2017年10月18日

2017 菊花賞 プレビュー

**★はじめに**

 今週は牡馬クラシックの最終章、もっとも強い馬が勝つ、と言われる菊花賞ですね。
 独特の雰囲気を持つ淀の長距離戦、今年はダービーの1~3着馬が不在とかなり手薄なメンバー構成にはなってしまいそうですが、マヤノトップガンやマンハッタンカフェなど、夏の上がり馬から一気にチャンピオンホースに登り詰めた例もありますし、今年もこの距離で躍動する強い馬が台頭する事を大いに期待したいところです。

**★レース傾向分析**

 淀の3000mはスタートしてからすぐに上り坂、そして下り坂というロケーションですので、スタート直後からいいポジションを取るべく出していくと、坂の下りで引っ掛かってスタミナが持たないとされる、非常に繊細な手綱捌きが要求されるコースです。
 また近年は馬場の高速化が顕著になり、その分コーナーごとにそれなりに速いラップを踏むパターンが増えてきましたので、基本的には前に壁を作りやすく、ポジションも取りやすく、コースロスもない内枠が圧倒的に有利な舞台と化しています。

 距離が長いのでラップは5Fごとの区切りで見ていきますが、過去10年の平均は60,5(12,1)-63,1(12,62)-60,3(12,06)=3,03,9(12,27)という推移になっています。
 基本的には前半のゴール板前あたりまでは、ポジション争いと下り坂の影響もあってそこそこ流れ、1コーナーから緩み出して二周目の坂の上りまでは緩いペース、そして下り坂に差し掛かってからの後半4Fで速いラップを踏んでくるものの、極端に切れ味の質は問われず、長くいい脚を使う事が求められています。

 当然ながら最序盤のポジショニングは重要で、特に近年は馬群が凝縮して展開する事も多々あり、外枠の馬が内目に潜り込むのは簡単ではありません。
 コーナーを6回通すことになるので、その分だけ距離ロスの影響も大きいですし、最後の4コーナーではかなり速いラップも問われるので、この距離を淡々と追走して尚高い持続力を引き出せるレベルの馬でないと、外から一気に差し込むのは難しい条件です。

 ただし今年は少し様相が違っていて、先週から不動明王の如くに列島近辺に居座っている秋雨前線、これが今週もまだまだその勢威を奮う模様です。
 昨日の秋華賞でも史上初の重馬場決戦になりましたし、そこから晴れ間が少なく断続的に雨が降る、という事となれば、例年に比べて純粋に芝の状態も良くなく、かつ当日も重馬場開催になる可能性はあります。
 そうなると、例年よりもよりスタミナ色が強い、古色蒼然の菊花賞に立ち返る可能性も見ておきたいですし、ここも非常に難しい一戦になることは間違いないと感じています。

**★有力馬分析**

・アルアイン

 栄えある皐月賞馬でダービーも5着と、春シーズンの実績としては明確にこの馬が図抜けています。
 厩舎や牧場の使い分けの方針もあったのか、前哨戦はわざわざ関東のセントライト記念でしたが、明らかに叩き台のここでも、特殊な馬場コンディションの中でミッキースワローの一瞬の切れには屈したものの、クラシックホースとしての貫禄を示す内容ではありました。

 血統的にスタミナ不足は指摘されていますし、私もこの馬のべストは2000m近辺だろう、とは考えていますが、それでも近年の淀の長距離は立ち回りひとつでなんとかなります。
 今年の春天のように全く淀みなく進んでしまえば別でしょうが、少なくともこのメンバーでそういうタフなレースになる公算は低いでしょうし(そういう流れに持ち込んで欲しい、と期待する馬はいますが)、序盤のポジショニングの巧さと操縦性の高さは折り紙付きです。
 少なくとも良馬場なら勝ち切るまではともかく凡走はしない、とは思っていますし、当然ながら内目の枠を引ければ尚更に重い印まで視野に入ってきますね。

 ただ重馬場になった場合は少し事情が変わってきます。
 重自体は千両賞の内容からもこなせる馬だと思いますが(シンザン記念はどん詰まりだったので除外していいでしょう)、流石に昨日のように明確に時計がかかってスタミナが強く問われる条件になると、この馬の持ち味である後半の持続力そのものを引き出す条件とも適応しなくなりますし、危うさは増してくるのではないかと考えています。

・キセキ

 本番との直結度が非常に高いトライアルの神戸新聞杯も、厳しい位置取りになりながら直線しぶとく伸びて2着と、夏の勢いが本物であることを示してきました。
 この馬も長距離がベスト、とは当然感じないですが、それでも絶対能力の高さを考えれば、ここでも勝ち負けに加わる資格を有した一頭ではあると思います。
 キンカメが長距離になるとてんでダメ、という種牡馬ですので、その子のルーラーはどうかとなりますが、母方のトニービンの血脈は重・長距離の鬼のようなところもありますし、そちらの面が強く出れば、という所でしょうか。

 ただレースに入っていってのポジショニングの拙さは、基本内有利・前有利のこのコースでは減点材料です。
 跳びの大きい馬ですので、前走も馬群の中からなんとかこじ開けてきたものの、やはり外から出し切る形よりは少し破壊力が削がれていた感はありますし、理想としては道中内々で、勝負所から外に出して早仕掛け、という事になるでしょうか。

 このあたりはデムーロJとのコンビですので、常に動けるポジションを模索しつつ、昨日のモズカッチャン同様しっかり勝負を掛けに来てくれるという期待は持てますが、良馬場で勝負所外々、のロスを作りつつ他を圧倒できる能力差があるか、まではまだ判断のしづらいところです。
 重は血統面ではこなせそうな雰囲気もあるのですが、本格化前とはいえ春のすみれSの内容がかなりだらしなく、それを踏襲するなら渋らない方が良さそうですね。また当然枠も内目から、最序盤で中団くらいは狙っていきたいところです。

・ミッキースワロー

 セントライト記念では徹底したアルアインマークから、抜群の切れ味を繰り出して一気に世代トップクラスの実力を開花させてきました。
 春シーズンから見所のある競馬は続けていましたし、鞍上が変わった事も含めてプラス材料は多いです。
 血統的にも母方にトニービンの血が入っていますし、折り合いも上手な馬ですので、同世代の長距離ならこなしてきてくれるでしょう。

 やはりポイントは道中の立ち回りになるでしょうし、時々スタートが良くない馬ですのでそこをしっかり決めていいポジションを取る事と、勝負所で進路確保をノーブレーキで持ってくる事が勝利への絶対条件にはなります。
 また未勝利戦の内容から、馬群を割る競馬も可能なのは、インを立ち回りやすい淀の外回りではオプションが増える、という意味でポイントは高いですし、多少渋っても対応できそうなのも強みです。ただし絶対的には良馬場で切れ味を活かす方がいいでしょう。

 昨日菊沢厩舎×横山Jの義兄弟コンビは、アエロリットで苦杯を舐めたばかりです。
 この馬もあまりこのレースで実績のない関東馬ではありますが、一応京都新聞杯で輸送は経験していますし、その点では極端なマイナス材料ではないと踏んでいます。
 無論枠次第でもありますが、この陣営の捲土重来を期待しての重い印も視野に入れている一頭です。

・サトノアーサー

 前哨戦は今までより前目のポジションで勝負をかけるも、上位2頭には完敗の3着でした。
 どうしても不器用さが目立つ馬で、エンジンの掛かりが遅く少しでも渋ると良くはない、ポジショニングもそこまで上手くない、となると、あまり菊の舞台では狙いたくないタイプにはなってきます。

 前走もあの位置から末脚比べで上位2頭に見劣ったのは、素材的にもちょっと物足りない気はしていますし、よほど絶好枠を引かない限りは高い評価はしないつもりではいます。
 まして馬場が渋れば余計にチャンスは少なくなるだろうと思いますし、噛み合い切れば能力的には足りるかもしれませんが、その噛み合う幅がこの条件では非常に狭い、と思いますね。

