2017年06月18日

2017 安田記念 プレビュー

**★はじめに**

 まだまだダービーの残響も冷めやらぬ中ですが、今週は古馬の春のマイル王決定戦、安田記念が行われます。
 ここ数年はダービーを機に賞金編成が一新されるので、そのせいで伸び盛りの4歳馬が出走しにくい事になっていたりもして、毎年直前までメンバーが読みにくいのが特徴的です。
 ただ近々降級制度は廃止されるかも、という話も出ていますし、そうなれば傾向も変わってくるとは思いますね。
 やはり今までの感じを見ると、ここまでに無理せずローテーションを組めた馬の方が強いイメージはありますが、色々な路線の馬が入り混じっても来るので、ペース的にも波乱の多い、一筋縄ではいかないレースになっていると思います。

 今日はちょっと時間がありませんので、少し駆け足で進めていこうと思います。決して昨日のダービーのレース内容で意気消沈している、というわけでは…………なくはないですけど。

**★レース傾向分析**

 府中マイル戦で、Cコースでの開催になります。
 昨日の時点でもうかなり内側は掘れていたので、良馬場でもコース取りは難しくなってくると思いますし、また今の時点で週末金曜土曜に雨マークがついています。
 基本的にはコース形態的にも流れやすいレースではあるのですが、また雨の影響が残るようなら、去年のようなスローの展開も十分有り得ます。メンバー的にも絶対に逃げる、と言う馬がいませんし、あまり傾向には捉われず柔軟に判断はしたいものです。

 とりあえず過去10年の平均ラップを見てみましょう。
 34,2(11,4)-23,4(11,7)-35,1(11,7)=1,32,7(11,59)という推移になっています。
 これだけ見ても基本的には前半からガンガン入って、中盤もあまり緩まず、末脚勝負にはなりにくい、というのが見て取れます。もっとも上がりに関しては超不良馬場のジャスタウェイの年の37,7がありますので、それを抜きにすれば34,8くらいと、ややハイの平均くらいの閾値に収まってきます。

 ともあれ、そんな馬場のジャスタウェイの年ですら35,1-24,0-37,7というペースだったわけで、去年の35,0-24,1-33,9という推移がいかにこのレースとしては異端だったかはよくわかります。
 でも今年も雨が残りそうな馬場で逃げ馬不在、ヴィクトリアマイルもそういう条件でドスローになったことを考えると、必ず流れる、とは言い難いのが悩みどころになってくると思います。
 ただこれはちなみに、ですけど、2010年もダービーがドスローで、するとこのレースでは一転して超ハイペース、という事になっていたり、先週不甲斐無い乗り方をしてしまったという気負いがここで極端に振れるパターンもあるので、本当に枠が出てもペース予想は最後まで悩みつくすだろうなと感じています。

 脚質的には基本スピード勝負ですので、高い追走力が問われます。
 加えてコーナーでも緩まず仕掛けも速いのが特徴的ですので、後方から大外ぶん回しではまず届かず、中団後ろからとなる場合もコーナーはタイトに、直線で上手く進路を確保して、という器用な動きが出来た馬が好走しているイメージです。
 無論極端な前傾になった年は追い込みにも出番はありますが、近年の騎手の意識の下がり方を見ても、そこまでのレースになる可能性の方が低い、と見ていていい気はしますし、最序盤のポジショニングの上手さと、総合的な後半要素、かつ持続力面で相対的にいいものを持っていれば面白い、という感覚でいいかなと思っています。

**★有力馬所感**

・イスラボニータ

 ルメールJの4週連続GⅠ制覇なるか、という点でも注目の、2014年の皐月賞馬が、前走マイラーズカップで嬉しい復活の美酒を味わった余勢を駆って二つ目のGⅠ制覇に挑みます。

 この馬の最大の武器は加速力と瞬発力の質にあり、反面持続力は甘くラストで差し切られる、或いは届き切らない、という競馬になりやすいです。
 追走力は高いものがあるので、どんなレースでもポジショニングの意識は大切で、最低でも3列目くらいにいれば、インからでもスッと動ける強みはあるので、まず大崩れはしないタイプになってくると思います。

 ただ一貫スピードレースになると、この馬の武器である加速と切れ味はあまり問われなくなってくるので、この馬自身としては程良い平均ペースで二列目くらいに入っていけるパターン、かつ仕掛けもやや遅めで坂地点最速が顕著、という展開が最善で、完璧に勝ち切る、という絵図を描くための枠はそんなに広くはない、と考えています。
 今回は他の馬の出方も読みにくく、騎手の意識的にもいい加減ルメールJ一人にいいようにやられっぱなしには出来ない、とマークされる意識も強まると思うので、圏内と言う意味での信頼度はそれなりに高く置けますが、本命を打てるか、と言うと悩んでしまう馬ですね。

・エアスピネル

 今年からマイル路線に転向し、着実に結果は残してきたエアスピネルは、悲願のGⅠに手が届くのでしょうか?

 この馬もタイプとしてはイスラ同様持続力は甘いタイプで、かつイスラほどの自在性はなく、馬の後ろにつけると頭を上げてしまう悪癖も解消されていないので、レースへの入り方が難しい一頭です。
 前走のように本仕掛けそのものが遅れるパターンは歓迎ですが、より本質的に考えると、イスラを凌駕出来る武器は追走面にしかないかな、と思っています。

 ある程度前を自分から突っついて厳しい流れを演出しつつ、仕掛けをギリギリまで待つ、という強気の競馬が展開出来れば逆転の余地はあると思いますし、同時にこのレースを勝ち切る絵図も見えてくるでしょう。
 理想的にはある程度中目~外寄りの枠から何かを逃げさせて、それを番手で積極的につついてペースを緩ませず時計勝負に持ち込むしかない、と思いますし、昨日のダンビュライトでは、そういう持ち味を生かす強気の競馬が出来ない位置に押し込められた無念を、この馬で合わせて晴らして欲しいなと思っています。

 並び的に強気な先行が出来そうなら評価を上げますし、内枠だとまた展開待ちになってしまうので少し下げて評価したい、今のところはそんなイメージでいます。

・レッドファルクス

 前哨戦の京王杯スプリングカップを制し、距離延長に大きな可能性を見出しての安田記念参戦になります。
 この馬の場合は基本的に後傾タイプで、前半ゆったり入れれば強烈な持続力を使ってきます。
 その点追走が楽になる距離延長は決してマイナスではないと思いますし、近年は中京1200mで後傾型の強い競馬が出来ている馬が府中マイルで活躍する傾向にあるので、その点も強みになってきます。

 一方この馬は後半型としてはほぼ持続力特化型であり、加速や切れ味そのものはそこまででなく、エンジンがかかればながーく11,0前後の脚を繰り出し続けられるのが特徴的です。
 故に動き出しのイメージはとても大切になりますし、それこそ他の馬に先んじて動いてしっかりロスの少ない進路を確保する戦略は大切になってくるでしょう。あとこの距離で、ポジショニングの面でも進展、中団前後を取れるかどうかも焦点になってきます。

 デムーロJはここ二週、前受けしたルメールJにいいようにやられてしまっているので、ここで肚を据え直して、この馬が勝つための競馬を強気に展開して欲しいです。
 このレースの平均的な流れになれば基本切れ味はそんなに問われませんし、脚を出し切れれば勝ち切れる可能性は充分にある一頭でしょう。この馬も包まれたくはないのでやや外目の枠が理想ですね。

・ロゴタイプ

 昨年は玄妙なスローペースに落とし込み、番手で引っ掛かったモーリスの鞍上の意識すらも利用した段階加速で見事に出し抜いたこの馬が、連覇を狙ってきました。

 去年はああいうトリッキーなレースになったのであまり参考にはしづらいですが、まず前提として、決してこの馬は追走力は低くありません。
 近走はスローにコントロールする事が多いですが、むしろそうなっての早仕掛け、持続力戦の方が苦手で、それをポジション差で誤魔化していると言えます。

 なので実のところ、例年通りの流れで前目内目につけ、後ろの仕掛けをワンテンポ待って、という競馬の方が楽しみは大きく、内枠を引いて何かが引っ張ってくれる展開ならかなり面白さが出てきます。
 逆にまた自分で逃げてしまうと、去年がありますから早めに後ろからつつかれて仕掛けを待てず坂上で失速、となりかねませんので、今年は位置取りのバランスと全体のペースが重要な好走要因になってくるでしょう。

 個人的に内を引き、外から2~3頭行ってくれて2列目ポケット、イスラより前を取ってじっと仕掛けを待つパターンはかなり怖いですし、逆に外からなし崩しに足を使う展開だとちょっと厳しい、と考えます。
 それこそ番手外で上手く支配出来ればまた違ってくるかもですが、結局のところイスラ、エア、ロゴあたりは好走条件が似ているので、その中でポジションの優位とレース支配権をどれが取れるか、という観点で序列を決めるのもアリかな、と思っています。

・サトノアラジン

 去年で1400mがベスト、1600mではちょっと足りない、というのは露呈してしまった感はあるのですが、ひとつ光明があるとすれば、去年のマイルGⅠふたつはどちらも馬場がかなり荒れていました。
 今年も天気は微妙なのですが、もしもあまり雨が降らず、昨日の高速馬場のままで安田記念を迎えることになったら、その時は一気にチャンスが広がると考えてもいいと思います。

 基本的に後傾型で溜めれば溜めるだけ切れ味に転化できるタイプで、その質もこのメンバーなら間違いなく最上位です。
 ポジショニングの面でどうか、というのはあれ、同じところからのヨーイドンならレッドファルクスには切れ味の差で優位に立てるでしょうし、後は動き出しのイメージがあまり良くない川田Jが、ここでしっかりこの馬のタイミングで動いてこられるか、となります。
 レース展開としてもコーナー出口が最速、という早仕掛けになってくれれば言う事はないですし、少しでも渋りが残るようなら軽視しますが、土曜の時点で高速が維持されている、と見做せば一気に浮上させる可能性も残っている馬ですね。

・アンビシャス

 この馬の場合は、どうしても一度出して行こうとするとガツンとハミを噛んでしまってブレーキを効かせ辛い、というのが大きな欠点になっています。
 そのせいで、本質的にはかなり質のいい追走力を持っているのにそれを生かせず、総合的な良さを引き出せずに後半要素だけで勝負して足りない、というもどかしい競馬が続いてしまっています。

 その意味でこの舞台はかなり合うとは思っていて、上手く流れに乗って中団やや後ろ、くらいを取れれば怖さはあります。
 距離短縮馬にありがちなスピード負けをする馬とは思っていませんが、後半要素としては一貫持続型、レッドファルクスと同様同じくらいの速い脚を長く維持するのが最大の武器で、トップギアに入れてしまうとそこからの持続は短いので、その脚の使いどころが鍵になってきますね。

 枠的には壁を作れる内目の方がいいと思いますし、後は近走中距離ばかりなのであまり後ろになり過ぎないポジションをしっかり意識的に確保できるかどうか、魔術師横山Jの手綱捌きが非常に楽しみな1頭です。好きな馬でもあるので、重く狙うかはともかく印は打つつもりです。

・ステファノス

 この馬の場合は逆に、スローからの持続力勝負特化型になってきます。
 過去に同じ舞台の富士Sを勝ってはいますが、あのレースも47,6-45,6とかなりのスローからの600-400m地点最速の持続力特化戦になっていて、安定して上位に食い込んでくるとなるとこういう流れが必須ではあると思います。
 前半からガンガン流れて、このレースの平均的な46,2-46,5くらいのバランスになってしまうと追走面で厳しさがあると思うので、スロー決め打ちでかつ誰かが早仕掛けする、と読める並びなら狙い目は立ちますが、マイル全体のスピード勝負になると踏めばあまり重視しなくてもいいかな、と考えています。

・ブラックスピネル

 この馬も前走の負け方で人気を落としそうですが、安田記念が本来的な流れになった時に怖さは充分ある1頭です。
 京都金杯を見ても追走力はかなり高く、かつ高い持続力を持っていて、前走に関してはプラス切れ味の質を問われたところで足りなかったですし、ポジションも悪かったので仕方ない負けと見做せます。

 どうしても先団の並びが読みにくいわけですが、東京新聞杯で逃げてもOK、と言うところは見せたので、この馬がペースを作っても面白い、とは考えています。ボンセルヴィーソみたいなレースが出来れば、あの馬よりはしっかり粘れると思います。
 ただ逃げるの大嫌い音無厩舎で、前走もその辺の含みがあってあの位置、という気もするので、松山Jに替わってより指示としては溜めていけ、ってなりかねず、その辺はしっかりコメントを見ていきたいところです。

 でもミッキーアイル同様、逃げて味のある馬は沢山いるわけですし、こんな混沌とした構成の中では主導権を強い意思で取り切ってしまった方が断然優位、というのは昨日のダービーを見ても一目瞭然です。
 そのダービーではいいポジションを取りながら、動き出しの意識の中で後手に回って何も出来なかった、と反省を見せている松山Jですし、ここで腹を括った強気の仕掛け、ポジショニングでレースを盛り上げて欲しい、その上で結果にもつなげて欲しいですね。勝てる力はある1頭だと考えています。

・グレーターロンドン

 まだ出否未定ですが、出てくれば当然注目の1頭にはなります。
 とにかく後半要素の絶対量が化け物で、特に瞬発力の質/持続力面ではこのメンバーに入ってもサトノアラジンと双璧か、むしろそれを凌ぐかも、というくらいの素材ではあります。

 ただ弱点というか、まだ見えていない適性の部分が余りにも多いです。
 まず追走面は未だに半マイル48秒ペースをクリアできるのかがわかりません。
 仮に48秒で削がれない、としたら、後半44秒前半でまとめられる脚力があるので、机上の計算では勝負に加わってこられますし、前半を47秒まで詰められるなら確実に勝ち負けでしょう。

 ただそれはやってみないとわかりませんし、またこの馬は加速力、動き出しの面ではやや鈍さがあり、特にコーナーで動くのはあまり得意ではありません。
 その意味で、動き出しの意識が高い田辺Jから、流れに合わせてじっとしている事が多い福永Jへの乗り変わりはプラスに転じるか、と言われると微妙で、踏み遅れればいくら末脚を持っていても、という事になるので、そのあたりも不安視できます。
 また、ここまで出るかどうか悩むあたりから調整も微妙でしょうし、個人的には無理せず関屋記念あたりからでいいんじゃないかな、とは思いますね。出てくると評価に悩みますが、流石に打っても連下まで、というのが妥当なラインかなと思います。

・コンテントメント/ビューティーオンリー

 他にも触れたい馬はそこそこいるのですが、時間がないので最後に香港勢の評価を。
 この2頭はチャンピオンズマイルの1、2着馬となっていて、去年のモーリスの調整が頭を過ぎりますが、向こうから来る分にはさほどハンデにはならないでしょう。

 今回コンテントメントにはモレイラJを配してきて、それだけで穴人気しそうな気はしますが、少なくともレース全体が常識的に流れた時にはビューティーオンリーの方が上だと思っています。
 コンテントメントはスローからの持続力型で、前走も一旦外のヘレンパラゴンに切れ味で見劣りつつ持続特化で差し返す芸当を見せていて、適正面では位置を取れるステファノス、という感じでいいと考えます。

 なのでもしも他の日本馬が誰も行かない中で、この馬がスッと逃げてペースをスローにコントロールしてくれば怖さはありますが、普通に46秒ペースで流れたなら基本甘くなるので軽視でいいかなと考えます。
 去年は位置取りからどうにもならなかったですし、場慣れと展開面の利ががっちり噛み合えばチャンスはあるものの、流石にそこまでこちらの層も薄くない、と思いたいですね。

 ビューティーオンリーのほうが、しっかり馬群の中からでも動けるし、かつハイペース適正がかなり高いので楽しみはあります。
 去年末の香港マイルでも、ロゴは詰まったところはあるとはいえ、香港では珍しいハイペースの展開でこれを撃破していますし、進路取りのタイトさ、追い出しの力強さではバートンJも素晴らしいものを持っていますので、まともに脚を出し切る展開になれば警戒はしたいと思っています。

**★思い出の安田記念**

 やはりこのレースだとウオッカが一番先に出てきますね。
 1年目の、ヴィクトリアマイルをスローペースで取りこぼしてからの積極策での押し切りもインパクト充分でしたが、より凄みを感じたのはインからスペースがなく、残り100mまで前が壁のまま動けない所から、ラストで猛然と追い込んでディープスカイを差し切った2年目でしょうか。

 とにかくウオッカはレース全体の総合力勝負に強い馬でしたし、前半が流れないと顕著にコロッと負けるのが印象的で、その意味でも安田記念は一番噛み合う舞台だったのだと思います。
 ウオッカの場合、低レベルメンバーのダービーを後半特化で勝ち切れてしまった事から実像が見えにくい馬だったと思いますが、府中マイルでは史上最強クラスに強かったですし、絶対能力と根性で距離をこなせるマイラー、それこそオグリキャップと同類の異質な化け物でしたね。

 あと凄い地味な所では、ツルマルボーイも好きです。
 末一手で中々勝ち切れなかったこの馬を、上手く馬群のど真ん中からスルスルと動かして差し切ってみせた安藤Jの妙技には唸らされましたし、この年はこれでダービーからの連勝と、バイオリズムの良さを見せつけた格好になりました。
 その意味で今波に乗り切っているルメールJが、基本GⅠではちょっと足りずを繰り返していたイスラを戴冠させれば、歴史は繰り返す、というのを地で行くことになるなぁと考えたりしています。

 ともあれ、古馬のマイル王決定戦らしい締まった流れを期待したいですし、全馬が力を出し切っての大激戦になるといいなと思います。流石に2週続けてスローはイヤです…………。
posted by clover at 04:07| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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