2017年05月18日

2017 NHKマイルC プレビュー

**★はじめに**

 今週は府中で、春の3歳マイル王決定戦、NHKマイルCが行われますね。
 マル外ダービーと呼ばれたのも今は昔、またここ数年でも、よりレースカテゴリーの細分化が綿密になったことで、ここをステップに変則2冠を狙う馬もほとんど出てこなくなり、立ち位置としては微妙なGⅠとなっていますが、それでも数多の良質なマイラーを輩出してきたこのレース、今年も様々な路線からメンバーが集まり多士済々、といった趣になりました。

 これは余談なのですけど、今週はGWという事もあり、地方での交流重賞も3レースある、そして海外でもケンタッキーダービーや英2000ギニーをはじめとした大レースが目白押しで、個人的に記事が間に合うか、すごく修羅場りそうな予感がしています。
 その中で登録も多く、未だメンバー構成が掴みにくいこのレースの解析にどこまで注力できるか不安な部分もあるのですが、一先ずは現段階での所感を軽くまとめていこうと思います。

**★レース傾向分析**

 ワンターンの府中マイル戦ですので、開催時期も相俟って、基本的には小細工なしのスピードと底力勝負になることが多いです。
 コース形態は向こう正面からスタートし、最初のコーナーまでが結構長いのが特徴的で、枠の有利不利は馬場のバイアスが極端でなければ勘案せずともいいコースだと思います。

 起伏はスタートから基本的に、2F目の途中に僅かに上りがあるものの前半は概ね下りで、残り800mからじわっと500mくらいに渡って上りが続き、坂上260mほどは平坦、という形です。
 それ故に勝負所は坂地点になることがほとんどで、その為に坂加速の性能が中京と並んで強く問われることとなり、かつ坂上から距離があるので、そこでもう一段持続力を発揮できる馬に向いているロケーションとなっています。

 過去10年の平均ラップは、34,6(11,53)-23,8(11,9)-34,8(11,6)=1,33,2(11,65)という推移になっています。
 いくつかは稍重開催のレースもありますが、それでも前半は絶対的に見て47秒より遅くなるのは相当のレアケースです。
 馬場差も含めて、大体46,5くらいで入っていくので良質な追走力は当然求められますし、馬場が軽ければその上で後半の加速力・瞬発力・持続力が強く問われ、重くなれば持久力面も必要になってくるでしょう。

 仕掛けどころも、皐月賞同様未対戦の馬が多い中で、色気を持って攻めてくるパターンが多い故か、4角出口あたりが最速になる場合が多いです。
 その為基本全馬が出し切れるタフなレースになるため、小手先の誤魔化しは効きにくく、スピードとスタミナを総合的に持ち合わせていないと苦しいレースと見ていいと思います。

**★有力馬所感**

・アウトライアーズ

 とりあえず近年好相性の皐月賞組から、という事で、基本的にここで触れていく順番って現時点での期待値がそのまま反映している場合が多いのですが、この馬に関しては期待半分不安半分、ですね。
 皐月賞は後ろから外外を回してしまって完敗、という形でしたが、操縦性の難しさはあり、マイルでの方がレースそのものはしやすいと思います。
 ただ、皐月賞からの転戦組でここで結果を出しているのは、先行してちょっと足りなかった馬、がほとんどですので、ここでもおそらくポジションは取れないでしょうし、そこは懸念材料になります。

 百日草特別だけで判断するなら、要所での加速力、特に坂加速自体はほとんど問題なくクリアできていますが、持続力面ではやや怪しいところがあります。
 追走力も皐月賞前提ですとひいらぎ賞で担保出来ていましたが、このレースになるとそこからもう一段良質のものを問われるので、今まで見せている適正面からは、高速マイル戦ならどんとこい、と言える材料はないのは確かだと思います。