・サトノクロニクル

 むしろサトノ2頭の中では、距離が伸びて面白いのはこちらでしょう。
 この馬もコーナーでの機動力や瞬発力の質など、色々足りないものがある馬ではありますが、少なくとも最序盤のポジショニングはそこそこ上手くこなせますし、そこまで後半ラップに波が出来にくい淀の外回りの舞台ならば、コーナリングの拙さも致命的にはならないと思います。

 実力差は上位とは少しあると感じていますので、枠の恩恵で前半好位、そこからコーナーで内目を立ち回りつつという条件は必須だと思いますが、ある程度渋っても対応できそうな面も含めて、連下にはぜひ加えたい馬だと考えています。
 ただ現時点でだれが乗るのかはっきりしていませんし、そのあたりも含めて総合的に判断したいですね。

・ダンビュライト

 神戸新聞杯では力負けを喫したものの、なんとか辛うじて賞金順でこの舞台に滑り込むことが出来そうです。
 こちらは距離はともかく、渋った馬場への適正はそれなりに見せていますし、ポジショニングが上手な事も含めて、まず格好の穴馬候補に挙げられる事でしょう。まして去年、エアスピネルをインベタで3着まで持ってきた、淀マイスターの武Jの手綱となれば尚更です。

 ただ現状1勝馬であるように、勝ち味に遅く決め手のないタイプですので、この距離で持久力が問われる流れでも勝ち切るまではどうかな?という感はあります。
 オーバーペースにならない限り基本堅実に走る馬ですので、凡走は考えづらいですが、他の馬がどれくらい力を出し切れる条件になるか、枠の並びなど含めて、この馬の素材の絶対的な評価というよりは、他馬との比較で相対的に序列を決めるべき馬かな、と踏んでいます。

・ベストアプローチ

 期待した前走は中団から伸びあぐねるやや残念な競馬でしたが、元々本番への賞金は足りていた馬で、ガラッと一変に定評のある藤原厩舎の叩き2走目ですから、その点での期待は持てます。
 ポジショニングはそこまで上手ではないので、好走の為にはやっぱり内枠は欲しいな、となりますが、血統的にはガリレオ枝で欧州色が強く、渋った馬場・重い馬場への適正面で期待は出来るかもしれません。

 こちらも脚を出し切りたい、しぶとさが身上のタイプですので、勝負所での捌き方は大切になってくると思いますが、最近調子がいい岩田Jとのコンビで渾身のイン付きが嵌れば、という期待は持てる馬ですね。

・ブレスジャーニー

 2歳時は世代最強と目された馬が、ほぼ一年ぶりにターフに戻ってきます。
 勿論常識的にはかなり厳しく、これで勝ってしまえばサクラスターオーも仰天の偉業になりますが、転厩も含めてどのくらい馬が仕上がっているか、能力を発揮出来るかは注目です。

 ただ2歳時もポジションが取れる馬ではなく、サウジアラビアロイヤルCでも一瞬の切れ味でダンビュライトを圧倒しているように、本質的には直線の長いコース、かつラップにメリハリがついた方がいいタイプだろうとは見ています。
 レース数が少ないので、まだ未知のポテンシャルを隠し持っている可能性はありますが、それでも純粋な適性面だけでもそこまで噛み合う、とは思えないですし、ここは静観する可能性が高いですね。

・クリンチャー&アダムバローズ&ウインガナドル&マイスタイル

 個々に書くほどでもないのでまとめてしまいますが、とりあえずこのレースでの逃げ・先行候補はまずこの4頭になるでしょうか。
 どの馬も血統的に長距離適性はありそうですし、渋った馬場への実績も一定持っていて、結構怖さはあります。
 特に馬場が重くなった時に、前4頭で中盤の緩みも控えめに、かつ仕掛けも早くしてコーナーから引き離していくようなプランが綺麗に嵌った時は、前々で行った行ったの大波乱、なんて可能性を考えてもいい、それくらいの実力はある4頭です。

 アダムとウイン、マイスタイルは出足も安定していますが、クリンチャーは前走を見ても内枠からスムーズに前に取りつけるかは怪しさがありますので、レース傾向とは反する形でも、この馬に関しては皐月賞のように、外からじわじわと自分のペースで前に取りついていく、という形を取れた方がベターでしょう。

 まぁ4頭が離していったとして、多分第二集団の先頭近くにダンビュライトは位置していそうですし、武Jが馬場に惑わされてペース読みをしくじる可能性はあまりないとは思ってはいます。その動きを見てアルアインやキセキも動くでしょうから、後続が脚を余す可能性までは期待しない方が、と思います。
 ただそれでも、タフな展開で後ろの馬が早めに捕まえにいく形で苦しくなる可能性は見ておきたいですし、逃げ馬勢としては極端なスローや中緩みには絶対にしない、適度な平均ペースくらいを作っていく意識・気概があれば楽しみが広がりますね。

・クリノヤマトノオー&ポポカテペトル&トリコロールブルー&マイネルヴンシュ

 こちらも個々に書くほどではない、前走1000万勝ち四天王になります。しかしこうして書いてみると、思いの外好走してもおかしくないな、と思える馬が多いですね今年は。枠ひとつでガラリと結果が変わりそうな大混戦だと思います。

 どの馬も血統的に淀の長距離をこなせそうな下地はありますし、前走の勝ち方も派手さはないもののいかにもしぶとく脚を使えていて、成長を感じさせる内容でした。
 まぁポポカテとトリコロールは、青葉賞で完敗だったところからも実力的にはまだ一枚足りない、とは思っていますが、トリコロールの方は前走馬体を大きく増やしながらの勝利で、そのあたりにチャンスを見出せるかもしれません。ただポジショニングが良くない上に、動き出しの意識が薄い戸崎J、ってのはあまり噛み合うとは思えないところはありますが。

 マイネルヴンシュも2走前にアドマイヤウィナーに完敗しているので、そのアドマイヤが神戸新聞杯5着、というのを見れば、常識的にはまだ少し足りない、という印象になります。

 前走勝ちの距離が1800mと、あまりこの距離に直結しなさそうなクリノヤマトノオーが、このメンバーでは一番個人的には穴目として面白いかなと踏んでいます。
 白百合Sもある程度出し切ったサトノクロニクルと互角の内容でしたし、前走はともかく本来ある程度ポジションが取れる馬でもありますので、勝負付けが済んでいない、という意味でも魅力はあるかなと思います。

 ただ馬場が渋ればより混沌としてくる中で、一連のレースで見せている力関係がガラッと書き換えられる可能性もありそうで、秋華賞は渋っても上位安泰だと感じていましたが、こちらは本当に一筋縄ではいかなさそうですね。 


**★思い出の菊花賞**

 一番思い入れが強いのは当然ライスシャワーなんですけれど、レースとしてすごく好きなのは[ソングオブウインド](https://www.youtube.com/watch?v=fQyRxumFiuM)が勝った年ですね。

 戦前から大逃げを示唆していたアドマイヤメインが非常にタイトなペースを刻んでいって、それを三冠がかかったメイショウサムソンが堂々早めに動き出す王者の競馬で追撃、そしてそれをマークしていたドリームパスポートがしっかり交わしたところに更に後ろから伏兵ソングオブウインドが急襲と、淀の長距離戦の面白さが凝縮した名レースだったと思います。
 今年の逃げ・先行馬も、この時のアドマイヤメインの様な果敢なレースメイクをして欲しいですし、それを強い馬が捕まえにいく中で最後にどういうドラマが見られるか、そういうワクワク感のあるレースになってくれればなぁと思います。 
posted by clover at 04:07| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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