ではしっかり外から動いていく、そういうメリハリを持って乗れるタイプだと思います。

 今年の京都の重賞でもしっかり結果を残していますし、クイーンズリングでは兄の威厳に屈する形になりましたが、今週こそはバトンをしっかり受け取っての快走に期待できるかな、と見ていて、こちらも重い印まで視野に入れています。
 どちらにせよある程度後ろから行く馬ですし、高松宮記念あたりを見ても器用にインを立ち回ってどうこうよりは外から出し切りたい馬なので、外過ぎない外、10~12番枠くらいが引ければ最高なのではないでしょうか。

・サトノアラジン

 秋天こそ極悪の不良馬場に殺されて全く競馬をせずに帰ってくる事になりましたが、その分ダメージは少なかったでしょうし、改めて安田記念を大外一気で差し切った豪脚をここで披露できるか、注目の一頭になります。

 この馬の場合、多少ロスがあっても外から入っていった方が破壊力が増すのはレッドファルクス同様で、安田記念の2頭の差は枠の差、立ち回りでどれだけスムーズに運べたかの差、とは思っているので、今回も色々と勝ち負けに加わるという観点では条件が付く馬ではあります。
 本質的には超高速馬場巧者ですので、今の淀がプラスとは思いませんし、雨の影響が残れば尚更、となりますが、ただ去年も同様に重い馬場で、苦手なインを立ち回っても不利がなければ、という所までは肉薄しているので、マイルで良馬場である限りは軽視はしない方がいいでしょう。

 ただそれでも基本ポジションは取れませんし、追走力は高いのでどんなペースになっても一定差し込んでくるとは思いますが、競馬のスタイルの幅はどうしても狭いので、勝ち負けに至るには、馬場の恩恵がない以上はある程度タフなペースと外枠が必須かな、とは見ています。
 他に面白い馬も多い舞台ですので、事と次第によっては印が回らないかも、というくらいで、基本的に差し馬の序列としては、安田の結果とは反する形ですがレッド>サトノで見ておきたいとは思っています。

・サングレーザー

 春は条件戦でも苦戦していた馬ですが、夏前から距離短縮と成長が噛み合ったかあれよあれよと4連勝、一気呵成の勢いでこの舞台に登り詰めてきました。
 イメージとしては3歳時のデュランダルを彷彿とさせ(まあそれだとここは家賃が高くて負けるって話になりますが)、とにかくゆったり入っての瞬間的な爆発力は現状でもトップクラスのものを秘めていると思えます。

 ただずっと1400mで勝ってきていて、本格化前とはいえ1600mにあまり良績がないのは不安要素になりますし、どちらかと言えばスピード色の強い、中盤緩まない流れの方がプラスになるのかな、と感じます。
 後は馬場が渋っても対応できる事と、前走を見てもわかるように内からそれなりに鋭く反応できる事を踏まえると、ある程度渋りが残る中で内枠ならちょっと怖さが出てきますが、良馬場で外枠なら流石にまだ足りない、という見立てになります。

 流れ自体はアポジーがいて、緩めずに進めていく公算がそこそこ高いので、それ以外の要素で噛み合いそうなら印を回すと思いますが、それでも重い印までは考えていませんね。
 流れに合わせて常識的に乗る福永Jに戻ることも含めて、勢いは買っても強調材料は乏しい、とは思います。

・マルターズアポジー

 今年は小倉大賞典と関屋記念で圧巻の逃げ切り、他の馬の脚をペースを緩めずに削いでいくスタイルが大分板についてきたように感じます。
 大阪杯の結果などからも、今は2000mより1600mの方が噛み合うでしょうし、前走のように極端な高速馬場で、飛ばしていったつもりでも平均ペース、という形ですと決め脚で劣りますが、その点今の重い馬場は俄然不気味さを増す要素に感じます。

 道悪自体は実績はないですが、若い時代の条件戦などですので、本格化した今ならわからないですし、去年同様に46-47くらいのバランスを意識して、かつ中盤緩めずに入っていければそれなりに面白い競馬は出来るでしょう。
 ただそういう前傾の流れでもうまく適応できるエアとイスラは強敵ですし、ある程度つついてくる馬もいないとは限らないので、流石に頭までは余程恵まれないと、とは思います。
 それでも圏内粘りこみくらいはあって不思議ないと思いますし、好枠を引いて内が残る馬場が維持されているなら積極的に拾っていきたいかなと考えます。

・ウインガニオン

 この馬も春から夏にかけて一気に力をつけてきました。
 ここまでの戦績からすると夏馬の感は強いですが、本格化した今ならここで走っても不思議はなく、好位で器用に立ち回れる点も含めて気になる一頭ではあると思います。

 ただ、この馬の好走実績は地味にスローから後半分散しての持続力勝負に限られている感はあり、中京記念や関屋記念などもこの馬の位置ではややスローからかなりのスロー、という計算になりますので、アポジーが積極的に流れを作ってきた時についていくと追走面での危うさは出る可能性があります。
 逆にアポジーと息を合わせてスッと隊列を固め、47-46,5くらいのバランスのレースに持ち込めれば怖さは出てくるものの、流石にそこまで恵まれる可能性は低いかな、とは思っていて、どちらにせよ先行馬の序列としてはアポジーよりは下、になります。

 このタフな馬場自体は合うと思いますが、特に流れた時はより面白い馬がごろごろいますので、並びを見てスローもある、と思ったら拾うかもですが、基本的には無印評価になるかなと思っています。

・ペルシアンナイト

 GⅠで快進撃を続けるM・デムーロJを鞍上に迎えて心強い事一入のペルシアンナイトも、皐月賞で僅かにGⅠタイトルに及ばなかった悔しさを、改めてマイルの舞台で払拭できるか注目です。
 馬のタイプ的にはある程度バランス型ではあり、かつアーリントンCなどを見ても、少しタフな馬場で持続力を引き出すことは長けている、という印象を持っています。

 前走は重くなったインを立ち回ってイマイチでしたし、シンザン記念もそうでしたが渋った馬場自体はあまり良くなさそうで、まず天気の影響は見ておきたい馬です。
 先行力はそこまででもないですが、流石にサトノアラジンあたりよりは前に入れるでしょうし、持続力も最上級ではないもののそこそこ、というレベルですので、それこそ昨日のモズカッチャンのように、立ち回りの絶妙さがないと頭までは厳しい、とは感じます。

 これまでの内容からも、余りインに拘るよりは外から勝負に行きたいですし、真ん中くらいの枠で中団くらいにつけて、じわっと下りから徐々に動いていく形が取れればチャンスはありそうで、それに今はミルコJってだけで無視は出来ないレベルですからね。
 世代レベルが懸念されていた3歳勢ですが、ここにきてサングレーザー、スワーヴリチャード、ウインブライトに昨日のモズカッチャンとしっかり重賞で結果を残し始めていますし、この馬もその潮流に乗っての躍進なるか、秋華賞にエリ女と立て続けにGⅠを奪取したハービンジャー産駒のヴィンテージクロップの一角を担う馬としても、今の淀は噛み合うはずなので楽しみですね。

・レーヌミノル

 流石にここ2走は距離が長かったのはあるでしょうし、かつ距離不安から必要以上に控える競馬にシフトしてしまっていたのも、この馬の良さを阻害する要因になっていたと思います。
 やはりこの馬のベストのレースは桜花賞になりますし、あの46,5-48,0という稍重馬場でのハイペース戦で、追走で削がれず勝負所での一瞬の決め脚で粘りこむのが真骨頂、かつ本来はもっと堅実に走れる馬のはずです。

 秋2戦で馬の気持ちが切れていないかは心配ですが、今回は積極性の強い和田Jに乗り替わってきます。
 マイルに戻って、ここは出来る限り積極的に前をつつく競馬をして欲しいなと思いますし、理想としてはアポジーのすぐ外、番手でハイペースに乗っかっていく形、もしアポジーが緩めるそぶりを見せたならつついていくくらいの、一か八かの先行策が見たいですね。そういう競馬が出来れば、世代レベルの高い3歳牝馬の中で桜花賞を制した実力は、そこまで引けを取るものではないと思っています。

 和田Jも昨日は、あれだけのジョッキーが淀に集結する中で3勝を上げ、更にはエリ女でもあわや!のシーンを演出しており、今年は非常に調子がいいです。
 秋の淀のGⅠ戦線は、ラビットランにポポカテペトル、そしてクロコスミアと全て人気以上に持ってきて4⇒3⇒2着という推移ですし、不惑の年を迎えて円熟味を増したその手綱捌きで、そろそろオペラオー以来のGⅠ制覇に手が届いても、とは思うので、そういう心情込みでも印は出来れば回したい、と思っている馬です。

・クルーガー

 穴として一番面白いのはこの馬かな、と感じます。
 前走は長い休み明けながら、後方から鋭く脚を伸ばして3着と、エアとイスラという強敵相手に一定の結果を残しました。
 元々京都マイルはマイラーズCを制している得意な舞台ですし、キンカメ産駒なので重い馬場、渋った馬場にも適応できる、かつペースが多少上がっても対応できて内も立ち回れる馬なので、有力馬の騎手がエリ女の結果を踏まえて前掛かりになった時に(ダービー⇒安田の時もそうでしたしね)、インで溜めて一呼吸遅らせてスパートが出来れば、結構面白いところまで肉薄できるのではないかと思っています。

 無論かなり条件は限定的だと思いますし、特に内枠は必須でしょうが、常識的な渋りの範疇ならこの馬、ズブズブまでいったらアメリカズカップとかになるかもですが、そのあたりはしっかり馬場の趨勢を見極めて判断したいですね。


**★思い出のマイルチャンピオンシップ**

 個人的に一番思い入れが強いレースで、かつ印象も鮮烈なのは[アグネスデジタル](https://www.youtube.com/watch?v=bOGQhNuulqg)の一戦に尽きますね。
 私はこの年、超ダイタクリーヴァを応援していたので、本番直前に高橋J負傷で、まだ地方所属時代の安藤勝Jに乗り替わりになった時は、申しわけないけれどこれは千載一遇のチャンス!と思ってしまったものでした。。。
 実際にその騎乗も素晴らしく、道中はピタッとインを立ち回ってコーナー出口で中目に持ち出し、残り150mあたりでダイタクヤマトを交わして先頭に立った時は勝利を確信した…………のですが、その時点ではカメラが内に寄っていて外の様子が見えず(貼った画像でもそんな感じですよね)、引きの画面になった瞬間に異次元の脚でアグネスデジタルが差し込んできて唖然としたものでした。

 まあその後の結果的に見て、この2頭は決定的な能力差があったとは言えますが、この時点ではダート馬、という扱いだったデジタルの鬼脚は本当に予想外でしたし、この意外性はこの後も、オペラオーを並ぶ間もなく交わした秋天などでも遺憾なく発揮されていましたね。
 この馬もいつか列伝書きたいのですけど、戦歴が長いのとGⅠシリーズの渦中では全く余裕もなく、正直その前にスポナビブログ自体が終わってしまいそうで残念です。
posted by clover at 04:18| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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