 見た目以上に器用さはある馬だと思っているので、上手く内枠を引いて序盤は中団内で我慢、直線で空いたスペースを割って、という競馬が出来れば頭まであっても不思議はないと思います。
 でもその場合ペースで削がれて加速力や持続力を発揮できるか、そこがポイントになってくるでしょう。
 基本的にマイル短縮で絶対的な持続力面は楽になるので、最悪46秒そこそこまでは上がるペースの中で一脚をしっかり使えるだけの素材であるかどうか、陣営もダービーは考えずここがメイチと明言しているので期待はしたいですが、現時点での評価は留保、枠や追い切りなどを総合的に見て考えたいですね。

・プラチナヴォイス

 この馬はこちらに回ってくるのか不透明ですが、出てきたら面白い一頭にはなると思います。
 本質的にはレース全体のスピード勝負が向いている馬ではあり、皐月賞もやや外々からの追走で勝負所でスッと反応できないあたりで力負けではありましたが、このメンバーに入れば、というのは当然あります。

 左回りと坂加速適正は完全に未知なので難しさはありますが、確実に高速馬場巧者で、マイルのハイペースでも無理せずに流れに乗っていける追走力の担保はアウトライアーズよりはありますので、そのあたりを総合的に見てどう序列を置くか、というところですね。

・アエロリット

 去年のメジャーエンブレムではないですが、クイーンCだけ走れば好勝負、という下地はこの馬にもあると言えるでしょう。
 クイーンCも46,8-46,4の流れで、バランス良く総合力が問われる中で、出負けをリカバーしつつ入っていき、ラストまでしっかり持続力を維持してきたので、適性面での総合的な不安のなさはこの馬が一番だと思っています。

 気になるのはここ2走、後ろからの競馬が続いている事ですね。
 前走後に横山Jは「まだ馬が乙女」なんて不思議なコメントを残していましたが、額面通りに取れば馬群の中でスムーズさを欠くと辛いのかな、という印象で、真ん中くらいの枠から出負けせず、スッと3~4番手の外を取れるようならかなり楽しみです。
 ローテーション的な厳しさはあれど関東馬ですし、今のところはこの馬が本命候補です。

・カラクレナイ

 桜花賞では後方勢の中で一番そつのない競馬をして最上位に食い込んできました。
 ただあのレースも、ほぼ完璧な立ち回りだったにもかかわらずラスト100mはばったり止まっていて、本質的には1400mがベストの馬なのはおそらく間違いないでしょう。
 でもそれは、多少なり重い馬場でスタミナが問われたせいもあるでしょうし、高速馬場の府中で時計勝負なら対応してくる可能性は充分あると思います。

 後はどうしても立ち回りとしては後ろからになり、今回はデムーロJに戻るので動き出しに関してはあまり不安視しなくてもいいですが、後方から末脚の絶対量だけで飲み込み切れるか、となると微妙かなとは思います。
 こちらは遠征競馬にもなりますし、少なくともアエロリットよりは下の評価、後は他の馬との兼ね合いで、ですね。多分印は回すと思います。

・ミスエルテ

 この馬も桜花賞では気性面の難しさを何とか制御して、常識的な競馬は出来ていました。
 ただ元々ぶっつけのほうがいい、として出た桜花賞でもマイナス体重、そこから間隔もなく遠征競馬で、例え能力はあってもそれを引き出せる準備がしっかり出来ているのか、という部分では不安の方が大きいと思えます。

 走りの適性的にも当然左回り・坂加速・時計勝負は全て未知数ですし、評価できるのは瞬発力の質くらいのものなので、基本的には今回も軽視したいな、とは思っています。

・ボンセルヴィーソ

 典型的にこの路線の物差し馬になっている感じはありますが、少なくともここ2走はあまり恵まれたレースではなく、高速馬場のスピード勝負で巻き返しの余地は充分にあると思います。
 ある程度ペースが上がってもポジショニングは良く、その上で鋭く一足を使えるのがこの馬の最大の強みですが、持続力面は朝日杯だけ見てもかなり心許ないので、上手くレースを実質的に支配して、全体のスピード勝負に持ち込み、なるべく後半の本仕掛けを遅らせる戦略性が問われるでしょう。

 ここは相手関係的にも今までより楽に先手が取れそうな組み合わせでもあり、ここ最近ブレイク中の松山Jとのコンビで、レース全体を46,0-46,5くらいのハイバランスで支配出来れば怖さはあるでしょう。ややスローに合わせて後半の持続力が強く問われる流れになるとちょっと厳しいと思いますので、先行勢の意識をどう読むかによって序列を変えていきたい馬ですね。

・ジョーストリクトリ

 この馬もアーリントンカップを見る限りは加速力・瞬発力・持続力という後半要素を強く問われると厳しい、というのはあると思います。
 といって明確に高い追走力があるのかは、ファルコンSを見てもやや微妙ではあり、でもあのレースはコーナーで待たされて再加速、という流れでのギアの上げ下げが上手く出来なかった面もあると思うので、ちょっと判断が難しいところです。

 前走の勝因は時計のかかる馬場と波のないラップ、そして上手くインを掬えたところが噛み合って、ですので、総合力的に見るとボンセルよりは高く評価しにくい馬で、どちらかと言えば少し渋っての平均ペースになってくれた方がいいでしょう。

 ただ父親も高速府中マイルで全体のスピード勝負に持ち込んで堂々押し切る強い競馬を見せていますし、ボンセル同様、高速馬場でフラットなレースを作るイメージで進めていけば、後半の弱点を打ち消しての好走はあるかもしれません。
 キタサンとのコンビで充実一路の武Jですし、ここでも余勢を駆って後ろの馬の脚を削ぐような強気なレースメイクが出来れば面白さは出てくるかなと思いますね。

・レッドアンシェル

 結果的にペルシアンナイトが皐月賞でも2着と、レースレベルの高さを示したアーリントンカップで、このメンバーの中では最先着した実績は侮れないと言えます。
 そこから直行のゆったりしたローテーションも好感は持てるのですが、ただこの馬の場合は、アーリントンカップにしても、その前のもみじSにしても、自身明確にスローバランスで入って後半要素を高めてきた、という点があります。

 引っ掛かり気味だったとはいえ、朝日杯である程度ポジションを取りに行って案外だったことを踏まえると、現状はどうしても他力本願な部分があるのかな、と思いますし、また追走力面でも半マイル48秒程度しか担保はないので、速い流れでの高速決着に対応できるかは完全に未知数と言えます。

 ただ前走こそ外枠で後ろからだったものの、その気になればポジショニング自体は出来る馬です。
 今回はスタートの上手い福永Jになりますし、内枠である程度ポジションを取りつつコーナーで我慢する形で直線を向ければ怖さは出てくると思いますね。外枠だと少し割り引きたいかな、と思う1頭です。

・モンドキャンノ

 結果的にレベル自体は怪しいものの、朝日杯の2着は中々に強い競馬で、血統面からの不安を払拭してマイルに目途を立ててきたのは好材料です。当時の阪神は重い馬場でしたので、軽い府中のマイルならこなせる範疇にはなってくるでしょう。

 この馬は函館2歳Sでも一定戦えているように、追走力そのものは高く持っていますが、それを敢えて溜める形で後半要素に転化出来る器用さはあるタイプだと思います。
 後の桜花賞馬・レーヌミノルを撃破した京王杯2歳Sも、後半勝負の持続戦で最後まで落とさない優秀なラップで突き抜けていますし、あれがそのまま引き出せるならここでも充分勝負になるでしょう。

 ただ個人的には前走のスプリングSの負け方、というかレースの仕方が良くないな、と思っています。
 このレースの布石として長い距離でじっくり行く、というのが戦前のプランだったと思いますし、その為予想時点でも内に潜ってじっと我慢していれば、と評価した覚えがありますが、いざレースでは序盤から掛かり気味に先行してしかも外々、と真逆の競馬でした。
 そのタフな競馬で惨敗した事が果たしてプラスになるのかは難しいですし、この辺は継続騎乗ではない弱みも出てしまっているのかなと思います。

 まあ今回は京王杯を勝った時のルメールJに戻りますし、折り合い面ではそんなに不安はないでしょう。
 後はポジショニングで、後半要素は高く持っているとはいえこのレベルに入れば、の留保付きのものですし、それだけでどうこう、という馬ではないので、ある程度先団は意識して欲しいところです。
 流れに乗っていく中で無理せず後半要素を引き出せれば楽しみが大きいですね。

・ディバインコード

 この馬もかなり堅実な走りで、このメンバーでも侮れないところは当然あるでしょう。
 ただローテーション的に、ニュージーランドトロフィーを除外されて橘Sに回り、そこから中1週というのは常識的に見るとかなり苦しいものはあります。

 でも能力的には充分足りるものはあると思っています。
 ただし、アーリントンカップや京王杯を見ても、後半勝負で切れ味や持続力を問われると、ボンセルほどではないと思いますがやや甘いところはあり、実際にモンドやレッドに負けているので、この馬もレース全体のスピード勝負にシフトさせたいクチになるでしょう。
 前走の様に自身後半をフラットに進めてしぶとく雪崩れ込む、という競馬が一番合うでしょうし、人気は別路線組が背負いそうですが、マイル路線組で上手く徒党を組む、ではないですが、意識的にペースを引き上げていくようにすれば、こちらの側に勝利の目が出てくる、という相手関係だと思いますね。

 この馬自身スタートはいいですし、この組み合わせならポジションは楽に取れるはずなので、後続の脚をなし崩しにする強気の競馬を演出する意識があれば楽しみな1頭です。


**★思い出のNHKマイルC**

 このレースも私の競馬観戦キャリアにすっぽりと包括されるので、初回のタイキフォーチュンの時計の衝撃に始まって色々と思い出深いものはあります。

 その中で、まず一番に選ぶとしたら、やはりキングカメハメハになるでしょう。
 この年は朝日杯1、2着馬で、皐月賞でも先行して4、3着と頑張ったコスモサンビームとメイショウボーラーがおり、これがれっきとした軸としての信頼度が高い状況でした。

 一方でキンカメは、すみれS、毎日杯と覚醒したような強い競馬を見せていたものの、当時はまだ毎日杯も2000mで、そして年明け京成杯ではハイペースの中でもたついて、結果的に生涯唯一の敗戦を喫していたのもあり、スピード競馬で削がれるのではないか、と半信半疑でした。
 大多数のファンもその懸念は持っていたようで、1番人気ではありましたがほとんどコスモメイショウ2頭と差のない評価で、後の強さを鑑みると私も含めて節穴だったな、という事になります。

 レース自体、そこまでハイペースにならなかったのも、多少馬場が渋っていたのも良かったとはいえ、後方から恐ろしい末脚を駆使して一瞬で突き抜け1,32,5で5馬身差、正に戦慄を禁じ得ない凄まじいレースぶりに、ダービーでの勝利を半ば確信しました。
 実際にダービーも、一昨日のアドミラブルみたいな破天荒な競馬であっさり突き抜け完勝と、この先どれだけ強くなるのか期待感を持たせましたが、やはりこのローテーションは若駒には酷なのか、神戸新聞杯完勝後に故障発生で引退というのは本当に残念でした。

 とはいえ種牡馬になっても大成功し、唯一ディープに対抗できる馬として燦然と光を放ち続けており、その点も含めての紐づけで印象がより深くなっているところはありますね。

 あとダノンシャンティも驚愕の一言でした。
 毎日杯まではドスローからの瞬発力勝負でこそ、という競馬をずっとしていたのですが、このレース史上でもトップクラスの激流になった中、自身46,6-44,8のラップで大外から前を軽く一飲みにしたレースぶりは破格だったと思います。
 この馬もこのレースの後は怪我に泣くシーンが多かったですが、追走力を備えていて後半要素も凄まじい、それこそ順調ならモーリスクラスの活躍は見込めたと思うだけに勿体なく、少なくともフジキセキの最高傑作であることは今でも疑っていません。

 なのでこの馬もサイアーラインを繋いでほしいんですけど、しかしスマートオーディンって転厩してから露とも情報出てこないんですけどどうしてるんでしょうね?

 ともあれ、今年もスピードと底力が明確に問われる素晴らしいレースになることを期待しています。
 
posted by clover at 04:05| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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