2017年10月01日

2017 スプリンターズS レース回顧

 爽やかな秋風が吹き抜ける絶好のコンディションの中で行われたスプリンターズSは、後方から異次元の持続力を見せつけたレッドファルクスが残り100mでまとめて差し切り、見事サクラバクシンオー・ロードカナロアの最強スプリンター2頭に続く当レース連覇を達成しました。レースを振り返っていきましょう。

 まず本日の中山芝コースのコンディションですが、昨日から更に乾いてきて、しっかり時計の出る高速馬場に戻っていたと思います。
 今日も基本的にスローからの上がり勝負で、ラスト1F最速、なんてのが多かったですが、33,4-34,4と比較的常識的に流れてくれた10Rが1,07,8でしたので、このメンバーでまともにスピード勝負になれば7秒前半は出てこないと、という条件だったと感じます。
 なのでこのレースの1,07,6は、ペースバランスとしても平均にコントロールされた事で出し切ったものではないと言えますし、かつ昨日から感じていた内伸び馬場のバイアスも顕著でした。

 レース展開は、まず好スタートを決めた組の中からワンスインナムーンが1頭抜けた二の足を見せて一気にハナに立ちます。
 それを外からダイアナヘイロー、内からフィドゥーシアが追いかけてこの2頭が2列目、その後ろにビックアーサーとセイウンコウセイのGⅠ馬2頭がつけて、そこに外からネロも加わってきます。

 その内にはまずまずのスタートだったレッツゴードンキがいて、そしてちょっと外の動きがわかりにくいところがありました。
 スタート直後にファインニードルとブリザードがバランスを崩してズルズル下がるシーンがあり、後でパトロールを見ないと正確なところは分かりませんが、ひょっとするとネロあたりがすぐに内に切れ込んできて狭くなった可能性があります。
 ともあれ出足がつかなかったファインニードルが、200m過ぎから外目をぐいぐいと押し上げてネロの列まで進出し、ブリザードもそれに合わせるようにネロの後ろまでリカバーしてきます。

 その外にダンスディレクターがいて、今日は大外枠でスタート絶好でしたが、こうなると今度は折り合いに難しさを見せてしまうのが辛いところなんですよね。
 外で懸命に宥めながらの追走になり、その間にリカバーしてきた馬が間に入って結局外目外目を回される事になります。

 レッドファルクスもまずまずいいスタートでしたが、どうしても二の足では劣って少しずつ下げる形になりました。
 今年は去年より内目の枠だったのも災いし、外の先行馬がリカバーして前に入ってくる中で、少しずつですが前とのポジション差が広がってしまう苦しい形で、デムーロJはこうなれば末に賭けるのみ、としっかり脚を溜め、出来る限りタイトに回りつつじわじわとエンジンを掛けていきます。

 スノードラゴンがドンキの真後ろの最内を追走し、その外にやや出負けしたメラグラーナ、注文をつけたラインミーティアはスノードラゴンの更に後ろの最内にいました。
 そしてもう1頭、こちらも明確に注文を付けてのシュウジがポツンと離れた最後方からレースを進めることとなります。

 レースラップは33,9(11,3)-33,7(11,23)=1,07,6(11,26)という推移でした。
 見ての通り、このコース、このクラスとしてははっきりペースが遅く、バランスとしては平均ですけれど、ハイペースになるのが当たり前の中山1200mではスロー、と見ていいです。実際ひとつ前の1000万下より前半が0,5も遅く、全体時計も0,2しか速くなくて、スピード決着が望ましくない後傾タイプの馬にチャンスが出来る流れだったと思います。

 細かく見ていくと、前半が11,9-10,8-11,2で、2,3F目が例年に比べるとはっきり遅いです。
 これは番手外を取ったダイアナヘイローと、その外につけたビックアーサーが、ここで良し、と折り合いに専念してしまった分が大きいと思っています。
 後ろがつついてこないので、ワンスインナムーンとしては軽く息を入れてしまおう、とコントロールする事が容易でしたし、ワンスインナムーン自体はハイペースでもやれる馬ですけど、それでもこの段階で緩められたのは僥倖だったでしょう。

 逆にダイアナヘイローとビックアーサーに関しては、これまでのレースぶりからすると流れてこそ、というところはあるのに、ここまで消極的に入っていく形になるのはちょっと解せません。
 状態面に不安があったからか、ポジションありきで良しとしてしまったか、ともあれこの2頭の出方がレースからスピード色をある程度剥ぎ取ってしまったのは事実でしょう。これより外の馬が一気に、というのは、流石にああもすんなり隊列が固まってしまうと無謀に近いですからね。

 後半のラップが10,9-11,1-11,7となっていて、ワンスインナムーンの石橋Jの上手かったところは、少し3F目で緩められたけど極端にはせず、かつそこから後続を待ち過ぎずに、コーナー全体を速いラップに持ち込んで、外を回す不利が大きくなる展開にしたところだと思います。
 結果的にインベタしてきた馬が2~4着を占めたレースですから、そこのロスは決して小さくなかったと見ていて、1着からビリまで0,7秒差に犇めく、どの馬も基本的には足を残せる展開の中で、立ち回りの良さ、枠順がもろに影響しました。
 その上で後半要素として高い瞬発力と持続力を同時に問われていて、はっきり言ってこの展開を後ろから差し込むのは至難の業です。

 しかし勝ったレッドファルクスは、その至難の技を易々とやり遂げてしまうのですから恐れ入るしかない、というところです。
 正直なところ今日の騎乗自体はそんなに上手くいっていないですし、レース展開と馬の図抜けた能力に助けられた、という面が非常に大きいと見ています。
 勿論道中下手に動かずにじっと我慢して、直線勝負に徹した胆力と、それでもブレーキだけは踏ませないような細心の進路取りは流石ではあり、その最低限のサポートに馬がしっかり応えた、というイメージですね。

 この馬自身は34,6-33,0というかなりの後傾バランスで走破していて、ただスプリント戦でもう少しテンから忙しくなると、宮記念のように削がれる懸念もあった馬ですので、前半のペース自体はこれくらいがベストでしょう。
 逆に言えばこの馬場で、もっと前が飛ばして7秒前半の勝ち時計になっていたらさしもの末脚でも届かなかったと思っていますし、緩んでレース自体が平均になってくれたのが逆に良かった、と見ています。

 元々去年のCBC賞でも、34,5-32,7の後傾バランスで外々を回して一気にラスト200mで差し込む強烈な競馬を見せていて、今日はそれの焼き直しのような形でした。
 コーナーはある程度タイトに、それでも3~4頭分外目のロスは作りつつですが、直線向くまでは無理に動かさずじっくり入ったことで、この馬にとっては厳し過ぎない程度のロスで済ませ、それがラストの強烈過ぎる伸び脚に繋がっています。
 実際コーナーでは少し置かれ加減のところもあり、ラスト200m地点でワンスインナムーンと5馬身近くの差はあったので、この馬の3F推定は11,0-11,1-10,9くらいではないか、と感じました。

 最後は周りが全て止まって見えるほどの強烈さでしたが、この馬自身としては坂に入って多少なり加速しているかな?というイメージで、この切れ味と持続力の凄まじさは、何度リプレイを見直しても驚嘆するしかありません。
 今日は確実に内伸び馬場でしたし、その中でのこのパフォーマンスは、間違いなく絶対能力だけなら図抜けて強い、と断言できる走りだったでしょう。

 ただ本質的にもう1200mで流れてしまうと噛み合わない、というのはあると思いますので、むしろここからマイルチャンピオンシップを狙ってくるなら大いに期待したいところです。
 あのレースも坂の下りからの4F持続力戦になりやすい傾向ですし、出し切れればマイル路線でもトップクラスだと思うので、デュランダル以来の秋の短距離GⅠ2階級制覇の可能性も充分に有ると踏んでいます。本当に今日は素晴らしい走りでした。

 2着のレッツゴードンキは、今日は完璧に噛み合いましたね。それでも勝ち切れないのは、もはや相手を誉めるしかないと思います。
 スタートも今日は先ず先ず良く、前に壁を作れる枠なのである程度積極的に中団を取れて、折り合いもそんなに苦労せずスムーズに追走できていました。
 3~4コーナー中間から、ビックアーサーが正攻法で外から押し上げる展開になり、他の馬もそれに合わせて外に振られる馬が多くなって、がっぽりと空いたインコースを楽々押し上げることが出来たのは僥倖そのものでしたし、コーナリングだけでレッドファルクス比較でも3~4馬身は得しているように感じます。

 かつこの馬もスプリント戦では後傾バランスの方が適性が高い馬ですので、しっかり後半の加速力とそれなりの持続力を発揮して、きっちりワンスインナムーンを捕まえたのですから普通のレースなら勝っていた、と言えるでしょう。
 とはいえスプリント路線ですと、スピード決着になり過ぎた時のバランスの難しさはありますし、本当に千載一遇レベルで嵌ったここで勝ち切れなかったのは痛恨ですね。
 こちらはマイルまでは長そうですし、むしろ平均ペースになりやすい香港スプリントを狙ってみても面白いと思います。内枠さえ引ければそこそこ勝負になる気はします。

 3着ワンスインナムーンは、まんまと単騎逃げの形に持ち込めた運の良さも味方につけ、でもその幸運に甘んじずコーナーからしっかり勝ちにいく競馬が出来ているのは評価していいと思います。
 この馬自身は綺麗な平均で走破していて、馬の力は存分に出し切っていると思いますし、コーナーで引きつけずに離していったのが差し馬につらい展開を誘発もしたので、わかりにくいですけどこれは結構な好騎乗だったと感じます。

 でもそれは最序盤につつきに来なかったハイペース志向の馬のボーンヘッドもありましたし、常にこういう楽な競馬が出来るものではないので、あまりこの結果そのものを高く評価し過ぎるのは良くないとは思います。
 ただ馬自身も力はつけていて、自分の形に持ち込めれば強い、というのは見せてきたと思うので、今後も楽しみが大きいですね。
 今日の感じからすると、2連勝の内容はハイペースでしたが、コントロールして早仕掛け、の方が持ち味が生きそうに思えたので、そういう競馬を1400m~1600mでも試していって欲しいかな、と感じました。

 4着スノードラゴンは、ここでこの馬がここまでくるか、という感じで、老いてなお益々盛んというべきでしょうか。
 元々この馬も生粋のスプリンターと言うよりは、平均ペースくらいからの持続力勝負で強い馬ですし、今日は位置取りと流れが相当に噛み合ったのは間違いありません。
 強いて言えばドンキとの前後で前に入れていればもっと上を、という所でしょうが、流石にそこまでは厳しかったですし、今出来る最高の内容を披露はしてくれたと思いますね。

 5着ブリザードも思った以上に強い競馬でした。
 香港のレースからしても、スローの方が味が出るタイプっぽいとは思っていて、その点で噛み合った部分はあれ、こちらは道中から外々を回して5着ですので、レッドファルクス以外の上位の馬とは遜色ない内容と見ていいです。
 流石に香港の強いメンバーに揉まれてきた馬、というべきか、それだけ今の日本のスプリントレベルが低いというべきか、そこはこのペースでもあるので一概には決めつけづらいですが。

 かつこの馬は、スタート直後に明らかにロスがあります。
 今パトロール見ましたけど、これでも良く分からないですね。
 最初の一歩は五分に近い形で出ていますが、そこから馬自身が寄れて躓いた感もあり、ただネロが早めに切れ込んできているのもありそうなので、この辺は判断が難しいです。

 どうあれ、この序盤のロスがなければもう少し楽に同じ位置は取れたでしょうし、そうすれば最後もうちょっと際どかったかもしれません。
 流石にレッドファルクスの持続力とは比肩出来ませんが、しっかりリカバーしてかつ折り合いもつけ、そこからもう一足引き出してきたあたりはいかにも外国の馬っぽいタフさで、この馬が先行できる馬だったらより怖かったな、こういう積極性は大切だなと改めて感じるところです。

 6着ビックアーサーも悪くはない競馬でしたが、微妙に噛み合っていない所と、後はやっぱり状態面でまだ一息だったのはあったと思います。
 スタートは綺麗に決めて二の足も良くダイアナヘイローの後ろにつけたのは理想的な形でしたが、形が理想的過ぎた故にそこから無理に前をつつくことなく進めてしまいました。
 この流れに合わせるところはいかにも福永Jっぽく、レースラップとして中間は11,2-10,9と3コーナーに入る前の方が緩んでいたので、本来前半からの惰性スピードを活かしたいこの馬としては僅かな差ですが、それがプラスには転じていないと思います。

 かつペースが上がるコーナー中間からまともに正攻法、2頭分外を押し上げて勝負に出ていて、それ自体はまぁ悪くない選択なんですけれど、細かく言うならそこじゃなく3F目の緩みの時点でもっと前をせっついて取り付くべきだったと惜しく感じましたね。
 どうしたって後半勝負でここまではっきり持続力が問われてしまうと甘い馬ですし、残り200mで止まってしまったのも、状態もさることながら適性面で嵌らなかった部分は大きいと感じています。

 これがしっかりややハイくらいの流れであの位置でしたら勝ち負けまで加わっていても、と思えるだけに、2年続けて勿体ない競馬にはなってしまっていると思います。
 でもあの位置から、ダイアナヘイローを交わしていってもいい、くらい前半ゾーンで動くのは勇気が要りますし、そこまで責められないですかね。

 7着メラグラーナはまぁ、こういう競馬しか出来ない弱みですね。
 今日は立ち回りが良くなかったレッドよりも後ろでは如何ともしがたいですし、この馬にとってはあの位置でももうちょっと流れてくれた方が、上位に食い込むチャンスはあったと思います。でもこのクラスに入ると勝ち切る絵図は描きにくい馬なのは間違いないですね。

 8着ダンスディレクターも同様に、この枠は厳しかったですし、好発を決められたのは良かったにせよ、それで折り合いを欠いてしまって、壁も作れずに苦労するあたり本当に難しい馬です。
 内枠からあのスタートで行けたら上位も、と思えるだけにここは運がなかったですし、引っ掛かっても一定の脚を使ってくるのがこの馬ですが、それでもこの流れで外々を回されて最後まで脚を維持できるのは、それこそレッドファルクスクラスの化け物だけですので、致し方ない負け方とは思っています。

 10着シュウジは、勝ち負けには加われなかったものの、復調のきっかけを掴むに足るレースにはなったんじゃないかと思います。
 もう横山Jは最初からポツンする気満々で、スタートもわざとゆっくり出したんじゃないか、ってくらいゆっくりと後方から、とにかく馬の行く気を削いでのんびり走らせて、その秘めたるスピード能力をラストの直線だけにぶつけてきましたね。

 画面上はほとんど見えないところを走っているのでなんともですが、上がりだけなら最速32,7、ラスト1Fもレッドファルクスに遜色ない脚は使っているように感じましたので、やはりその点からしても、この馬はあくまで最低で平均、出来れば後傾バランスで走ってこそなんだと思います。
 近走はほとんど激流を自分で作るか、自ら巻き込まれるかだったので、こういう形で足を使えたのは今後の明るい指針になりますし、後はここまで極端ではなく、去年の阪神Cのように馬群の中でしっかり脚を溜める常識的な競馬がもう一度出来るか、ですね。
 今なら1400~1600mで、ゆったり入って後半の爆発力を引き出すパターンの方が、能力そのものは出し切れると思います。

 11着セイウンコウセイは、ややポジション取りで後手に回った事と、ここまで明確に持続力勝負だと甘いのかな、というイメージですね。
 元々確かに一歩目はそこまで速くない馬ですが、フィドゥーシアの横くらいには入ってこられるかと思いきやはっきり3列目になってしまって、外からある程度正攻法でビックアーサーに合わせる形で進出していきました。
 ここが最速地点ですので、この馬の位置でもかなり高く持続力は問われていて、本来番手から一足で抜け出し粘りこむのが勝ちパターンの馬だけに、そのいい脚を勝負所の押し上げで使い切ってしまった感はあります。

 何気にラストが坂、というコースも久しぶりでしたし、でも直線入り口の時点でブリザードにも手応えが劣っていましたので、この流れであの位置からでは完敗だったといっていいでしょう。
 今ならもう少し流れてしまった方が対応しやすかった気はしますし、前に馬を置くと良くない可能性も当然考えられるので、そうなると好走のスポットがやや限定される事になりますが、まだ若い馬でもありますので、改めて次、どういう競馬が出来るか見極めたいところですね。
 
 さて、秋初戦のGⅠも終わりましたが、今宵はまだ凱旋門賞が控えています。
 やはり馬場コンディションは微妙のようですが、なんとかいい競馬を、と遠い日本から応援の念を送りつつ、しっかりと観戦したいと思います。
posted by clover at 04:18| Comment(0) | レース回顧・中央競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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