2017年08月26日

私的名馬列伝 第十二話 ジャングルポケット

**★はじめに**

 今週末は、夏競馬の掉尾を飾る札幌2歳Sが行われますね。
 私が競馬を始めたころの札幌3歳Sはまだ1200m戦で、それが1800m戦に生まれ変わってからはや20年と思うと、月日の流れの早さを感じるばかりです。

 そして、1800mに昇格したばかりの数回は、まだローテーションとしての立ち位置が確立せず、結果的にその後に繋がらない事が続きましたが、その負の流れを綺麗に払拭してみせたのが、今回取り上げるジャングルポケットが勝った年の札幌3歳Sでした。
 なにしろ勝ち馬が後のダービー&JC馬で、2着も朝日杯で2着に入るも骨折で散った非業の名馬タガノテイオー、そして3着には桜花賞&秋華賞を制した名牝テイエムオーシャンがいたわけで、今年も後々そんな風に大活躍する馬が出てくればいいなと思います。

 夏の新馬と言えば短距離からスタート、という概念を覆し、2歳の夏の時期からじっくりクラシックを見据えた距離を選び、無理のないゆったりしたローテーションを組むという新機軸を明確に固着させたと言えるであろうジャングルポケットの軌跡を、今回改めて振り返ってみようと思います。
 [生涯通算成績](https://keiba.yahoo.co.jp/directory/horse/1998101786/)は13戦5勝と、やや数字的には迫力と安定感に欠ける所もありますが、しかし噛み合った時の爆発力は超一級、未だにダービーとJCを同一年度に制した唯一の馬でもあり、いかにも左回りの鬼・トニービンの仔らしいしなやかな強さと不器用さを併せ持った馬でした。

 今回もレースの馬齢は当時の表記のままとさせていただきます。

**★新馬~ラジオたんぱ杯3歳S <新たなる王道路線の開拓>**

 当時は今より遥かに北海道シリーズの1800m戦は鞍数が少なく、それ故にそこを敢えて狙って使ってくる馬が出揃う事で、ジャングルポケットの新馬戦は後々に振り返ってもかなり豪華な顔ぶれでした。
 後の朝日杯1、2着馬のメジロベイリーとタガノテイオーがいて、更に若葉Sを勝つダイイチダンヒルなどもおり、そして彼らはみんな当時向かう所敵なしのサンデーサイレンス産駒でした。

 故に人気もそちらに集中し、ジャングルポケットとて中々の血統馬でありながらも5番人気に甘んじますが、しかしレースでは逃げたメジロベイリーの番手にダイイチダンヒルと並んで追走、メジロが早々に脱落したところから直線熾烈な叩き合いとなり、ジャングルポケットは捲ってきたタガノテイオーをギリギリ退けて新馬勝ちを収めます。
 結果的にこの3頭が後続を8馬身突き放し、この距離での能力の違いを示した格好ですが、しかしこの時代の面白いところは、まだ1800m戦の新馬勝ちがあまりステータスではなかったところです。

 次走、中2週での出走になった札幌3歳Sでは、その評価が顕著に表れていたと言えます。
 このレースでは、1200m戦を連勝してきたテイエムオーシャンとマイネルカーネギーが1、2番人気となり、3番人気も1200mの新馬戦を圧勝したセンターベンセールでした。
 やっと4番人気に、折り返しの新馬戦を完勝して連闘策で望む(このローテも今だと考えづらいところですけれど)タガノテイオー、そしてジャングルポケットはまたしても5番人気の伏兵扱いだったのです。少なくとも今なら絶対にこんな人気順にはならないでしょうね。

 しかし、中2週ながら+10kgと、レースを使っての成長を見せてきたジャングルポケットは、テイエムオーシャンが刻む平均ペースを好位で楽々と追走、直線外から豪快に差し切り、レコードのおまけつきでその素質の高さを満天下に知らしめることとなります。
 上でも触れたようにここの上位3頭は本当に強い馬でしたので、その意味でも大きな価値がある勝利ですし、またここを勝ったことで、今後クラシックに向けてのローテーションを組みやすくなりました。

 次にジャングルポケット陣営が鉾先を向けたのは、3歳チャンピオンを決める朝日杯ではなく、年末阪神の[ラジオたんぱ杯3歳S](https://www.youtube.com/watch?v=jsW2ir8tUGM)でした。
 頓にサンデー全盛時代になってからは、朝日杯よりもこちらの方がクラシックに直結する活躍馬を輩出しており、1800mでデビューしたジャングルポケットにとっても、距離短縮よりは延長を選ぶのは自然な流れだったと言えるでしょう。

 そしてこのレースから、北海道の2戦で手綱を取っていた千田Jから、大レースでの勝負強さに定評のある角田Jに乗り替わります。
 この角田J×渡辺調教師×斎藤オーナーというトリオは、1995年のクラシックを席巻すると思われながら、弥生賞後の故障で引退、幻の三冠馬と呼ばれたフジキセキと全く同じチームで、今度こそこの馬でクラシックを、という意気込みを感じさせる采配ではあったと思います。

 しかしこのレースは、戦前の評判における一頭の怪物がおり、そしてレース後に、更なる怪物の出現に誰しもが瞠目させられる事となります。
 戦前の注目は、なんといってもエリカ賞をレコードで圧勝してきた外国産馬のクロフネでした。
 この世代からダービーを含むクラシック競争が、外国産馬にも頭数制限付きで門戸が開かれた事もあり、その初年度に登場した怪物、しかもクロフネというネーミングの妙もあり、圧倒的な一番人気に支持されていたのです。

 ジャングルポケットはと言えば、札幌3歳S勝ちもこの時点ではまだまだマイナーステータス、という風潮もあり、新馬を勝ったばかりのサンデー産駒アグネスタキオンより人気なく、3番人気に甘んじての出走となります。
 しかし結果的にそのタキオンの人気は過剰人気では全くなく、それはレース結果で如実に示される事となります。

 いつものように軽快に先行するクロフネに対し、タキオンとジャングルポケットは中団くらいから虎視眈々と進出の機会を伺います。
 残り800mくらいからタキオンが先に仕掛け、先頭列に並びかけるのにクロフネも呼応、ジャングルポケットもその後ろから忍び寄っていきますが、直線入り口ではすわ2頭の一騎打ちか、という気配が漂っていました。
 ですが、そこからは完全にタキオンの独壇場で、ほんの少し気合をつけただけで圧倒的な加速力・切れ味を繰り出してクロフネを置き去りにし、最後は流す余裕を見せながら後続に2馬身半の圧倒的な差をつけてみせたのです。

 その二頭のつば競り合いを後ろで見定めていたジャングルポケットも、最後の坂でしっかり伸びてクロフネは交わし去ったものの、前に行くタキオンには完全に完敗、という形になってしまいました。
 まぁ後々の観点からすると、ジャングルポケットもクロフネも瞬発力の質に秀でていたタイプではないですし、また後半が12,0-11,2-11,4とかなり加速力が問われる展開で、外目から勢いをつけていったタキオンの方が楽だった、と見做すことも出来ますが、それを差し引いてもスケール感の違いを見せつけられる内容だったでしょう。

 ともあれ、ここで苦杯を喫したものの、陣営の目標はぶれることなくクラシック、その最高峰のダービーに照準が合わせられており、その期待に応え得るだけの素質を持った馬だというのを改めて証明した一戦でもあったと言えますね。

**★共同通信杯~ダービー <宿敵なき悲願達成>**

 私の記憶が確かならば、この春のジャングルポケットのローテーションはかなり早い内からこの3戦、と明言されていたように思います。
 そしてまたこれが物議を醸すところでもあり、今でこそ共同通信杯からの直行組はかなり結果を残していますが、当時はまだ中山のトライアルを使う組でないと本番は勝てない、というのが明確にありました。
 その意味では、あくまでも大目標はダービーであり、その潜在能力を最大限に生かすためのローテーションと割り切っていたのが印象的ですし、結果的にそうやってゆったりしたローテーションで余力を残しておけたことがプラスだったと考えることは出来るでしょう。

 ともあれ、トニービン産駒として大得意の府中に初見参となったジャングルポケットは、ここは相手関係が弱かったのもあり、好位から早めに抜け出して楽に押しきる横綱相撲を見せます。

 そして迎えた[皐月賞](https://www.youtube.com/watch?v=ldSiRN6QRm0)では、再びアグネスタキオンが高い壁として立ちはだかります。
 タキオンは不良馬場の弥生賞を圧勝して未だ無敗、圧倒的1番人気に推される一方、ジャングルポケットも抜けた2番人気には支持され、けれどローテーションや脚質、血統などから、崩れるとしたらこっち、というイメージは強く持たれていました。

 実際にレースでも、ジャングルポケットは生来の不器用さを露呈する形になってしまいます。
 最内枠からまずまずのスタートを切るものの、2歩目で大きく躓き、小回り中山では致命的ともいえる、後方からの競馬を余儀なくされてしまうのです。
 それでも道中は早めに外に持ち出し、じわじわと大外を押し上げていって、先団にいるアグネスタキオンにプレッシャーをかけていきます。
 4コーナーで一気に並びかけるところまでいき、今度こその一騎打ちを予感させますが、そこまでのロスが祟ったのか、またしても瞬時に加速したタキオンに突き放され、内からしぶとく伸びてきたダンツフレームにも交わされて3着と、はじめて連対を外す結果となってしまったのです。

 まあダンツフレームも、その後ダービー2着、宝塚記念を制する名馬ですが、こちらもアーリントンCからの直行、という異例のローテで人気なく、ただ結果的には素材的に抜けた3頭が上位、その中でレースセンスに最も長けたタキオンが一枚上手だったレース、とは言えるでしょう。
 正直このレースのタキオン自体の走りはあんまり良くはなく、この後屈腱炎発症が判明して引退する事を考えれば、もう既にその予兆はあった、と言えるのかもしれません。
 翻って、王道中の王道である不良馬場の弥生賞を回避した選択が、2、3着馬にはその後の余力に繋がった、とも考えられ、ローテーションの難しさ、巡り合わせなどをしげしげと考えさせられる内容ですね。

 ともかく、[ダービー](https://www.youtube.com/watch?v=5vwZjAwRfnU)でこそ三度目の正直、ライバルにリベンジを、と意気込んだであろうジャングルポケット陣営にとって、アグネスタキオンの離脱は複雑なものがあったでしょうが、といってダービー戦線が無風であるわけもありません。
 ラジオたんぱ杯では退けたものの、その後毎日杯を圧勝、NHKマイルCも制してGⅠ馬となったクロフネが、満を持してダービーの舞台に上がってきたのです。
 いわゆるマツクニローテの嚆矢となったクロフネの脅威に対し、しかし流石にローテーションの優位もあり、ここではジャングルポケットが1番人気に支持される事になります。

 生憎の雨で重馬場開催となる中、大外から無難なスタートを切ったジャングルポケットは道中は中団やや後ろのインコースを追走、外から先に仕掛けるクロフネを追うように直線で外に持ち出し、そこから一気に持ち前の長い脚を繰り出します。
 直線半ばで先頭に立つと、後ろから追い込んできたダンツフレームを今度は楽に凌ぎ切り、堂々たる競馬でダービー馬の称号を手にする事となったのです。

 このレースに関しては、とかくタキオンがいれば、というifが付き纏いますが、少なくとも府中の2400mで重馬場なら、遜色のない競馬にはなっていたと思います。
 後で触れますが、やはりジャングルポケットは左回りでのパフォーマンスが図抜けていましたし、良馬場で仕掛けが遅い展開ですとタキオンの切れ味に屈した可能性はありますが、持続力が問われるなら最後はこちらに分があると思いたいですね。
 ともかく、おそらくは札幌3歳Sを勝った時点から思い描かれていた理想的なローテーションを全うし、幾度となくライバルの後塵を拝しつつも屈せず、最高の舞台で最高のパフォーマンスを見せたという意味で、悲願成就、という言葉を重ねるに相応しいクラシックロードだったと思います。

**★札幌記念~ジャパンカップ <覇王への引導>**

 栄えあるダービー馬となったジャングルポケットですが、そこまでゆったりしたローテーションで結果を出していたこともあったか、始動戦は秋のトライアルではなく、夏のGⅡ、札幌記念が選ばれます。
 これは当然、3歳時に連勝を決めた舞台という適性も含めての選択だったでしょうが、しかしレースではスローの流れの中で、同期の遅れてきた大物の1頭であるエアエミネムに前々からの押し切りを許し、伏兵ファイトコマンダーにも後塵を拝しての3着と、やや不甲斐無い結果に終わってしまいます。

 それでもしっかり目標通りに菊花賞に参戦し、ここでも当然1番人気に支持されますが、ここでもかなりのスローペースで動き出しが遅れ、コーナーでももたつき、遅れてきた大物その2と言えるマンハッタンカフェが内々を回って豪快に差し切る中で、最後ようやく差し込んでくるも4着と、どうしても右回りでは思うような結果が残せません。

 こんなはずではない――――陣営の想いはここで、2つの大きな決断に繋がります。
 ひとつは、今までのゆとりのあるローテーションから、やや間隔が詰まるものの、得意舞台の府中2400m戦・[ジャパンカップ](https://www.youtube.com/watch?v=9i_611LeOj4)への参戦を決めた事。
 そしてもうひとつは、クラシックロードでずっと手綱を握ってきた角田Jから、世界の名手ペリエJにスイッチを決めた事です。

 このレースには、同世代のライバルとはまた一味違う、百戦錬磨の世紀末覇王・テイエムオペラオーが磐石の構えで控えていました。
 年間グランドスラムを達成した前年に比べればその勢威はやや衰えていたものの、それでも現役屈指の底力と安定感を誇る同馬は高い壁として聳えており、舞台適性や鞍上強化などを踏まえても、人気では当然のように譲る形になっての一戦、これが文字通り手に汗握る死闘となります。

 序盤はゆったりしたペースで流れるものの、向こう正面でトゥザヴィクトリーが盛大に引っ掛かって先頭列まで押し上げていったことで一気にペースが上がり、超ロンスパの底力勝負になったのです。
 当然のように先行勢が早めに潰れる中、オペラオーは豪快に外を捲り気味に進出し、残り400mで早くも先頭に立ちます。
 やや出遅れ後方から、それをマークする位置にいたジャングルポケットも、外に持ち出して追撃態勢に入りますがその差は中々縮まりません。
 
 しかし、残り100mでも2馬身近い差があり、これは万事休すか、と思われたところからが、府中の鬼・ジャングルポケットの真骨頂でした。
 流石の早仕掛けでやや脚色の衰えたテイエムオペラオーに一完歩ずつ詰め寄り、正に最後の最後で際どく交わし去って、史上唯一無二である同一年度ダービー&JC制覇の偉業を達成したのです。

 このレースはラスト2Fが11,2-12,0で、あれだけ早めに仕掛けていきつつ坂地点で加速する余力があったオペラオーの底力は素晴らしいものがあり、あくまで個人的な評価ですが、オペラオーが一番強い競馬をしたのはこのJCだと思っています。
 しかしこのペース、全体時計と後半ラップで、最速地点では詰めきれなかったものの、ラストまで11秒台半ばの脚を持続させ差し切る芸当もまた凄まじく、このレースを見ていればこそ、良馬場でタキオンがいてもダービーは勝てた、と思えるところはありますね。

 結果的にこの世代は、JCをジャンポケ、JCダートをクロフネ、有馬をマンカフェが制したわけで、決して相手関係も弱くない中でこれだけ活躍する3歳世代というのは、その後ではジェンティル・ゴルシ世代くらいしかいなかったわけですし、総合的に見ても最強世代の一角を占めるのは間違いないでしょう。
 その中で一際に光彩を放ったのが、このジャングルポケットのJC勝利ではなかったかと私は思っています。

**★阪神大賞典~有馬記念 <運命の綾は残酷に>**

 古馬となったジャングルポケットは、まず王道である天皇賞春を目指して阪神大賞典に出走します。
 しかし、鞍上にスポットの小牧Jを迎えたここでは、阪神3000mの鬼であるナリタトップロードに楽々抜け出され、外々を回した分最後も甘くなってギリギリ2着を死守と、やはり右回りではどうにもイマイチ感がぬぐえないのは相変わらずでした。

 続く春の天皇賞では当代きっての名手・武Jにスイッチして臨むものの、スローペースからやや立ち回りで後手を踏み、菊花賞同様にインから鋭く抜け出したマンハッタンカフェを捉え切れず2着と、実力の片鱗は見せるものの結果がついてきません。
 まぁこのレースに関しては本当にこの馬の弱点を踏まえて上手く乗られている方ではありますが、それでも結局コーナーワークの下手さと、そこで加速すると終わってしまう、という難儀な特性は最後まで克服することが出来なかったと言えそうですね。
 そのあたり、抜群の器用さや切れ味が武器だったサンデーの仔、タキオンやマンカフェと相性が悪く、一本調子のクロフネには相性が良かったとも言えます。

 その後怪我が判明し休養に入ったジャングルポケットは、秋シーズンの初戦に去年制したジャパンカップを選択します。
 しかしながら、歴史を差配する神は、ジャングルポケットを再び最高の舞台である府中2400mに立たせることは許してくれませんでした。
 この年は府中の改装が重なり、秋の天皇賞・JCも中山開催となっていたのです。

 不得手の小回り、右回りのJCでは、思い切った最後方待機策から馬群を割って伸びてくるものの、前の争いにはとても加われずの5着となり、そして続く有馬記念では、逃げるタップダンスシチーを外目から早めに追撃するも、直線で相当に失速して7着と、本来の底力を全く見せることが出来ない結果に終わってしまったのです。
 結局その有馬を最後に引退する事になり、古馬になってからは1度も勝利の美酒を味わう事はありませんでした。

 とはいえ、仮に現役生活を伸ばしていたとしてどうだったか、はなんともいえません。
 改装前の府中と改装後の府中は地味にターフの質が別物になっていますし、展開的にも底力勝負になりにくくなっていて、その点ではあまりジャングルポケットタイプの馬には歓迎されないロケーションとも言えます。
 裏を返せば、あと1年生まれるのが遅かったら、史上唯一の偉業すら達成出来ていなかった公算が高いわけで、色々な意味で古武士の趣きを感じさせる、不器用な名馬だったと思います。

**★能力分析**

 結果的に府中で3戦3勝、右回りでは3歳時以降ひとつも勝てなかったわけで、単純に左回りの方がパフォーマンスが高かったのは明らかだと思います。
 ただもうひとつ言えるのは、4歳以降の右回りのレースは、この馬にとってベストのスタミナ持久力戦になったことは一度もなく、苦手な瞬発力勝負で、殊更に苦手なコーナー加速を問われて持ち味を引き出せなかった、という見方も出来る、という所です。

 一連の右回りのレースぶりを見ている限り、コーナーで外から早めに動いていった時は失速が早く、けどコーナーで動かないとポジションを下げてしまうという乗り難しさがあったろうと感じます。
 多分とにかくコーナーでの加速が苦手で、無理にギアを上げていくとそこで脚を使い切ってしまうのが、皐月賞や札幌記念などでは顕著です。
 逆にコーナーを我慢させて好走したのが春天と思いますが、あれも我慢した分のポジション差で届きませんでしたし、右回りで噛み合うコースはほとんどなかったと言えるでしょう。今なら阪神外回りならなんとか、という気はしますけどね。

 左回りでも、或いはコーナーから顕著に動いていたら甘くなったのかもしれませんが、基本的にどのレースも直線からのヨーイドンか、平均で流れて極端にコーナー加速を問われない展開だったのもあります。
 仕掛けを直線まで我慢できた時に限っては、非常に高い持続力を発揮出来たというイメージで、切れ味の質の足りなさをそこで補えたという意味でも、典型的なトニービン産駒でしたね。

 スタミナ適正はかなり高かったはずなので、菊や春天はもっと流れていれば面白かったと思うのですが、どうあれサンデー全盛・瞬発力至上の時代に生まれてしまった分、レース毎の当たり外れが大きかったのはあるのかなぁと。
 それでも現役最後の一戦以外大きく崩れなかったのは傑出した能力の賜物と言えますし、ひとつの時代を彩った印象深い名馬だと思います。

**★終わりに**

 この馬の現役時代から20年近くが経過して、ますます競馬シーンのスピード色は強くなっていると言えます。
 その意味ではこの血統が徐々に廃れていくのも時代の趨勢、とは言えますが、一方で母方の血脈に入って、しっかりとスタミナの下支えになることで良さを発揮していいるところもあります。
 トニービンの直系はサイアーラインが繋がるかどうか微妙な岐路にある、と言えますが、こういう底力に長けた血脈こそ、今後の日本競馬の発展には大切な要素とも思いますし、ジャングルポケット自体ももう一花、その直仔のオウケンブルースリやトーセンジョーダンあたりから、モーリス的な隔世遺伝での名馬が出てこないか、やはり期待したくなるところです。
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2017 8月第4週新馬戦 レース回顧(日曜編)

**★8/27(日) 新潟5R 芝1200m戦**

 日曜日の新潟芝は、ほぼ高速状態には戻っていたでしょう。
 その中での新潟では珍しいスプリントの新馬戦は、ニシノコデマリが減量の利も生かして前々から鋭く抜け出しての勝利を収めました。

 新馬っぽくばらついたスタートで、ダッシュが良かったのは外のニシノコデマリでしたが、そのすぐ内にいた2着馬のタガノヒバナの二の足が速く、こちらがハナを取り切ってニシノが番手、という形になります。
 1番人気で3着のヴェルスパーは、スタートも煽り気味で二の足もつかずにズルズルと一度後方に下がってしまい、そこから馬群の外に持ち出してじわっと進出する形でレースを進めていました。

 ラップは35,2(11,73)-35,1(11,7)=1,10,3(11,71)という推移でした。
 綺麗な平均ペースですが中盤2Fが11,7-12,0とかなり緩んでいて、そこから再加速して11,5-11,5とラストまで落としておらず、コーナーで押し上げたとしても前を捕まえるのは難しい推移だったのは確かだと思います。

 勝ったニシノコデマリは、斤量面での優位もあったでしょうが中々味のある競馬でしたね。
 スタートを決めてスッと番手で折り合い、緩みに合わせながらのレースでも直線の出し抜きにはしっかり反応し、かつこの馬自身はラスト1Fがほぼ最速になるラップでフィニッシュしていて、まだ余裕のある勝ち方だったと思います。
 距離はもうちょっとあっても、と思いますし、レースセンスの良さを生かせれば、中山など立ち回りが問われやすいところでは面白さが出てきそうなタイプですね。

 2着のタガノヒバナもそれなりの競馬ですが、この馬はラストは明確に落としているのでその点でややマイナスですし、全体時計やラップそのものに凄みはないので、こちらもポジショニングの良さを生かして今後どこまで、という感じでしょうか。

 伸びしろがありそうなのは3着のヴェルスパーで、内枠が祟った部分もあるのか本当に出足が悪く、けれど400m過ぎから馬群の外に持ち出すとしっかり加速出来ていたので、外に馬がいると怯むタイプなのかもしれません。
 コーナー地点は全体的に緩かったとはいえ、上の画像ではっきりわかるくらい外々を通してしっかり押し上げており、それでいてラストも極端には甘くなっていないので、まともならこの馬が、というのはあったと思います。距離延長と外枠で噛み合ってくれば、未勝利レベルならチャンスは理想ですね。

**★8/27(日) 小倉5R 芝2000m戦**

 小倉も日曜は回復傾向で、9Rの500万下がスローロンスパの形で2,00,1、メインも1,46,1とそこそこの時計が出ていたので、このレースの全体時計そのものはそこまでレベルが高いとは言えないでしょうか。
 
 展開は全体的にフラフラしたスタートから、最内のゼットアレースが逃げて2着のナリタブルーが番手外、3着のクリノダイヤモンドが先団の外目につけていきます。
 圧倒的な人気だったバブリーバローズは綺麗なスタートから真っ直ぐ走りつつ、序盤はゆったり中団やや後ろに構えて、前のペースが緩むところでじわりじわりとポジションを上げていく形になりました。

 ラップは36,9(12,3)-50,5(12,62)-36,2(12,07)=2,03,6(12,36)という推移でした。
 全体的には中盤が緩んでいる推移ですが、特に中盤の前半が13,2-12,8と遅く、そこからは12秒前半に入っているので、スローからノ5Fロンスパ戦、というイメージで、後半の持久力面を高く問われたレースになっているかなと思います。

 勝ったバブリーバローズは非常に落ち着いたレースぶりで、後半馬群が凝縮してじわじわと前との差を詰めつつ、勝負所でもう一段しっかり仮足を決めて一気にコーナーで先頭列、そのまま直線も楽な手応えで、軽く促す程度で押しきる完勝でした。
 この馬としては600-400m地点辺りで一気に上がっているので、ここらで11,5くらいの切れ味を引きだしていて、そこからじわっと減速気味ではありつつしっかり粘り込んだ感じでしょうか。
 あの反応の良さはクロフネの血かな、と思わせますし、そこからのしぶとさはステイらしく、そこそこ面白い勝ち方だったと感じます。

 この立ち回りですと、距離短縮でどうか、という感じはありますし、2歳戦の内は使いどころが難しそうですが、じっくり育てていけば後々2400m路線で楽しみがありそうな馬だなぁと感じましたね。

**★8/27(日) 札幌5R 芝1200m戦**

 キーンランドCでも1,09,0止まりと、相当に重い条件での1200m新馬戦は、人気のベルーガが楽に差し切りました。
 展開はトーセンスティールが逃げて、2~4着馬が2~4番手にいる形でしたが、ベルーガはモレイラJにしては珍しく明確に立ち遅れて、序盤から少しずつインからリカバーしつつ、最終的には先団の一番後ろくらいのポジションで進めていました。

 ラップは35,6(11,87)-36,0(12,0)=1,11,6(11,93)という推移でした。
 数字だけ見ると平凡に感じるかもですが、この日の札幌の馬場でならまず新馬としての水準には届いていると思いますし、勝ち馬は充分に上のクラスでもやれる素材を感じさせたと思います。
 レースの流れとしても、コーナーで一度澱んでから僅かに再加速、という形の中で、勝ち馬だけが明確にギアを上げる余力を残していた、という感じですね。

 勝ったベルーガは、かなり大きく出遅れたものの、早い地点でリカバーしており、その意味では数字以上に前半の追走力は問われたと思いますが、それでも後半の加速地点で段違いの性能を見せてきました。
 コーナー途中までインベタで、そこからノーブレーキでスムーズに外に持ち出すモレイラJらしい素晴らしい進路取りのアシストも大きかったとは思いますが、400-200m地点でおそらく11,5くらいの脚は使っていて、ラストは多少落としている計算にはなりますが、それでも小気味よいピッチ走法が最後まで崩れませんでした。

 キンシャサの仔ですので、時計勝負でない中での総合力を問われる展開は噛み合ったと思いますし、ラストの反応の良さや持続面を見ると、1400mまでは問題なく戦えるように思えます。
 軽い馬場でどこまで切れ味と持続力を高めてこられるかは未知数ですが、中々短距離路線で後傾型の面白い1頭になるかな、と思わせる走りっぷりでした。

 
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2017 8月第4週新馬戦 レース回顧(土曜編)

 今日はまたちょっと発熱してしまって辛めなので、いつも一緒にサクサクと進めさせていただきますね。
 まぁ夏競馬も終わりに近くなって、新馬戦自体も能力のある馬は秋の中央場所に備えて、って感じであまり凄みのあるレースもないので、丁度いい言えば丁度いいのです。

**★8/26(土) 新潟5R 芝1600m戦**

 土曜日の新潟は雨の影響でほぼ終日稍重馬場であり、極端に時計がかかってはいませんでしたが、それでも0,5~1秒くらいは重たくなって、特にラスト1Fで落ち込む展開は目立っていました。
 
 非常にバラバラっとしたスタートになった中で、人気の3着馬・フランケル産駒のシグナライズが外から先行、2着に来たオークス馬・シルクプリマドンナの娘であるラストプリマドンナは、やや立ち遅れたか?くらいのところから内目を縫って中団くらい、勝ったブランボヌールの全弟・エントシャイデンは明確に立ち遅れて後方外から、道中緩い地点で少しずつ押し上げて中団やや後ろ、というポジションでした。

 ラップは36,7(12,23)-24,9(12,45)-34,5(11,50)=1,36,1(12,02)という推移でした。
 新馬らしくスローではありますが、一番遅い地点でも12,5と、馬場を考えれば極端に緩んだところはなく、比較的レース全体での総合力は問われているかなぁと感じます。
 後半が12,4-11,8-10,7-12,0ですので、実質的には3F勝負で前を向いて速めにエンジンを掛けられた方が楽な形で、上位3頭はそれぞれにちゃんとスペースを作りつつのレースの中で、後半要素でもそこそこ高いものを見せてきたと言えそうです。

 勝ったエントシャイデンは大きく出遅れましたが、遅い地点でじわじわリカバーしてくる鞍上の意識もあり、しっかりコーナーから直線入り口までエンジンをふかして入ってこられ、それが600-400m地点で一際早く鋭く伸びることが出来た要因になるでしょう。
 この馬の上がりは33,6で、残り400m地点では前と1馬身もなかったので、おそらく11,1-10,5-12,0くらいでしょうか。鞍上の好プレーもあり際立った加速力を引きだせましたし、その上で切れ味の質・持続力もそこそこに高かった、と見ていいでしょう。スローとはいえこの日の馬場でラストを12,0はまずまずと思います。

 血統的にブランボヌールの下なので(折りしも今日、繁殖入りのニュースが流れてましたね)、いずれ距離的に限界は出てきそうなイメージもありますが、この日も長くいい脚は使えていましたし、世代限定の内ならマイル路線は守備範囲になってくるでしょう。
 追い出してからフラフラしていたりと、まだまだ若さは残りますが、その分奥行きも存分に残ってそうなイメージで、中々に楽しめそうな1頭だと思います。

 2着のラストプリマドンナもいい競馬でしたね。
 上位三頭の中では内枠だったのもあり、立ち回りで器用さを見せつつ、完全に前を向くのは一番遅くはなっていて、その分先にエントシャイデンに出し抜きを食らった、というイメージです。
 一度交わされてからはしぶとく粘っていて、この馬も持続面の良さはそれなりに見せてきましたし、血統的にもマイルはピッタリかな、というところで、シルクプリマドンナの最後の仔でもありますし、牝馬クラシック路線で頑張って欲しいですね。

 3着シグナライズは、追い出されてやや反応が鈍く、かつフラフラとするところもあって、まだ馬が非力で若いな、という感じでした。
 フランケルの仔ですから、こういう馬場がイマイチフィットしなかった可能性もありますし、でもこの流れで後半要素、特に加速面では殆ど良さが出なかったのは微妙で、このレースに限って言えば着差以上に上位2頭とは差があると感じます。
 まぁ藤原厩舎の馬ですから叩いて変ってくるかな、とは思いますし、前半のポジショニングの良さなどはセンスを感じさせましたので、そのあたりに期待ですかね。

**★8/26(土) 小倉5R 芝1200m戦**

 小倉も金曜の雨で芝は稍重スタート、とはいえこちらも大した影響はなく、せいぜい0,5秒くらい見ておけば充分、というところでしょうか。
 1Rの未勝利で1,08,7が出ていますし、その意味でこのレースの1,09,7はまず新馬としては可もなく不可もなく、という所だと思います。

 ラクシュミーが逃げて3着のメイショウトラマツが番手、勝ったブラウハーツは一番良いスタートから三番手の外とベストポジションを確保します。
 2着に差し込んできたラペールノアールは、スタートは悪くなかったですが二の足でやや後手を踏む感じで、道中もややおっつけながらの追走となっていました。

 ラップは34,4(11,47)-35,3(11,77)=1,09,7(11,62)という推移でした。
 一応一貫消耗戦で、新馬らしくなく緩みがない中で、一定の追走力と要所の反応は問われているかな、と思いますが、レベル的にはそこまで高い一戦ではなかったですかね。

 勝ったブラウハーツはスタートが完璧でしたし、そこからもしっかり折り合って、勝負所からもスーッと進出出来ており、非常に優等生的な競馬だったと思います。
 父エイシンアポロン、というのも渋いですが、あの馬も器用で先行力がありましたし、そういう部分で良さを受け継いでいるのかなと。
 ただ絶対的な能力的には、ラストも結構落としていますしちょっと1200m路線では、という感じですかね。もう少し距離があっても上手く競馬出来そうですし、後半勝負で良さが出てくれば面白いのですが。

 2着のラペールノアールは、ティルナノーグの全妹ということで、本質的にはもうちょい距離が欲しい、という競馬でしたね。むしろこういうタイプが阪神まで待たなかったのは不思議ではあります。
 レースでもややスピード負けする形で、コーナーも外々ロスが大きいながら、ラスト1Fだけで3馬身差を軽く詰めて、自身はほぼラップを落とさない形で走破していると思います。
 まず脚を余しているとは思うので、やはり1600mくらいで見てみたい1頭ですね。

**★8/26(土) 札幌5R ダート1700m戦**

 札幌も雨の影響があり、ダートも稍重での開催でした。
 その割に極端に時計が速い、ということはなかったのですが、未勝利で1,46,4、最終500万下で1,44,9ですので、水準よりはちょい軽いかな、くらいですね。その意味ではこのレースの1,49,7は新馬としてもやや平凡かな、とは思います。

 展開は2着に粘り込んだアビームが逃げ、勝ったコンダクトレスは2列目のイン、3着イザベルローズはその一列後ろのイン、という隊列になります。
 コーナーから外目の馬が脱落していく中で、内を上手く立ち回った3頭がラスト熾烈な叩き合いになりました。

 ラップ的には30,8(12,32)-39,1(13,03)-39,8(13,27)=1,49,7(12,89)という推移でした。
 最序盤はそこそこ速く、そこからはほぼ一貫しての減速消耗戦の様相が強いですね。後半5Fは全て13秒台のラップになっており、その点でもレベルとしては疑問符がつけられるでしょうか。
 レースとしては一定の追走力と、後半の持久力に特化した内容だと思います。

 その中でコンダクトレスは内々を器用に立ち回って、最後逃げるアビームをしっかり捕まえたレースセンスは評価出来ると思いますが、能力的にはまだ足りないですので今後の成長に期待ですね。
 2着馬も完璧なバランスでの逃げで粘り切れませんでしたし、むしろ3着イザベルローズの方がラストでかなりしっかり詰めていて、足を余した印象はあるので変ってくる余地は大きいかもしれません。
 が、流石にこのメンバーから一気にダート路線で飛躍、というイメージは持ち辛いかなと思いますね。
posted by clover at 04:27| Comment(0) | レース回顧・中央競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする