2017年07月26日

2017 函館記念 レース回顧

 思いがけない集中豪雨があったようで、かなり渋った馬場での開催となった函館記念は、これまで重賞でも善戦を続けてきたルミナスウォリアーが、今までのもどかしさを振り払うような鮮やかな差し切りを決めました。
 多分サムソン産駒も牡馬ではこれが初重賞だと思いますし、色々な意味で見応えのあった函館記念を改めて振り返っていきましょう。

 馬場は、午前中は昨日と同等くらいに時計が出ていたのですが、どうやら5Rから6Rの間あたりでかなり強く降ってきて、明確に6Rから時計がかかり出していますね。
 5Rの新馬はラスト2F11,4-11,5なんて軽い時計が出ているのに、6Rは60,5-62,5という前傾ラップでの消耗戦で2,03,0、9Rの1200m戦も35,5-35,8で1,11,3と、一気に2秒程度は時計のかかる馬場に変貌したと見ていいでしょう。
 その視座でのこのレースの2,01,2は、水準クラスに時計は出してきたかなと感じます。

 展開は、外からヤマカツライデンがハナを切り、そのすぐ内側からタマモベストプレイも積極的に前につけて2列目ポケットを確保します。
 マイネルミラノはスタートからかなり押していたものの動きは鈍く、外からパリカラノテガミにも来られてしまい4番手外目の追走、その後ろにステイとケイティープライドがつけます。
 アングライフェンも枠を利して早めの競馬で中団より前、それを見る形で外からこちらも積極的にルミナスとツクバがいて、サトノアレスは中団のインでじっくり構える形になりました。

 ラップは35,6(11,87)-49,4(12,35)-36,2(12,07)=2,01,2(12,12)という推移でした。
 結果的に馬場が重かったとはいえ、予想よりも外の馬の出足が良く、そこまで先行争いが激しくならなかった感じで、中盤も前半2Fで12,4-12,6と少し息が入っており、ハーフで見ると60,6-60,6と綺麗な平均ペースを刻んでいます。
 残り1000mから少しペースアップして、5Fロンスパ持久力戦の様相は色濃くなり、かつコーナー出口から直線入り口で11,8と多少加速もしています。そのあたりを見ても、この馬場適性と持久力戦適性、重たい馬場なりの追走力も総合的に問われていて、どちらかと言えばスタミナが強く問われる競馬になっているのかなと感じますね。

 あと、これはあくまでそうかもしれない、レベルの話ですが、急激に馬場が悪化して、1周コースですと当然スタンド前の内側のコースは荒れてくる度合いが強かったのかもしれないなと感じました。
 思った以上に重馬場での走りが上手くない内枠勢がダッシュつかなかった感はありますし、今日に限ってはむしろ外枠から綺麗な芝の上で加速出来た事が、こういう外主導の流れを形成する要因になったのかもしれないですね。

 勝ったルミナスウォリアーは、1頭だけ4コーナーからの手応えが違い過ぎましたね。
 レースのラスト3Fは12,2-11,8-12,2ですが、この馬は残り200mでは先頭に立っていて、かつコーナー半ばで仕掛けた時の切れ味が鋭かったので、推定としては11,7-11,7-12,2くらいでしょうか。

 外主導の流れに上手く乗っていけたとはいえ、この馬があれだけポジション取れるのもちょっと驚きでしたし、それだけ滞在競馬、休み明けが合う馬なのでしょう。
 斤量面でもやや恵まれていたとは思えますし、あの手応えなら強気に出していけるわけで、本質的にはラストの持続面で甘くなりがちな馬でしたが、その面を問われない持久力戦の中で、馬場適性含めて良さを見せてきたと考えられると思います。
 実際のところ重馬場自体走るのが初めてでしたし、良馬場2000mですとポジショニングで難しいかなと思って嫌ってしまいましたが、この強さはある程度噛み合ったとはいえ、本格化を意識してもいい走りだったかなと思います。

 2着のタマモベストプレイも、全体的に時計がかかる馬場になってくれたことは当然プラスに働いたと思います。
 スタートから上手くヤマカツを前に生かせつつポケットに潜り込んだあたりは非常に巧みでしたし、その分要所でスッと動けなかったものの、ルミナスとアングライフェンが先に抜けてくれたので進路取りにもそんなに不利はなく、最後は持ち前のしぶとさ、スタミナを生かして雪崩れ込んできましたね。
 この馬の場合は多分11,8地点では少し置かれて、ラストの12,2で盛り返している、と感じますし、馬場条件がどうあれ、後半はあまり波を作らずに分散させて入ってくる時に粘り強さが出るなぁと。洋芝適正も高い馬でしたし、終わってみれば距離だけで14番人気は舐められ過ぎでしたね。

 3着ヤマカツライデンも、純粋な2000mのスピード勝負では前半・後半要素共にちょっと足りないところを、馬場適性と雨が補ってくれた感はあります。
 この馬も極端に速いラップを問われたりすると脆いので、こうして平均ペースからの持久力戦はもってこいだったと思いますし、早めに押し上げられながらも最後まで怯まずに粘り通し、アングライフェンを差し返したのは中々に底力を感じさせました。
 でも本質的には2400m前後がべストだろうとは思いますし、このクラスで好走するためにはペースが速くても遅くてもダメ、というスポットの狭さはありますが、型に嵌れば強い馬だなと再認識させられましたね。

 4着アングライフェンは、結果的に気分よく行き過ぎたのかな、というのはありますね。
 元々重馬場自体は得意ですが、基本的なスタイルとしてはスローからの後半型ですので、この平均ペースで自分から早めに前を捕まえにいく形は、結果的に追走面でも、持久力面でも少しずつ甘くなる要素だったのではないでしょうか。
 ただこの枠であのポジションを取りに行くのは、このコースならセオリーとも言えますし、4コーナーで外のルミナスの勢いが良過ぎたのもあるので、ここは仕方ない所かな、とも思います。今日の馬場傾向を踏まえれば、結果論的にはもう少し外でじっくり構えられていた方が良かったのかもしれませんね。

 5着ケイティープライドは、序盤からしっかりポジションも取れましたし、内目は外の馬に取られてしまったので外を回すしかなかったとはいえ、最後まで軽斤量を生かしてしぶとく食らいついてはいましたね。
 ただこの馬自身はもう少し時計の出る馬場の方がより良かったとは思いますし、最後甘くなったのも決定的に持久力戦になりきってしまったのがあるのではないか、と感じます。
 今後も条件が噛み合う所でなら激走が期待できると感じられる走りでしたね。

 6着サトノアレスは、この馬場と展開の中でも最低限の格好はつけてきた、と感じました。
 インでじっと我慢して、コーナー出口まで一切動かさなかった辺り、この馬の最大の武器はきちんと把握してるんだな、とは思ったのですが、それだけ溜めてもこの馬場、このペースの中ではスパッと切れる脚は使えず、外からダラッと雪崩れ込むだけになってしまって、1番人気としてレースに参加できなかったのは確かと思います。
 でもこの馬でこの条件なら最大限出来ることをやったと思いますし、もっと前にいったり、早めに外から動いたりしていたらもっと大敗していたと感じるので、改めて適鞍でじっくり脚を溜める競馬でどこまで古馬とやれるか、次を注視したいところですね。

 マイネルミラノはここまで重くなると馬場適性的にちょっとダメなんですよね。
 少し時計のかかる程度ならこなしてきますけど、帰ってきてヤフートップで北海道豪雨のニュース見た時にこうなるのは覚悟してましたし、出足が悪かったのもそのあたりと斤量の合わせ技になるかなと。
 展開的にはこういう平均からの分散ロンスパは得意のはずなので、コーナーであれだけ動けず早々失速というのは概ね馬場と、あと多少状態面も考えていいのかもしれません。どの道ベストの好走スポットは狭い馬ですので、天気予報を読み違えた時点で無理筋でした。
posted by clover at 05:10| Comment(0) | レース回顧・中央競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

競馬における斤量の影響についての一考察

**★はじめに**

 リクエストをいただいたので、斤量とハンディキャップに関する個人的な見解などをつらつら語ってみようと思います。
 ただお断りさせていただきますと、私はデータ収集には伝手のない人間ですので、今回語ることはいつにも増して説得的なエビデンスがあるわけでもなく、あくまで長年競馬を見てきて、現状私が能力分析に用いているツールの範疇での印象論になります。そのあたりはご了承くださいませ。

**1.古来言われる1kg1馬身は正しいのか?**

 古くから伝わる競馬の格言に、斤量1kgで1馬身差、というものがあります。
 私達も普段からなんとなく、この計算尺度を当て嵌めて、この斤量差でこの着差だったから、今回の斤量なら通用する、など考える向きがありますが、果たしてこれはそこまで万能の尺度なのでしょうか?

 或いは全ての条件を糾合して考えた時には、この尺度に近似した数字になるのかもしれませんが、しかし競馬のレースは常に一期一会、距離も馬場も展開も全く違う中で、果たしてこの要素が一律で通用するのか、というと、やはりそうではないと思います。
 といって、どの条件なら斤量差があまり出ないか、逆に大きく出るか、出るとしてその幅はどのくらいなのか、という点に、明確な答えを与えられるわけではありませんが、純粋な能力適性面でもいくつか、斤量の影響が大きいのでは?と感じる要素はあるので、そのあたりから掘り下げていきましょう。

**2.加速力と瞬発力に対する影響を考える**

 重い斤量を背負った馬の敗因としてよく耳にするのが、思ったようなポジションを取れなかった、或いは勝負所でもたついてしまった、というものです。

 競馬におけるポジショニング争いとは、雑にまとめてしまえばレース2F目での加速にどれだけスムーズに対応できるか、であり、勝負所の動き出しにしても概ね加速ラップが問われている、という視座で言えば、斤量は加速力の面にはかなり大きく影響を与えると考えられます。
 人でも重いものを持っていれば、即座に素早く動くのは難しくなりますし、普段通りの動作に至るまでの準備加速に時間がかかるのは当然なので、このあたりは競走馬にもストレートに反映する部分ではないかと思います。

 丁度先週、マルターズアポジーが重い斤量を背負って七夕賞に出走し、序盤にフェイマスエンドに頻りに絡まれてペースを上げさせられ、直線を待たずに失速する、という例がありました。
 元々加速性能に非常に優れた同馬ですが、ここではレース2F目に10,5というスプリント戦並のダッシュを問われていて、その負担がレース後半に大きく圧し掛かった可能性は高いと思っています。3コーナーから被せられたとはいえ、流石に本来あんなに早く失速する馬ではないので、序盤のペースアップに斤量負担の相乗効果があった、と見てもいいのではないでしょうか。

 要するに重い斤量を背負う馬にとっては、普通のレース以上にラップの波が大きくならない方がいい、というのは言えると思います。
 今週の函館記念でも、近年で57kg以上を背負って連対したのはトウケイヘイローとダークシャドウくらいしかいませんが、どちらのレースもかなり波が少なく、後半の加速要素も最低限に留められた一貫ペースのレースでした。

 重い斤量を背負った馬にとって難しいのは、後半でも加速要素を少なくしたいから、出来るだけいいポジションは取りたい、けれどいいポジションを取る為には最序盤にある程度頑張って加速しないとならない、その2箇所の加速地点におけるエネルギー分配のバランスを取ることでしょう。
 それに対しては、結構レースロケーションが影響を及ぼす面も強いと思います。
 具体的には、最初のコーナーまでの入りが長く、テンのスピードが上がりやすいレースは、その分だけポジション争いが厳しくなり、ポジションとペースのバランスを守りにくい、と考えられます。

 それこそ函館記念など典型的なレースとも言えて、テンのペースが上がりやすく極端に外枠不利な条件では、重い斤量の馬が好走するためのスポットはより一層狭くなってしまうでしょう。
 逆にスタートしてすぐコーナーで、テンのペースが上がりにくいコースならば、相対的にポジショニング面に無理がないですが、その分レース全体がスローになりやすいので、仕掛けどころで急加速を問われないような工夫が必要になってくる、と思います。

 加えてもうひとつ思うのは、やはり瞬発力面における最大速度は、斤量によってある程度削がれてしまうのではないか、という点です。
 こちらはレースの中で、常に最大速度が問われるほどスローになるのは稀、とまでは言いませんが、ポンポン頻発するわけでもないので、判断要素としての優先度は加速度には及ばないと思います。
 ただ新潟外回りのように、ほぼ必ず400-200m地点が最速になり、非常に高いレベルでの瞬発力が問われる条件もそれなりにはありますし、その切れ味の質の差がレースの結果に直結しやすい舞台では、頭に入れておいていいと思います。

 本当にこの辺りの話は統計を取っているわけではないのでなんともですが、少なくとも斤量の重い馬が好走しやすいコースと好走しにくいコース、というのは厳然として存在するとは思っています。
 それは突き詰めれば、斤量が重い場合に一番走りやすいのは、結局平均ペースの底力勝負という平凡な結論になってしまいますし、そういうレースが現出しやすい条件とそうでない条件を振り分けてみる、という考え方はアリだと考えます。

**3.基礎的な速度面への影響を考える**

 2で考察したのは、あくまでもレースの一部分の特殊条件においての影響でしたが、それとは別に当然レース全体での負担、というものも考えられます。

 今週は函館記念で、サトノアレスの年齢アローワンスの是非が多く語られていると感じますが、その是非はひとまず置いておいて、現在のJRAの基準でもレース全体の斤量の影響が長距離>中距離>短距離と、距離延長に伴って大きくなると考えられているのは、この年齢アローワンスのズレからも顕著にみられるといえます。
 日本では現状、58kg以上の斤量を背負う条件は障害戦くらいしかありませんが、欧州では60kg以上を背負う平地レースもザラで、特に格の高いスプリント戦などは62kgが基本の負担重量になっていたりもします。
 つまり、長い距離を走るだけ、斤量による消耗度は大きいと見做せるわけで、この蓄積が前述の1kg1馬身とも通じるところなのでしょう。

 この点においての個人的な印象としては、楽走、つまり息が入るラップの下限に一番影響が出るのではないかな、と見ています。
 本来なら息を入れられるくらいに緩んでいても、重い斤量を背負っていると息を入れて走りにくくなったり、或いは一度息を入れてからのひと踏ん張りが効きにくくなることで、相対的に軽い斤量の馬と余力の差が出てしまうイメージです。

 2でも触れたように、そうなるくらいなら一貫ペースの底力勝負の方が条件的に平等に近くなる、と個人的には思っていて、それは総合的に言えば、ハイペース適正、スローペース適正の幅が狭くなると考えてもいいのではないかな、と。
 スプリント戦の場合は、基本的にスタートからダッシュを効かせてその惰性で乗り切る、というのが基礎的な概念(近年は必ずしもそうではないですが)なので、斤量の影響が最序盤の加速地点に大きく掛かり、限定的と考えることも出来るでしょう。

 とはいえ、レース全体を考えた時にもうひとつ言えるのは、極端な脚質の馬はそれだけで不利、という事にはなると思います。斤量とうまく付き合うコツは、極端なバランスで走ったり、加減速を頻りに繰り返したりせず、淡々と一定のペースを刻む方がいい、というところで、このあたりは鞍上の体内時計の正確さなどにも関わってくる点と思います。

**4.騎手による斤量の影響の違いについて考える**

 前項で重い斤量を背負った時はより騎手の腕、判断力が問われやすいと指摘しました。
 それに加えて昔からちょっと思っているのは、騎手の体重と負担重量に相関関係はないのかな?という部分です。

 一般に、騎手の体重と馬具の重量で足りない分は、騎手自身の身体や、馬の鞍に鉛を入れて調整する、と聞き及んでいます。
 でもこういう調整って、微弱な差であったとしても、馬自身に騎手の体重とは別のベクトルで重さを感じさせる要素になっていないのかな?と思うところはあるんですよね。

 例えば、最低斤量の48kgにも乗れる、体重46kgの騎手が55kgの負担重量の馬に乗るとしたら、おそらくその補正重量は7kgくらいになるでしょう。
 対して、55kg以下の馬には乗らないムーアJだったら、当然55kgの馬にはほぼ余計な補正重量なしで乗ってきます。

 基本的に騎手は、いかに自分の体重を馬に感じさせずに走らせるか、という技術を磨いているわけですが、乗れる斤量の幅によって微細な調整が必要になる場合、自身に重りを載せるにしても、馬に負担させるにしても、常にベストのバランスを保ち続ける、というのは中々難しい事ではないかと感じます。
 トップジョッキーが上位条件でしっかり結果を出すのは、そのあたりの補正幅を小さく保っていても騎乗馬が集まり、そのブレを極力減らす技術を体得できるから、という印象は結構あるのですよね。

 ともあれ、普段軽い斤量でも乗れる騎手が、重い斤量の馬に乗っている場合は、より負担が大きくなる懸念がある、という指摘です。

**5.馬自身の馬体重の差による影響を考える**

 これも昔からよく語られますが、400kgの馬と550kgの馬が同じ斤量で走るのが不利ではないのか?という観点です。
 私の考えとしては、当然全く影響がないとは考えませんが、それ以上に馬の適正タイプの影響度の方が大きいだろう、とは思っています。

 上で触れたように、斤量差が一番覿面に出やすいのは加速力面において、と思っていますので、その文脈で言うなら当然器用さで勝負する加速力/瞬発力タイプは斤量の影響を受けやすく、底力を高く持つ持続力/持久力タイプは比較的影響を受けにくい、と考えます。
 また、軽量馬でもカンカン負けしない馬、重量馬でもカンカン負けする馬、というのはいますし、体重そのものよりは個体差、その適正面を考えた方が有益かな、とは思っています。ただ当然ながら、同じような適正なら馬体の大きい馬の方が有利と考えてもいいでしょう。

**6.馬場状態の差による影響を考える**

 これも昔から、重馬場の時は斤量3kg増、なんてまことしやかに語られていますが、個人的にはそれは眉唾に思っています。
 そもそも斤量による機動力の減衰と、馬場状態によるそれは別個のファクターかな、とは思っていて、どちらも苦手、という馬なら相乗効果で全くダメ、なんてパターンもあるでしょうが、馬場をこなせる馬なら斤量による影響は特に加算されないと考えます。

 ただ、基本的に重い馬場になれば後ろから加速するのが難しいのは当然ですし、その分前半に無理してしまってバランスを崩す、というパターンは良馬場の時より多いでしょうから、そのあたりでも重い馬場だと重斤量の馬が崩れやすい、というイメージが確立しているのかもしれません。

 逆に超高速馬場の時の方が、斤量の影響は出やすいと思っています。
 それは相対的に平均ラップが上がることと、ほぼ確実に後傾ラップを踏む流れになるので、後半の加速要素や瞬発力要素が強く問われるからですね。

**7.斤量経験の必要性について考える**

 競馬において、レースでしか本質的に鍛えられない能力というのはあると思っていて、例えば追走力などはその代表例として考えていますが、斤量経験もその範疇に入ってくると思います。
 やはり馬自身が酷量をどこまで経験しているか、どこまで耐えられるかというのはありますし、それを一度経験することで克服する可能性も当然あると思っています。

 近年の春の天皇賞で、58kgがはじめての4歳馬が勝ち切りにくいのは、ここまで語ってきた様々なファクターが絡み合っていると思います。
 まず距離が長く、その分だけ斤量の影響が大きい事、そして基本高速馬場開催で、中盤に大きく緩んで後半加速する展開になりやすい事、その場合に加速度や瞬発力の質も高く問われる事などが、はじめての斤量の馬には辛い条件になりやすいと見做せます。
 近年4歳で、はじめての58kgで勝ち切ったのはスズカマンボとフェノーメノくらいですが、この2頭の時は馬場が渋っていたり、超例外的にレース全体が一貫ペースになったりと、斤量の影響が出にくい展開、条件になった事も影響していると思います。

 キタサンは大阪杯で58kgを経験済みでしたし、それ以降、90年代の馬は大抵前哨戦で58~9kgを背負ってからの参戦になっていたので、このあたりは斤量面でスターホースに甘い近年の傾向の影響が反映していると考えられますね。

 ついでに凱旋門賞についても考えてみましょう。
 そもそも海外の年齢アローワンスは、このレースに限らず3歳馬有利に作られています。
 けれど凱旋門賞ほど顕著に3歳馬有利のレースはそこまで多くはなく、それを鑑みるに、ロンシャン開催での当レースが、基本的には超スローで入り、フォルスストレートでも上がり切らずに、結果直線600mの加速力/瞬発力勝負になっている要素が大きいのだと思います。

 実際去年のシャンティイ開催では、例年にないハイペースで展開した結果古馬の上位独占でしたし、ああいう一貫ペースの方が斤量差が出にくい、というひとつの証左にもなるのではないでしょうか。
 基本的に59,5kgなんて酷量の経験はない日本馬が、重馬場の時にしか好成績を出せていないのも、要所の加速力が問われにくい展開になりやすいから、とも考えられて、その意味ではやっぱり、本気で凱旋門賞を勝ちたいと望むなら、事前に斤量面でのチャレンジはしておくべきだと思うんですよね。

 ここまでのスケールではなくとも、はじめての重い斤量が、その数字以上に負担になるパターンは当然ある、と考えておくのが無難でしょう。

**8.ハンディキャップの在り方について考える**

 ハンディキャップ戦は当然ながらギャンブル的な面での面白さがあると同時に、ちょっと力の足りない馬の救済措置にもなっていて、来年以降降級制度がなくなるという話もありますし、その存在意義は増していくかもしれません。
 それだけにこの時期に、改めてハンデの適正さについて考えてみるのも意義のあることにはなるでしょう。

 まず馬齢によるハンディに関してですが、上で触れたように短距離と長距離では2ヶ月の移行期間のズレを設けています。
 ただ巷間でも言われるように、短距離路線に関してはもっと早い段階で斤量差を縮めてしまってもいいのではないか、と個人的にも思います。

 というのも、基本的に3歳馬は春は概ねクラシック路線を指向するわけですが、それは本来の距離適性を撓めている部分も大いにあり、大体の馬はクラシックディスタンスより本質的な適性は短い、という事になります。
 つまり距離短縮で出てくる馬の方が、基本的に本来の適正に噛み合う可能性は高くて、かつ上でざっくり考察したように、加速のタイミングが序盤と終盤2回発生しやすい中距離以上のレースより、一貫してスピードが落ちないスプリント戦の方が斤量の影響は小さいので、今よりもう少し差が小さくなったとしても、スプリント適正が高い馬なら問題なく古馬と伍して走ってくると思います。

 中長距離に関しては、現状で妥当と思っています。
 今週のサトノアレスがこの絶好枠と54kg(実質は58kg)でどうなるか、は興味深いケースになりますが、そもそも夏場からの出走自体がスプリント戦より少なめですし、斤量の影響度も大きい、適正面でも噛み合ってくる馬がスプリント戦程ではないでしょうから、むしろ挑戦を奨励する意味でも現状維持を支持したいですね。

 ハンディのつけ方についての是非は、現行のやり方に不満があるとしても、じゃあもっとロジカルにそれを決定できる方法論があるか、と言われればそれはないので難しいところです。
 ただまぁ、ハンディが一番明確に可視化された有利不利だとすれば、競馬には馬場状態や枠、騎手や適性など、見えにくい有利不利のファクターも多数あるわけで、結局出されたものに対して偏りがあると思っても、それを前提に考えるしかないでしょう。
 この辺は馬券派はシビアに見られるかもですけど、観戦派としては期待・応援している馬が不当なハンディだったりするとうーん、ってなりますけど、それも含めて競馬ではありますしね。

 強いて言うなら、ハンディキャッパーがハンディをつける際に明確に基準にしているツールがあるならば、それを公開して欲しい、というのはありますけどね。
 そうすればそのツール自体の不備や疑問に声を上げることも出来ますし、上でも触れたように、今後降級がなくなる中で、能力的に頭打ちの馬にとってのハンディキャップ戦の救済性はより強くなっていくはずで、そこで公平を欠くようなイメージを抱かれるのは、胴元としてもマイナスではないか、って思います。

**★終わりに**

 正直あまり深く考えた事のない論点でしたので、まとまりに欠いた茫洋としたものになってしまいました。
 ダラダラと書いた割に中身は少ないですが、今後夏のハンディキャップ競争が続く中で、ほんのささやかでも指針になってくれれば幸いです。
posted by clover at 05:10| Comment(0) | 能力分析ツール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017 7月第2週新馬戦ほか レース回顧(日曜編)

**★7/9(日) 福島5R 芝1800m戦**

 福島開催では数少ない1800mの新馬戦は、グランデウィークが出遅れや4コーナーでの不利をものともせずに押し切りました。
 展開は、4着降着になったハクサンフエロが逃げて(シルポート産駒、という所に趣きがあります)、外からロードジパング、3着のピースユニヴァースあたりが追走して先団を形成します。
 2着のトッカータはまずまずのスタートから先団のやや後ろでじっくり、勝ったグランデウィークはスタート一歩で最初のコーナーでは後方の位置取り、そこからじわじわ向こう正面手前までに押し上げて中団くらいを確保し、勝負所で更に外から仕掛けて上がっていく形になりました。

 ラップは37,6(12,53)-36,9(12,3)-36,7(12,23)=1,51,2(12,36)という推移になりました。
 全体的にはややスロー気味の平均ペースで、福島らしく3コーナー入り口の残り800m付近から後続が押し上げ、11,8-11,6と速いラップを踏んでいます。
 直線入り口でハクサンが大きく外に斜行した煽りもあり、ここのラップは12,4と落ちていて、ラストも12,7とやや消耗気味になっており、単純な数字上のレースレベルは馬場を考えてもそこまで高くないでしょう。最低限の追走力と後半の持続性能をある程度問われたレース、と考えます。

 ただ勝ったグランデウィークはかなりロスの大きい競馬をしており、数字以上の内容はあると思います。
 出遅れてから取り付く場面でも、特にラップが落ちている事はないのでこの馬自身はそこそこ長く12秒前半くらいで押し上げている計算になりますし、その上で勝負所も11,8-11,6と速いラップの地点で一気に差を詰めています。

 かつ4コーナーではかなり大きく外に振られていて、それでもしっかり直線では惰性を削らず粘り込んでいて、ラストはかなり肉薄されたものの、これは鞍上がある程度抑えていたのもありますし、流れ的にもかなりロンスパの中で速いラップを踏んでいると思うので仕方がないでしょう。
 競馬としては粗削りですが、スタートが解消されてくれば後半要素はかなり面白いものがありますし、改めてまともな競馬の流れの中で真価を見てみたいと思える馬ですね。
 
 逆に2着のトッカータは、ポジショニングは良かったものの3コーナーからの前の仕掛けに上手く対応できずにやや下がり気味、その分コーナーのロスには巻き込まれずタイトに回ってこられましたので、ラスト12,7と消耗するところで一気に突っ込んでこられたのも然るべき、という所です。
 結果的にこの馬自身は持久力ラップでラストまでバテない、という競馬をしていると思うので、グランデウィークとはその質が違うと思いますし、素材面ではどうしても着差以上に向こうかな、とは感じます。
 基本的に未勝利レベルだと要所の機動力がないと勝ち切れないパターンが多いので、その点で心配はある、けれどタフな流れになれば強いタイプかなと見ています。

**★7/9(日) 福島6R 芝1200m戦**

 こちらはナムラストロベリーが好位から抜け出し初戦勝ちを飾りました。
 ややバラっとしたスタートの中、人気の3着パスポートが逃げて勝ったナムラがその番手につけます。
 最後2着に突っ込んできたハーモニーライズは出足は鈍く中団より後ろくらいからの追走でした。

 ラップは36,6(12,2)-36,2(12,07)=1,12,8(12,12)という推移でした。
 見てわかる通りにスプリント戦とは思えないほど序盤がゆったりで、それでいて後半も12,6-11,7-11,9という推移で、強いて言えばコーナー出口での加速度に対応できたか、という部分で見せ場はあったかな、くらいの、全体的に凡戦と言える内容だったと思います。せめてこのペースなら、ラスト1F最速で回ってきて欲しかったですね。

 その中ではナムラはポジショニングが良かったですし、やや加速地点ではおかれていたものの、ラストの100mまで減速せずしっかり伸びてはいました。
 ただ結果的に2着馬のラストの脚勢の方が、将来性や距離の融通などを踏まえてもまだ、という感じですし、この組は少なくとも芝のスプリントの条件では頭打ちになるかな、とは感じましたね。

**★7/9(日) 中京1R 芝1600m未勝利戦**

 未勝利戦としては淀みなく一貫したペースになる中で、中団からシュバルツボンバーが楽に突き抜けてレコード勝ちを収めた一戦を見ていきましょう。

 展開は4着のウインに3着のタイセイが掛かり気味に競りかけていって、結果的に36,0-23,3-34,9という中盤が極めて速いタフなラップ推移になりました。2~7F目まで綺麗に11,4~7の範疇でまとまっているのは面白いですね。
 最序盤だけ遅かった分、比較的ステイヤー的な競馬になった中で、中団でしっかり脚を溜められたシュバルツボンバーは、最低限の追走力と高い持続力を見せてきた、と言っていいと思います。

 レコード自体は超高速馬場でしたのでさほど評価する必要もないでしょうし、この勝ち方でダノンプレミアム組はやはり強い、といってもウインが負けているのでなんともですが、少なくともこの馬自身はこういう一貫ペースで、前走のように極端に要所で切れ味が問われない方がいい、というのは言えると思います。
 なので前にスローにコントロールされると厳しいタイプとは思いますが、中山のマイル戦などは噛み合いそうですし、先が楽しみな1頭ですね。

**★7/9(日) 中京5R 芝1400m戦**

 こちらは1番人気のフランケル産駒イッツパーフェクトがハイペースを刻み、早々に馬群に沈む中で、内目からあっさり突き抜けたシンデレラメイクが好時計で勝利しました。
 逃げたイッツパーフェクトにシンゼンホープが絡んでいく展開の中で、勝ったシンデレラメイクはちょうど中団くらいのイン、2着のタムロリバティはそれより後ろで進出の機会を伺っていました。

 ラップは34,6(11,53)-11,9-35,9(11,97)=1,22,4(11,77)という推移になっています。
 序盤がそこそこ速く、中盤で一息入ったもののこの次のコーナー出口で11,5とまた速いラップを踏んでおり、仕掛けの速い消耗戦で、先行馬には総じてつらい流れだったのは確かですし、後ろからでもある程度の追走力は問われていると思います。

 その中でシンデレラメイクは、やや荒れ始めたインをすいすいと追走し、外を回した先行馬を尻目に内を綺麗に回ってきてあっさり突き抜け、ラストまで他馬を寄せ付けませんでした。
 この日は前述のシュバルツボンバー含めてディープブリランテ産駒が大活躍で、この日のような超高速馬場で追走を高めに問われる展開が合う産駒が多いのかな、と感じさせます。自身のダービーがそういう馬場・競馬でしたしね。
 この馬自身もラスト2Fは減速ラップですので、極めて強い、という事はないのでしょうが、それでもこのペースへの対応と要所の加速など、総合的なスケールの大きさは感じさせるので、次が楽しみになる走りでした。

 2着のタムロも悪くない競馬でしたが、ラストで突き放されているようにこのペースでは辛いものがあったかもしれません。
 もう少し前半が緩い流れでポジションが取れるようになれば、と思いますが、すぐに未勝利で勝ち負けか、と言うとちっょと微妙に感じますし、それ以外の馬もガラッと変わってきそうな感じはあまりなかったです。
 イッツパーフェクトは名前とは裏腹に徹頭徹尾赤点、って感じの走りでしたね。どうもフランケル産駒はムラが大きいですし、欧州でも結局大レースは勝ち切れずで、ソウル以外で大した馬が出てこないなぁ、と。

**★7/9(日) 函館5R 芝1800m戦**

 人気2頭の一騎打ちになったこのレースは、クリノクーリングが最後力強く差し切って、父オルフェーヴルに初めての新馬勝ちをもたらしました。
 展開は3着のキョウエイルフィーが逃げて、それを1番人気で2着のカレンシリエージョがピタッとマークするように追走、クリノクーリングはやや離れた3番手で前を窺う格好になりました。

 ラップは37,8(12,6)-36,1(12,03)-35,8(11,93)=1,49,7(12,19)という推移でした。
 最序盤こそゆったりですが、向こう正面の残り1000m地点からペースが上がり、そこから淡々と12秒を少し切るくらいのラップでラストまで推移していて、スローからの5Fロンスパ戦になっています。
 当然ながら序盤の緩い地点でポジションを取れた方が有利ですし、残り1000mの地点でカレンとクリノの差は5馬身近くあったので、後半要素では明らかにクリノが圧倒してきたレースと見ていいと思います。

 勝ったクリノクーリングはスタートも悪くはなく、そこから前に壁を置かない単独3番手でしたが折り合いもピッタリで、オルフェの仔らしからぬ行儀のいいレースを見せてくれました。
 それでいて後半は、残り1000mからじわじわと前との差を詰めており、推定で11,7-11,6-11,9-11,9-11,7=58,8くらいのラップで走破しているように見えます。
 これは新馬としては中々にレベルの高い持久力ですし、勝ち馬もかなりしぶとく抵抗する中で、ラスト1Fでまたラップを上げてきたのも評価すべきポイントでしょう。

 半面どの地点でも鋭く動けたわけではないので、今後後半の加速度の大きなレースになった時に上手く対応できるかの不安は付き纏いますが、少なくとも持久力面では重賞クラスの威力を見せたと言えますし、こういうタイプにしてはスタートからのポジショニングセンスも悪くなさそうなので、これはかなり先が楽しみな馬ですね。
 今後もある程度自分から強気に動いて、ロンスパを作り出す競馬が合うと思いますし、上手く軌道に乗ってくればクラシック戦線まで楽しめるかなと思います。後は瞬発力が備わっていればなお良し、というところですね。

 2着のカレンシリエージョもほぼ完璧な立ち回りで、3着以下は千切っているように高い持久力を見せてくれました。
 牝馬ですし、かつスローロンスパで強い競馬が出来たというのはいかにもハービンの仔らしい結果であり、3歳春までの主戦場のマイル戦線で戦うには色々武器が足りない感もありますが、じっくりオークス路線を最大目標に育てていけば、かなり面白いところまでいけそうな気がします。
posted by clover at 05:10| Comment(0) | レース回顧・中央競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする