2017年11月01日

2017 エリザベス女王杯 プレビュー

**★はじめに**

 今週は秋の牝馬チャンピオン決定戦、エリザベス女王杯ですね。
 今年は非常に幅広い世代からチャンピオンクラスの馬が集って、近年例を見ないほどに豪華メンバーとなっており、どの馬が勝ってもおかしくないと思える見所の多いレースになりそうです。

 京都は未だ台風の余波冷めやらず、馬場が重いままで推移していますので、例年よりも底力が問われる内容になる可能性も高いですし、騎手も含めて千両役者揃い踏みの中で、果たして悲願のGⅠに辿り着く古豪がいるのか、それとも女王の復活なるのか、或いは一気に世代交代の下克上か、色々と目移りしてしまいますが、攻略のためのヒントを探ってまいりましょう。


**★レース傾向分析**

 近年意外とこのレースは渋った馬場での開催も多く、また展開もまちまちで傾向を掴みにくいところはありますが、とりあえず過去10年の平均ラップは、4-4-3Fで48,4(12,10)-49,5(12,38)-35,5(11,83)=2,13,4(12,13)という推移です。
 思いの外上がりが掛かっている印象ですが、実質的には単騎逃げ馬などの存在が上がりを押し上げていて、後続の馬はヨーイドン、という時も多いです。
 特に近3年は実質的に坂の下りからでもそこまで上がり切らずに、ラスト3Fの瞬発力・持続力勝負になっている傾向が顕著ですので、今の馬場でも流れてタフな展開に極端に振れることまでは考えなくてもいいのかな、と感じています。
 

 京都の2200m戦外回りは、2400m戦よりは1コーナーまでの入りが短く、さりとて顕著に内外有利不利が出るほど距離がないわけでもないので、特に牝馬同士のこの一戦は落ち着いた流れで入っていく事も多いですね。
 2年ほど抜けて前半が速い年がありますが、当然それは大逃げ馬のものですので、それを抜きにすると4Fで49,0くらいにはなります。
 逆に中盤は緩むは緩むものの、序盤がそこまで速くない分極端にはならず大体12,5前後を淡々と刻んで、下りに入ってじわっと加速、けれど本仕掛けは直線に入ってからという、4F戦になりやすい京都外回りの傾向からは少しズレているイメージですね。

 なのでコーナー出口からはそれなりに速いラップを刻むことが多く、そして馬場が軽ければラスト1Fまでほとんどラップを落とさずに走破してきますので、基本的には前目内目で立ち回れる馬、かつ瞬時に加速できる性能を持つ馬が安定して走ってきます。
 今年は少しパワー寄りの馬場になっていて、終末の天気もまた微妙なラインですので、そうなればラストガクンと落ちて持続力タイプの台頭も考えられますし、そのあたりの見極めはしっかりしていきたいところです。

 脚質的にもまず追い込みで勝ち切るのは難しいでしょう。
 京都外回りとはいえスローで団子ですとインを捌くのは難しく、といって外々を回すとロスが大きいですので、後ろからのタイプはまずその差を瞬時に埋められるだけの加速力と瞬発力の質を保持している事、かつそこからの持続力も高い、素材面で抜けたものを持っている馬でないと厳しいのかなと思います。
 逆に逃げ勝っている馬も近年ではダイワスカーレットのみ、後は例外的なクイーンスプマンテの年の行った行ったがあるくらいですので、いずれにせよ極端な脚質の馬は少し評価を抑えめにした方が賢明でしょう。


**★有力馬分析**

・ヴィブロス

 春に錚々たるメンバーのドバイターフを完勝し、凱旋レースとなった前走もインで窮屈な競馬を強いられながら地力を見せて2着と、大目標のここに向けて狂いなく調整を積み重ねてきた感があります。

 基本的には脚を出し切ってこそ、という、素材面の魅力が強い馬ですので、器用な立ち回りが求められるこのレースですと絶対的な信頼までは置けないかもしれませんが、ある程度ポジションは取れますし、持続力はこのメンバーでも屈指のものを持っているので、当然軽視は出来ません。
 去年の秋華賞も内回りとはいえややスローからの4F戦で、相手がパールコードあたりだったのを割り引いても長くいい脚を使っての差し切りでしたし、下りからスムーズに進出する形を作れれば最右翼の一頭には入ってくるでしょう。
 血統的にも今の馬場はディープ向きではないとは思いますが、この馬は兄姉もパワー型で、渋った馬場を苦にしないタイプですので、そこも特に懸念しなくて大丈夫だと思っています。

 枠的には内外極端でない、ポジションがスムーズに取れて自由度の高いところがベストかな、と思いますし、後は枠の並びで包まれそうだったり、逆に外々を回らざるを得なくなりそうだったりしたら少し評価を下げたいところです。
 本当に今回は面白い馬が目白押しですので、枠次第では本命もありますし、連下まで下げる可能性もある馬ですね。

・ミッキークイーン

 古馬になってからは相次ぐ怪我や不調で順調にレースに使えない弱みはありますが、去年もこのレース鉄砲で3着と、常に牝馬戦線では崩れず存在感を見せつけています。

 去年の場合は極端な3F戦でラストも落ちない展開で、一瞬の切れ味に欠けるこの馬には不都合な展開でした。
 今年のVMも同じように、直線でレースラップ10秒台の究極の切れ味を問われて後手を踏んだ格好ですし、阪神牝馬Sのように顕著に仕掛けが速くなって脚を出し切れた場合の破壊力は、このメンバーに入っても当然トップクラスに位置するでしょう。

 無論まだ状態面で万全とは言い切れないかもしれませんが、今年の少し重くなった馬場はプラスになるでしょうし、いい枠からスムーズに運べるようなら充分に楽しみはある一頭ですね。

・スマートレイアー

 7歳秋にもなって牡馬混合の京都大賞典を完勝するなど、未だ衰えを知らない古豪牝馬が、唯一の忘れ物であるGⅠタイトルを奪取するために虎視眈々と牙を研ぎます。

 この馬は年を経るに従って長距離型にシフトしてきた感のある珍しい馬で、それでもVMでも崩れていないように、やはり牝馬路線では屈指の総合力を持っている馬になると言えます。
 京都記念もタフな馬場で、そういう条件なら現役でも最強クラスのサトノクラウンに肉薄する強い競馬を見せていましたし、今の京都はむしろ大歓迎のクチではないでしょうか。

 基本的に長い距離のレースならポジショニングはそこそこ上手くこなしますし、前走こそスタート直後の不利に巻き込まれて後ろからを余儀なくされましたが、あれを絶対視せずに、溜める意識は持ちつつも取れるならできるだけ前へ、というイメージは持って欲しいです。
 この馬も持続力は武器になりますが、瞬時の切れなどはそこまで期待できませんので、ミッキー同様に如何に出し切る形を作るかが大切ですし、勝ち負けまでを考えるなら外枠は嫌ですね。真ん中より内の偶数枠が引ければ理想的だと思います。

・ルージュバック

 2歳時から大器と騒がれた才媛・ルージュバックもはや5歳秋、欲しいタイトルを掴み取れないままにここまできてしまいました。
 
 牡馬混合重賞ではいい成績を残すのに、何故か牝馬限定戦だとは知らない不思議な馬ですが、2200mの淀外回りはこの馬に取っても絶好の舞台にはなると思っています。
 3歳時はポジションが悪すぎて取りこぼした、に近い形の負け方でしたが、近年は先行力を磨いており、ポジショニングの意識が高いムーアJに乗り替わりますので、極端に外でもない限り先団には入っていけるでしょう。

 ただしこの馬も出し切ってこそ、という面があるのと、一気に動かすよりは順々にギアを上げていく方が長い脚を使えるという難しさがあります。
 前走などはミラノが早い段階でペースを一気に上げて、その流れにじわっと乗っかっていく形で良さが出たところはあり、基本待ちの姿勢から、一気に馬を動かすことに長けているムーアJとのコンビが吉と出るかは、今のところ微妙なラインかも、とは思っています。

 でも今年はレース自体の仕掛けが速くなる可能性も充分ありますし、前で受けてしっかり脚を引き出してくれば悲願達成も有り得ますし、非根幹距離に強いマンカフェ産駒で馬場も不問に近いので、楽しみの方が大きいですね。

・ディアドラ

 史上初の重馬場開催になった秋華賞では、ルメールJの巧みなハンドリングに導かれてインからスルッと抜け出し、夏の成長を誇示する形でGⅠ馬にまで昇り詰めました。

 春シーズンから素材的には面白い馬でしたが、ハービンジャーの仔ですし極端に軽い馬場よりはやや渋った馬場、距離も長ければ長いほどいい、というところで、あまりポジションをスッと取れる馬でもないのでこの距離延長は歓迎材料にはなると思います。
 そしてこの馬は器用さも持ち合わせており、かつ好走スポットの幅も広いので、この多士済々のメンバーで展開がどう転ぶかわからない中では、それは大きな武器になりますし、一瞬の切れこそそこまでではないものの、瞬時の加速力自体は持っているのでその点も心強いです。

 今回は岩田Jに出戻りになりますが、ずっと乗ってきた騎手ですので不安は少ないですし、岩田Jらしいインベタの競馬で、ある程度直線馬群がばらける中でスムーズに立ち回ってこられれば、この豪華メンバーでも一気に頂点に登り詰めるチャンスはある一頭だと考えています。
 世代レベルなど難しいところもありますが、ある程度内枠を引けるなら本命を打ってもいい、と思っている馬ですね。
 使い詰めなのは事実でも、前走一気に馬体を増やしてきたように、こういうローテの方が強さを発揮できる稀有な馬でもありますし、常識を跳ね飛ばす快走を期待したいものです。

・リスグラシュー

 アルテミスSを解消して以来、ずっと牝馬路線のトップクラスで堅実に走り続けるものの、勝利の美酒だけはどうしても掴めずにもどかしい戦歴となってしまっています。

 今回は3歳シーズンずっと手綱を取ってきた武Jからテン乗りの福永Jにスイッチする事となりますが、これは正直プラスにはならないでしょう。
 元々スタートもポジショニングも拙く、そして加速性能も低くて要所で置かれる事が多い馬で、今までは武Jがその弱点を糊塗するように上手く乗ってきた感はあり、基本他の馬が仕掛けてから仕掛けるタイプの福永Jですと、より要所の反応で置かれてしまう可能性があります。

 一度エンジンがかかればしぶとい馬ですので、距離&直線が長い事は歓迎は出来ると思いますが、ただ持続力や持久力面でも常に最上位、というほどではなく、必ずどこかで甘くはなるタイプですので、後半型でも強敵の多いここですと、流石に序列は下がってくると思います。
 今のところは秋華賞上位組の中では一番評価しない馬、となりますし、印を回さない可能性も高いですね。

・モズカッチャン

 前走はタフな流れを早めに抜け出す強い競馬で、改めて底力を見せつけることとなりました。

 あのレースでは、ローズSの内容から疑問視していた追走面をクリアしてきましたし、かつ長くいい脚を使う特性をデムーロJが完璧に引き出してくれたと思っています。
 ただそれでも最後甘くなったのは、少なからずペースに削がれた分もあるとはまだ思っていて、その点前半ゆったり入りやすい京都外回りの方が安定してくると思います。

 そして今回もデムーロJが継続騎乗となりますので、この馬がある程度の位置から早仕掛けのスイッチャーになるパターンは意識しておきたいな、と思っています。
 やはり極端な切れ味が問われたり、一気の加速を求められると分が悪くなるのは必定ですので、チャレンジャーらしく坂の下りから前をつつく意識で入ってくれそうで、そうなると全体の仕掛けも前掛かりになりますので、より持続力や底力が問われる可能性が高まります。

 それでこの馬が圏内まで残れるか、という観点ですと、強敵も多いので簡単ではないでしょうが、真ん中くらいの枠から先団の外目くらいを楽に取れるようなら面白さはある一頭ですし、レースを盛り上げてもくれそうで楽しみです。

・クイーンズリング

 前年のこのレースの覇者も、その後の不振続きですっかり人気を落とす格好になってしまいました。

 ただ春シーズンはともかく、前走は出遅れてスローペースの中後ろからになり、早めに外を回して勝ちにいく姿勢は見せての4着ですのでそこまで悪くはなく、今回も噛み合えば上位に食い込めるチャンスは当然出てくると思います。
 この馬の場合は一番の武器が加速力と一瞬の切れ味にありますので、今年のような馬場が歓迎、とまでは言えないかもしれませんが、去年同様内目内目で我慢して、引き込み線のあたりでスッと進路確保して一気に動いていく形を作れるなら警戒はしておかねばならない馬ですね。

 果たして兄より優れた弟はいるのか、C・デムーロJも淀で3週連続の重賞制覇がかかる舞台になりますし、苦労の果てにフランスでトップジョッキーの座を掴み取った実力をここでも遺憾なく発揮して欲しいものです。

・クロコスミア

 前走は有力馬が後ろで牽制、または内枠で動けない中、まんまとスローペースに持ち込んで逃げ切り勝ちを収めました。

 今回もこの馬か、プリメラアスールあたりが逃げ候補となってくるでしょうし、基本的にガンガン飛ばしていくタイプではないので、序盤はゆったり入れると思います。
 このメンバー相手ですとスローに落とし過ぎると後ろの早仕掛けを誘発してしまって、出来るだけ本仕掛けを待ちたいこの馬としては苦しい競馬になりそうですし、札幌のWASJ戦の内容からしても、せめて中盤からじわじわ引き上げて、平均からややスローくらいの流れに持ち込んで本仕掛けを直線まで待てれば、距離自体は克服できると感じます。

 例年のレース傾向的には警戒して然るべき馬ではありますが、今年のメンバーですと流石にちょっと家賃は高いかな、とは思いますし、番手で実質的にレースを支配してどこまで後続を幻惑できるか、上位に食い込むにはアイデアがいる馬だと思いますので、今年好調の和田Jの強気な手綱捌き、バランス感覚には注目ですね。

・ジュールポレール

 前走出直しの準オープンを完勝して、満を持してここに駒を進めてきました。

 馬のタイプとしてはこのくらい距離があってもやれそうで、むしろ狙いたい、くらいの事はVMの回顧で書いた記憶がありますが、ちょっと今の荒れた馬場が歓迎、というタイプではないなぁ、と感じます。
 条件戦の内容もスローからの持続力戦で、加速力や切れ味を伴う質の高いものであり、素材面で引けを取らないとは思うのですが、本格化前とはいえ一貫ペースの2000m戦では崩れていたりもしますし、今の馬場で底力が強く問われる形ですと、本質的な距離適性が出てしまうかなと懸念しています。

 無論この相手関係なら楽に前目は取れますし、去年の様な3F瞬発力戦になれば台頭してきても、と思いますが、今のところはそういう楽な展開にはならない想定で考えていますので、その分評価は下げざるを得ない、という所ですね。

・エテルナミノル

 中1週で出てくるのか、という点はありますが、前走の八坂Sは非常に強い競馬でした。
 いかにもエンパイアメーカーの仔らしく、パワーを要する馬場で一頭だけ群を抜いた切れ味を発揮して突き抜けてみせていて、距離延長がプラスとは言えないでしょうが、もしも今週末も雨が降って重い馬場になった時には、この適正の高さは警戒に値すると思います。

 元々垂水Sあたりで後半特化の持続力戦にも一定対応は出来ていますし、好枠を引いて序盤上手く誤魔化しつつも自然にポジションが取れる形になれば、タフな馬場で他の馬が苦労する中スイスイと、というシーンが見られるかもしれず、本質的なレース傾向にも噛み合う脚質と性能ですので、その動向には天候含めて注目しておきたいところですね。


**★思い出のエリザベス女王杯**

 このレースも色々と面白いドラマを生んできたレースになりますし、古馬混合になってからはずっと見続けているレースでもありますので、様々な名シーンが脳裏を過ぎります。

 その中でもまず特に印象的だったのは、[トゥザヴィクトリー](https://www.youtube.com/watch?v=EuCKk4tQGRY)が悲願のGⅠ制覇をまさかの追い込みで決めたレースですね。
 この年はテイエムオーシャンはじめ3歳馬の層が厚く、秋華賞の上位組がこぞってここに駒を進めてきた事で大いに盛り上がりましたし、それを迎え撃つ古馬勢も中々の顔ぶれで、今年のようにワクワク感のあるレース前の様相でした。
 そしてレースも非常に見応えのあるものとなり、大逃げ馬がいて縦長になる中、馬群が内外大きくばらけての直線、残り200mからの上位5頭の熾烈な叩き合いは本当に迫力があり、レースの面白さ、としてはこれが屈指ではないかと感じますね。

 そして純粋にその強さに驚嘆した、という意味では、ファインモーションも捨てがたいですがやはり[スノーフェアリー](https://www.youtube.com/watch?v=PYwCZ2oXN5s)の一回目が白眉でしょう。
 この時もかなり馬場が悪く、速い逃げ馬がいて全体的に淀みのない流れになる中、道中もコーナーも直線も徹底して内に拘り、力強く突き抜けてぶっちぎったレースぶりは正に驚嘆の一言で、この時期にはもうJCでもほとんど外国馬の活躍が見られなくなっていただけに衝撃もひとしおでしたね。

 今では日本でも引っ張りだこ、押しも押されぬ世界のトップジョッキーであるムーアJもこの時は26~7歳、今のように大舞台で活躍する乗り手に躍進する過渡期だったと思いますし、一人だけ風に揺れるダブダブした騎乗服とも相俟って、人馬ともに硬骨な野武士のような印象を鮮烈に植え付けていった一戦でした。
 もう欧州からこのクラスの馬は滅多に来てくれないのは寂しい限りですし、そのあたりは本格的に制度改革に乗り出してもいい頃じゃあないかなと、このレースを見るたびに思ってしまいますね。
posted by clover at 04:18| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください