2017年06月18日

2017 6月第4週新馬戦 レース回顧(日曜編)

**★6/25(日) 東京5R 芝1800m戦**

 日曜の府中は、夜半からの雨で稍重馬場でした。
 ただメインのオーロCでも、35,7-11,5-33,7というかなりのスローバランスで1,20,9が出ていて、実質的にはほぼ良に近い条件だったと見ていいと思います。

 このレースでは、カーネーションが好スタートからハナを切り、それを2着のライトカラカゼが番手でピッタリマーク、ニシノラブコール、リアルハニーあたりと先団を形成します。
 3着のビレッジキングや、勝ったスワーヴエドワードは、その先団の一列後ろで前を見つつ、という形で入っていき、全体的にスローで概ね全馬行きたがるのを宥めながら、という新馬戦らしい競馬になりました。

 ラップは38,5(12,83)-38,8(12,93)-35,0(11,67)=1,52,3(12,48)という推移になっています。
 見ての通りに序盤・中盤共にかなり遅く、残り4Fが12,6-11,4-11,7-11,9という推移で、4コーナーから直線にかけての地点で1,2の加速、そこからじわじわ減速する、一定の加速力とそこからの持続力が問われている展開、と見ることが出来ます。

 勝ったスワーヴエドワードは、この流れの中で我慢を効かせつつ、勝負所ではやや外目に持ち出していきます。
 エイシンフラッシュ産駒の初勝利となったわけですが、いかにもその産駒らしく、加速地点で外から追い掛けたにも拘らず変に置いていかれるようなところはなく、坂地点での動きもまずまずで、かつラスト1Fまでそこそこ高い持続力を見せてしっかり後続を振り切る競馬になりました。
 けれど数字的には、この日の実質的な馬場状態を鑑みるとかなり平凡で、前半これだけスローなら、もう少し後半で鋭い脚を使ってくる場面があって欲しいかな、とは感じましたし、ラストを11,9でまとめているくらいが見所でしょうか。
 要所の反応はともかく、切れ味はやや足りない感じでしたので、今後良馬場の切れ味勝負でどこまで入っていけるか、かつ前半が流れて後半要素が削がれないか、課題は多いと思いますが、レースセンスの良さは感じたので2戦目以降の進境に期待したいところです。

 2、3着馬は、この流れの中で前目内目を取っていたので、競馬の内容としては勝ち馬よりは下かな、とは感じますし、持続力面での甘さはあるので、もう少し前半要素を問われて良さが出るか、が今後のポイントになりそうです。
 しかし両馬ともキングヘイロー産駒とか中々渋いですし、こういうタイプには息長く活躍していって欲しいですけどね。

**★6/25(日) 阪神5R 芝1800m戦**

 宝塚記念当日の阪神1800mの新馬戦は、評判馬揃いの中で勝ち馬ダノンプレミアムが、1頭だけ図抜けたパフォーマンスを披露してきました。
 当日の馬場は、宝塚記念の回顧でも触れましたが、大体1秒程度は時計のかかる馬場になっていた、という見立てで、500万下の同距離1800m戦は35,8-37,5-34,5と中緩み顕著の展開で1,47,8でした。これを比較材料として色々考えていきたいと思います。

 展開は、まずスッと3着ウインルーカスがハナを取り、それを外から勝ち馬ダノンプレミアムがピッタリマークする形になります。
 2着スプリングスマイルは最内から先団の内目を確保し、4着アドマイヤビクターはややもっさりしたスタートから、徐々に外目に出してリカバー、先団の一角に入っていきます。
 そして600mを過ぎたあたりで、ペースが非常に遅いと踏んだルメールJのアドマイヤビクターが一気に外から進出してハナを狙いますが、それにダノンプレミアムも呼応して道中は雁行に近い状態となり、ウインは無理せず少し下げて2頭の先行争いを追い掛ける形を選択しました。

 ラップは、38,2(12,73)-35,9(11,97)-34,6(11,53)=1,48,7(12,08)という推移でした。
 新馬戦らしく序盤は非常に緩いラップを刻んでいるのですが、アドマイヤビクターが進出していった4F目の地点から一気にペースが上がり、新馬戦にしては珍しいほどに中盤が速くなっています。
 後半6Fは12,1-11,6-12,2-11,6-11,0-12,0となっていて、流石に宝塚記念ほど一貫したロングスパートではないですが、レースの平均ラップからすればほとんど息の入らない流れではあり、実質的に6Fロンスパ戦、かつ直線400-200m地点で明確に切れ味も問われている2段階加速戦にもなっています。

 レースの全体時計が500万に見劣るのは、このレースの序盤があまりに遅すぎたせいもありますし、後半6Fで1,10,5は、内外の差はあれ宝塚記念が1,10,8だったので、これはかなり優秀だったと考えていいでしょう。
 かつ疑似的な6Fのロンスパになっていても、ラスト3Fのラップ推移は500万下の11,5-11,1-11,9という3F勝負のそれとほぼ遜色なく、少なくとも後半要素だけなら明確に500万下より上の競馬をしてきていると見ることが出来ます。

 勝ったダノンプレミアムは、スタートも良く、そこからしっかり折り合いもついていましたが、アドマイヤビクターの押し上げに反応してロンスパに付き合う中でも余力充分でしたね。
 直線入り口ではほぼ先頭、そこから11,0地点では他の馬もある程度ついてきていましたが、かなりのロングスパート仕様の中で最後の1Fでみんな息切れする中で、この馬だけは12,0と極端には落とさずに後続を楽々千切ってきました。
 宝塚記念でもラスト1Fは12,2と比較的消耗していますし、3F戦の500万下も11,9まで落としているので、その視座ではこの12,0はかなり価値の高いラップになっていて、少なくとも持久力面、底力の面ではこのメンバーで2枚くらい上だった、と考えていい勝ちっぷりでしたね。

 持続力面では直線400-200m地点最速ラップで、まだ測り切れないものがありますし、前半の追走力もこの緩いペースではなんとも、とは思いますが、そのあたりの細かい懸念を払拭してこられれば、総合力面ではかなり素晴らしいものを見せてきたので、クラシック路線に乗ってきても不思議ない1頭だ、と感じます。

 そして、この馬のペースに付き合う形になった3、4着馬もかなり強い競馬はしていて、このレースはややトリッキーでしたので、実際の新馬・未勝利らしい緩い流れになった時に確勝級か、と言われるとどうか、ってのはありますけど、ある程度レース全体の底力を問われる状況になれば確実に台頭してくるでしょう。
 2着馬の方が逆に、ロンスパ開始の地点では前を追い掛けず、12,2とやや緩んだところでインを上手く立ち回って差を詰める、噛み合った競馬をしての結果ですので、普通のレース展開になった時は3、4着馬に逆転を許す可能性は結構あるんじゃないかな、とは思います。
 でもこの馬も勝ち馬以外では一番ラストで踏ん張れていましたし、勝ち上がりに苦労する事はそんなにないでしょう。前評判通り、レベルの高い一戦だったと思います。

**★6/25(日) 函館5R 芝1200m戦**

 日曜の函館も、使われていく中で常識的にはなってきましたが、まだまだ高速馬場ではありました。
 その中での展開は、2着のタイセイアベニールが逃げて、それをヤマノグラップルが追いかけ、外から勝ち馬デルマキセキが加わっていきます。
 デルマがかなり掛かり気味に先団に突っかかっていったことで、2,3F目がかなり速くなる中、好位勢はそれを少し離れた位置で追いかける形となって、直線では内外入り乱れての大激戦になりましたね。

 ラップは34,7(11,63)-35,7(11,9)=1,10,4(11,73)という推移でした。
 やや前半が速かった分、新馬戦らしくコーナーで一旦緩んでの再加速戦ですが、後半は11,9-11,7-12,1と加速度は低めでラストも落とし気味、他の新馬戦と比較してもややレベルには疑問符がつく、という感じです。

 ただ勝ち馬は前半少し掛かり気味に前と並走する形になり、そこから一度下げて、コーナーでも一番外を回して、とかなりロスの多い競馬をしてきているので、ロス少なく立ち回った2~4着馬に比べるとスケール感は上かな、と感じます。
 それでも荒削りな部分は否めませんし、後半要素も現状は平凡なので、むしろアメリカ血統ですし、より前半要素を高める方向で活路が見出せれば、というイメージですね。

 2~4着馬も、他の新馬戦の負け組とかち合って、綺麗に勝ち抜けるほどの強みが感じられるところはあまりなかったので、ここは素直に時計面の物足りなさをそのまま受け取ってもいいかなとは思います。
 強いて言えば2着馬は前半競られてやや足を使わされたので、自分のリズムで早めにコントロールできれば、後半での出し抜き度や粘りが増してくるかも、くらいですね。
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2017 6月第4週新馬戦 レース回顧(土曜編)

**★6/24(土) 東京5R 芝1600m戦**

 期待の新種牡馬、オルフェーヴル産駒の初出走でも話題になった当レースは、人気薄の伏兵マイネルサイルーンが絶妙のコース取りから押し切る競馬を見せました。
 土曜の府中の馬場は、1000万下のリカビトスがスローの展開で1,46,1でしたので、基本的には高速馬場だったと思います。

 バラッとしたスタートの中、クリノモリゾが絶好のスタートでハナ、3着のスピリットワンベルが番手外につけて、2着のミュージアムヒルは中団の外目、その内から勝ったマイネルサイルーンが徐々にポジションを上げていく格好になりました。
 ラップは36,5(12,17)-24,1(12,05)-35,3(11,77)=1,35,9(11,99)という推移になっています。
 新馬戦としては中盤があまり緩くなく、かつ後半3Fは11,4-11,8-12,1という推移ではっきりコーナー出口が最速になっており、一定の追走力を問われた上での後半4Fレベルでの持続力戦、という感じで、新馬戦としては珍しいタフな展開になっていると思います。

 勝ったマイネルサイルーンは、その流れをまだ緩い内に上手くリカバー出来ていましたし、コーナーではタイトに内目を回って、前が11,4で引き放しにかかるところで、無理に脚を使わずにポジションを押し上げることに成功しており、結果的にこの立ち回りが明暗を分けたと思います。この辺は枠の差もありましたね。
 この馬自身ははっきり坂地点で前との差を詰めており、推定11,4-11,2-12,0くらいでしょうか。レース自体は持続戦の中、この馬は比較的仕掛けを待って動いていけたのがよかったですし、展開的にもあまり加速性能などの器用さは問われていないので、素材面としてもまずまずですが、上に入って戦える明確な武器があるか、というと微妙なところですね。

 むしろ2着のミュージアムヒルのほうが、スケール感という意味では確かだと感じます。
 道中はずっと外々で、勝負所の4コーナーも早めに動かす意識を持ちつつ、けれどコース取りの差で詰められていない、という状況ですので、ラップ以上に長い脚を使ってきている印象で、それでいてラスト1Fでははっきりマイネルとの差を詰めてきました。
 こちらは推定11,4-11,5-11,7くらいで上がりの字面は一緒でも仕掛けどころと通したコースがかなり違うので、少なくとも持続力面でははっきりこちらの方が上の素質を見せたと思います。
 ただ坂地点での切れ味はイマイチでしたし、ハーツの仔なのでもう少しゆったり入れる距離の方が噛み合うかもしれません。あまり器用さも感じなかったので、北海道開催で正味2F勝負、とかになると追い込み届かず、はありそうですが、それを意識して早め早めに動けるようになれば安定して強さを発揮してくるかなぁと感じます。

 3着のスピリットワンベルも正攻法で強い競馬でしたが、この感じですと持続戦でのマイルはギリギリですね。
 もう少しコントロールして仕掛けを待てる展開ならいいですが、1400mを試してみても面白い、と感じる競馬でした。新馬としてはペースも遅くはなかったですし、レース全体でのスピードを生かす方が味が出そうです。
 4着モカチョウサンは、血統的に注視されたと思いますがまだ現状は完成度で色々足りない感じですね。
 ポジショニングにしても、後半要素にしても今一つ、という感じで、距離ももう少し欲しいです。新潟1800mあたりで、しっかり動き出しを意識して切れ負けしないようにフォロー出来れば、というイメージでしょうか。

**★6/24(土) 阪神5R 芝1200m戦**

 この日の阪神はメインでレコードタイとかなりの高速状態を維持していましたので、このレースの時計自体はかなり平凡だと思います。
 外からジェネラルがハナを切り、3着のジュンドリームが番手、その外に断然人気のイイコトズクシがつけます。
 2着に食い込んだメルティキャンディは、スタートから二の足がつかずに、押して押しての追走ながらもやっとこ中団、というポジションでした。

 ラップは35,6(11,87)-35,3(11,77)=1,10,9(11,82)という推移でした。
 前半がかなりスローで、真ん中2Fが11,8-11,8とスプリント戦にしてはかなり遅くなっている割に、直線向いてのラップは11,6-11,9と加速度に乏しく、まぁ正直数字面では本当に見所のない、勝ち馬にとってはかなり相手に恵まれた一戦、と言えるかなと思います。
 無論あのスタートの良さとポジショニングの良さは武器になりますが、それでもクラスが上がればよりペースも上がるので、そこに対応できるかは未知数ですし、加速度や切れ味の質の面でも非凡なところは特になかったので、現状のままだと上では苦しいかな、と思います。

 2着に食い込んだメルティキャンディの方が違う意味で見所はあり、前半35,6の流れにあれだけついていけないのは考え物ですが、エンジンがかかってからの伸び脚はまずまずで、間違いなく距離が伸びた方が面白いでしょう。
 ここでは斤量面の恩恵もあったのでなんともですが、これからローカル戦の中では中京1400mとか1600mを使ってみると新味が出てくるかも?という雰囲気はありましたかね。

**★6/24(土) 函館5R 芝1200m戦**

 函館の馬場は、先週程ではなかったにせよ、最終レースの上がり11,2-11,1なんて有り得ない推移を見ている限りは、かなりの高速状態が維持されていたと考える方が妥当でしょう。
 レースは1番人気の2着ダンツクレイオーが引っ張り、アルマオディトと勝ち馬のアリアが雁行に近い状態で追いかけていきます。
 3着に入ったダウンタウンキラリはダッシュがつかず、リカバーしながら中団という位置取りになりました。

 レースラップは34,6(11,53)-35,1(11,7)=1,09,7(11,61)という推移でした。
 後半ラップの方が遅い前傾戦ですが、ここは函館新馬らしく、後半11,8-11,4-11,9と、コーナーで一旦緩んでからの再加速が問われていて、一定の機動力とある程度の持続性能が問われたレースにはなっています。

 勝ったアリアは常に2頭分外を回しつつ、直線を向いたところでは前のダンツがしっかり出し抜いているのにやや遅れを取る形でしたが、ラスト1Fでしっかり食い込んで捉え切る競馬になりました。
 ややコーナーでの不器用さは感じましたが、ラストまで自身の推定ラップはあまり落とさず突っ込んできているので悪くない競馬だったと思いますし、序盤もこのペースにしっかり入っていけたので、ナンヨープランタンあたりよりは1200m戦での融通は効くタイプかな、と感じました。

 2着のダンツクレイオーは、ワークフォース産駒なんて重めの血統の割に、スタートからの出足も良く、要所での加速力もまずまずで、イメージより器用な競馬は出来ていると感じます。
 ただこれでラスト差されているので持続面はかなり心許なく、より前傾にシフトして良さを引き出す感じにならないと、今後も未勝利レベルでもやや苦労するかも?とは思いますね。内枠とかでスムーズに先行出来ればいいですが、外枠から番手外、とかになると押し上げで足を使って甘くなりそうなタイプです。

 あと3着のダウンタウンキラリの、ラスト1Fの豪脚は見応えがありました。
 この馬も1200mでは短いだろうという追走面での不如意さはありましたが、しっかり緩んだところで外から勢いをつけて押し上げ、それを最後まで持続させるという鞍上の好プレーもあり、持続力面での素材ははっきり1枚上、と思わせる脚勢でしたね。
 この馬も1400mから1600m、或いは1800m戦を試してみてもいいと思いますし、器用にスッと動けるタイプでもなさそうなので、外目の枠からスムーズな競馬を心がけていけば、勝ち上がりのチャンスはやってくるのではないかと思います。

**★6/24(土) 函館6R ダート1000m戦**
 
 ここは圧倒的な人気のスパイツタウン産駒、モルトアレグロが外から楽に抜け出して勝ち切りました。
 血統的にリエノテソーロと同じ父で同じ厩舎、というあたりでの人気もあったでしょうが、レースの質としてはやや平凡です。
 伏兵が逃げてのラップは24,3(12,15)-12,2-24,1(12,05)となっており、全体バランスとしては平均気味ですが、じわじわラップを落としていく一貫減速戦ではあり、時計水準も良くありません。
 
 この日の500万下で勝ち馬のぶっちぎりとはいえ58,1が出ているように、脚抜きは悪くない馬場だったはずですので、如何に新馬と言えどももう少し要所で加速するくらいの見所はあっても良かったのではないかと感じます。
 それもほぼ追わず余裕綽々、とかならともかく、結構しっかり追っての結果ですので、今後はエーデルワイス賞路線、とのことですが、あまり過剰人気するようならちょっと期待を下げてみたくなる勝ち方ではありました。まぁ2戦目で変わってくる可能性も充分あるのでまだ何とも言えませんが、見た目に凄みのある勝ちっぷりでなかったのは確かです。
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2017 帝王賞 レース回顧

 豪華メンバーが揃った上半期ダート路線の総決算、帝王賞は、並み居るGⅠ馬を蹴散らして、スタートで出遅れて終わったと思わせたケイティブレイブが素晴らしい末脚で差し切り、嬉しいGⅠ初勝利を飾りました。レースを振り返っていきましょう。

 馬場状態は重でしたが、他のレースの時計推移を見ている限りですと、昨日よりは少し重くなっていたかな、という印象です。
 その分このレースの勝ち時計も2,04,4とやや掛かった印象ですが、それでも馬場を考えればほぼ水準のレベルにはあると感じます。

 展開は、逃げると目されていたケイティブレイブがスタートで大きく躓き後方から、という波乱のスタートになります。
 好スタートを決めたのはクリソライトで、その内側からオールブラッシュが二の足を効かせてハナを取り切り、クリソライトが番手外でピッタリマークする展開になります。
 アウォーディーはまずまずのスタートから、ケイティブレイブが出遅れたこともあってスムーズに外目に持ち出し、最初の1コーナーの入りまでにクリソライトの外3番手という絶好のポジションを確保しました。

 ゴールドドリームは一歩目こそ立ち遅れたもののリカバーを効かせて二列目で先団をしっかりマーク、アポロケンタッキーはケイティブレイブのせいで目立ちませんが、やや立ち遅れた上に左右の馬に挟まれて下がる不利があり、道中は中団のやや前で、外からじわじわリカバーしていく形になります。
 サウンドトゥルーは外目から出たなりに中団やや前で、やや内目に入り込みつつ進出に機会を伺い、ケイティブレイブは中団より後ろでじっくり脚を溜める作戦に切り替えることになりました。

 レースラップは、36,7(12,23)-50,1(12,52)-37,6(12,53)=2,04,4(12,44)という推移でした。
 三分割ですとやや前傾ですが、ハーフで見ると62,1-62,3と綺麗な平均ペースになっていて、一見先行勢に楽な流れに見えるのですが、このレースの特色は、道中で一回たりとも13秒台を踏まない、息の入らない流れになっている点です。

 折角なので全ラップを載せてみますと、12.6-11.6-12.5-12.8-12.6-12.4-12.3-12.6-12.2-12.8という推移で、最遅が12,8、最速が2F目を除けば12,2と、極めて波の少ないラップになっているのがわかると思います。
 かつ向こう正面に入っての残り1000mから12,4-12,3とじわじわ加速し、流石に急カーブの4コーナーではやや落としているものの、そこからの加速度も0,4とこのコースにしては大きくなく、見た目の数字以上に追走力と持久力が問われた展開と見ていいと考えます。
 
 勝ったケイティブレイブに関しては、古馬になってからの一連のレースぶりから、ハイペース、タフなペース自体は絶対に合う、という確信があったので、自分で逃げてそういう流れに支配出来るここは、それこそ歴戦の疲れがここで出なければまず好走できるだろう、と思っていたのですが、流石にこの出遅れからの差し切りコンボは予想出来ませんでしたね。。。
 ただ結果的に、平均ペースながらも息の入らない、かなりタフな流れになってくれた、というよりこれはクリソライト戸崎Jがかなり積極的に乗ってくれた部分に帰するものは大きいのですが、それが噛み合ったのはあると思います。

 他の中央勢は、多かれ少なかれ序盤から前目の流れに乗っていっていますし、かつ道中も早めにリカバーを、進出を、という形で、かなり厳しいレースをしているのに対し、こちらは最初の1000mまでじっくり脚を溜めて、後半のロンスパ持久力勝負に徹することが出来た、この前半での余力の差が比較的大きく作用したレースになった、と言えるでしょう。
 おそらくこの馬自身のバランスは、目視ですが63,5-61,0前後に見えていて、追走面での余裕があることと、後半の機動力の高さ、直線再加速の流れでもそれ以上に一足の鋭さが生かせた、このあたりのこの馬の良さが綺麗に嵌り切った感触ですね。

 とはいえかなり強い競馬だったのは間違いないですし、これだけハードなローテーションを強いられながら、レースを重ねる中でどんどん強くなっている感はあります。
 当然ながら前傾戦でも強さを見せられますし、タフな馬場・展開に噛み合えば後半勝負でも結果を残せるとなれば、この好走スポットの広さは本当に頭が下がる頑丈さ、精神面の強さに帰するしかないなぁ、とシャッポを脱ぐ思いです。でも馬自身に文句はないとはいえ、このローテでこの馬を本命にはしたくなかったんですよねぇ…………。
 ともあれ、今回はコパノの回避で出走出来た、というツキもありましたし、それを生かして見事にGⅠ馬になったのですから、今後はその立場に相応しいローテーションで、この路線の中軸として頑張って欲しいところですね。

 2着のクリソライトも素晴らしい競馬でした。
 個人的にオールブラッシュの逃げになったところでちょっと嫌な感じはあったのですけど、今回はこの馬も好スタートから前進気勢をはっきり見せて、道中全く緩ませないようにピッタリくっついていましたし、3コーナー手前から早めに仕掛けて、コーナーでの機動力のなさという弱点を出来る限り打ち消す好騎乗だったと思います。
 やはりこの馬は自分のリズム、かつワンペースでこそ、というのは改めて感じましたし、こういう波のない、スタミナを強く問われるラップで走れれば早々には崩れず、むしろ後続の脚を削げる競馬が出来るので、本当に乗り手の意識が重要になってくる馬なんですよね。

 今回は近走で調子を上げていたのもあるでしょうし、馬自身も気分よくレースに入れていた感じはあり、また戸崎Jとも比較的手は合っているのかな、という感じはありました。
 7歳ですけどまだまだ自分の形に持ち込めれば強いですし、もう一花咲かせて欲しいですね。ただ今日の結果を見ても、タフな流れでもケイティブレイブのほうが一枚上、というのは見えましたし、勝ち切るまでは中々、とは思いますが。

 3着のアウォーディーは、展開としては悪くなかったと思いますが、やはりドバイ帰りの調整の難しさに、この馬の気難しさ、乗り難しさも合わせて出てしまったかな、というのはまずあります。
 後は純粋に、タフな消耗戦的展開の中では上位2頭がかなり強かった、という見立ても出来て、チャンピオンズカップもかなりの消耗戦でしたが、あのレースで負けたサウンドは抑え、アポロあたりとの着差も同等、と考えれば、この展開で正攻法で、この馬の力は出し切った、とも言えるかもしれません。

 どうあれ、今日に関しては展開の不利もなく、ポジショニングも完璧でしたので、素直に完敗を認めるしかないですね。
 この馬ももう7歳なのは事実なので、少しずつ下降線には入っていくでしょうし、まだまだ一線級なのは確かですけど、気性的にあまり早く先頭に立てない部分などを鑑みれば、去年の破竹の勢いのような、常に勝ち切る競馬を期待するのは酷なのかもしれません。

 4着サウンドトゥルーは、展開的にはかなり向いたと思うんですけど、コーナーから内目に入って進出がややスムーズでなかったのと、後は休み明け、馬場コンディションがやっぱりちょっと噛み合わなかったのかなぁ、という負け方でしたね。
 2着以降は確実にラスト200m13秒台に入っているので、そこで持久力で食い込んでくるのがこの馬の十八番のはずが、今日は完璧にケイティにそのお株を奪われた格好でしたし、結果的には外枠をそのまま生かして、勢いをつけて外から入っていった方が良かった気はします。でもそれでも3着争いに勝てたかくらいでしょうし、叩いてからの馬、なんでしょうね。

 5着アポロケンタッキーは最序盤の不利は痛かったと思いますし、それに加えて持久力戦の序列ではこれが現状妥当なのかな、というのもあります。
 どうしても向こう正面から速くなり、コーナーでもほとんど緩まない中では、自分の脚を引き出すタイミングも作れませんし、要所での機動力がかなり大きな武器になる馬ではあるので、大井でしたらスローバランスの方が明確に合うのでしょうね。
 まあでもこの馬もドバイ帰りですし、まだ若いですから今後の飛躍に期待です。
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2017 アスコットミーティング後半戦 レース回顧

 今回は、アスコットミーティングの3日目から5日目にかけて開催されたGⅠレースを振り返っていきます。

**★ゴールドカップ [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=xA4Xw3V82hk)**

 アスコットミーティング長距離レースの花形とも言える、伝統の4000m戦、アスコットゴールドカップは、長距離戦らしく出入りの少ない淡々とした流れの中、逃げた2番人気のビックオレンジが、圧倒的1番人気のオーダーオブセントジョージの追い込みをギリギリ凌ぎ切って戴冠しました。

 今年から距離の表記が20Fから19F210Yになっているのは、改めてきちんと計測したら、って事なんでしょうかね?イギリス競馬の場合、以前のダービーもそうですが、こういう時にスタート地点をずらして距離に合わせるのでなく、今まで通りのスタート地点からの距離に合わせるのが面白いところです。
 その中でのレースは、長距離戦に実績のある人気の2頭がしっかり実力を発揮しての白熱した一戦になったと思います。

 ビックオレンジはスタートから逃げて上手くレースの流れを支配していましたし、その上で直線入り口でしっかり後続を出し抜く脚が残っていて、本当にスタミナ豊富な馬だなぁ、というイメージです。
 日本でもこの馬は、去年のメルボルンCや香港ヴァーズに出ていたので名前を知っている人も多いでしょうし、今年もおそらくメルボルンCへは遠征すると思うので、いよいよ長距離馬としての円熟味を増してきた今なら、これまでの2回の挑戦より良い成績を残してくるかもしれません。

 オーダーオブセントジョージも、去年の凱旋門賞で外枠から横ポツンスタートを決め、そこからじわっと先団に取りついてハイペースを演出、オブライエン厩舎の上位独占に一躍買ったシーンを記憶に留めている人は多いでしょう。
 今年も春シーズンは得意の長距離戦に専念、という形ですが、去年のこの時期には破竹の6連勝を決めていたのに対し、今年は肝心な所での取りこぼしが目立ちます。

 このレースでも、残り150m付近の脚勢なら交わすかな?と思っていたのですが、そこから馬体を合わせに行って、相手もしぶとさを発揮したとはいえラスト少し鈍っている感もあって、去年ほどの勢いは感じないですかね。
 この馬もまた凱旋門でラビット的なスタンスで出てくる可能性はあるので、今後のレースぶりにも注目しておきたいところです。

**★コモンウェルスカップ [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=EvZYZg4u3Rc)**

 こちらはまだ創設されて3年目の3歳限定の1200mスプリント戦ですが、前2年は勝ち馬がその後古馬混合のスプリントGⅠを勝っているなど、注目のレースになりつつあります。

 その中で今年は、2歳時からスプリント路線に専念し、未だ無敗のカラヴァッジオが圧倒的な人気に押されていました。
 レースでも中団につけたカラヴァッジオが、先行して粘るハリーエンジェル、プルーポイントの2頭をインからしぶとく交わし去り、デビューからの連勝を6に伸ばしました。
 2、3着馬も、2歳時からの1000~1400m路線で全く崩れるところのない堅実なスプリンターでしたし、実績・人気上位の3頭がしっかり凌ぎを削ったという点では見所のあるレースだったと思います。

 ただ一方で時計面では1,13,49はかなり平凡ではあります。
 この後紹介するダイヤモンドジュビリーSと同距離での開催の為に、レベル差がはっきり見えやすいのですが、2015年の勝ち馬ムハラーは、このレースでダイヤモンドジュビリーSより好時計で勝って、その後引退まで怒涛のGⅠ4連勝を決めましたし、去年の勝ち馬クワイエットリフレクションは、ダイヤモンドジュビリーSより0,7秒ほど遅い時計で勝って、その後の混合GⅠでは勝ったり負けたり、というところでした。

 その尺度で見ると、今年のダイヤモンドジュビリーSは1,12,02で決着しており、馬場表記も共に堅良ですので、少なくとも今すぐに古馬戦線に混じって大活躍できるレベルにあるか?という部分は疑問視してもいいのかなと感じます。
 勿論未だに負けていない、という部分で、相手なりにしっかり走って捻じ伏せる強さを見せてくれるかもしれませんが、今は古馬のスプリント戦線も結構層が厚いですし、それ以上にキングズスタンドSを勝ったレディーオーレリアが強烈でした。
 正直レディーオーレリアは、このアスコットミーティングの短距離GⅠ3レースのどれに出ていても勝ったんじゃないか?って気はしていますし、ここは相手に恵まれた、というイメージは強いので、勝ち馬は今後の成長でそれを払拭できるかが注目ですね。


**★コロネーションステークス [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=D8RsMrcE8RA)**

 3歳牝馬のマイル戦、コロネーションステークスは、英愛1000ギニー馬のウィンターが圧倒的な人気に押され、それに応えて完勝しました。
 道中は先頭列が雁行になる中で、外目の枠からスッとインに潜り込むムーアJらしいタイトなポジションで、そこから綺麗に馬群を割って突き抜けて見せました。
 2、3着にもオブライエン厩舎の馬が入りワンツースリー、これも欧州の競馬シーンではよく見る光景ですね。

 英愛ギニーからこのレースまでの3連勝というのは、近20年ではアトラクションが無敗で達成した意外で例のない偉業です。
 レース間隔も詰まっていますし、実際ほぼ同じレース間隔で走ったチャーチルはセントジェームズパレスSで崩れたように、かなりタフなローテーションのはずを全くものともせず、というのは素晴らしいですね。
 しかもこの馬は、ギニートライアルも使っているからシーズン4戦目ですし、ほぼ似たようなローテで2着のローリーポリー共々、その強靭さと、厩舎のケアの上手さには驚きです。まあチャーチルはダメだったので常に完璧、ってことはないのでしょうけど。
 ただアトラクションも、その後の戦績的にはやや萎んでいった感はありますので、ここから先の活躍でそれを超えることが出来るかも注目です。

**★ダイヤモンドジュビリーステークス [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=BhXBO1C2GNU)**

 こちらは多頭数で大激戦の様相を呈する中、インから馬群を上手く縫うように進出した、昨年のブリティッシュスプリントなどを制しているザディンマンが差し切っての勝利を収めました。
 先行したのは、2年前のハイレベルなコモンウェルスカップの2着馬で、去年もジュライカップやフォレ賞など、伝統的なスプリントGⅠを精している1番人気のリマトでしたが、これを真後ろでしっかりマークしていたタスリートが要所で一気に差を詰めてきて、同時にインから馬体を寄せてきたザディンマンとの間に挟まれるような感じで最後は失速と、そのあたりはややラフなレースになった印象もあります。

 けれど時計的に、この1,12,02はおそらくレースレコードになっていて、コースレコードも上記ムハラーが2015年のコモンウェルスカップで計時した1,12,05っぽいので、こちらのレースレベルが例年より高かった、という見立ては出来ると思います。
 上位3頭は実績のある人気馬でしたし、今年のこの夏以降の欧州スプリント路線はかなり実力伯仲で面白いレースが続くのではないか、と、このアスコットミーティングでの上位馬の走りは予感させてくれましたね。
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2017 宝塚記念 レース回顧

 夜半からの雨で渋りが残り、空模様も曇天の中行われた宝塚記念は、香港ヴァーズであのハイランドリールを破ったサトノクラウンが、このレースでも重い馬場を味方に一気に外目を突き抜け、単勝1.5倍のキタサンブラックが馬群に沈む中で、国内初GⅠタイトルを獲得の大仕事をやってのけました。レースを振り返っていきましょう。

 まず馬場状態からですが、正直雨量としては全く予想が外れた、というところですね。
 午前中の時点で稍重でしたし、流石に昨日に比べれば内外ともに時計はかかっていましたが悪化は限定的だったと思います。
 外回りの新馬戦も1,48,7の好時計、内回りの500万下2200m戦がややハイペースで2,13,0、1000万下1200m戦がやや前傾で1,08,9なので、昨日よりは1~1,5秒くらいかかる馬場だった、と考えていいでしょう。
 元々がレコードの可能性も見える超高速馬場でしたので、そこから1,5秒足しての2,11,4という勝ち時計は、500万下と比較しても水準だと思いますし、ただレースの様相としてはまるっきり予想しない形で展開していったな、と、反省材料の多いところです。

 まずスタートから、キタサンは悪くないスタートでしたが、最序盤は内の馬の動きを見る形でゆったり出していく中、インから先手を取ったのはなんとシュヴァルグランでした。
 最近スタートが改善されている、と書いたのであのくらいの先行力は驚きませんが、しかし前に壁を作らずそのまま逃げの手に出るパターンは考えていませんでしたし、かつそれにシャケトラがぴったりついていけたのもちょっと驚きでしたね。

 或いはこの辺り、2頭で呼吸を合わせて前目を取ってしまい、キタサンに外を回らせよう、という戦略的暗黙の了解はあったかもしれませんが、それにしても今日のキタサン&武Jは消極的な入りではあったと思います。
 枠順の差はありますが、結果的に去年の方が重い馬場で前半3F34,7で入っていった馬なので、今年の35,2の入りであの位置、というのは、数字面から見ても想定外ではありますね。

 そのあたりの検証はまた後述するとして、他でも特に大きく出遅れた馬はいませんでした。
 今日はまともに出たミッキーロケットは先団に入っていき、クラリティシチーも内目から先団、ゴールドアクターは逆に少し下げつつ外に出して、最初からキタサンを見て動ける位置を狙っていたのかな?という感じはありました。
 サトノクラウンは出たなりに中団の外目でやはりキタサンマーク、ミッキークイーン、レインボーライン、ヒットザターゲットが後方から、という競馬になっています。

 ラップは今回中々面白い推移をしていますが、3-2-3-3Fで取って、35,2(11,73)-25,4(12,7)-35,1(11,7)-35,7(11,9)=2,11,4(11,94)となっています。
 プレビューでテンが流れやすいレース、と書きましたが、今年はそれとはまったく様相の違うレースになっていて、第一、第二ブロックはレース平均よりかなり遅いのですが、第三ブロックが極端に速く、かつレース内でも最速のブロックになっています。
 
 この流れを作り出したのがサトノクラウンのデムーロJなのは画面で見ての通りですね。
 1コーナーから2コーナーで一気に流れが遅くなり、前半1000m通過が60,6とややスローに流れる中、外からキタサンを積極的につついて、被されたくないキタサンにロングスパートをさせるように上手く仕向けています。
 その結果として残り1200m地点から一気にペースが上がっていて、けれど極端に切れ味を問われるほどではない、11,6~8のラップを5F続ける形になっています。

 この展開ですと概ねスローからの6Fロンスパで、その中に切れ味の質や機動力面をほとんど問わない持久力特化戦になっている、と見做していい点がひとつ、その上でこのペースを外々から追走した時に、今日の馬場だと持続力ラインに踏み込んでしまうのではないか?という問題提起を見出せるラップ推移ではないかと思います。
 この馬場でも後半の1200mは1,10,8とかなり速い時計を出してきており、その1200mの中では息を入れる地点は全く作れない、という中では、当然道中の立ち回り、脚の使い方次第で結構な明暗が出ているのではないか、と考えられますね。

 兎にも角にも、勝ったサトノクラウンにとっては、キタサンがより前半からタフなペースを作りに来なかったのは勿怪の幸いでしたし、その上で自身が最も得意とする、切れ味を必要としない持久力特化戦に上手くレースを使嗾したデムーロJのスーパーファインプレーの合わせ技、と見ています。
 一連のレース、去年の宝塚などでも、前半からある程度追走を問われると後半の良さが出なくなるのは確かで、その点今年は前半60,6というスローの流れを中団やや前くらい、自身61,0を超えてくるラインで進めることが出来ました。
 そして何より凄みがあったのは、その前半で養った余力を、一度スッと押し上げるように見せかけてキタサンが動かざるを得ない状況を作り切ってから、自身は悠々ともう一度ポジションを下げ、レース全体の流れに乗るだけで直線を向くまでじっと我慢していたことに尽きるなと思います。
 
 大阪杯でも似たようなレースで負けている、と考えがちですが、あのレースとこのレースで違うのは、勝負所の3~4コーナーでほぼ切れ味が問われていない部分です。
 大阪杯は実質キタサンの位置でもコーナーは11,2-11,2くらいに入っていましたし、それを後ろから追い掛ける上では絶対的に持続力ラインに踏み込まざるを得ず、そうなると切れ味と持続力で甘いサトノには辛かったわけですね。

 ただこの馬の最大の武器は、有酸素運動状態の中でなら、道中息を入れるタイミングがなくても、淡々と長くいい脚を使ってこられる、というところで、要するにスプリンター寄りの性能は低いけれど、マラソンランナー的な持久力が非常に高いところにあります。
 その特徴をしっかり把握していたのでしょうか、それともデムーロJの天才的な閃きがあの地点での一瞬だけの押し上げを選択させたのでしょうか?
 ともかくあの1000m手前地点でならレースラップ12,3なわけで、そこで一脚を使っても自身は11,8程度までの加速で済みます。
 とはいえ実質的には他の馬より1F近く早くスパートしての、7Fロンスパの競馬をこの馬はしていると思うのですが、それでも全くバテないあたりはゴールドシップを彷彿とさせる素晴らしい持久力性能だと思います。

 もうひとつ凄かったのは、コーナーで外からレインボーラインが押し上げを狙う中で、敢えてそれに完全に張り合わず、無理に外に出すこともなくじっと我慢していたことでしょう。
 まあこの辺りは、前にいたのがキタサンなのでまず抜け出す、当てにできるという目途もあったからでしょうが、結果的にこの挙動も大正解だったと思います。
 キタサンの項でも触れますが、今日の馬場の中で先頭列3頭はかなり馬場の外目を回していて、ラップの字面以上に距離ロスから来る速度面での負担はあったのではないかと思うのですね。

 レースラップが11,6~8という事は、そこで押し上げたり、或いは外々を回ったりすれば、どうしても実質的に11,3~5くらいの脚を使わされる計算は成り立ちます。
 そうなるとこれは微妙なところですが、今日のやや重くなった馬場なら持続力ラインに入ってくるのかな?という見立ては可能で、そこで一旦無酸素状態のスパートを取らされた馬は直線では厳しかった、と考えられると思います。

 なので、もしもサトノがレインボーラインに付き合ってキタサンの外に張り出しながら早めに動いていたら、それでも上位には来たでしょうがラストで少し止まって2~3着に落ちていた可能性はかなり高いと見ていて、そこも素晴らしい騎乗だったと褒めたいところですね。
 前を動かして自身の得意な波のない超ロンスパに持ち込みつつ、自分自身の仕掛けは最後まで我慢するという立ち回りは、馬の資質をはっきり見極めていないとまず出来ない芸当にも思えますし、そのあたりは流石に智将・堀厩舎の管理馬だなぁと思います。
 実際今回も、前回の敗戦を踏まえてのコメントが沢山出ていましたし、二の轍は踏まないという意思と、その上で自在に位置取りや仕掛けどころを選択できる余地のある大外枠を最大限に生かした作戦はあったでしょう。それをレースの流れの中でデムーロJが完璧に掴み切ったからこその戴冠だったと感じます。

 そして2着のゴールドアクターも、その外の攻防を尻目に見事な出し抜き作戦でしたし、綺麗に嵌りかけましたが、最終的にはやや馬場が渋った事と、サトノクラウンの強烈な持久力に捻じ伏せられる結果になりましたね。

 最序盤の挙動からしても、ある程度キタサンをマークするポジションを取りつつ、走りのリズムの中で馬場も選択できる絶妙な場所にいたなぁと思います。
 サトノの仕掛け、そして3コーナー過ぎからのレインボーの仕掛けで外の動きが活発になる中で、前にいたスピリッツミノルが当てにならない点も踏まえて早々にインに潜り込むことを選択し、馬自身もこの程度の悪馬場なら、というところでしっかり鞍上の檄に応え脚を伸ばしてきました。

 ラップ的な観点からしても、外々を回した馬が辛い絶妙な範疇での持久力戦になっている中で、常に有力馬の中では一番内目を立ち回っていたのは流石の戦略眼でしたし、その上でこの馬の持ち味である要所の一足の鋭さもきちんと引き出してきました。
 結果的に春天上位組が崩れて、春天で勝負という観点での競馬に参加していない組がこぞって上位に来たあたりも含めて、一連の流れの中でしっかり結果を出してくるのは素晴らしいところだと思いますね。

 馬自身もやはりグラスワンダーの系譜としてのグランプリホースの血が騒いだのか、結果的に馬場が悪化し切らず、時計水準的にも普通の年の良馬場くらいの時計になったのもプラスだったでしょう。
 少なくとも噛み合えばまだまだ一線級の力はある、と証明しましたし、新興勢力も多い中でまた暮れの有馬を最大目標に頑張って欲しいですね。

 3着ミッキークイーンは正直展開的にはそこまで噛み合っていないと思いますが、立ち回りはかなり良かったですし、このメンバーでも戦える持久力の担保を有馬記念に続いて証明してきたと言えそうです。
 スタートから少し行きっぷりが悪く、あそこまで後方になるとは思いませんでしたが、結果的にスローロンスパの展開の中でじっと前の動きを見つつ我慢できたのは良かったですし、直線入り口でインから外目に持ち出す流れも、いつかのデニムアンドルビーを思わせる必殺のコース取りで見事だったと思います。

 ただ惜しかったのは、直線を向いてすぐに、内からふらついたミッキーロケットと接触してやや勢いを削がれてしまったところでしょうか。
 正直同じ勝負服同士でなにやってんねん、って話ですけど、基本的には加速する余力を持てない減速ラップ戦の最中なので、多少なり坂の手前でブレーキを踏まされたのは痛かったと思いますし、スムーズなら2着まであったか、はともかく、確実にもう少しは肉薄していたと思います。
 この馬の動きですとほぼ持続力面には踏み込んでいないかな、と思いますし、ある程度時計が速い状態での持久力戦でもやれてしまうのがこの馬のいいところですね。
 ある意味前半が流れなかった秋華賞みたいなレースですし、そこでラストまで落とさず食い込んでこられるあたり、牝馬相手よりタフなレースになりやすい牡馬相手の方がいいのでは?と思うタイプの牝馬です。

 4着シャケトラの健闘も光りました。
 この馬もスローからの持久力特化戦では日経賞を見る通りにかなりの素材で、スタートを完璧に決め、シュヴァルグランとの阿吽の呼吸でペースを落としつつ、最大のライバルであるキタサンに外を回らせたのは素晴らしい戦略だったと思います。
 ただこの馬の立ち位置ですと、結果的にキタサンに捲られ切ってしまっては意味がないので、サトノの押し上げのタイミングからつられて自分も動くことになったのはやや誤算はあったでしょうし、コーナーではキタサンの1頭分内とはいえ、それなりに外を通していたので、この馬自身も持続力ラインに踏み込んでしまった可能性はかなりあります。

 ルメールJの意識としては、春天・ダイヤモンドでキタサンに取られた、コーナーで引き上げて外を回す馬を持続力ラインに踏み込ませる戦法の意趣返しをしてやろう、という感は強くあったと思いますが、前にいたシュヴァルも外目に出してきて、キタサンもじわじわプレッシャーをかけてくる中でのバランスの取り方は難しかったですかね。

 それでも4着と崩れていないあたり、持久力が強く問われるレースでの強さは本物だと思います。
 この感じですとサトノよりは前半に融通も効きそうですし、常に今日くらいのポジショニングを指向できる安定感が加わってくれば、この秋の2400m~2500mの大レースで大きな仕事をやってのける可能性は充分に感じさせたのではないでしょうか。 

 5着レインボーラインは、最後は外に出して欲しかったですけど、コーナーから外々を捲り上げる強気の競馬をしてしまうと流石に甘かったなぁ。というところです。
 この馬はコーナーで一番外を通し、かつ押し上げていますので、確実にそのコーナー出口の地点で持続力ラップを踏んでいると思います。
 流石にそうなるとそこから更にいい脚を持続させる、というのは、全体的にタフな展開の中では至難の業でしたし、まだ自分から勝ちに行ってどうこう、という馬にはなっていなかった証左とも言えます。

 個人的にはミッキークイーンの競馬が出来ていれば上位争いだったと思うのですが、でも出し切ってなんぼの馬なのも間違いないので、そのあたりのバランスの取り方は難しいですね。
 今回はルメールJの大戦略とデムーロJの素晴らしい閃きの噛み合いが、こんな異端なレースを生んだとも言えますし、実際第三ブロック最速なんて過去を遡ってもまず見かけない状況ですので、その中で常識的に勝ちに行ってしまったのも苦しくなった要因と見ていいでしょう。

 6着ミッキーロケットも似たような文脈で、ポジションを取れたのは良かったですが、馬群の中から早めに捌いて勝ちに行く意識を見せた分だけ、最後は甘くなっているかなと思います。この辺りの馬はもう少しバランスが取れた総合力勝負向きと思いますし、要素としてほぼ8~9割方持久力特化に振れている中では、スペシャリストに普通の競馬で太刀打ちするのは難しかったと感じます。

 8着シュヴァルグランに関しては、今回は言い訳できる要素は多いとは思います。
 まず大前提として、キタサン共々どうしてもあの春天の超激闘の余波、後遺症は少なからずあったのではなかろうか、という観点は持てますし、最初から狙っていた感じでなく、シャケトラのプレッシャーに押し出される形でハナを切ってしまったのもベストなプランでは決してなかったでしょう。
 展開的には持久力特化戦で、この馬もこの土俵では一定戦える素地はありますが、有馬でも正攻法で甘くなっているようにサトノやシャケのような特化型に比べると一段落ちるところはあると思います。
 
 その上で、自分から誘発した形ではない早仕掛け、コーナーでのコース取りなど、キタサンが苦しむレースを作る意識は確かでしたが、その中でどうしても自身も苦しい、というのはあったのでしょう。
 色々要因もあったとはいえ、地味にキタサンに先着できたところからも、戦略の大きな方向性としてはさほど間違っていなかったとは言えて、ただサトノがつついたことで、もう少し総合的な勝負に持ち込みたいところを崩されたのが厳しかったのかなと思います。

 9着キタサンブラックに関しては、なるほど、持続力特化だけでなく、持久力特化でも崩れる可能性があったのか、と、改めて競馬の難しさと面白さ、奥深さを噛み締めています。
 シュヴァルグラン同様、体調面での不安が全くなかったとは思いませんし、ここまで負けたことの最終的な要因はそこに帰するのか、とも思うのですが、レース内容からしても確かにこれは負けて然るべき推移になっていますし、武Jにしてはらしくない、流れに合わせ過ぎた騎乗にも思えました。それだけ乗っていての手応えがなかったのかもしれません。

 まずこの馬の武器は絶対的な総合力にあって、競走馬の能力を考える上で様々な武器がある中で、その全ての項目で5段階中4、或いは5を持っている馬なわけですね。
 それを踏まえた時、この馬を負かすとしたら、その4の部分を徹底的に攻める、という観点は確かにあり、今までのレースの中で4、と見做せるところがあるとすれば、前半の絶対的な追走力と、後半勝負の中での絶対的な持続力面、と私は考えていました。

 ただ、このメンバーでキタサンより高い追走力を持ち、なおその前で厳しい流れを作れる馬は皆無でしたし、キタサンがある程度の位置にいる限り、後半で持続力特化の展開になることはまずない、という見立てはあったので、ここは信頼できると思っていました。
 けれど結果的に、サトノクラウンがあそこまで自身の武器を磨き尽くした上で、それをキタサンにも強いる展開を作ってくる、というところまでは読み切れなかったですし、そもそもキタサンがもう少し速い流れで逃げると思っていたので、追走面で限界があるサトノでは、そうやってレースを触発するだけの動きは中々出来ないだろう、と高をくくっていた面もあります。

 そして、結果的に言うならば、キタサンにとってのこの息の全く入らない超ロンスパと、コーナーで外を回されて、いつもは自分が相手にさせている、持続力ラインへの逸脱をさせられてしまった、これは二つの面で得意でない特化的要素を求められた、と考えていいでしょう。
 大阪杯を見ても、持続力を強く問われるレースでの方が危うさは出る馬ですし、レース全体を支配してこそ、というのが如実に出ていたのが春天で、その中でも自身の本仕掛けのポイントは精々600m地点から、という所は一貫していたので、今回そのパターンが完全に崩されて、そこまで得意でない持久力特化戦の中で、要所で自分(とレインボーライン)だけ持続力を使わされてしまってはどうしようもなかった、と見るべきでしょうか。

 無論あそこまで崩れたのは、歴戦の勤続疲労や、こうなった以上無理させない、という思惑も含めて多角的に今後検討されていくことでしょうが、少なくともレースそのものから見ても、充分に崩れるだけの要因は散りばめられていた、と、私の解釈では言える特異なレースになっていました。
 結果論的にはやはり淡々と逃げて支配してしまった方が、というのはありましたし、前半のペース自体は緩くなったことで、後半勝負の武器を存分に振るえるだけの武器・主導権を手放してしまったのが最大の敗因なのは確かだと思います。
 敢えてしなかったのか、出来なかったのか、どうあれやはり、見た目に強烈なタフなレースの後、というのは、これだけの馬であってもこんなに難しいのか、という意味で、万能の名馬を輩出しにくい、非常に近代競馬を象徴するレースになったなと感じます。

 流石にこの負け方ですと、今後海外遠征、という話も立ち消えになりそうですし、色々と残念な結果でしたが、当然これで終わる馬ではないので、しっかり立て直してまた秋には強いキタサンブラックを見せて欲しいと思います。
 
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2017 アスコットミーティング前半戦 レース回顧

 いよいよ今週は、イギリス王室が主催の、イギリス競馬でももっと華やかなステージであるアスコットミーティングが開催されています。
 去年はメインのプリンスオブウェールズSにエイシンヒカリが一番人気で参戦した事で、日本の競馬ファンの間でもこのミーティングの名がより周知される契機になったかと思いますが(結果は残念でしたが)、今年は流石に日本からの参戦はなし。またいつか挑戦してみて欲しい舞台ではありますけどね。
 ともあれ今日は、5日間に及ぶアスコットミーティングの、前半2日目までのGⅠ戦を振り返っていきたいと思います。

**★クイーンアンS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=FdrKPFogZYk)**

 今年のアスコット開催はどうやら好天に恵まれたようで、初日から非常に綺麗な芝の上で好時計が連発しました。
 このレースでは、スタートから伏兵の2頭が非常に大きく後続を離して飛ばす展開になり、断然の一番人気に押されて勝利したリブチェスターは2番手グループの先頭列でじっと機を窺い、それをマークするように2、3着馬のムタケイエフ、ドーヴィルが追走する形になっていました。

 流石にあれだけのハイペース(と断じていいでしょう)で飛ばせば前は辛くなり、勝負所で下がってくる逃げ馬を交わす際に一瞬交錯しかかったリブチェスターですが、そのままやや外に進路を持ち出しながら力強く伸び、画面外側から出し抜きを狙った2頭をきっちり捻じ伏せて、1,36,60というレコードタイムでの勝利になりました。

 当然ペースが速い中で、後ろの集団でも相応の追走力は問われたレースになっていると思いますし、その中でリブチェスターは改めてマイラーとしての総合力、完成度の高さを見せてきた一戦かな、と感じます。
 前走のロッキンジSは重たい馬場で快勝でしたし、現状ポジショニングがかなりいいので、どんな場面でも大崩れするイメージは持ち辛く、堂々たる古馬勢のマイル総大将として、これからは3歳勢の挑戦を受けて立つ立場になりますね。今後がとても楽しみです。

 2着のムタケイエフも、ドバイでこそやや甘いところはあったものの、ここでは本来の堅実さを取り戻してしぶとく伸び、最後はドーヴィルとの激しい2着争いに競り勝ちました。
 この馬は2000m戦でも相応にやれているように、好走の守備範囲は広いのですが、その分各スポットでのエキスパートには一歩足りない印象は拭えず、これからも相手なりの競馬が続く気がします。ある意味では欧州マイル~中距離路線での絶好の物差し馬、この馬に勝てないようではGⅠは…………という位置づけが定着してきた感がありますね。

 その視座ではドーヴィルはやはりまだGⅠではワンパンチ足りない、というところでしょうか。
 しっかりリブチェスターマークから一瞬は切れ味の差で2番手まで上がったように見えましたが、そこからラスト100mでの底力勝負になって甘い感じでした。
 この馬も距離適性の幅は比較的広いですが、やはりどの場面でも少し届かないもどかしさはあるので、色々模索する事になっていくでしょうね。

**★セントジェームズパレスS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=UqjVhXfjxlA)**

 寡聞にして知らないのですが、どうしてアスコットのマイル戦は、古馬戦の直線と、3歳限定戦のワンターンで使い分けしているのでしょうね?
 ともあれこちらはマイル戦でも右回りのレースで、圧倒的人気は英愛2000ギニー制覇を成し遂げたチャーチルでしたが、ここでもレコード勝ちの高速馬場条件の中で、この7連勝中の馬が4着に敗れる波乱が起きました。

 内枠から伏兵が逃げ、オブライエン厩舎のペースメーカー的な側面もあるランカスターボマーが番手につけて、2列目ポケットにサンダースノーが入り込んでいきます。
 勝ったバーニーロイはちょうど中団くらいで、その後ろに人気のチャーチルは控える形となって、淡々と流れる中で直線の攻防を迎えます。

 まず番手からランカスターボマーが抜けだし、それをポケットから外目に持ち出したサンダースノーが急追します。
 それを、更に外から一気にバーニーロイが伸びてきて、見事に2頭を捉え切って1,37,22でのレコード勝ちとなり、このバーニーロイをマークするように追い出されたチャーチルは、直線伸びを欠いて4馬身以上の差をつけられての4着と、やや不甲斐無いレース内容になってしまいました。

 元々個人的には、チャーチルという馬は勝ち続けている割にはそんなに強くないんじゃないか?と思っていたので、ここでの敗戦はそこまで驚くほどではなかったですね。
 ただ上位3頭は全て、チャーチルが英愛2000ギニーで破ってきた馬ではあったので、その点タフなローテーションでパフォーマンスを落としている可能性は見ておいていいと思います。
 もっともローテで言えばランカスターボマーも同様ですし、過去にこのローテで3連勝した馬もいるので、少なくともアメリカ三冠ほどの厳しさではないとは思うのですけどね。

 あともうひとつ敗因として感じるのは、チャーチル自身はもっとソフトな馬場の方が強さを発揮できる、という点ではないかなと。
 結局のところ、時計の速かったデューハーストSと英2000ギニーではランカスターボマーにそんなに差は付けていないのに、愛2000ギニーでは大差だったところからも、堅い馬場に対する適性がこの馬自身はあまり高くなく、時計勝負になってしまったのが辛かったのかなと感じました。
 かつ位置取りもやや後ろ目になってしまいましたし、英2000ギニーとは逆にバーニーロイにも前に入られて、そのポジション差、勝負所での切れ味と持続力など、様々な要素が少しずつ蓄積しての結果だと考えます。
 勿論素材は確かですので、今後も注目の1頭ですし、この見解が正しいかどうか、また重馬場での走りを見てみたいですね。

 逆にバーニーロイはこういう時計勝負での持続戦の様相で、最後の1Fで強さを発揮しましたし、やはりいい馬だなと感じます。
 今年の3歳ギニー路線ではこの馬が一番贔屓でもあるので、ここでしっかり勝ち切ってくれたのは嬉しいですし、父エクセレブレーションとしても初年度から箔がついたことでしょう。
 この要所での反応の良さとラストの持続力はかなり武器になりそうですので、それこそリブチェスターと激突するのがとても楽しみです。

 ランカスターボマーやサンダースノーも安定して走るいい馬ですが、どういう条件でも一歩足りなかったのは事実なので、勝ち切るには展開の助けや相手関係が重要になってくると思います。

**★キングズスタンドS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=O9l4j_kF6Lw)**

 このレースは、画面一番手前あたりから楽な手応えで先行した黒帽子の3歳牝馬レディーオーレリアが、9ポンドの斤量差を生かして3馬身差の圧勝を見せました。
 勝ち時計も57,45で、これはオーストラリアの名牝スプリンター・ミスアンドレッティが2007年に計時したコースレコード57,44に0,01差まで迫る優秀なものでした。勿論この日の馬場が時計が出やすかったのは言うまでもないですが。

 丁度イメージ的には函館スプリントSのジューヌエコールみたいに、他の馬が追走で苦しみ早めに手が動いているのに1頭だけ余裕綽々、追い出されてからもしっかりラストまで伸び切っての圧勝、という構図で、しかし古馬混合のGⅠで3歳牝馬が成し遂げるパフォーマンスとしてはやはり破格です。
 丁度去年のアスコット開催でも、2歳のスプリント戦のクイーンメアリーSを大楽勝しており、余程この舞台に適性があるのでしょう。

 ただこの馬って、騎手を見てもわかるようにアメリカの馬なんですよね。
 2歳時はデットーリJが乗っていたように、3歳になって移籍したのか、それとももともと国籍はアメリカで、2歳の内は欧州で走らせていたのかはしれませんが、とにかく遠征競馬でもあることを踏まえれば本当に強い競馬でした。

 勿論破った相手関係も優秀で、2着のプロフィタブルは昨年の当レースの勝ち馬ですし、3着馬マーシャは昨年秋、凱旋門ウィークのスプリント戦で、かつてアグネスワールドも制した事があるアベイユドロンシャン賞の勝ち馬であり、いわば1000mのスプリント戦のスペシャリストを向こうに回してのこの競馬なので、これはもうスピードの絶対値が違う、と言ってもいいかもしれません。
 今後どういうレース選択をするのか、アメリカ馬と考えればBCターフスプリント辺りが大目標になるのかもですが、このまま欧州転戦もありそうですし、今年のスプリント路線はこの馬から目が離せませんね。

**★プリンスオブウェールズS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=qwnxFXEgaJ0)**

 ロイヤルアスコット開催の目玉レースである、春の中距離王者決定戦のプリンスオブウェールズSは、番手につけたハイランドリールが直線で粘り強く抜け出しGⅠ6勝目を飾りました。

 レースは5番枠の伏兵馬が逃げて、外目から2番人気ハイランドリールがいつものように先行して番手外、そのすぐ後ろにタタソールズ金杯勝ち馬のデコレ-テッドナイトがつけます。
 そのすぐ後ろに3番人気のユリシスがいて、1番人気のジャックホブスは大外だったのもあり道中は後方外目から進出の機会を伺う格好になりました。

 直線を向いて、外目に持ち出したユリシスとデコレ-テッドナイトが一瞬鋭い切れを見せてハイランドリールを飲み込むか、という所を見せたのですが、残り100mからのしぶとさがこの馬の真骨頂、きっちりインから伸び返して1馬身1/4の差をつける完勝でした。
 ジャックホブスは外目から早めに動くものの、要所での切れ味も足りず、最後は戦意喪失したようにズルズル下がって最下位という結果になってしまい、ドバイシーマとは明暗が真逆になりましたね。

 ハイランドリールが強かったのは確かですが、このレースは勝ち時計が2,05,04でした。
 馬場状態表記は前日同様にパンパンの良で、そしてこのレースのレースレコードは2,01,90ですので、それを考えると実はかなりスローペースだった感じはあります。
 おそらく前半は緩くて、後半残り1000mくらいからじわじわ引き上げつつ、直線勝負所ではそれなりに切れ味も問われたイメージで見ており、実際にハイランドリールも直線残り300mあたりでは、2、3着馬に切れ負けして並ばれるところまで接近されています。
 ただ後半勝負での持続力/持久力は非常に高い馬ですので、ラスト100mでコロネーションカップ同様しっかり後続に差をつけてきますし、これは見事なレースメイクだったと感じますね。

 実際去年も愛チャンピオンSは62-66くらいの超ハイペースを先行して崩れているように、2000mでスピード勝負になってしまってはやや脆いところはあるので、その弱点を糊塗しつつ、最後まで抜かせない強みを見せてきたと思います。
 しかしこの馬も本当にタフですし、地味ながら強いですね。戦績的にも戦法的にもキタサンと似たようなタイプに分類されますし、2400m以上ならハイペースでも対応できる、という部分も含めて、やはり凱旋門でガチに先行して争って欲しい2頭だなぁと感じます。

 デコレ-テッドナイトは、元々差し追い込み馬だったのが今年の欧州戦ではしっかりポジションを取って、その上で後半要素の良さが消えていない感じで、その点に成長が見て取れますね。
 おらそくもう少しスピード勝負になっても対応できるタイプと思いますし、今年の2000m路線で軸になってくる1頭ではないでしょうか。

 ユリシスはどうも未完の大器的な扱いをされている馬のようですが、ここでも一瞬その片鱗は見せましたね。
 ただまだラストの甘さは決定的に感じましたし、ひ弱さを感じるところもあるので、もう一回り成長しないとGⅠ戦線で勝ち切るまでは難しいのではないか、と思います。

 ジャックホブスは元々2000mははっきり短いと思っていて、2度の英チャンピオンSもやや時計のかかる馬場でしたし、ドバイの圧勝ぶりからも、渋ってラストがはっきりラップが落ち込む消耗戦でこそ、なのでしょう。
 後半要素でだと切れ味も持続力もかなり甘い、とこのレースで改めて感じさせましたし、まず距離は2400m欲しい、その上で展開利がないとハイランドリールの牙城を崩すのは大変かな、と思いますね。なんかこう、サトノクラウンみたいな好走スポットが狭いけど強い時はめちゃ強い、的なイメージです。

 一先ずは2日目までの4レースを紹介しました。
 おそらく後半戦に関しては、月曜か火曜に記事をアップする事になると思います。火・水あたりは帝王賞もあるので流動的ですけどね。
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2017 6月第3週新馬戦 レース回顧(日曜編)

**★6/18(日) 東京5R 芝1600m戦**

 他の2場が異常なくらい高速馬場でしたので、あまり目立ってはいませんが、府中もまだ普通に高速状態は維持できていたと思います。
 その中でのマイルの新馬戦ですが、ここは新馬戦らしいゆったりした超スローからの上がり勝負で、番手につけたイブキの半弟・テンクウがきっちり抜け出しデビュー勝ちを飾りました。

 展開は、3着のフォレストガーデンが好スタートでスッとハナを取り切り、五分くらいのスタートだったテンクウがやや押しながら番手外を確保、その外にコハルチャン、内からはアイリスロードとウィズが早めの追走になります。
 2着のニシノベースマンははっきり大きく出遅れてほぼ最後方からのレースになるも、道中の緩みで内内から押し上げて馬群に取りついてきました。

 ラップは38,0(12,67)-25.7(12,85)-33,8(11,27)=1,37,5(12,19)という推移でした。
 見ての通りに序盤中盤、1000mまでが63,7と相当に緩く、中盤もがっちり緩んでいて、そこから直線入り口にかけて12,7-11,3と一気にペースアップ、ラスト3Fが11,3-11,1-11,4と最後まで落とさない展開で、純粋なポジション差がはっきり出ました。
 これを覆すには余程最速地点で切れるか、それとも強烈な持続力を持っているかでないと、となるのですが、流石にそれだけの素材はおらずに前目、或いは内目をスムーズに立ち回った馬が上位に来たという淡泊なレースになっています。

 勝ったテンクウは父がヨハネスブルクに替わって、はっきりスピード色は強くなった感じですね。
 このドスローとはいえ二の足で楽に番手に取りつけましたし、そこからの折り合い・コントロール面も悪くありません。
 ややコーナー出口からの加速地点でフォレストには見劣ったものの、そこから坂を登り切ったあたりでしっかり伸び脚を見せ、ここで10秒台に入ったかな?くらいの切れ味は見せています。
 ラストも推定11,3~4になりますので、ほぼ落としていないですし、序盤が問われなかったレースとはいえそこそこの持続力と切れ味を前目で使える、というのが持ち味になってきそうです。

 血統的にはもう少し前半のスピードが問われてもそこまで削がれるイメージはないですが、兄のイブキ自体ははっきり流れると甘い馬ですので、その辺どちらの血が強く出るか、という感じですね。
 ヨハネスブルクの仔にしては距離の融通は効きそうですが、それでも更にここから距離を伸ばして、となると、余程上手くレース全体をスピード色でコントロールする意識を持っていかないと、後半要素だけでは戦えなくなってくる感はします。いずれにせよ、次にどこを使うのか注目ですね。

 2着のニシノベースマンは明らかにスタートが悪すぎて、このレースは道中相当遅く、かつインが空く馬場状態だたので簡単にリカバーが効きましたが、いつもそうなるわけではないので、まずここを改善しないと安定して上位に加わるのも難しいでしょうか。
 血統的には新種牡馬ノヴェリスト産駒で、阪神の新馬で早々勝ち馬が出ていましたがあっちは消耗戦、対してこちらはスローからのヨーイドンで結果を出してきたのはひとつポイントになると思います。

 ただコース取りはみんなが避けがちのインをスルスル、ですので、字面の3Fはそこまで信頼は出来ず、最速地点からの動きとしてはテンクウと互角、でも血統的に多少力の要る馬場でも苦にしない、という利点も生きたのかな?という感はあって、この一戦だけで評価が難しい馬ですね。
 母系がニシノフラワーからの流れで母父タキオン、というところでも、もう少し泥臭いタフなレースになっても対応してきそうな面はあるので、スタートが改善しないとそういう特殊条件でないと、ってタイプになってしまいそうです。兎にも角にもまずはそこですね。

 3着フォレストガーデンも新種牡馬エイシンフラッシュ産駒で、中々にセンスある走りでしたが、もう少し引き上げても良かったのかな、というイメージですね。
 エイシンフラッシュは歴代の馬の中でもトップクラスに加速力に優れていた馬だと認識していますが、この馬もそれを受け継ぎ、12,7-11,3の出し抜き地点での動きは良かったと思います。
 でも父親と違ったのは、最大瞬間の切れ味そのものは平凡だったことで、そこで勝ち馬にスッと取りつかれてしまっていますし、ラストも食下がってはいますが上位2頭には完敗でした。

 総合的に見ると加速力とポジショニングの上手さが武器になってくると思いますので、一度平均ペースで淡々と刻むレースの中で、なるべく仕掛けを遅く、ラップ偏差の大きいレースになると面白そうです。
 その時に追走面で苦労しないようなら、未勝利レベルなら楽に勝てるでしょうし、その後も安定して上位に食い込む物差し的な馬になれる素養を感じましたね。

**★6/18(日) 東京6R 芝1400m戦**

 このレースは結果以上に一番人気のミヤビフィオーラの放埓三昧が話題を持っていってしまった感はありますが(あれだけレース結果の下の備考欄が埋まっているレースも珍しいですよね。。。)、その影で勝ち馬は中々強い競馬をしてきたと思います。

 展開はかなりばらついたスタートの中、1、3、4、15あたりの伏兵人気馬が先団を形成していきます。
 人気のミヤビも一歩目は凄まじく速く、そこから抑えて先団のやや後ろ、対称的に勝ったムスコローソは少しもっさりしたスタートからある程度押してリカバーして同じ位置取りになりました。

 ラップは36,8(12,27)-12,3-34,6(11,53)=1,23,7という推移でした。
 先の5Rほどではないですが、序盤中盤共にゆったり目に入っていき、ラスト3Fが11,4-11,4-11,8という流れで、ここでもコーナー出口での加速力はそれなりに問われ、ある程度流れた中での持続力面も5Rよりは重く問われたのかな?という感触です。
 このレースも結果的には前目内目を取った馬が上位ですし、素材面で展開の不利を圧して、というほどの馬はいませんでしたが、その中で勝ち馬だけは持続面で一段階違うものを見せてきたと言っていいでしょう。

 勝ったムスコローソは、スタートこそやや遅かったものの二の足はまずまずで、しっかり好位のインを確保できましたし、そこから内目を通して直線もスムーズでした。
 ほぼラスト200mはこの馬のラップですので、推定で11,2-11,1-11,8くらいかな、と思いますが、多少荒れた内目を通してしっかりラストまで持続力を引き出し、11秒台でまとめてきたのは、単調さが出やすいアメリカ血統の割には面白い競馬だったなと感じます。
 この馬は母系がダイナカールの血脈という分、日本的な競馬に対する適性や奥行きもありそうで、距離はもっとあっても大丈夫だと思います。

 2着のリンシャンカイホウは、スタートは良く前目を取れましたが、この流れの中で切れ味・持続力共に平凡で、勝ち馬には突き放される結果を見ると、スローからの後半勝負では辛いのかな、と感じました。
 ポジショニングの上手さを生かしつつ、もう少し全体のペースを引き上げる意識を持つようにして、それで活路を見いだせれば、とは思いますが、後半勝負だと未勝利レベルでも現状は苦労しそうですね。

 3着のエンクローザーもスタートから鈍く、直線も最内を完璧に立ち回ってこれなので、やや芝では厳しさを感じますね。
 トランセンドの仔ですし、次はダート戦を使ってきそうな感じで、そこで改めて真価を見たいかな、という所です。

**★6/18(日) 阪神5R 芝1600m戦**

 超高速馬場で、メインのマイル戦はレコード決着だった阪神のマイル新馬戦は、新馬らしからぬスピード勝負になった中、内を掬ったコスモインザハートがラテュロスの強襲を凌いで勝ち名乗りを上げました。

 展開はやや外目からナムラ、カクテルあたりが果敢に先行し、内からヒロノ、2着のラテュロスもそのグループに加わっていきます。
 3着のサナコはそれを見ながら中団外目、勝ったコスモは出足一歩でリカバーするも、流れがソコソコ速い中で追走に苦慮しつつ中団のイン、というポジションでした。

 ラップは34,7(11,57)-23,9(11,95)-35,4(11,8)=1,34,0(11,75)という推移でした。
 馬場の影響もあるのか騎手の意識も前掛かりで、このペースでも馬群はほぼ一団でしたし、その流れに乗っていった馬はまず一定の追走力は問われたと考えていいと思います。
 無論ベースが超高速なので難しさはありますが、少なくとも前半47秒の絶対的な素地を見せてきた馬がソコソコいるのは、今後注目していい観点だと思いますね。

 その中で中盤もさほど緩まなかったので、後半要素が極度に問われる事はなく、どちらかと言えばこの馬場で持久力戦の様相が強く出ています。
 勿論これでもペース的に無理がなかった馬は最後に持続力要素を引き出せていると思いますし、現時点での完成度と素材面がそれなりに問われたレースだったと感じますね。
 時計的には鵜呑みにしない方がいい面もありますが、ここの上位陣はそれなりに強いと思います。

 勝ったコスモインザハートは、序盤追走に苦慮しつつも上手く内目からじわじわ前との差を詰めてきて、直線入り口でしっかりインを掬う形で一瞬の脚を引き出してきました。
 その際にフラフラして他の馬に迷惑をかけたのはいただけませんが、それは騎手の判断面に拠るところも大きく、馬自身の問題ではないでしょう。
 ハーツクライの仔で、この時期にこのペースを追走して、一応なり一脚を使えたのは素材として評価できる面だと思いますし、馬主的な面での仕上がり早と、血統的な面での晩成傾向、どちらが強く出ていたかで今後の活躍は変わってくると思いますが、OPクラスまでは入っていけそうな印象がありますね。

 ただ、素材そのものとしては2着馬ラテュロスの方にスケール感を感じます。
 この流れの中でスタートは良く先団に入っていけたのですが、いざ勝負所でコーナーから反応が鈍く、他の馬にどんどん前に入られてしまったのが結果的には致命傷でした。
 勿論多少挟まれる不利もあったのですが、それ以前にスッと反応できるところがあれば回避できるところでしたし、どうも外に馬がいると怯むというか遠慮するというか、そんな雰囲気は出ていましたね。

 最後200mを切ってから大外に持ち出し、その時点で抜けたコスモとは4馬身以上の決定的な差がありましたが、それをほぼラスト100mだけで詰めてきていました。
 上がりの字面はコスモの方が速いのですが、コスモは推定11,4-11,4-12,1ときっちり脚を出し切っているのに対して、この馬は11,8-11,8-11,3くらいに見えて、かなり歪な脚の使い方になってしまっていると考えます。

 少なくともレース前半はコスモより楽に追走できていて、その点で担保がある上でまだはっきり脚を余しているので、能力的には未勝利クラスでは確勝レベルでしょう。
 でもこのレースの不器用さを見ていると、内で包まれたりすると危うさは多分にありそうで、しばらくはある程度ポジションを下げてでも、外目を伸び伸びと走らせる競馬に徹した方が成績には繋がるのではないか、と思います。
 追走力の高さと、外から自分のリズムで仕掛けて持続力面をしっかり引き出せる点が噛み合ってくれば、重賞レベルでも戦えるイメージは持てる1頭ですね。ぜひ桜花賞路線に乗ってきて欲しいです。

 3着サナコも、外目から早めに動いていっての結果なのでそう悲観する負け方ではないですし、今回は枠も恵まれませんでしたので、内目からすんなり先行出来れば未勝利クラスでそこまで苦労する事はないのではないかと思います。
 ダイワメジャーの仔らしく機動力がありそうですので、高いレベルではその辺を武器にしていきたいですし、このレースに限って言えば、ラテュロスとサナコは真反対の競馬をした方が噛み合った可能性は高かったと感じますね。

 あとカクテルドレスはこの流れの中で積極策から良く粘っていると思いますし、もう少しレースをコントロールできれば次で充分狙える馬だと思います。

**★6/18(日) 函館5R 芝1200m戦**

 こちらもメインで1,06,8が計時される超高速馬場でしたし、総合的な時計面ではなんとも、ですが、勝ち馬のナンヨープランタンは中々に味のある競馬をしてきたなと思います。

 展開は大外から2着カシアスが逃げてサージュミノルがそれを追走、内からキングや3着リンガラも先行争いに加わっていきます。
 勝ったナンヨーはややもっさりしたスタートで、追走もやや苦慮している感じでインに寄せつつ鞍上が道中促し続けていました。

 ラップは34,7(11,57)-35,1(11,7)=1,09,8(11,63)という推移でした。
 ただこのレースはハーフで見ると平均ペースに見えますが、細かく見ると結構違う様相が見えてきます。
 折角なので全ラップを載せますと、12,4-10,8-11,5-12,0-11,4-11,7となっていて、実は中盤がかなり遅く、かつ直線手前で12,0と明確に一息入って緩んでいる、というところがポイントです。
 その分直線入り口で再加速していて、そこでの反応が問われるところもあったのと、後は後ろから押し上げる中で緩みに乗じることが出来た、それこそ先週のユニコーンSのようなメカニズムは一定働ているレースだと見ていいでしょう。

 ただ勝ち馬のナンヨープランタンが、その緩みに乗じて噛み合った勝ち方をしてきたか、というと決してそうでもないのが面白いレースたる由縁でもあります。
 少なくとも言えるのは、本質的に1200mでは絶対的に短く、追走面で苦労していたところ、12,0地点で一気に、とはいかずともある程度差を縮めることが出来たのは、レース全体でスピード負けしなくて済んだ最大の理由になるでしょうし、その上でこの馬はラストの持続力面で良さを見せてきました。

 直線入り口から外目に出して、でも加速地点で差を詰めるほどではなく、残り200mで先に抜け出したカシアスとはおよそ3馬身差、しかしレースラップ11,7の地点で一気にそれを差し切っています。
 なのでこの馬自身の上がりは11,8-11,4-11,2くらいでおそらくはラスト1F最速、確実に距離延長で噛み合う適性を見せてきたと思いますね。

 ですから、この勢いで函館2歳Sとか使ってきた場合、同じように取り付く場面があればいいですが、レース全体が前傾の一貫減速消耗戦とかになった時には、余程馬場が重くなっていてラスト1F12,5とかかかる条件でもない限り厳しいのではないかと感じます。
 血統的にもルーラーにスペシャルウィークで、いかにも2400mくらいで走りそうなところはありますので、ここで無理せず中央開催まで待つか、2歳Sを使うにも新潟か札幌にすべきかな、と感じます。ただ新潟ですと最速地点で切れ負けする懸念もありますし、その辺は難しいところですね。

 逆に2着馬のカシアスは、再加速ラップで後ろを出し抜く上手い競馬は出来ていますが、この日の馬場ならよりスピード勝負に徹してしまった方が強かったのではないか、という感じはします。
 勿論そこはやってみないとわかりませんし、血統的にもキンシャサの仔で、母系がディラントーマスと欧州2400m血統なのが面白味はありますが、少なくともここでは1200m戦らしいレースには作っていないので、今後距離延長を視野に入れるならそれはプラス、スプリンター路線を目指すならさほど武器にはならないと思いますかね。
 
 

 

 
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2017 6月第3週新馬戦 レース回顧(土曜編)

 今週から3場開催で新馬戦も沢山レース数がありますので、土日に分割して書かせてもらおうと思います。

**★6/17(土) 府中5R ダート1400m戦**

 今週からはダートの新馬戦も始まりました。
 このレースでは、人気になっていたパーラミターがどう頑張ってもゲートに入ってくれなくて除外、という珍事があり、直前で大きく人気が動きましたが、結果的に圧倒的1番人気になったマイネルユキツバキ(個人的にこの名前の響き、綺麗で好きです)が完勝しました。

 ややバラッとしたスタートから、内枠のコスモジョーカー、タマスカイブルーの2、3着馬が先手を取り、縦に長い隊列を紡ぐハイペースでレースを先導していきます。
 ユキツバキはスタートこそ五分でしたが二の足がかなり良くなく、序盤は中団の外目を追走、そこからずっと押っ付けつつ、少しずつ前との差を縮めていく形になりました。

 レースラップは35,8(11,93)-12,4-38,9(12,97)=1,27,1(12,44)という推移でした。
 全体時計としては、3歳未勝利の勝ち馬に千切られた2着馬が1,26,9で、最終の500万下マイル戦が1,37,3なので、馬場自体はそこそこ時計はかかっていたと思いますし、その中ではまずまず、とは言えるでしょうか。
 ただレース自体は一度も加速ラップを踏むことがない一貫減速戦で、前後半で3秒もラップの開きがある極端なレースになっていて、この時点で高い追走力か、後半の持久力がないと難しかった、という印象です。

 勝ったユキツバキは、道中ペースが速い前半3Fはまるでついていけず、そこからじわじわと詰めてくるものの、最後のコーナーと坂地点では目立った伸び脚は見せられず、結果的に坂を上ってからラスト1Fの持久力面で良さを見せてきた感じだと思います。
 このレースぶりですと明らかにもっと距離は欲しいですし、相対的にタフな馬場のほうが良さそうで、その視座だと中山1800mなんて合うかな?と思うんですが、一方ですごく不器用さも感じます。
 今回は外枠でスムーズに前を追い掛けられたのが良かったですし、相手関係にも恵まれましたが、内枠だったり、よりスピード色の強い場面では疑ってかかりたいところですね。

 血統的にもアイルハヴアナザーの仔なので、とりあえずダートは走る、とは思いますが、今回もワンペースになったのが功を奏した感はあり、要所での加速や切れ味を問われる条件でどこまで食下がれるか、また2戦目以降でどれだけ伸びしろを見せられるか、ですね。

 2着のコスモジョーカーも、勝ち馬同様にラフィアン軍団という事で仕上がり早でもあったでしょうし、スタートセンスの良さと先行力、追走力を存分に生かしての粘り込みだったなと感じます。
 この馬は逆にあれだけ前半要素で良さが出るなら、現状は1200mのほうが競馬はしやすいかもしれないと思いますし、スピードで押していける強みがあるのでコツコツ安定して走ってくれると思いますね。

**★6/17(土) 阪神5R ダート1200m戦**

 阪神のダートは府中よりは少し軽かったかな、と思いますが、こちらも一貫減速戦になる中、番手から最後の200mでしぶとく脚を伸ばしたゴールドクイーンが完勝しました。

 スタートして、内からやや出負けをリカバーするように押してハナに立ったのがメイショウキタグニで、その番手にスッとゴールドはつけ、その外よピッタリマークするような形で3着馬のマッスルマサムネが追走していきます。
 2着に入ったヴィグラスファイアは、1歩目こそ互角でしたがそこからの加速力がやや心許なく、一気に中団まで下がって追走で汲々となっていたように見えました。

 ラップは35,0(11,67)-38,4(12,8)=1,13,4(12,22)という推移になりました。
 わかりやすく綺麗な減速戦で、追走力以外の要素はせいぜいラストの持久力くらいで、全体的に淡泊な競馬ではありましたが、その中で勝ち馬はポジショニング、追走力、持久面において安定して高いものを見せたと思います。
 残り200mまではぴったりマサムネに張り付かれていたのを、この馬自身かなりの減速ラップとは言え最後の1Fで3馬身離したのは悪くない競馬でしたし、そこの脚は1頭だけ群を抜く末脚で伸びてきたヴィグラスにも遜色はなかったように思えます。
 この感じなら、もう少しコントロール出来るなら1400mまでは、という感じはありますが、血統的にもシスターミニスターにタイキシャトルと短距離色は強く、淡泊さも感じるところはあるので、今後相手が強くなってどうか、というのは難しいところですね。

 2着のヴィグラスファイアは、この馬は距離延長がいいと感じる出足の鈍さですが、ただコーナーでしっかり差を詰められている事と、ラスト1Fで一応勝ち馬に2馬身くらいは詰めている持久力は悪くなかったと思います。
 名前からわかる通りのサウスヴィグラスの仔ですが、この馬に関しては1200mの馬には感じないですね。最近はこの産駒も、ヒガシウィルウィンのように大井の2000mまでこなす万能性を時折見せてきているので、血統イメージに縛られず距離延長を試して欲しいところです。
 阪神、京都の1400m戦は合うと思いますし、後はもう少し出足を磨ければ、ですね。

 3着マッスルは、道中ずっと外、という面もありますし、それでも最後の失速からすると、前傾戦で良さが出るタイプではあまりないのかな?とは感じましたね。
 ヘニーヒューズの仔なのである程度スピードがつく条件の方が噛み合うかもですし、もう少し自分のリズムでじっくり構えられれば、後半要素で光るものを見せてきそうな印象はありました。

**★6/17(土) 函館5R 芝1000m戦**

 夏の函館開催の最初の新馬戦は、これも伝統的に決まっているのか芝の1000m戦となりました。
 この土日の函館の馬場は超高速でしたので、57,7という時計そのものは平凡ですが、勝ち馬はそこそこ面白い競馬を見せてくれたと思います。

 バラついたスタートから、内枠の伏兵ラヴバインドがハナを取り切り、それをイイゾが番手でマーク、その外に2着馬のディアバビアナがいました。
 勝ったベイビーキャズはスタートでかなり出負けしたものの、そこから押して押して先団までリカバー、その分やや掛かり気味なのを今度はコントロールしながら直線に入っていく形でした。

 ラップは23,3(11,65)-11,4-23,0(11,5)=57,7(11,77)という推移でした。
 1000m戦はほぼ上級条件がないので何とも言えないところはありますが、展開的には4コーナーでほんの僅かだけでも加速ラップは踏んでおり、馬場も馬場でしたから、実質的にはある程度コントロールしてからの一足、持続面をそれなりに問われたのかなと感じます。無論追走できなかった馬はそれまで、という展開でした。

 勝ち馬は2F目の最速11,0地点で結構無理目にリカバーして入っていき、そこから一度ブレーキという結構ちぐはぐな競馬をしていて、それでも直線外からの伸び脚は鋭く、また最後まで減速しませんでした。
 この馬自身は11,4-11,2-11,3くらいでラストは乗り切っていますし、コーナーでの機動力的にはそこまででもないですが、ラストの持続面はまずまずの資質を見せたと感じます。

 こういう差し足を使える馬は、比較的函館2歳Sなどに繋がる場合があるので、まだ色々鵜呑みに出来ない面はありつつも、それなりに評価できるのではないかと思いました。
 出来れば今回の出負け癖は解消させたいですし、スムーズに流れに乗る形での先行が板についてくれば面白さはありそうです。
 血統的にもアルデバラン2に母父スウェプトオーヴァーボードとか中々に渋いですし、後々ダンスディレクターのような短距離の差し馬になっていく資質の片鱗をチラッと醸した、かもしれませんね。

 2着のディアバビアナもスムーズに流れに乗っていい競馬をしていますし、やや早熟傾向があるマツリダゴッホ産駒ですから、昔風に言えば折り返しの新馬、すぐの未勝利戦でしっかり勝ち切る競馬を試みてくるかなと思います。
 1200mになっても、しっかりコントロールできそうなので問題ないですし、要所の機動力は勝ち馬より上に思えたので、その武器を上手く使って立ち回れれば、と感じます。 
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2017 6月第3週海外GⅠ レース回顧

**★フランスオークス [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=AdpiCUwpl6w)**

 日本のオークスとダービー週に、ルメールJがフランスではダービーよりオークスの方が人気がある、という談話を出していたと思うのですが、今週はその、フランスで二番目に盛り上がるという仏オークスが開催されました。
 このレースが大切にされている証左として、牡馬2冠は中2週の開催なのに、牝馬2冠は中4週とゆったりローテーションが取れる形になっていて、しかし今年は仏1000ギニーからはめぼしい上位馬はこちらに回ってきませんでした。

 あのレースの勝ち馬はコロネーションカップでウィンターと3歳牝馬最強マイラー決定戦をやるようですし、サンタラリ賞勝ち馬のソーベツも英オークスに参戦したため、ここは比較的大人メンバー構成になった気がします。
 それでも英オークス2着のロードデンドロンが遠征していたりと、面白いメンバーが揃った中で、しかしこのレースを制したのは1000ギニー11着から巻き返したセンガという伏兵馬でした。
 
 レースは比較的有力馬が後方につける中、伏兵陣が中々いいペースで飛ばしていって、前半の1100mが65,1となっていました。
 そこから2Fは25,2と比較的緩み、そこから12,3-11,5-11,8くらいで勝ち時計が2,05,97ですので、前半ある程度追走は問われつつ、レースの仕掛け自体は遅かった、と見ていいでしょう。
 その上で、内にいた先行馬が大抵バテて早く下がっていったことで、内の隊列が非常にごちゃつき、それを尻目に最速地点で一気に外の馬が出し抜いて勝負を決めた形になっており、かなり展開の綾が見え隠れしているレースでもあると思います。その煽りを大きく受け、インで落馬したロード&ムーアJは心配ですね。

…………追記、落馬したのはスミヨンJの馬ですね。ロードは道中での競争中止でした。訂正させていただきます。

 勝ち馬はスムーズに中団よりやや後ろの外目を追走できていましたし、11,5地点での抜け出しの切れ味が素晴らしく、そこからの持続力面でスタミナタイプがラストドッと迫ってはきますが、それを悠々退ける強い競馬でした。
 これまでマイルGⅠでは完敗ばかりでしたが、距離が伸びて後半要素を高めてきた感がありますし、2400mでも、というところはありそうなので先が楽しみですね。
 ただ血統的に父ブレイムでエーピーインディの肌とは、完全にアメリカ血統なのが驚きで、こういう馬がフランスで走るものなのか、とは感じましたね。

 稀代の名牝ゴルディゴヴァの2番仔であるテラコヴァもかなり人気を集めていましたが、最後猛然と差し込むも3着と惜しい競馬で、ただ素質の一端は見せたので今後も注視していきたいところです。


**★スティーブンフォスターハンデキャップ [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=yetXgfTXAXA)**

 こちらはドバイでアロゲートの驚異的なパフォーマンスに脇役とならざるを得なかったガンランナーの、アメリカ帰国初戦となりました。
 相手関係も楽で当然のように1番人気に押され、好スタートから楽に先手を取ってタフなペースを刻んでいきます。
 大体のラップが23,6-23,6-23,5-24,1-12,7=1,47,56となっていて、一貫してハロン12秒を切るラップを作りつつ、最後までバテずに突き放す一方と、非常に強い競馬ですし、時計面も優秀です。

 ラスト100mくらいは全く追っていませんし、それで12,7はかなりのもので、いよいよ本格的に力をつけてきたなと感じますね。
 今なら1800mまでならアロゲートにもワンチャンス作れるかも、と思えますし(2000mでは無理でしょうけど)、来年のペガサスワールドカップで面白くなりそうです。

 今日は、というより今週はちょっと時間がなかったので簡素な記事になりました。
 この先は明日明後日で土・日の新馬戦回顧をして、金曜日はアスコットミーティング前半戦のレース回顧をしたいと思っています。
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2017 宝塚記念 プレビュー

**★はじめに**

 いよいよ今週は春のGⅠシリーズ総決算、夏のグランプリ宝塚記念ですね。
 今年は絶対王者キタサンブラックがいるからか、登録時点で11頭と、下手すると一桁頭数でのレースになりそうな寂しい雰囲気です。
 それでも新設初年度からの、キタサンのおそらく達成できれば不朽になりそうな春古馬三冠(今後中距離と長距離の双方であれだけ強い競馬が出来る馬が早々出てくるとは思えません)、それをさせじと牙を研ぐ同期のライバルや4歳の上がり馬など面白い馬や見所は沢山あります。

 加えて前走ああいう強い競馬を見せたキタサンが、去年のリベンジの意味も含めてここでどういうレースプランを立ててくるかも非常に楽しみです。
 現状例年にない高速状態を維持している阪神ですが、それでもキタサンがいる限り、単なる上がりの切れ味勝負ではないレースにはなるでしょうね。

**★レース傾向分析**

 阪神内回り2200mは、スタートから1コーナーまでの距離が長いのが最大の特徴です。
 それこそゴールドシップくらいのズブい馬でも、外枠を引いてその気になれば先行できてしまう舞台でもあり、逃げたい馬が多数いる時はかなり前半のペースが上がっていく傾向にあります。
 また後半も、残り1000mくらいからじわっと上がって、コーナー地点で既に速いラップを踏むパターンがほとんどで、スピードだけでもスタミナだけでも押し切れない、底力を求められるチャンピオンコースのひとつという認識でいいと思います。

 加えて例年このレースは梅雨時開催ですので、非常に馬場が重くなる傾向ですが、今年に関してはやや様相が違っています。
 梅雨入り後も週末の雨が限定的で、その分だけ馬場も高速状態を保つ、どころか週を増すごとに拍車がかかっている現状で、昨日のレースでも500万下の2000m戦で1,57,9、マイルのOP戦も47,1-44,8という超後傾ラップなのに1,31,9とレコード更新していました。
 今週の週間天気は今のところずっと曇りマークと、なんとも言い難い微妙さではありますが、仮にこの高速状態が維持されるのであれば、宝塚記念レコードの2,10,1、2200m日本レコードの2,09,9も視野に入ってくると見ておいた方がいいでしょう。

 なので今年はあまり参考にならないかもですが、一応過去10年の平均ラップを出しておきます。
 3-2-3-3Fで取って、34,8(11,6)-24,8(12,4)-36,8(12,27)-36,1(12,03)=2,12,5(12,04)という推移になっています。
 やはり前半3Fだけが飛び抜けて速く、そこから多少の緩みはあっても極端ではなく、淡々と12秒前半を続けていく感じで、一定の追走力と持久力面がかなり強く問われ、要所の加速力や切れ味、持続力面は最低限あれば、というイメージでいいと思います。
 
 とにかく前半のペースが極端に触れていて、58秒、59秒になる時もあれば、62秒とか異常に遅くなる時もあるので、ペースの決めつけが難しい舞台ではありますが、今年はキタサンがいますので、このキタサン×武Jのこのレースに対する意識をどう読むか、が唯一絶対のポイントになってくるのかな、とは感じています。

 去年のキタサンは、番手勢につつかれた事もあり、稍重馬場の中でかなりのハイペース、59,1-12,4-61,3という前傾2秒の推移で走破してタイム差なしの3着に敗れました。
 ですが、私も含めてこのレースぶりを見て、キタサンブラックってこんなに強かったのか、と、それまで持っていたどこかひ弱なイメージを払拭した人は多かったと思いますし、少なくとも良馬場でなら前半59秒はこの馬にとっては楽にクリアできるペースになっている、と考えていいでしょう。

 その上で今年の馬場ならば、59-12-59=2,10,0くらいは楽に計算できそうな状況でもあり、それならば綺麗な平均ペースに収まります。
 無論ここは春3戦目で、凱旋門賞を視野に入れる上である程度楽に勝ちたい、という思惑もないではないでしょう。
 ただ馬主さん的には海外よりここ、という想いは強そうですし、武Jも強い馬では強い競馬で勝つのを歓びとするタイプですから、今回も「この馬にしか耐えられないペース」で進める確率はかなり高いと踏んでいます。勿論馬場が悪くなればまた別ですが、そのあたりは現状どうにも言えないので、あくまでも今の馬場が維持される前提で、です。

 プラスして考えるに、相手関係としても上記の59秒ペースを作ってしまった方が、勝手にライバル勢が崩れてくれる公算が高い、とも思えていて、今の時点ではこのキタサンの作る時計勝負の流れに乗っていって脚を削がれない馬を強めに狙いたいな、と考えています。

**★有力馬所感**

・キタサンブラック

 まぁある程度上で書いたのであまり繰り返しませんが、去年より明らかにパワーアップしている現状で、いかに天皇賞・春の激走の見えない疲れがあったとしても、ここで圏内から外れるような大崩れをするイメージは全く持てない馬とはなりました。

 敢えて瑕疵を上げるとすれば、春天からの直行馬が近年成績が良くない事と、あとレース的に逃げ先行よりは、コーナー最速の持続戦・持久戦になるというメカニズム上、差し馬の方が優位性が高い舞台という所ですが、今の高速馬場のままであれば前に行けるアドバンテージは圧倒的だと考えます。

 この馬自身この距離での高速決着が未知数と言えばそうですが、大阪杯もあの時計で走れていますし、ちょっとやそっとのペースでは追走面で削がれない力感を手にしているので、懸念するほどではないと思います。
 これがペースに左右される差し馬ならともかく、百戦錬磨の武Jが駆るキタサンブラックという時点でペース配分を間違える可能性はほぼ考えなくていいですし、逃げて誰もが追走で汲々とするペースで飛ばし、そのまま押し切る、アーネストリーのような競馬を見せてくれる蓋然性は高いだろうと考えます。流石に今の時点で、他の馬に本命を打つ気は一切ありません。

・シュヴァルグラン

 天皇賞・春は、高速馬場で速い流れに自分から入っていった時にどうかな?という懸念を持っていましたが、結果的にはかなり強い競馬を見せてくれました。
 あのレースではキタサンの位置で1000m60秒を切っており、それをピタリマークしていたこの馬も60秒前後では通過していて、その点で最低限の追走力は担保、以前より前半要素を高められるようになってきたかなと感じています。

 前走はスタートも良かったですし、この距離でもある程度ポジションを取ってキタサンマークに持ち込める可能性はあるので、あながち今年は高速決着になりそうだから、という理由で嫌うのは安直かな、と考えています。
 こちらも当然激走の反動は考えないといけませんが、去年のように追走で手一杯、という事にはならないと思いますし、去年も番手勢が下がってくる煽りをもろに受けて追えなかったのが原因の部分もあるので、徹底マークでキタサンに勝てるか、という視座では流石に心許ないものの、2番手グループの中では比較的計算できる1頭になるのではと見ています。

・サトノクラウン

 結論から言えば、大阪杯に続きズブズブの不良にでもならない限り一切狙う気はありません。
 この馬はどうしても追走力に大きな課題がありますし、加えて後半要素としても、切れ味の質や坂加速性能など、ネックになる点がかなり多いです。
 去年もこの馬にとっては悪くない稍重馬場でしたが、どうしても前半追走に苦慮していて、その分後半の持久力面もはっきり削がれていて、あれを見る限りキタサンの作るペースの中ではどうあっても好走は厳しいだろうと思います。
 
 特にデムーロJですから、今回も積極的にキタサンを追い掛ける競馬をしそうで、それを含めて最後の200mで一気に甘くなるイメージですね。

・シャケトラ

 この馬は高速適正が今のところ完全に未知数です。
 今までのレースでも、平均ラップでハロン12を切ってきたレースすら一度もないので、ここで2,10,0前後の高速決着を考えた場合、前半の追走力とレース全体での総合スピード能力が足りるかは大きな課題になります。
 天皇賞でもう少しまともな競馬が出来ていれば指標にもなったのですが、出遅れて一気に流れの速いところでリカバー、というちぐはぐな競馬をしている分、追走力の面でどこまで耐えられるか正直まだわからない、というのが素直なところです。

 それだけに未知の可能性はある、と言いたいですが、後半要素でも持久力面は日経賞で確かなものを見せているものの、切れ味や持続力面ではやはりちょっと足りない印象を残しています。
 この馬場のままですと、当然後半の推移も12,1-11,9-11,3-11,5-12,2くらいは見込めてしまうわけで、コーナーの最速地点でしっかり押し上げる、それ以上に速い脚を使えるかもやってみないとわかりません。日経賞はコーナーで動けてましたけど、あれはレースラップが12秒そこそこの中で、ですから、自身11,5くらいの、持久力水準での最高速度的な面はあったと思うので。

 諸々考えると、ルメールJで人気するのは必定の中、それに見合う安定感はない、とは思います。
 少なくとも前半は折り合いに専念しつつ中団くらいまででしっかり前を見据えて、そこからキタサンより更に速くロングスパートを仕掛けて持久力面で勝負するのが、キタサンを撃破するという観点では一番可能性が高そうですが、果たして馬がそこまで強いか、判断に悩むところですね。
 サトノと違って無印にするつもりはないですが、重い印は多分打たないと思います。

・ゴールドアクター

 春天では出遅れで何も出来なかったゴルアク×横山Jのコンビが、梅雨の仁川で捲土重来を目指しますが、これも簡単ではないと感じます。
 元々先行力はある馬ですが、実のところこの馬が先行して勝ったレースは大抵がスローで、追走力面ではっきりタフなレースで結果を出している、という担保はない馬だったりします。
 また、この距離での高速決着にも一抹の不安はありますし、今回も輸送のリスクがあると考えれば、先行できるメリットを差し引いても強くは狙い辛い1頭になってしまったかな、と感じています。

 この馬としては去年くらいに渋って、その上でインベタで上手く脚を溜める競馬が出来れば、くらいの条件が欲しい感じがしますし、良馬場で速いペースについていく、或いはキタサンの機先を制しての奇襲逃げなどを敢行すると、昨日のシュウジではないですがオーバーペースになってしまう懸念が強いかなと思うので、現状取捨の当落線上、というところです。

・レインボーライン

 この馬は前走こそ超高速決着の中で何も出来ずに後方まま、とらしくない競馬でしたが、基本的には堅実さが売りで、後半要素としては持続力面が一番評価できる馬です。
 加えて元々マイル戦でも結果を出せていたように、このメンバーの中では確実に追走力面での不安はなく、渋って持久力戦の様相を強くしても、札幌記念のラストの脚からしてまず問題ないでしょう。

 今回は岩田Jなのでタイトなコース取りを意識してくるかな、と思いますし、2番手グループの有力馬が押し上げていく展開の中で上手く内内を立ち回れば、直線でスッと伸びてこられるイメージを持ちやすい馬です。
 特に内枠を引けば面白いと思いますし、現状対抗候補の筆頭、という位置づけですね。

・ミッキークイーン

 この馬もこの条件はかなり面白いと思っています。
 元々マイル戦の高速決着では足りない、と言い続けていた馬で、前走の大敗も陣営コメントのように怪我の影響・左回りの部分もあったのかもですが、個人的にはもっとシンプルに最速地点での加速力・切れ味が足りなかっただけで、度外視していい負け方と思っています。

 当然この馬もマイル戦で余裕で勝ち切れる追走力があるのでここなら大威張りですし、また後半要素で最大の武器は絶対的に持続力、というのも、コーナー最速になりやすいこのレースの傾向にバッチリ噛み合うと思います。
 時計勝負になっても秋華賞の内容から全く不安はないですし、純粋に全ての馬が能力フルスロットルでこのメンバー、というなら辛いかもですが、キタサンのペースで追走力を要求されて脚を削がれる馬が多く出る、というイメージの中では、ラストにきっちり台頭してくる1頭になるのではないか、と感じています。

 ここ数年はディープの牝馬がよく圏内に飛び込んでくるイメージですし、枠の並び次第では対抗まで考えています。

・ミッキーロケット

 この馬も大阪杯でサトノクラウンとセットにしたように、サトノほどではないですけど前半の追走力に課題はあります。
 少しでも距離が延びるのはプラスに見えつつ、実際はこの舞台の方がペースが上がるのでその点でやや厳しいと思いますし、加えてこの馬には出負け癖があります。
 スタートを決めて前に行ければ追走で苦しく、出遅れて後ろからですと後半要素の絶対量で足りない、という感じで、どう乗っても現状でこの距離では1枚足りないと思うので、基本的にはこの馬も軽視のスタンスですね。やっぱり2400mは欲しい馬で、内枠引いた有馬とかすごく面白そうなんですけどね。

・クラリティシチー

 中1週で本当に出てくるの?というのはありますが、鞍上も松山Jに決まったようですし、一応出走する方向なのでしょう。
 基本的にこれまで2000m以上のレースで全く良績がなく、重賞実績も足りないのでまずいらない、とは思うのですが、一縷の望みがあるとすれば超高速馬場ですね。
 エプソムカップの回顧でも触れたように、超高速馬場で後半要素を適度に問われる展開はベストなのかな、と思っていて、その意味でキタサンの59-59の流れをイメージするなら合致してくる部分はあります。

 内枠から前半上手く死んだふりでインベタに徹して、漁夫の利を狙う形でなら、他の馬が追走や押し上げで足を使い過ぎて崩れていく中、ひょいっと最後にギリギリ3着飛び込みくらいはあってもいいかも、とは思います。印まで回すかは並び次第ですけど。

・スピリッツミノル

 流石にこの距離に入ると前半の先行力も足りませんし、後半要素でも不器用さが目立ってしまうので難しいですね。
 サトノクラウン同様、ズブズブの不良馬場とかで持久力特化戦になれば一考の余地はありますが、基本的には軽視でいいでしょう。

・ヒットザターゲット

 元々超高速馬場巧者で、インを上手く立ち回っての持続力戦で強さを発揮する馬でした。
 なので往年の力があれば、この条件は内枠引ければ結構面白い、と思えるのですが、流石に近走の結果が酷過ぎて、ここで一気にガラッと変わってくるイメージは持ち辛いものはあります。

 ただ超細かく見れば、金鯱賞や京都大賞典は枠番的に恵まれなかった中でそこそこの時計差まで詰めており、目黒記念も外枠でインに潜り込めなかったと考えれば、ここでインベタ、ロンスパ持続力戦になった時にワンチャあるかも?と一縷の希望を持てる要素はなくはない、くらいですかね。流石にちょっと無理筋に思えますが、条件自体は相当噛み合うと思っていいです。

**★思い出の宝塚記念**

 他の記事でコメントもいただきましたが、グラスワンダーの宝塚記念は強烈に印象に焼き付いていますね。
 あの時は安田記念からの参戦で、あまり調子も良くないと囁かれていて、古馬になり先行力を身につけて絶好調だったスペシャルウィークに人気では水を空けられる形でしたが、結果は恐ろしいほどの強さでの完勝でした。

 あの日の馬場は非常に時計がかかっていて、それなのに前半も速く、中盤も緩みなく、かつスペシャルウィークが早仕掛けの捲りを敢行してロンスパになって、最速11,0というえげつないラップを後半で踏んでいる凄まじいレースでしたが、そのコーナー出口から直線前半の11,0地点で悠々馬体を並びかけていったあの迫力は、今でも思い出すだけで身震いするほど圧倒的でした。
 基本的に常に自分の力は出すステイゴールドがあれだけ千切られた事からも、このレースの破格のレベルは明らかですし、本当にしっかり能力を発揮できた時の爆発力は凄まじかったなと思います。

 そして、そのグラスの仔であるアーネストリーの一戦も鮮明に記憶に残っています。
 ラップ的に58,7-12,1-59,3という高速条件での綺麗な平均ペースの中、番手から直線早め先頭で堂々抜け出す、総合的なスピード能力をフルに生かしたレースぶりは凄みがありましたし、文字通り誰も追いつけない状況に持ち込む胆力も含めて名レースだったと思います。
 
posted by clover at 04:07| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017 函館スプリントS・ユニコーンS レース回顧

**★函館スプリントS**

 サマースプリントシリーズの開幕戦にもなる函館スプリントSは、稀に見る超高速馬場決戦の中、50kgの恵量を存分に生かしてジューヌエコールが楽々突き抜け、圧巻のレコード勝ちを収めました。レースを振り返っていきましょう。

 まず馬場ですが、昨日の時点で超高速なのはわかっていましたけど、それでもなんだかんだ函館だしなぁ、と甘く見積もっているところはありました。
 しかし蓋を開けて見ると、8Rの500万下で32,7-34,8の猛烈な前傾消耗ラップでの逃げ切りで1,07,5と、昨日のレコードが早速更新される事になり、そしてこのレース逃げて勝ったのが武Jだったのを見た時は、あーこれシュウジも逃げるのかな?と、その時点で展開予想が外れることを観念しましたね。。。

 その懸念通り、絶好のスタートを切ったシュウジが出足も鋭くすんなりとハナを取り切り、それをセイウンコウセイもピッタリマークするように2番手追走と、予想外に外主導での先行争いが展開される事になりました。
 イッテツやクリスマスもスタートは五分でしたがテンの速さが違いましたし、ノボは大きく伸びあがっての最後方からとなります。
 レヴァンテ、ブランあたりも外枠主導の流れに乗って比較的前を追い掛け、ジューヌエコールは一度その隊列からスッと下げて中団やや前くらいでの追走となり、それをキングハート、エボワスあたりがマークする形で進んでいきます。

 ラップは驚愕の32,2(10,73)-34,6(11,53)=1,06,8(11,14)という推移でした。地味にこのブログスタートしてから、区間平均ラップ10秒台って初めて書いた気がします。
 とにかく、多少なり上り坂スタートの函館1200mなのに、下り坂スタートのスプリンターズSでも出さないような強烈なテン3F推移で、こんな数字はたまーに小倉1200m(やっぱり下り坂スタート)で見るくらいですね。改めてシュウジという馬の天性のスピードには驚きますが、でもそれじゃダメなんですよねぇどうしても。その辺は後程触れます。

 ともあれ、折角なのでレース全部のラップを見ていくと、11,7-10,1-10,4-11,0-11,4-12,2となっていて、テン3Fはどの地点も鬼のように速く、前半から勝負所にかけて、後続の馬も大半が手綱を扱いて促していかないと追走できない、函館らしからぬ縦長の展開になりました。
 当然一貫しての消耗戦ですので、要所の動き出しなどは全く問われず、ただひたすらに追走力面特化、速い時計に対応できる馬でないと手も足も出なかった展開だと考えます。

 しかしそんな超激流の中、勝ったジューヌエコールだけは追走に全く汲々とすることなく、むしろ少し抑えているくらいの手応えで、4コーナーでもスーッと楽に外目を回して前との差を詰めてきます。
 直線でセイウンコウセイが抜けだしを図るところにあっさり取り付いて抜け出すと、後は軽快に脚を伸ばして引き離す一方と、斤量差を鑑みてもちょっと桁の違うえげつないスプリント能力を見せつけた、と言っていいでしょう。

 正直なところ、どんな展開でも詰まらない限り多分勝つ、と思っていたのですけど、それにしても予想以上に強かったです。
 この馬自身は32,9-33,9と前傾きっかり1秒での走破になっていますが、前半33秒を切る流れを追走して全く後半要素に陰りなく、11,4と減速が著しくなってきた時点で11,0、ラストが11,9くらいで駆け抜けている計算になります。
 元々2歳時から、マイル戦で後半要素が問われても一定戦えていた馬ですが、成長とともによりスプリント色が強くなってきた、と見ていいでしょうね。追走力の高さが他の馬とは段違いの性能でしたし、これなら常にこの路線では前目に入っていって強気に勝負できるでしょう。

 スプリントの強い馬を育てるのには多大なノウハウがある安田厩舎の管理馬ですし、この高速馬場での勝超前傾戦を勝ち切ったことで、一躍秋のスプリンターズSの主役候補になったと言っても過言ではないと思います。
 勿論今日は50kgでしたので、定量戦で同じように、とは簡単ではないかもしれませんが、やはり去年のソルヴェイグよりスプリンターとしての器は1枚上に感じるので、この感触は大事に保ちつつ、なんとか本番のゲートに入って、かつ勝負できるようなローテーションを組んで欲しいものです。

 2着のキングハートは、まぁこれだけ流れて隊列がばらければ、失礼ながら中谷Jでも捌けるよね、というところはあります。
 この馬も実力は認めていたんですが、どうしてもこのコースで内枠から捌けるイメージが持てなくて軽視したわけで、しかしペース判断からまるっきり間違えていたので、食い込まれても仕方ないか、とは感じます。

 あと適性面でも、少しこの馬の成長力を低く見積もっていたかなぁと反省しています。
 前走の京都1200m戦で、外目の枠から長くいい脚で伸びてきたのは強い競馬であり、かつ今日に関してはこの馬自身33,0-34,2で走破しています。
 近走の充実を支えていたイメージですと、ポジションを下げて後傾型にシフトした事で良さが出た、という感触で、その点もここで狙い辛い要因ではあったのですが、ここまで前傾ラップを踏んで、最後までしっかり食い込んでこられたなら、好走スポットを広げてきていると考えていいですし、今後の展望も大きく広がると思います。

 しかしこの血統、渋いですよねぇ。オレハマッテルゼにマイネルラヴとか、どちらもスプリントGⅠ勝ち馬ですけどひっじょ~に印象が地味ですし(マイネルはタイキシャトルを破った、という意味ではインパクト大きいですけど)、こういう馬が現代のスピード勝負の競馬で台頭できるのだから本当に面白いものです。
 この感じですと、今後も極端なスローペースに嵌らない限りは、ある程度どんな流れでも伸びてくる絵図を描けますし、高速馬場巧者の感も強まったので、そのあたりは注視していきたいですね。

 3着エポワスも、北海道1200m戦での安定度は買いつつ、それでもこの年で、かつ内枠だと綺麗に捌けても掲示板までかな、と甘く見てしまいました。
 しかし流石に百戦錬磨と言うべきか、このペースにも動じることなくしっかり自分の足は引き出してきましたし、9歳にしてなお意気軒昂ですね。
 今後も北海道1200m路線でしょうし、常に圏内に飛び込んでこられるかは展開面で心許ないですけど、紐で押さえておいて損はない、というタイプの馬でしょう。

 4着セイウンコウセイに関しては、戦前の懸念が半分当たり、半分は外れたというイメージです。
 まずスタートからのダッシュに関しては予想以上に鋭く、この超激流をシュウジの2番手で追走出来るとはちょっと思っていませんでしたので、ここで外を回される懸念はあっさり払拭されました。
 しかしもうひとつの、決定的な時計勝負になった場合の対処と、ハイペース耐性という点については、悪くはないけどやはりベストではない、という印象を受けましたね。少なくともここで圏内を外した以上、スプリンターズSでの乗り方には一工夫がいる、というのは確かになってくると思います。

 自身のラップとしては32,6-34,7と、都合2秒超えの前傾ラップを踏んでいて、流石にこれはややオーバーペースだったと言えると思います。
 強かった高松宮記念も自身は34,2-34,5とほぼフラットで、それまでのレースも自身は極端ではない平均寄りの後傾ラップを踏んで、直線での動き出しの良さや、コーナリングの良さで総合的に勝負してきた馬ですので、ここまで流れるとその長所が生かせなかったのは確かではないでしょうか。

 とはいえスプリント王者としては、一度はこういうガンガン飛ばす流れに付き合う競馬を試みる必要はあったと思いますし、まさか函館がここまで高速化するとは、という誤算はあったにせよ、少なくとも恥ずかしい負け方はしていないと思うので、当然巻き返しには期待ですね。
 むしろここで厳しいペースを経験した事で、更に一段強くなる可能性もありますし、ポジショニングは上手な馬ですから、流れとのバランスを上手く取っていければまず大崩れはしないタイプになっていくでしょう。

 シュウジに関しては、とにかく気分よく生かせるとスピードがあり過ぎるくらいあるのは確かなんですが、でもそれを前半で使ってしまうと後半の良さがまるで出ない、という部分が今日もはっきり露呈してしまったと感じます。
 自身32,2-35,5ですから明らかにオーバーペースですし、結局1200mですとどうしてもそろっと入っていけないと厳しいし、全体の流れが比較的落ち着いてくれないと、という意味で、そのスピード能力がスプリンターの資質と結びついていないように思えます。
 まあ今日は改めての真っ向勝負でしたし、これで結果が出ない以上また違う戦法を試すしかないでしょう。でも後ろからなら後ろからで、基本ちょっと足りないタイプとは思うんですよね。勝ち切る時は阪神Cのように馬場が渋っているとか、特殊条件が必要になってくるのかもしれません。でもまだ4歳ですし、長い目で見ていきたいですね。

 あとラストノボバカラが凄い脚で伸びてきててちょっとビビりました。。。
 今後ヒルノデイバロー2世になっていくのか、それともダート路線に戻すのか、正直今のダートスプリント路線は手薄なので、そちらの方が堅実とは思いますけどね。

 …………にしても、この函館の馬場本気で速過ぎますね。
 今ちらっと最終の結果見てきたら、まさかの野芝時代のボールドノースマンの不朽のレコードが、およそ30年ぶりに更新されているという事実に唖然です。しかも条件戦で、クロコスミアクラスの馬にですからねぇ。
 この馬場が今後も続くようなら、サッカーボーイの不滅の1,57,8まで破られてしまうかもしれませんね。

 ちなみに更に余談ですが、阪神も地味に超高速馬場なんですよねぇ。ブラックムーンの後半4F推定43,8ってなんじゃそら。まぁこういう馬場であれが出来るから魅力のある馬なんですけど。
 こんなに高速馬場のままで宝塚週、ってのも記憶にないですし、キタサンが淡々と刻んでいったらまたレコード更新してしまうかもしれませんね、今後の天気次第とは思いますけど。馬場が軽いのも面白さはありますけど善し悪しですよねぇ。

**★ユニコーンS**

 閑話休題。改めてユニコーンS回顧に移りましょう。

 まず今日の馬場ですが、昨日同様重そうですが時計はそこそこ出ているかな?というイメージで、どうにも掴みにくいのは確かなんですよね。
 7Rの500万下が36,3-12,3-36,7の平均ペースで1,25,3、注目の青梅特別が、アディラートが逃げて48,2-49,2とやや前傾の中1,37,4と平凡な数字でしたので、ここもそんなに時計が出るイメージは持ち辛かったです。
 ただ9R直後くらいから激しい雨が降ってきて、表記は良のままでしたが、ある程度表面が湿って走りやすい馬場に変貌していた可能性はあり、時計面からの優劣は明確には付け難いですね。とはいえ勝ち馬は圧倒的でしたが。

 展開としては、外から予想通りにテイエムが出していき、それに内から、大野J負傷で急遽内田Jに乗り替わったリエノテソーロが果敢についていきます。
 更にその内からシゲルコングが押して押して結果的にハナを取り切り、テイエムが番手外、その後ろにリエノとタガノ、という隊列になります。
 サンライズソアはその直後で虎視眈々、サヴィ、アンティノウス、ラユロットあたりが中団を形成して、やや一歩目が甘かったサンライズノヴァは中団のやや後ろ、外目からの追走になります。
 明確に出遅れたハルクンは後方インでじっと足を溜め、ウォーターマーズやサンオークランドあたりも後ろからのレースを選択しました。

 レースラップは34,1(11,37)-25,1(12,55)-36,7(12,23)=1,35,9(11,99)という推移でした。
 ハーフで見ると46,4-49,5と極端な前傾ラップで、青梅特別より2秒近く早い前半になっており、そこから12,8-12,7と大きく緩むも、この地点では後続はじわっと差を詰めている区間になります。
 その上でラスト2Fが12,1-11,9とラスト200m最速なのは、それだけサンライズノヴァが桁違いの脚で突き抜けたからですね。
 2着馬基準で見ればラスト1F12,6くらいにはなると思いますので、そこで見れば極端な前傾戦で、追走で削がれず一脚をしっかり使えた馬が台頭してきた、と言えるのですが、その上でノヴァは自身平均で入る事で切れ味と持続力まで引き出してきたわけで、これは本当に強い競馬でした。

 今まではある程度ポジションを取って入っていっていましたが、今日はやや出負けした事もありじっくり中団から、というのがまず良かったのかなと思います。
 自身の推定としては47,9-48,0くらいに見えて、それでもハロン12秒の最低限の追走力は問われていますが、これくらいで入っていくことと、後半じんわりエンジンをかけていくことで、後半要素を今までにないほど高めてきました。
 
 凄かったのは、コーナーの立ち回りはむしろ不器用な感じに大外を回されて、道中後ろにいたハルクンにそこでポジションを逆転されているくらいなのですが、そこから仕掛けて即座の反応の良さと、この重めの馬場での圧巻の切れ味です。
 残り400m地点で前との差は4馬身近くあり、レースラップが12,1なので、おそらくここでこの馬は11,4くらいの切れ味を引き出していると思えます。
 ラスト3Fは残り200mでもう先頭でしたのでラスト1Fはレースラップ通りと見て、大体12,1-11,4-11,9くらいで駆け抜けており、この切れ味と、ラストも11秒台を維持する持続力はちょっと破格です。カフジテイクを少し彷彿とさせる圧巻の差し切りでした。

 今の馬場で、多少雨が降ってかつ前傾戦とはいえ、36秒を切ってくるのも凄みがありますし、この競馬を見る限り距離延長にはさほど不安がないので、これはJDDに出てくるようなら不動の本命でいいのかなと感じます。大井の直線再加速パターンにバッチリ噛み合う脚の使い方が出来るタイプですし、その割にポジションにもある程度自在性があるので、これは本当に先が楽しみです。
 ただこれだけの馬が今まで勝ち切れていなかった面を踏まえると、機動力があるからと言って余計な動きをさせない方が当然ベター、というところはあるでしょうし、前傾戦の流れに自分から入っていく形ですとウォーターマーズにも負けている馬なので、その意味でも距離延長で追走面の不安を払拭しておく方が、とは思いますね。

 2着のハルクンノテソーロは、出遅れは痛かったですがそこからのリカバーは完璧に近かったと思います。
 道中かなり流れる中で序盤は無理せず後方、中盤の緩みに乗じてじわじわ内からポジションを上げつつ、コーナー出口でスッと馬群を上手く捌いて外目に進路を取り切ったのは実に田辺Jらしい機動性を重視したコース取りだったなと感じます。
 実際この分のプラスファクターで前走敗れたサンライズソアは撃破できていますし、この馬でも時計面ではまだ優秀な部類に思えますが、ちょっと今日は勝ち馬が破格でしたね。

 直線向いてからのどの地点でもノヴァには完敗ですし、器用さがある感じでも、切れ味が鋭いところもないので、距離延長は悪くないでしょう。
 ただ脚質的にどうしても勝ち切るには色々助けがいると思いますし、自分より前で競馬が出来て、後半要素の全てで上位のノヴァの牙城は当分重く圧し掛かるでしょうね。

 3着サンライズソアも、プレッシャーのかかる中で最低限の自分の競馬は出来たのかなと思います。
 結果的にかなり流れた中でやや強気に前を取り過ぎた、とは言えますがそれも結果論ですし、この馬の今までの好走パターンを踏まえれば王道の競馬は出来ているので、この力の要る馬場での前傾戦、という条件では上位2頭に完敗、と見做していいのでしょう。
 この馬も前走を見る限り最大の武器は軽い条件での持続力なのかな、と感じますし、ペース的には平均くらいの方が良さが出るでしょう。堅実さもあるので噛み合えば重賞のひとつくらいは手が届く素材ではあると思います。

 4着サンオークランドも中々面白い競馬をしたな、と思います。
 スタートからもっさりで道中も追走で手一杯ではありましたが、コーナーで外を回してノヴァの真後ろから追い出し、切れ味の差で一気に突き放されるものの、しかしラスト1Fはしぶとく伸びていて、もう少しでソアを食えるところまで食い込んできました。
 この感じですと絶対的な切れ味は足りないながら、持久力/持続力面で中々にいいものを持っているな、と思いますし、前走も中盤最速のタフな流れで早めの競馬からウォーターマーズを撃破しており、ラストみんながバテる中での差し込み力は今後も注意が必要かなと思います。
 ただしマイルでは決定的にスピード負けするので、距離は最低1800mは欲しいかなと思いますね。京都の1900mや阪神2000mで、極端に緩みがないパターンとか強そうです。

 5着タガノカトレアも、流石に前走は酷い競馬だったので、ここで改めて実力は見せてくれたかなと思います。
 このハイペースを前目で追走しつつも最後まで決定的にはバテていないですし、スタートからのポジショニングも上手いので、この馬は1400m路線で今後楽しめそうですね。
 もしくは1200mでも、ある程度位置でバランスを取れれば戦える素地はありそうですし、ただ今日はスピード型に不利な馬場にはなっていたと思うので、その中で同位置のリエノテソーロは撃破できているのだからまずまず、だと感じます。

 リエノテソーロは、枠の時点で難しい競馬になりましたし、積極的な内田J鞍上に替わって包まれないようにポジションを取りに行ったのは間違いではない、と思います。
 ただこの馬、アネモネSでもそうでしたけど、意外と前傾ラップに耐性がないのかな、という印象です。
 
 地方のダート2戦は流石に前傾戦でしたけど、結果的に相手関係がかなり楽なのはありましたし、芝でもすずらん賞もNHKマイルも、自身は後傾で入ることで一足鋭さを見せている、というところから、中央の軽めの馬場で高い追走力を求められると良さが出ないタイプ、と考えていいのではないかと思います。
 そうなると、中央のダート戦ですと狙い目が難しくなりますね。
 おそらく馬群の中からでも競馬は出来る素直なタイプとは思うので、どちらかと言えば序盤はゆったり入って後半の良さを引き出すバランスを模索しないと、とは感じますし、距離的にもマイルがギリギリ、というのはありそうです。
 追走面でタガノの方が上、というのが如実に結果に出ていますし、このあたりをどう糊塗していくか、またどういう路線を選択するかもポイントになってくるでしょう。少なくとも現状の追走力ですと、フェブラリーレベルで云々言える馬では決してない、とは付言しておきます。
posted by clover at 04:07| Comment(0) | レース回顧・中央競馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私的名馬列伝 第八話 サイレンススズカ

**★はじめに**

 もうすぐ宝塚記念、というのと、リクエストもいただきましたので、今回は稀代の快速馬、サイレンススズカの実像に今の視点から迫ってみたいと思います。
 20年近い年月を経ても、今なお色褪せない鮮烈な記憶と、非常に多くのファンかいる馬で、映像検索などしていても予想以上に沢山のレースを改めて見ることが出来、本当にその惚れ惚れするスピード感に酔い痴れました。

 3歳時と4歳時ではまるで別の馬、という部分もありますし、色々難しい部分もありますが、あくまで当時の私が見ていたサイレンススズカという馬の実像と、今の視点、特にラップ面から見たこの馬の特徴、強さに絞って語っていこうと思います。

 同馬の[生涯通算成績](https://keiba.yahoo.co.jp/directory/horse/1994103997/)16戦9勝2着1回で、この数字だけ見ると逃げ馬らしい強さと脆さが同居しているようですが、4歳時の成績は7戦6勝と、最後の競争中止を除けばパーフェクトな戦績で、それだけ馬自身が自分の能力を持て余してしまう性能を持っており、3歳時はそれを発揮し切れなかったのが伝わってきます。

 丁度[全レース収録した映像](https://www.youtube.com/watch?v=_jY54-dSuzQ)を見つけましたので、個々に貼るよりは、と思い先に出しておきますが、これを見ていても、新馬戦の頃、そして神戸新聞杯あたりでもまだ体つきには華奢さが目立っていて、それに比べて毎日王冠時の力感ときたら半端なく、冗談抜きでオーラが立ち昇っているように見えます。
 そういう馬体面、精神面での成長が、どのようにレースに影響を及ぼしていったかも考えながら、まずはレースぶりを追い掛けていきましょう。

**★新馬戦~ダービー <紙一重の天才性>**

 前回メジロドーベルの項でも触れましたが、このサイレンススズカがデビューした1997年は、たった2年で日本の競馬絵図をガラリと塗り替えてしまったサンデーサイレンス産駒の、その猛旋風がはじまる前に種付けされた最後の世代(=まだ評価が確定していない中で、種付け頭数や繁殖の質でも高くなかったと推測できるわけですね)になります。
 それ故にかこの世代には年が明けても、クラシック路線に目立ったサンデー産駒の台頭がなく、その中で遅れてきた大物ではないか、とデビュー前から囁かれていたのがこの馬でした。

 じっくり調整を進められ、2月初頭の京都1600m戦でデビューしたサイレンススズカは、その期待を遥かに上回るパフォーマンスを披露します。
 最内枠からポンッとスピードの違いでハナを取り切り、そのまま道中マイペースで逃げるも後続は追走に手一杯、直線は馬場の真ん中に持ち出して鞍上がターフビジョンを振り返る余裕があり、そのまま馬なりで7馬身差の圧勝を見せたのです。
 当時としては勝ちタイムの1,35,2は、新馬としては中々素晴らしいものでしたし、何より7馬身離した2着馬が、その後重賞2着3回といぶし銀の活躍を見せたパルスビートという点でも、この馬の傑出した能力が伝わってくるというものです。

 この勝利で、やや低レベルと見られていたクラシック戦線に真打ち登場、と騒がれる事になります。
 空気感としては今年の皐月賞前のファンディーナに向けられた期待に近いものがあるというか、底知れない強さで停滞感を打ち払ってくれるのでは、という期待感をたった一戦で誰しもに思わせる、そんな素晴らしい走りでした。

 その空気感に押されるように、サイレンススズカは2戦目に、牡馬クラシックの最大の登竜門、弥生賞に姿を見せます。
 しかしここでは、はじめての輸送などでレース前からナーバスになっており、若駒らしい脆さを露呈する事になってしまいました。

 スタート前にゲートで暴れて下から潜ってしまい、結果的に外枠発走に切り替えられたものの、そこでも地団駄を踏むように出を渋って、結局10馬身近い遅れをスタートで喫してしまうのです。
 それでもそこから天性のスピードですぐにリカバーし、勝ち馬ランニングゲイルが残り800mから捲っていくのについていって、4コーナー入り口では2番手集団まで上がってきて場内をどよめかせますが、流石に前半の無理が祟って最後は失速、8着に敗れてしまいました。

 この敗戦で皐月賞は断念となり、目標をダービーに切り替えての地元500万戦は、雨で渋る馬場をものともせずに楽々逃げ切って、改めて素質の違いを見せます。
 しかし、この年は皐月賞をサニーブライアンが逃げて勝った、というところも背景にあったか、ダービーまで逃げ一辺倒で共倒れになるより、距離伸ばす中で番手での競馬も出来るようにならねば、という思いが陣営にあったのか、次走のダービートライアル・プリンシパルSでは敢えてスタートから控えることになります。
 やはりそうなると道中走りに力みが抜けない感じもあり、直線向いてスッと一脚を使って先頭に躍り出るものの、内を掬った後の菊花賞馬マチカネフクキタルや、外から追撃してきたランニングゲイルにかなり際どく肉薄される薄氷の勝利でした。

 とはいえなんとかダービーのゲートインに漕ぎ着けることは出来ましたが、この時期の3歳馬に短期間に2度の東上は厳しい、と今でも言われるように、ダービーのこの馬も色々な意味で不完全燃焼なレースになります。
 中目の枠から好スタートを決めるものの、大外からなにがなんでも逃げる、と敢然とハナを主張した大西Jが駆るサニーブライアンの覇気に怯むようにスッと下げ、はじめて2列目ポケット、馬群の中での競馬を試みることになります。

 しかしそれだとどうしても力みが抜けるところもなく、直線坂地点でサニーブライアンが一気に引き離すところでもう余力なく、流れ込むだけの9着と、デビュー戦の時にかけられた期待感からすると尻すぼみの結果になってしまいました。
 このレースは本当に今から考えても、もしこの馬がハナを譲らなかったらどうなっていたか、というif話のネタとしては凄く面白いものがあります。
 絶対的なテンのスピードは確実にサイレンススズカの方が上だったはずですが、例えばそれで譲らず逃げたとして、この時点の完成度のこの馬が、適正面でもやや長い2400mを逃げ切れたとは流石に思いません。
 ただレースの流れは確実に変わったでしょうし、ハナを切れなかったサニーブライアンが、番手外からでも同じような走りが出来たかも未知数で、当時はメジロブライト贔屓だった私としては、もっとガンガン逃げてハイペースにしてくれよ~、と恨み節をぶつけた記憶があります(笑)。

 ともあれサイレンススズカの3歳春は、折々に素質の一端を煌かせつつも、それが噛み合うことなく終わってしまった、と言えるでしょう。

**★神戸新聞杯~香港カップ <試行錯誤の先の光明>**

 夏を充電に充てたサイレンススズカは、この秋こそその才能を満天に示すために、まずは同期を相手に重賞制覇を目論見、当時は2000m戦だった神戸新聞杯に出走します。
 ここでは好スタートからハナを切る本来のスタイルに戻し、休み明けで馬も気分良く逃げており、直線で後続をスッと引き離した時には完勝に思えました。

 鞍上上村Jもそう考えたのか、残り200mあたりからそこまで必死に追っていない感もあったのですが、しかしそれは大きな油断で、外から1頭、矢のような勢いでマチカネフクキタルが飛んできます。
 それを見て慌てて追い出すも勢いの差は歴然で、ゴール前で一気に差し込まれて2着となり、惜しくも初重賞制覇を逃す形になります。
 これが今の時代の観点で油断騎乗になるかは見解は分かれると思いますが、少なくともこのレース以降、上村Jがこの馬に乗ることはなかったのを鑑みると、とは思います。当時も結構パッシングがあった気がしますしね。

 しかし、馬自身は夏を超えて一回り成長した感を見せ、これならと陣営は強気に、勇躍適距離を求めて古馬相手の秋の天皇賞挑戦を決めます。
 結果的にエアグルーヴとバブルガムフェローの死闘になったこのレースで、サイレンススズカは外連味のない逃げを打ち、直線入り口まで大きく差を広げて場内をどよめかせるものの、残り200mで力尽き6着と、健闘虚しく掲示板を外す結果となりました。
 このレースに関しては、後で触れますがラップ的な観点からはあれっ?と思うところはあり、その違和感がこの馬の古馬になってからの成長の意味を考える上でも大切になるかなと考えています。

 ともあれ、古馬最高峰への挑戦は玉砕に終わり、ならばそのスピードを生かす上でマイル戦はどうだろうと、マイルチャンピオンシップへの出走を決めます。
 しかしここには、天敵とも言うべき天才的な前傾型スプリンター・キョウエイマーチがいました。
 相手の方が外枠だったにも拘らず、最初の数完歩で楽に前に出られてしまい、内外を入れ替える形で二番手追走を余儀なくされますが、この時のキョウエイマーチが刻んだラップはえげつないものでした。
 半マイル通過44,6という、スプリント戦でも中々見ないレベルの猛ラップをピッタリマークしていった事で、サイレンススズカは直線を向く前にもう余力なく、ズルズルと馬群に沈み生涯最悪着順の15着でゴールするのがやっとでした。

 しかし今見ても、このレースで4番手追走から余裕綽々で抜け出したタイキシャトルって化け物だよなぁとつくづく思います。
 追走力の高さ、という観点ではここからも色々考える余地はありそうで、そのあたりの能力分析は最後にまとめてやりますが、少なくとも前傾のマイル戦で、完全に息の入らない流れになってはサイレンススズカには苦しかった、と見ていいでしょう。
 そしてこのGⅠ2戦はベテラン河内Jの手綱でしたが、次走の香港遠征から、最高のパートナーになる武Jに手綱が委ねられることになります。

 その香港カップに関しては、まさか今の時代で動画が見られるとは思ってなかったので(というか当時もちゃんと見た記憶はない)嬉しい限りですが、ラップが出ないので正確なところはなんともですけど、少なからずその後の快進撃を予感させる、この馬なりにバランスのいい走りは出来ているなと感じます。

 スッとハナを取り、前半はスピードに任せて進めて、コーナーで少し引き付けつつ直線入り口でしっかりもう一足を使えており、ラスト100mまでは先頭でしたが、最後はバテて一気に差し込まれ5着という結果、しかし世界の強豪相手にこれは、この時期のサイレンススズカとしては健闘と呼べる走りだったのではないかと思います。
 実際に記憶はあやふやですが、このレース後に武Jが、この馬の乗り方がわかった、という趣旨の発言をしていたと思いますし、そして1998年の競馬史には、そのサイレンススズカの乗り方に徹した事による栄光の軌跡が刻まれる事になるのです。  

**★バレンタインS~小倉大賞典 <ベストの中のベストを求めて>**

 サイレンススズカの古馬シーズンは、寒風吹きすさぶ2月のOP特別から始まりました。
 …………というか、またちょっと余談ですけど、この馬って本当に能力が有り余っていたというべきなのか、すごくタフな馬でもありますよね。
 3歳春デビューでダービーまで5戦、秋も位の高いレースにばかり挑戦し、最後は香港遠征までして4戦、そこから2ヶ月空けずにここに出てきて、この春も5戦する事になるのですから、今の一流馬では中々見られないタイトなローテーションです。それだけ身体能力がスバ抜けていた、という証左でもあるでしょう。

 とにかく、歴戦の疲れも見せずに元気いっぱいのサイレンススズカは、出直しのこのOP特別で素晴らしい逃げを打ちます。
 序盤からぐんぐん飛ばして大きく後続を放し、その上で直線手前でしっかり息を入れて、そこから再加速して後続を4馬身つき放すという、今までとは一味も二味も違う大人のレースを見せたのです。

 かくして、改めてこの馬への期待が高まってきた中で、しかし次走の中山記念は苦戦を強いられます。
 スタートから飛ばしていくのは当然なのですが、このレースでは上手く道中で息を入れるところがなく、直線ではかなりいっぱいいっぱいになっていて、なんとかそこまでのリードで粘り切った、という粗い競馬になってしまいました。
 ラップという観点を持っていなかった当時の印象でも、明らかにこれは暴走してない?と思いましたし、実際に上の映像にレース後コメントが入ってるんですけど、武J自身もこれは上手くいかなかった、という趣旨のコメントを出してます。まだこの時点では、一定のスタイルは確立したけれど、その中での最善を馬自身が体得し切るところまではいっていなかったのかな、と感じますね。

 しかし次走の小倉大賞典では、改めての強さを見せつけました。
 この年は小倉競馬場の回想で代替中京開催でもあり、左回りのコースを求めてここ、という事だったのでしょう。
 外枠から好スタートを決め、最初のコーナーの入りまでそこそこ内の馬に抵抗されるも、それを振り切ってハイペースの逃げを打っていくサイレンススズカは、3~4コーナーで息を入れて直線も余力充分、57,5kgの斤量もものともせず、楽に3馬身突き放してのレコード勝ちを収めたのです。

 そして、ここまで三戦はすべて勝ち切ったとはいえ、全部1800mのレースでした。
 しかしこの年の最大目標を秋の天皇賞に置いている同馬にとって、ここからの距離延長は課題になってきます。
 実際に去年の秋天はラスト1Fで大失速だったり、神戸新聞杯でも最後フクキタルにズバッとやられていたりで、果たしてこれだけスピードのある逃げ馬が、本格化を果たしたと言ってもあと1Fの延長を失速せずに凌ぎ切れるのか?
 次走金鯱賞は好メンバーが揃っていたこともあり、レース前はこの話題で賛否真っ二つ、という感があり、とにかくこの時期、話題性という点では事欠かない個性派の誕生に誰しもが注目していた、と思います。

**★金鯱賞~宝塚記念 <震駭の完成体、無限の可能性>**

 この年から、宝塚記念の前哨戦として金鯱賞がGⅡに格付けが上がり、それだけに出走メンバーも今までのレースとは段違いのものになりました。
 サイレンススズカ同様に連勝を続けてきた上がり馬のミットナイトベット、藤沢ブランドで大器晩成を予感させるタイキエルドラドに、去年の菊花賞以来とはいえ実際にこの距離でサイレンススズカを撃破しているマチカネフクキタル、芝でもダートでも堅実に走る個性派トーヨーレインボーなどが、このレースでサイレンススズカのライバルと目されていました。
 …………なんかこう、いま改めて並べて見ると、後々の成績を考えればそこまで大したメンバーでもないんですけど、この時点ではこれら全ての馬に未知の魅力、大きな可能性が感じられて、戦前非常にワクワクした組み合わせだったことは間違いありません。
 
 しかし、大混戦という戦前の下馬評とは違い、いざレースが始まってしまえばサイレンススズカの独壇場、一人舞台でした。
 迷いなくハナを切ったサイレンススズカは、淡々と自身のペースを刻み、後続を大きく引き離しての逃げを打ちます。
 3~4コーナーでこの馬なりに息は入れるものの、それでも序盤のリードが大きくコーナーでそこまで差が詰まることもなく、そして直線向いてもう一段階の加速を見せたサイレンススズカの完璧な走りの前には、他の8頭は正になす術もなく敗れ去るしかありませんでした。 

 まぁこれも今の観点で見れば、基本的に後ろのメンバーで2000mのスピード勝負で追走面に担保があったのはトーヨーレインボーくらいのものでしたし、けどこの馬ですらある程度追い掛けたことで最後潰れてしまった、と思えば、あの位置取りの差でも後続に足を使うレースをさせてしまっていた、と解釈できますし、その面で足りない馬、もうちょっと距離が欲しい馬ばかりが揃っていた分のあの着差、というのはあると思います。
 それでも、この時代に前傾ハイペースで逃げて、1,57,8という猛烈な時計を出してくるのは異次元レベルだったのは間違いなく、その本格化が極まった走りは、競馬ファンの大半を震駭させた、と言って過言ではないでしょう。これも後で触れますが、明らかに1800mよりは2000mの方が強かったと思います。

 そして、この圧勝の結果を受けてファン投票の支持も高まり、余勢を駆る感もありながら、サイレンススズカは宝塚記念にエントリーする事になります。
 しかしこのレースでは、今年の快進撃を支えていた最愛のパートナーである武Jにエアグルーヴの先約があり、一戦限りの代打としてベテラン南井Jに白羽の矢が立ちました。

 乗り替わりとなり、春5戦目の過酷なローテーションでも、もはや完成されたサイレンススズカは手の付けられない強さを発揮します。
 スタートから自分のリズムでの逃げはいつも通り、コーナーで後続を引き付けて直線でもう一伸びするレースに徹し、最後の坂で少し鈍って追随を許すものの、それでも金鯱賞より更に華やかで豪華なメンバーを相手に堂々の逃げ切りを果たして見せたのです。
 結果的にこの馬が制したGⅠはこのレースだけ、ということになるのですが、本当に戦歴的にはGⅠ1勝馬、とはとても思えない様々な物語性が付随している馬ですよね。
 ここでも乗り替わり、距離延長を見事克服し、まずは大目標の秋の天皇賞に向けて視界良し、その後の無限の可能性を誰しもに高揚と合わせて想像させる、それだけの牽引力を備えたスターホースに、この段階で完全に昇りつめたといっていいでしょう。

**★毎日王冠~天皇賞・秋 <サラブレッドの理想形、スピードの向こう側へ…………>**

 春の宝塚記念で古馬の一線級を一蹴したサイレンススズカに、この天皇賞の前哨戦となる毎日王冠では、2頭のマル外の怪物が虎視眈々と牙を剥いて待ち構えていました。
 上でもチラッと触れたタイキシャトルなど、この時期はマル外の全盛期とすら言える強豪が犇めいていて、当時は出走制限が大きかったのでレース選択にも不自由さはありました。
 春シーズンを怪我で全休していたグラスワンダーも、春のNHKマイルCを破天荒な競馬で圧勝したエルコンドルパサーも、同期との戦いをスキップして、ここで古馬最強のサイレンススズカを倒すことで現役最強を誇示する事が、その鬱憤晴らしに相応しい――――ファンの視点としても、この挑戦はそんな風なイメージを持ちました。

 実際にこのレースは今でも伝説のGⅡ、伝説の毎日王冠と呼ばれ続けていますが、その主役はどこまでもサイレンススズカでした。
 初めての59kgという酷量を背負いつつ、開幕週の府中の良馬場をすいすいと、いつものペースで逃げていくサイレンススズカに、しかしこのレースでは後続が早めに追いかけて、決して楽はさせないと必死のマークを繰り出してきます。
 4コーナー手前では一気にグラスワンダーが追い上げていってプレッシャーをかけますが、しかしそれすらも涼しい風、直線坂地点で鋭く伸びたサイレンススズカは、しぶとく追撃するエルコンドルパサーを楽に2馬身半退けて、圧巻・盤石の勝利で前哨戦を飾りました。

 個人的に、エルコンドルパサーという馬が実際にどのくらいの距離がべストだったのか、というのは今でも掴み切れていないのですが、それでもマイルGⅠの勝ち馬をスピードで楽々振り切る芸当は本当に凄まじく、この時点ではそれこそマイルから2400mまで対応できるのではないか、と思わせる凄みを全身から立ち昇らせていました。
 このレース後の武Jのコメントなどは本当に滑らかで、中山記念の頃とは全く馬が違う、自信に満ち溢れた雰囲気を醸しており、この時点で誰しもが秋の天皇賞の勝利を疑いませんでした。

 そして、1998年11月1日。第118回天皇賞・秋の開催日は絶好の好天でした。
 今以上に外枠不利だった府中の2000mで、逃げ馬にとっては絶好の1枠1番を引いたサイレンススズカは、当然着順も1であることを誰しもに予感させました。
 レース前の武Jのリップサービスも快調で、オーバーペースで飛ばす宣言など、最初から負ける可能性など微塵も考えていないように見えましたし、他陣営もほとんど最初から白旗状態、頭数も12頭立てと寂しいメンバー構成ではありました。
 今年の宝塚なんかでもそうですけど、戦前から圧倒的に強いと思われる馬がいると少頭数になってしまうのは仕方ない事なんでしょうね。

 周囲の思惑はどうあれ、サイレンススズカは自身にすべきことは、ただ自分のリズムで逃げて押し切るだけ、でした。
 ゲートが切られ、前半は宣言通り、いつも以上に大きく後続を離していて、靄にけぶる府中の中、テレビのレース画面の上の全頭カメラが遠望になり過ぎて、どの馬がどこにいるか判別できないくらいの大逃げでした。
 これはきっと金鯱賞の再来、GⅠ史上の歴史に残る圧倒劇になる――――誰しもがそう信じ切っていた大欅の向こう側で、しかし残酷な運命が牙を剥きます。
 突然ガクッと躓いたサイレンススズカは、そのままゴールすることなく立ち止まり、スタンドがレースの結果そっちのけで静まり返り、注視を集める中で、痛々しい姿を曝しながら馬運車で運ばれていったのです。

 それが、ほとんど全てのファンにとって、サイレンススズカの最後の姿になりました。
 あらゆる夢も、希望も、期待も、全てがスピードの向こう側に溶けて消え去ってしまった――――あの日の虚無感は、当時の競馬ファンなら多かれ少なかれ今でも抱き続けるものであり、この馬の幻影を求め続けてしまう要因になっているのでしょう。
 去年のエイシンヒカリの熱狂などもそういう心理が根底にあると思いますし、時代を、世代を超えて愛される名馬だったことは疑いの余地のない事実だと、改めて振り返ってみてしみじみと感じますね。

**★能力分析**

 この馬の能力を分析するには、レース全体のペースバランスから見た追走力という観点と、競走馬にとっての息を入れる、という状態がどのようなもので、どれくらいの緩みを必要とするのか、という部分を改めて考えてみないとならないと思います。
 一応私なりの定義としては、以前書いた[先行力・追走力について](http://www.plus-blog.sportsnavi.com/clover/article/22)と、[息が入る見極めについて](http://www.plus-blog.sportsnavi.com/clover/article/48)の二つの記事を参照していただければ、と思うのですが、この馬はこの観点において、極限まで高い能力を有していた、と私は考えます。
 加えて、プラスアルファというか第二の武器として、加速力の高さも上げられるでしょう。この辺りの観点で、この馬の3歳時からのレース内容には一定の説明が見出せるかなと感じていますので、細かく見ていきましょう。

 まず、古馬になってからの一連のレースラップを見てみると、武J本人が上手くいかなかったと認めている中山記念以外では、かなり顕著に特徴が出ています。
 全部ここに数字を乗せると煩雑ですので、気になる方は戦績リンクからそれぞれ拾って見比べていただければ、と思いますが、特徴的なのは3点あります。
 
 第一に、前半1000mがほぼ57秒台から遅くても58秒半ばまでで集約している事。
 第二に、後半の早い段階で1~2Fは12秒台前半のラップに落として、おそらくここで息を入れている事。
 第三に、直線の再加速は、ほぼ全て残り400-200m地点が最速になるようにコントロールされている事。

 これを個々に紐解いていくと、まず前半のペースは、この馬の持つ追走力をギリギリまで追及した上での数字、という印象です。
 逃げ馬に対して追走、という言葉を使うとやや据わりが悪いのですが、これは以前に定義した通り、レースバランスの中でどのくらいの前傾までなら後半の持ち味を引き出してこられるか否かの、分水嶺を示す指標です。加えて、絶対的な速度面での限界も同時に見ています。

 私の観測ですと、サイレンススズカの追走面でのベストなバランスは前傾2秒くらいで、おそらくこれが2秒後半か、或いは1000m通過で57秒を切ってくると厳しくなる、というところだと思います。
 レースの距離が違うので完全に決めつけにくいですが、1800m戦は真ん中の1Fを抜いて前後半4F、宝塚記念も真ん中を抜いて前後半5Fで見ていくと、バレンタイン2,6、中山記念3,6、小倉大賞典2,6、金鯱賞1,6、宝塚記念2,6、毎日王冠1,1という前傾数値になります。

 こう見ていくと、1800mですとどうしてもある程度他の馬も速い分、前傾の度合いが上がっていて、その分息を入れるタイミングも難しく、結果的にややオーバーペースになっている感があります。
 それでもバレンタイン・小倉はギリギリの範疇ですが、明らかに前傾が強すぎる中山記念がああも危うかったのも、この観点で見ればはっきりするところかなと考えます。

 そう考えると、金鯱賞がやはりペースバランス的にも、後述する息の入れ方にしてもベストだと思えますね。あれだけ強かった毎日王冠は、馬場が良かったこともあり、実はこの馬にとっては前半のペースが緩かった、という結論になりますし、その分だけ他の馬も追走が楽だった、と考えられます。
 宝塚記念に関しても後述しますが、結論だけ先出しすれば息を入れ過ぎてその分ラップが落ち過ぎた、と見ていいと考えており、あのレースもそれ以外のバランスとしてはほぼ完璧だったのかなと思いますね。

 ともあれ、この馬自身のギリギリの前半の入り方を模索していく中で、そのペースが他の馬にとっては確実にオーバーペースであり、序盤で影を踏む事すらほとんど許さなかったというのが、この馬の最大の強みだったのは間違いないでしょう。
 しかしマイル戦線に入っていくと、それこそキョウエイマーチのようにこの馬よりテンのスピードが速い馬はいないわけではないので、その点相手関係に左右される度合いが大きくなったはずです。
 結果的にあのマイルチャンピオンシップで、オーバーペースで惨敗したからこその中距離専念でしたが、もしもあのレースが常識的に46,5-47,0くらいのペースだったとしたら、あの時期のこの馬でもハナを切れていれば結構戦えてしまっていたはずで、そうなるとその後の路線も変わっていた可能性も否めず、ここは文字通りキョウエイマーチの隠れた功績なんじゃないかと思いました。。。

 古馬で完成されてからなら、逃げる競馬に徹すればマイルでも普通に強かったとは思いますが、マイル戦でだと相対的に前傾1,5秒くらいのペースまでしか許容出来なかったのではないか、と思いますし、息を入れるタイミングも1800m以上に難しくなるので、これほど安定した戦績は残せなかっただろうとは感じます。 

 次いで2つ目の、息の入れ方についてですね。
 この観点はおそらく外野の認識と、乗り役や馬に関わる人の観点では大分差異がありそうで、もし詳しい事がわかる人がいれば教えて欲しいくらいですが、あくまで傍から見た限り、ある程度ラップを落とすことで楽走に持ち込み、その間に息を整えて、勝負所の無呼吸スパートに備えることが可能になる、というイメージです。
 ただこの息を入れるバランス、分水嶺ってのは、おそらく馬の個々の能力にも関係してくるところでしょうし、過去記事ではある程度一定の目安を出していますが、トップクラスの馬になればなるほど、その点でも幅は広く持っている、と見ていいと思います。

 この馬に関しては、古馬になってから息の入れ方をようやくまともに覚えてきた、くらいのコメントが出ていましたし、3歳時のレースは多かれ少なかれ力みを感じるところは確かにありましたので、肉体面・精神面での進境がそれを可能にした、という観点は成立すると思いますし、ラップ的な観点で見れば不可解な負け方の、3歳時の秋天などもそれで説明がつくのかなと感じます。
 とにかくこの馬の凄いところは、レース全体を高速化してしまう中で、序盤1000mは一気に飛ばした上で、自身は概ね12秒ちょっとのラップに1~2F落とせば息がしっかり入り、後半の再加速が可能になるという心肺能力の高さです。

 ただ、この観点でも1800mだと少し忙しいところはあります。
 1000m飛ばして、そこからペースを落とすとすぐに勝負所のラスト600mで、あまり引き付け過ぎると後続に隙を与えてしまうので、どうしても1F~1,5Fくらいしか息を入れられず、それだと後半要素を完璧に引き出すのはやや難しい、というところはあったと感じます。
 バレンタインSなどもラストの落ち幅が大きめですし、小倉大賞典は逆に、中山記念の暴走の後で慎重に、というのもあり、2F息を入れて引き付けてのラスト200mが最速ラップ、というやや変則パターンを刻んでおり、けれどこれが次の金鯱賞の伏線になっています。

 要するに金鯱賞は2000mで小倉大賞典のラップ推移をより研ぎ澄ませて再現した、と言えるでしょう。
 1000mはしっかり飛ばしてリードを作り、そこから2F最低限ラップを落とし、けどそれでしっかり息を入れて、400-200m地点でしっかり加速しこの馬の脚を存分に出し切った結果があの大差勝ちであり、そりゃゴール前でガッツポーズするわ、と思わざるを得ないほどに見事な、この馬の為のベストのラップになっていると思います。

 宝塚記念に関しては、後半5Fが12,5-12,4-12,8-11,2-12,3という推移で、これは前記の条件を加味して考えると、1F息を入れるのが長かったし、そのラップも落とし過ぎた、と見ていいと思います。
 不必要に緩んだ分だけ、後続が3~4コーナーで取りつく余地を与えてしまっているわけで、上でも触れたようにこの馬はスタートダッシュが得意な馬特有の後半の加速力も持っていますので、自身1,6の急加速でもう一度突き放し、そのリードで押し切ることには成功していますが、少し危うさのある騎乗だったのは確かでしょう。

 あくまで理論的には、ですが、2Fしっかり息を入れたなら(厳密には1000-1200m地点も12,1なので、少し落としてはきていますし)、600-400地点の12,8は遅すぎで、ここではもうじわっとペースを引き上げて良かったと思います。
 そうすれば12,0-11,6-12,3くらいで走れたイメージはありますので、それだったらもっと楽に勝っていた計算になります。少なくとも武J継続だったらそういうふうに乗ったんではないかな、と感じますね。

 少なくとも距離延長に関してはあまり不安は感じなくて、2200mなら3F、2400mなら4F12秒ちょっとのラップを踏んでも、易々と後続が押し上げてこられるわけでもないので、JCあたりまでなら同じ乗り方にプラスアルファの工夫でも、距離短縮よりはなんとかなったんじゃないかと個人的には思います。
 むしろこの馬が出てハイペースになった、エルコンドルパサーとスペシャルウィークとエアグルーヴがいるJCとか、どれだけ面白いレースになったかって今更に思っちゃいますね。

 閑話休題、話の流れに戻って毎日王冠に関しては、このレースも息を入れるのは1Fだけに留められていますが、結果的に前半のペースが楽だったことで後半要素を高めてきた、と見てもいいのではないかと思います。
 このレースはラスト3Fが11,6-11,4-12,1という推移で、これまでのサイレンススズカだったら11,6地点でもう最速ラップになっていたと思うのですが、ここからもう一段加速する余地があったのは凄いところです。
 これはある程度後半型の競馬でも戦える可能性を示していて、その意味でも距離延長は噛み合う可能性が高かったと感じるんですよね。逆に1800mでも、高速馬場でない状況でガンガン飛ばす形だと苦しいわけで、やはり完全体として最高の条件を考えるなら良馬場の2000~2200mになってくるのかなと思います。

 これは本当に余談ですが、もしも最後の天皇賞を走り切っていたらどうだったか?は誰しも考えると思うので、この流れでついでに私なりの見解を出しておきます。
 まず前半1000m57,4ですので、これは結構この馬のギリギリを攻めていた感はあります。
 ただしそこから次の1Fは12,1としっかりペースを落とし、息を入れる態勢に入れていたので、それを踏まえればあのペースでも失速する可能性はまずなかったと思います。
 毎日王冠ほどの後半要素は引き出せずとも、後半12,1-12,2-11,8-11,5-12,3くらいなら楽に踏んでこられたと見ますし、それだと1,57,3、前傾2,5とややギリギリですが、この馬のポテンシャルを完全に出し切る競馬になっていたかなと。
 上の動画の最後にも、武Jの2秒は話して勝てた、という逸話に触れていましたが、一連の流れから踏まえた能力分析でも、その体内時計のイメージと合致する数字になったので(このレースの勝ち時計が1,59,3なので)、個人的には凄く説得力を感じますね。

 最後に、これは上の2つの凄さがあればこそのことですが、常に仕掛けどころが遅いという点についてですね。
 これは逃げ馬の宿命として、早めにつつかれると仕掛けを早くしなくてはいけなくて、その分早々に足を使い切って失速してしまう、という逃げ馬特有の大敗メカニズムから、この馬が無縁であった証左とも言えます。

 実のところこの馬も、後半要素の面で言えば一瞬いい脚は使えるけれど、持続力面ではイマイチだったと個人的には思っています。
 それは3歳時のレースにも見えていて、新馬戦は除いて、圧勝した500万戦や、なんとか勝ち切ったプリンシパルSなどは、スローペースではあるのですけど仕掛けが遅く、加速度の高い400-200m地点最速ラップになっていて、これがこの馬の特性に噛み合った結果なのでしょう。
 逆に600-400m地点が最速ラップになっている神戸新聞杯は、油断騎乗的な側面もあるでしょうけど、結果的に仕掛けが速くて失速も早く、その分最後に一気に来られた、と見ると結構納得がいくところがあります。

 3歳時の秋天に関しては、結果的に馬場が良かったのに時計的にはあまり出てないレースの中で、この馬にとってはまだ緩いペースだったことと、ラップ的には落としているけどこの時期はまだ息の入れ方が上手くなかった事、そのせいで持ち味の加速力を直線で引き出せなかった事が複合的に作用しての負けかな、と考えます。

 ともあれ、逃げ馬にとって息の入れ所や仕掛けどころが安定しない、というのは、それだけで成績が安定しない理由に直結します。
 しかしサイレンススズカは、序盤にペースを引き上げて大きなリードを作っても大丈夫、という特性を生かし、息を入れるタイミングや仕掛けどころまでも自分の思い通りに紡げたわけで、息が入ればあのペースから差し馬並の切れ味を引き出せるのですからそれは鬼に金棒、武Jがサラブレッドの理想形と口にした気持ちもさもあらん、というところですね。

**★終わりに**

 以上、サイレンススズカの事績と、その能力、強さの秘密を私なりに探ってみましたが、いかがでしたでしょうか?
 勿論私もずっと規格外の馬、というイメージは持ち続けてきましたが、こうしてきちんと分析して見ると改めてこの馬の強さに身震いしますし、けれどそれを完璧に引き出せる騎手との出会いも大切なんだよなぁ、とも思わせられます。
 しっかりペース判断が出来て、かつ馬自身のギリギリのバランスを強気に渡っていける全盛期の武Jでなければ、ここまで記憶に鮮烈に遺る名馬にはならなかった、とは痛切に思います。

 今現在、距離適性は違えどキタサンの春天などはそういう部類、序盤からペースを引き上げ、息を入れるのも最低限で、それでも後半要素をしっかり引き出せる強さを見せており、それを踏まえるとあの春天後のレースコメントも一段と深みを感じます。
 流石にキタサンはスズカほど追走力の分水嶺が高くはないと思うので、それが遺憾なく生かせるとしたら2400m以上にはなってくるでしょう。
 去年の宝塚が2200mでハイペース、それでラストやや甘くなる競馬だったので、今年はどのくらいのバランスで入ってくるのか、勝ち負けもそうですが、理想の逃げ・先行馬の階に足をかけていると思えるところでのレースプランには大いに興味が湧きますね。

 その上で、今現在も個々にはそれなりにハイペース耐性の高い馬は結構潜在的にいるとは思います。
 だけどどうしてもスローペース症候群が蔓延する中で、馬自身の理想のペースバランスを強気に追いかけていけるだけの乗り役がいなくなってきてしまっている、とは感じるところで、一時強いハイペース逃げを見せた馬でも、その後のレースプランにそれを生かせていない状況などを見るともどかしくは思います。
 勿論そうやって極限までスピードを追求するのが、競走馬の競争生命に対していいことなのか、というのは、サイレンススズカの最期を鑑みてもあまり無邪気に推奨できる事ではないかもしれませんが、しかしそれを全うして大成する可能性があるなら、とは考えてしまいますね。
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2017 関東オークス レース回顧

 今年の関東オークスは、外枠からスムーズに追走した人気のクイーンマンボがコーナーで早々と抜け出し、余裕綽々に押し切りました。レースを振り返りましょう。

 馬場は重のままで、他のレースを見てもほとんど遅い時計ばかり、速いラップも踏めても1F程度という状態でした。
 レース展開は、ややバラッとしたスタートから、内のイントゥザゾーンが好スタートを決めるも、それをすぐ外から出鞭を打ってアップトゥユーが交わしていきます。
 人気のクイーンマンボもまずまずのスタートからじわっと先団に取りついていき、アンジュデジールもスッと前目に入っていきます。
 一方サクレエクスプレスとアポロユッキーは大きく出遅れ、序盤は後方からの競馬を余儀なくされました。

 ラップはざっくり3,5-3-4Fで取ってしまいますが、45,6(13,03)-42,5(14,17)-50,9(12,72)=2,19,0(13,23)という推移でした。
 最序盤もそこそこ流れたのですが、これは出鞭を使って出していったアップトゥユーが、7,1-10,5-13,6という暴走気味のスタートダッシュを決めた分でもあり、そこまで敢然と逃げを打った割に道中のペースは中緩み顕著ではっきりスロー、というのが、微妙にバランスが悪いなぁと感じるところではあります。

 ともあれ二番手以降は、13,6と緩んだ地点からじわじわ差を詰めて、結果的に一周目のスタンド前では先団は団子気味で、人気のクイーンもそこで無理はせずにじわっと三番手の外まで上げていった時点で安心して見ていられた感はあります。
 レース的には完全に向こう正面からの4F戦の様相が強く、ダートとしては破格のスローペースの中、ラスト5Fは14,7-12,4-12,8-13,1-12,6という推移です。
 向こう正面に入ったところでまず一気に2,3秒の加速があり、そこでしっかり勢いをつけて押し上げていった馬が最終的には上位にそのまま残っていて、かつ勝ったクイーンマンボだけ、直線で再加速する余力を残していたレース、と見ていいでしょう。

 クイーンマンボは今回はスムーズなレース運びでしたし、後はやっぱりスローペースの方がいいのかもしれないなぁ、とは思いました。
 前走は鞍上も違いますし、コースの周りも違うので比較は難しいですけど、今日は外目を通していたとはいえ、12,8-13,1の、川崎としてはかなり速い勝負所の3~4コーナーのラップの中で、しっかり外から押し上げてアップトゥユーの機動力を上回ってきていました。
 ここから見ても、前走の敗因はハイペースで要所の機動力、鋭さを削がれた、と見る方が無難かなと感じましたし、この感じですと距離はある程度あった方が成績的にも安定してくる感じはありますね。

 となると、やっぱりJDDは使ってみて欲しいですねぇ。
 このレースも序盤はともかく、基本ずっと流れっぱなしにはなりづらいですし、コーナーで緩んでの再加速率が高いので、今日の競馬が出来るならば牡馬相手でも面白いと感じます。特に今年は牡馬勢がやや小粒な印象もありますしね。

 2着のアンジュデジールは、素質の差でなんとかしちゃったか、というイメージですね。
 基本的にここまでスピードをコントロールしてのレースははじめてだったでしょうけど、それでもそんなに折り合いに苦慮することなく、しっかりクイーンマークで進められていましたし、要所での反応も悪くなく、直線まで追撃態勢は作れていました。
 最後に加速する余力がなかったのはやはり純粋にスタミナ面もあるのかな、と思いますし、この馬自身これまでのレースで器用に再加速を問われる展開に出くわしていませんでしたので、その中ではしっかり粘り切ったほうと考えてもいいと思います。

 でもこの馬の適正はマイル近辺に落ち着きそうですし、交流重賞牝馬路線を選ぶと、去年のタイニーダンサー的なイマイチなレースを積み重ねる懸念もあるので、どちらかと言えば中央で、レパードSあたりで距離の融通がどこまで効くか見てみたい印象を持ちました。
 追走力的には1200~1400mでもやれそうな雰囲気もありますし、色々可能性を限定せず試していって欲しいですね。

 3着のステップオブダンスは、今回は正直アップが序盤暴走気味に脚を使ったのもありますし、その中で最内からじっくり脚を溜められた、要所で外の中央勢が動いてくれたので進路取りも楽だったなど、プラスの面は大きかったと思います。
 それでも最後までしぶとく粘り込んでの3着はまず立派と思いますし、もうワンランク力をつけてくれば、今の手薄な交流重賞路線なら楽しみが持てるかもしれません。惜しくも早々引退してしまったリンダリンダの後継の出現も期待したいので、今後もしっかり見ていきたいですね。

 4着アポロユッキーは、最後しぶとく伸びているあたり、距離延長自体は苦にしなかったと思いますが、どうしてもあの出負けとダッシュのつかなささを考えると、小回りコースではここまでが限界かもしれないなと感じさせます。
 勿論今日はかなりのスローでしたので、もう少し前傾で流れてくれれば違うかもですが、正直今後めきめきと頭角を現すビジョンは持てないレースぶりではあったかなと感じました。

 5着アップトゥユーは、正直変な逃げ方してしまったなぁ、と思います。
 最初からなにがなんでも、という気持ちがあったのに対しやや伸び上がったスタート、そしてイントゥがかなり速かったので泡を食って出鞭を入れて、というふうに見えましたが、それにしても10,5はやりすぎだなぁと。むしろこの馬場でこんなラップ踏めるんだ、とそちらの方に驚きました。
 とまれ、ある程度毅然とリードを作っておいて、それをすぐ超スローに落として使い切るというのはなんとも理に適ってない気はしましたし、結局そのペースでクイーンとアンジュは楽をしていた分、要所の追撃が早く厳しくなってしまったのはあると思います。もう少し淡々と平均で作って欲しかったなぁと思いますね。
 それでも交わされてからバタッとしていないあたり、すごく根性はあって前向きな馬だなぁと思いますし、前走の大井のレースは本当に面白かったので、来年のTCK女王杯あたりに出てきたら面白さはありそうです。

 6着サクレエクスプレスも出遅れが厳しかったですね。
 ある程度スタンド前からじわじわ上げていくイメージはあったと思いますが、このペースの中で思い切りよく動くでもなく、なし崩しに脚を使ってしまった感もあり、武Jの割には中途半端さが目立つ気はしました。
 とはいえ馬自身それでアポロあたりに完敗しているのでなんとも、ですし、もうすこし全体のペースが上がってこそ、という好走スポットが狭いタイプになっていく可能性はちょっと感じましたね。
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2017 6月第2週新馬戦 レース回顧

**★6/10(土) 東京5R 芝1400m戦**

 中々血統面や厩舎的に面白い馬が揃ったレースになりましたが、勝ったのは大外を突き抜けた4番人気のプレトリアでした。
 レースは序盤からそこそこ先行争いでごった返す形になり、人気の一角ファストアプローチはその中に入っていく形で、マイネルキャドーはそれをマークしつつ先団の後ろを追走します。
 人気のレピアーウィットは内枠のスタートから一度下げて、中団やや後ろから徐々に外目に持ち出して進出、プレトリアも同じような位置から馬体を合わせ、2頭でかなり大きく馬群の外を通して押し上げていく形になりました。

 レースラップは36,4(12,13)-12,4-34,8(11,6)=1,23,6(11,94)という推移でした。
 時計面では地味ですが、土曜は日曜よりは少し重かったと見ていて、その中で完全な後半3F戦になっているので、全体時計はあまり気にしなくてもいいでしょう。
 コーナー地点が12,4とまだかなり緩く、出口から11,6と加速する流れなので、見るからに大外をぶんまわしていた2頭にもさほど大きなラップ上のロスはなく(コーナー地点の自身走破が12,0くらいと、レース全体の流れに対して無理に速い脚を使っているわけではないので)、直線もラップ的には11,6-11,4-11,8とあまり波はないですが、上位の馬は11,4の坂地点でしっかり前との差を詰めています。
 その点から見ても、しっかり勢いをつけて入ってきたのがプラスになる面も多かったレースですし、要所の反応の良さ、切れ味の質の差で決着したレースかなと考えます。

 勝ったプレトリアは、枠なりのレースで超外々でしたが、それでも最後までしぶとく脚を伸ばしてきましたね。
 高速巧者のヨハネスブルグ産駒ですので、馬場のいいところを選べたのはプラスだったと思いますし、坂地点で自身11,0前後の脚は使っていて、そこの切れ味の差でレピアーには勝てた、という印象です。
 ラストは11,8とやや落としていますが、この週の府中は全体的にラストが落ち込む傾向でしたので極端に悪いほどでもなく、すぐ上位条件で勝ち負け、とは思いませんが、綺麗な馬場で出し切れる展開、枠になれば再度注目できそうかなと思います。

 しかし母の母ダイワルージュが懐かしい…………。サンデー×スカブーの超良血で阪神3歳牝馬Sから桜花賞あたりまでは強い馬だったのになぁ、と思いつつ、しかし改めてあのテイエムオーシャンの勝った桜花賞の結果を見ると、このレースその後にまともに活躍した馬が皆無に近いですね。。。
 ゴルシの母のポイントフラッグとか、ダートで活躍したネームヴァリューくらいしかイメージが浮かぶ馬もいないですし、それでも良血は代を経てしっかり根付き、開花してくるところはあるなぁと思わせるいい切れ味でした。

 2着のレピアーウィットは、あのアジアエクスプレスの全弟という事で人気を集めました。そう言えばアジアエクスプレス最近全く見ないですけどどうしてるんでしょうね?
 金子オーナーは最近こういうダート血統の高馬をセリで買ってる印象が結構あり、或いはそのあたりいずれの世界戦略も見越して、というのはあるのかもしれません。ヘニーヒューズの仔といえばアメリカではビホルダーが有名ですし、アジアも基本的に前傾のタフな競馬に強い馬でしたからね。

 その意味では新馬戦らしいスローからの3F戦はこの馬の土俵ではなかった、という見方も出来ますし、内枠から外に持っていって、という段取りもあったので評価が難しいところです。
 イメージ的には切れ負けなので、もう少し距離があるところで追走面・ポジショニングを上げてこないと、芝では大成できるかは難しいところで、北海道開催の1800m戦で外枠とかならとりあえず未勝利レベルなら勝ち負けになるでしょうが、兄同様に芝で2歳チャンピオン、というレベルにまでなるには、馬場やレースの流れに恵まれてこないとなぁとは思います。
 いずれはダート戦も使ってきそうですし、どこに最高の適性があるかじっくり見ていきたいですね。

 3着マイネルキャドーは道中も直線も馬群の中で、最後も馬場の悪いインをついて良く伸びてきました。
 ファストの後ろでじっと我慢していて、前が空いてからの一瞬の反応は中々に目を瞠るものがあり、この馬は非常に器用だな、と感じました。
 レース慣れしてくればマイネル軍団らしくポジショニングにも進境を見せてくるでしょうし、大成する感じはないですが、未勝利クラスならスッと勝ち上がれそうなイメージがあります。

 4着ファストアプローチは、ドーンアプローチに母父マルジュとかいかにも重そうで、日本の芝1400mを走るイメージの血統ではないですよね。
 レースではスッと前目を取るセンスの良さは見せたものの、直線は中々綺麗に進路を確保できず、外に持ち出すタイミングを待っている内に大外から2頭に交わされ、内からもマイネルに出し抜かれた感じで、展開的に勿体ない部分はあれど、即座の反応や切れ味の面では少し物足りなかったのかなと思います。

 父ドーンアプローチは、ギニーを取りこぼしたものの英ダービーは完勝したその父ニューアプローチと違い、2000ギニーまでは無敗でくるも、英ダービーでは母父フォーントリックという短距離血統が仇と出て惨敗、結果的にマイル戦に特化した馬でした。
 それにマルジュと言えばサトノクラウンの父でもあり、しかしこの馬が活躍する前に輸入されている計算になりますから、いずれサンデー系列の種牡馬の花嫁に、という算段での持ち込み馬だったのでしょうね。その点でやはり先見の明は感じます。

 なのでこの辺りの距離からおろすのは間違いではないのかもですが、安定して上位に来るには、常に自分でレースを作って厳しめの展開に持ち込むくらいの気概が乗り役にないと、常に切れ味の差でやられるパターンに陥る可能性があるかもしれません。
 この馬もさしあたっては北海道シリーズで、となるでしょうか。面白い血統ではあるのでこの馬が日本の馬場でどこまでやれるかは楽しみです。


**★6/10(土) 阪神5R 芝1400m戦**

 相変わらずの高速馬場だった阪神では、ダイワメジャー産駒のアマルフィコーストが素晴らしいレースセンスを見せて勝ちあがりました。

 スタートは外のビックウェーブとアオラニの方がよく、ただ2頭ともに積極的ではない中、枠の差を利してこの馬がじわっとハナを取り切る形になります。
 しかし道中はずっとほぼ真横に馬を置く形で、中々新馬戦としてはプレッシャーのかかる並びでした。
 その後ろに3着ステラローザや4着で圧倒的な人気のグランデミノルがつけ、2着に差し込んだスカーレットカラーは中団の中目を追走し、このあたりまで馬群が凝縮する展開でした。

 ラップは35,0(11,67)-11,9-35,2(11,73)=1,22,1(11,72)という推移で、綺麗な平均ペースになっています。
 それでも先週の超前傾のレースと0,2秒差ですから、バランスを加味すればこちらの方が良質かなと思います。
 またこのレースのポイントは後半の、11,9-11,2-12,1というラップに見事に表現されており、レース映像を見て一目瞭然のように、コーナーから直線での11,9-11,2地点での加速力の違いで勝ち馬が突き抜けたレースになっていますね。

 勝ったアマルフィコーストは、いかにもダイワメジャーの良質なスピードタイプ、という感じですね。
 前半から平均でコントロールしつつ、要所でしっかり一脚を使ってくる競馬は、メジャーエンブレムやレーヌミノルなんかも持ち合わせていた資質で、ダイワメジャー産駒が得意とする競馬だと思っています。

 この馬もまだ新馬なのでなんともですが、とにかく要所での反応の鋭さで他の馬を一蹴していますし、ただラストは12,1と少し落としてはいます。
 より上位のメンバーになってくると、このあたりで持続力の差に苦しむ可能性は出てきますし、ペースを落としてしまうと後半要素で足りない、というところが出てくる可能性は血統的にはかなりありそうなので、出来れば今後もある程度自分でややハイ~平均にレースをコントロールする意識を持ち続けて欲しい馬ですね。
 あれだけ横に入られて怯むところもなく、競馬センスはかなり高いと思いますし、マイル近辺までは楽しめそうな一頭ですね。

 2着のスカーレットカラーは、ちょっとこの距離だとスピード負けしたかな、という感じですね。
 最速地点のコーナー出口で外目を通しているわけですし、それでもラスト1Fは2馬身くらいは詰めて自身11,7くらいできていると思うので、持続面では勝ち馬より評価できます。この馬はマイル~1800mが現状は一番噛み合うのではないかと思いますし、広いコースで出し切る競馬が出来ればすぐに順番は回ってくるでしょう。

 それ以下の馬はちょっと能力や適性的に足りなかった印象ですかね。
 人気のグランデなんかはエンパイアメーカーの仔で、要所で勝ちに行くも甘くなっているので、もう少し全体的にタフな流れになるかしないと厳しいのかなと感じます。正直ダートの方が強そうな気もします。

**★6/11(日) 東京5R 芝1800m戦**

 土曜の新馬に引き続き、金子オーナー×堀厩舎の血統馬が登場し、こちらは人気に応えてディープ×アパパネといういかにもな金子配合のジナンボーが完勝しました。

 馬場的には少し時計面では土曜より回復、その分内はより荒れてきているというイメージの日曜でしたが、このレースも例外になく大半の馬が外目を通す展開になっています。
 ジナンボーは逃げ馬を前に置きつつ、横のスペースを空けて二番手の外目を追走、これはこの日のメインのアストラと同じ乗り方をデムーロJがしていましたね。
 そこでやや折り合いでギリギリの雰囲気を見せるも我慢、2着のダンシングチコは先団の中目に入りこみ、3着ジェネラルシップは中団外目を追走する形でした。

 ラップは37,2(12,4)-37,9(12,63)-34,8(11,6)=1,49,9(12,21)という推移でした。
 いかにも新馬の中距離戦らしく、序盤中盤がかなりゆったり流れて後半3F勝負、細かく見ると残り1000mから12,9-12,1-11,2-11,4-12,2と段階的に加速しつつ、エプソムカップの回顧でも触れたように先行馬が馬場のいいところを選ぶために仕掛け自体はやや速くなってコーナー出口が最速、そこからの持続力戦になっていると見ていいと思います。

 勝ったジナンボーは、いかにも素質馬らしい荒削りさを残しつつ、それでもしっかり結果を残してきたのはいいと思います。
 ただこの日の馬場で、ほとんど追わずに完勝、という事を加味しても、全体時計はともかく後半3Fの時計はそこまで目立つものではなくて、贅沢を言うなら要所の最速地点で11,0を切るくらいの脚を見せるか、持続面でラスト12,0を切るか、くらいの要素が欲しかったなとは感じます。
 もっとも明らかにまだ仕上がり途上という雰囲気でしたし、こういう血統馬は二戦目でガラッと変わってくる事も多いので注目の一頭には変わりありませんが、着差ほどレース内容には高い評価は出来ないかな、とは考えています。

 母がアパパネという事は、その母血統がソルティビットでバリバリの短距離志向でもあり、1800m戦で使ってきたという事は後々ダービーを意識して、ではあるでしょうが、どこかで距離の限界は出てきそうな雰囲気ですね。
 少なくとも若駒の内は折り合い面の育て方に気を使うことになるでしょうし、その意味で枠の並びや展開次第で甘くなるパターンも頭に置きつつ、先を楽しみに待ちましょう。

 2、3着馬は結果的にコーナーで通したところの差、動き出しのタイミングの差もあったかな、という感じで、悪い競馬ではないですがジナンボーの位置でも上がりとしてはそんなに非凡でない中で、それと同等かやや見劣る結果ではあるので、次にポンと勝てるか、となると微妙な気はします。
 2着馬のほうが器用さはありそうですので小回りコースでも、と思いますが、3着馬はいかにもルーラーの仔らしい不器用さも感じさせたので、馬場や展開は選びそうですかね。

**★6/11(日) 東京6R 牝馬限定芝1600m戦**

 後の桜花賞へと夢を繋げる府中マイルでの牝馬限定新馬戦は、ホーリーレジェンドが外目をスムーズに回して進出、逃げたリープフラウミルヒとの叩き合いを制して嬉しいデビュー価値を飾りました。

 馬場は上のレースの見解同様で、このレースの展開は総じて外枠の馬の方がスタートが良く、外主導でレースが作られていきます。
 勝ったホーリーは先団の後ろで外に出してスムーズな追走、2着馬は大外から淡々とした逃げを打ち、3、4着馬で出負け、もしくはスタートダッシュがつかずに後方インでのレースを余儀なくされます。

 ラップは37,7(12,67)-25,1(12,55)-34,0(11,37)=1,36,8(12,1)という推移でした。
 こちらは牝馬戦らしくなおもペース遅く、かつ後半も12,6-11,3-10,9-11,8と、一気に加速を問われる中でも本仕掛けは直線まで待たれていて、この日の馬場だとこのパターンの方が珍しかったので、そこも含めて牝馬戦らしい、と言えるでしょう。
 ほぼほぼ後半3Fでの後半要素の勝負で、加速力と瞬発力の質がより強く問われ、持続力面でもそれなりのものがないと上位には食い込めない展開だったと思います。

 勝ったホーリーレジェンドは、上手く中団の外目から早めに前を射程に捉えに行く、内田Jらしい強気の競馬が噛み合った印象ですね。
 アメリカ二冠馬のアイルハヴアナザーに母父バブルガムフェローとか、いかにも切れ味なさそうな印象なんですが(笑)、このレースではしっかり緩い地点で仕掛け始めたことで加速地点でも最速地点でも置かれずに抵抗できていました。
 逃げた2着馬もしぶとかったですが、最後は根性で捻じ伏せるような勝ち方で、後半要素は中々面白いものを見せてくれたと思います。おそらく器用さでは2着馬に負けると思うので、今後もこんな風にある程度出し切る競馬をしていきたいですし、血統的にはもう少し流れてタフなレースになっても対応してきそうで楽しみはありますね。

 2着のリープフラウミルヒ(名前呼びづらいっ!)も勝ちに等しい競馬でしたね。
 今日は前半がかなり緩く、内目の馬のスタートが軒並み悪かったことでスッと先手を取れましたが、今後流れが速くなってもポジショニングの上手さを見せられるかはポイントになってくると思います。
 後半要素としては加速力に切れ味は中々で、この辺は母父クロフネっぽいイメージですね。持続面でもステイの仔らしく面白さはありましたし、ペースが上がってもやれるようなら楽しみは増してくると思います。

 3、4着馬はスタートからの立ち回りの不器用さが明暗を分けた感じでしょうか。
 3着馬はこのペースでもダッシュがつかず、五分のスタートなのに置かれてしまっていましたし、4着馬は大きく出遅れました。そのリカバーにインの馬場の悪いところを通さざるを得なかったですし、ポジショニング勝負の面が強いレースだったのでこれは仕方ないでしょう。
 ラストの持続力面では2頭ともそこそこの水準にあると感じましたので、前半要素に改善が見られれば勝ち上がるのはそんなに難しくないかなと思います。

**★6/11(日) 阪神5R 芝1200m戦**

 いかにも初戦向きの短距離血統の馬が出揃った感のあるスプリントの新馬戦は、アイアンクローがそつのない競馬と1枚上のスケール感を見せて勝ち抜けました。

 日曜の阪神も高速馬場には変わりなく、その中での1,10,3自体は、前日の1400m戦の1200m通過が1,10,0だったことを踏まえても、あまり高くは評価できませんかね。
 展開は最内の2着馬ナムラバンザイが逃げて、それをクリノとブルベアが追いかける展開で、その外に1番人気の3着馬コーディエライトがつけました。
 中盤でブルベアが気の悪さを見せたかズルズル下がっていく中で、先団の直後にいたアイアンクローはスッと内に潜り込み、じわじわとポケットまで押し上げていく競馬を選択しています。

 ラップは35,6(11,87)-34,7(11,57)=1,10,3(11,72)という推移で、やや後半勝負の色合いが濃いレースになっています。
 後半4Fが11,7-11,5-11,3-11,9とじわじわ加速する競馬で、それを外から追い掛けた馬が苦しくなる中で、インを上手く立ち回った2頭が上位に残ったイメージでいいと思います。

 勝ったアイアンクローはスタートもレース内容もそつなく、いかにも福永Jらしい乗り方でしたね。枠の差はあれ、通したところは先週のケイアイノーテックとほぼ同じようなところですしね。
 ある程度緩い地点でポジションをフォローしつつ、コーナーでの仕掛けではじっと我慢して、ナムラの出し抜きにも慌てずしっかりラストまで自分の脚を引き出してきました。
 この感じですと自身は上がり11,5-11,3-11,5くらいのイメージで、切れ味は感じませんでしたが持続力はそこそこあるので、もう少し距離が伸びても戦えると思います。

 父アドマイヤムーンに母父グラスワンダーとはなんとも趣きがある血統だなぁ、という感じで、ムーンのスピード、高速巧者ぶりに、ロベルト系の爆発力が備わっているなら面白い馬になっていけるかもしれません。
 現状スプリント戦でもっとゴリゴリ流れたらどうかな?とは思うので、まずは1400m、1600mに距離を伸ばして色々試して欲しいですかね。

 2着馬はいかにも初戦が勝負!というヨハネスブルグ産駒のスピード馬で、しっかり逃げて自分の持ち味を引き出せたとは思います。
 正直このペースでは、このタイプには流れが遅すぎた可能性もあり、スタートセンスも悪くはなさそうなので、一度ガンガン飛ばす競馬もやってみて欲しいですね。序盤の追走面で余裕があれば、より後続の脚を削ぐ競馬が出来るでしょうし、かつ要所で一脚を常に引き出せるならスプリント路線でそこそこ楽しめる馬になれるかもしれないな、という印象です。
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2017 6月第2週海外主要GⅠレース レース回顧

**★ベルモントS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=TlXLiD6M8iE)**

 元々エピカリスが出ていたら、この時間に単独記事にしようと思っていたのですが、無念の出走取り消しとなってしまいましたので、他の海外レースとまとめての紹介にします。
 
 まず展開ですが、スタートが良かったのはアイリッシュウォークライにミーンタイム、そして内からタップリットも出が良く、アイリッシュウォークライが逃げてミーンタイムが番手外、タップリットが二列目ポケット、という隊列が形成されます。
 ゴームリーもそのすぐ外で虎視眈々、ルッキンアットリーはいつも通りに後方で前が潰れるのを待つ構えでした。

 ラップは23,88-24,72-25,35-24,94-25,15-25,92=2,30,02という推移になっています。
 一応見ての通りに前傾ラップではありますが、アメリカ競馬にしては前半は遅い方で馬群も凝縮、ラスト1マイルくらいはハロン12,5~7くらいを淡々と刻む競馬になっていて、ラストだけちょっと消耗、という見立てでいいのではないかと思います。
 時計的にも近年は2分30秒を超えるのも珍しくないレースとはいえ、やはりこの展開でほぼ前に行った2頭決着でもあるので、レベルが高かったとは流石に言えない一戦だと思いますね。

 無論勝ったタップリットは、ペースが遅くなったのも含めてポジショニングを上手く出来たのが勝因だと思いますし、アイリッシュウォークライに関してもスムーズならこれくらいはやれる、後は適距離を求めて、という事になるでしょう。
 パッチも前走大外からしぶとく粘っていたのは伊達ではなく、ここでも外々の苦しい競馬ながらゴームリーを最後捉えてきたのは立派だと思います。

 ゴームリーは人気の一角として勝ちに行く競馬はしていましたし、あれで負けるのはやはり実力面でまだちょっと足りない、という事だと思います。
 ルッキンアットリーは展開も向きませんでしたし、改めて三冠皆勤の厳しさを突き付ける結果でもあったでしょう。これからは益々三冠皆勤する馬は減っていく傾向にあるでしょうね。
 ある意味ではアメリカンファラオの出現で、一時期の三冠馬待望ブームがやや下火になり、その分馬本位のローテーションを組みやすくなった、と言えるかもしれません。

 それにしてもつくづく、エピカリスの回避は残念でしたね。
 経緯を見るに色々とどうなの?と思う向きもありますが、どうあれ先のある馬なのでここで無理せずにしっかり立て直して、改めて国内で雄姿を見せつけて欲しいですね。その上で、改めて来年のBCなどに参戦、とでもなれば夢があると思います。
 しかしこの馬が回避しても5億売れるって中々に衝撃的ですよね。これからは益々海外の主要なレースに対する、日本馬の招致合戦が熱を帯びるのではないかと思わせる結果でした。

 ちなみに、このレースはJRA公式でもレース映像見られるのにわざわざリンクを貼ったのは、すぐ傍に伝説のセクレタリアトのベルモントSと、一昨年のアメリカンファラオのベルモントSのレース映像が並んでいたので、お時間があればぜひ見て欲しいな、と思いまして。
 今見てもセクレタリアトの31馬身差、超激流からの2,24,0とか有り得ないレースになっていますし、アメリカンファラオもそれに比べれば流石に、となってしまうものの、それでも近年では破格の2,26,65での逃げ切りは、流石三冠馬になる馬はまるで物が違う、と思わせます。
 この馬は本当にもう一年走って欲しかったですね。アロゲートとどっちが強かったかはすごく興味があります。去年のBCならカリクロも健在でしたし、それはもう凄いレースになったでしょうに。

**★オグデンフィップスS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=rvbOfsUduOE)**

 個人的にはこちらの方が興味津々だった、去年の最優秀3歳牝馬、ソングバードの待望の復帰戦です。
 いつものように好スタートからハナを切り、淡々としたペースを刻んでいく中、4コーナーで2着馬に内を掬われて一度2番手に下がるものの、直線ではそれを鞭を使わずに楽に差し返して完勝を収めました。

 ただ、正直パフォーマンスとしては高くはなかったですね。
 この時期のベルモントパークは芝ダートともにかなり高速状態になるので、その中で1,42,24という時計はかなり遅く、最序盤からのラップも23,99-23,33-23,98-24,45-6,48(ここは0,5Fです)という緩めの推移で、次に触れる3歳牝馬限定のエイコーンSでも1,35,37を計時していると思えば物足りません。
 去年の絶頂期は本当にもっと弾むようなフットワークをしていたと思いますし、BCディスタフから半年ぶり、ということで立て直しに苦労した感もあり、まだ仕上がり途上なのは間違いなかったでしょう。

 それでもまずは無事に復帰して、しっかり勝ち上がったことは大切です。
 今年の古馬牝馬戦線は、この馬とステラウインドが二枚看板という形になっていくでしょう。あちらも先週、記事にはしませんでしたけど3頭立ての名称新設ビホルダーマイル(アメリカはすぐに名馬の名前をレースに取り入れますよね)を完勝していますし、改めての激突が楽しみです。

 牡馬挑戦にも期待したい馬ではあるのですが、アメリカは牝馬路線が充実していますし、賞金体系もそんなに遜色がないので中々難しいですかね。ましてや、その路線を貫いていった先にぶつかるのが怪物アロゲートとなれば、無理をさせる理由もないのかもしれません。
 ゼニヤッタあたりがBCクラシックで牡馬に挑戦していたのは、そもそもAWだったり、牡馬全体のレベルが低い時期でもあったと思うので、その辺はもし果敢に挑戦してくれるなら喝采、というくらいの期待に留めておこうと思います。

**★エイコーンS [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=oyjUuUmvb_U)**

 こちらはケンタッキーオークスを制したアベルタスマンが登場しました。
 いつもながらに最序盤では全くついていけずに強烈なポツンを披露してくれますが、レース中盤手前からじわじわっと前との差を詰め、コーナーでは器用に馬群の間を縫っていつの間にか最内から先頭に立つという離れ業を見せて、そのまま悠々押し切りました。

 正直アメリカでは珍しい追い込みタイプで、その割に戦績は安定しているのですが、サンタアニタオークスのように勝ち馬にスピードで圧倒されたり、多頭数のレースになると厳しさは出てくるわけで、今回はマイル短縮がどうかな?と思っていました。
 ただレース自体はそこそこ流れて、23,32-23,47-24,56-24,01=1,35,37という推移の中、前が苦しくなった24,56の地点でしっかり差を詰めて、立ち回りも完璧でしたし、ここまで綺麗にブレーキせず走れればそれは強いだろう、という感じのレースでしたね。

 絶対にいつもこう上手くいくとは思えないですので、ちょくちょく取りこぼしはすると思いますけど、レベルの高い相手にタフなレースになった時は当然怖さが増してくるので、それこそ上記のソングvsステラで前がやり合った時に、この馬が後方から漁夫の利を、なんて可能性も感じさせる馬ですね。ぜひBCディスタフあたりまでしっかり成長していって欲しいものです。

**★メトロポリタンハンデキャップ [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=ok8DwWnP2bU)**

 こちらはメンバー構成的には地味なレースでしたかね。
 勝ち馬モースピリットは去年ケンタッキーダービーで惨敗してから長く休養し、今年からマイル近辺に距離を絞って連勝中、2着馬シャープアステカは元々短めの距離で活躍していて、前走ゴドルフィンマイルでも3着という実績のある馬で、この2頭がスタートから直線入り口まで先頭2番手でマッチレースを繰り広げました。
 最後はモースピリットが大きく突き放しての完勝で、ラップ推移が23,20-22,85-24,05-23,61=1,33,71となっており、アメリカ競馬としては珍しく、ラストで多少なり加速してゴールしているのが特徴的です。それ故にこそ後続が千切られた、とも言えます。

 ただ馬場差がどうか、今年は全体的にやや重かったかもしれないというのはあれ、去年はフロステッドが1,32,73という猛時計で圧勝、近年はその他も大体33秒台前半に入ってくるレースですので、特別にレベルが高いという事はないのでしょう。それでもBCダートマイル路線で楽しみな馬になると思います。
 あと面白いのは、比較的このレースベルモントSの勝ち馬や連対馬が活躍してるんですよね。この辺は距離というより、大箱のコースで器用さを問われない方が噛み合う馬、というところなんでしょうか。いわゆる府中2400mで強い馬が、府中ならマイルでも、といってヴィクトリアマイルに出てくるようなイメージで、それが噛み合う舞台なんでしょうね。
 
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2017 マーメイドS・エプソムC レース回顧

**★マーメイドS**

 初夏に牝馬が躍る伝統の一戦マーメイドSは、好位から積極的に仕掛けて早め先頭のマキシマムドパリが、そのまま後続を振り切って重賞2勝目を挙げました。レースを振り返りましょう。

 まず馬場状態ですが、昨日に引き続き絶好の高速馬場でしたね。
 8Rの500万下が34,4-11,4-34,9と前傾の流れで1,20,7、1000万下2200mの三田特別も、ややスローの流れからの5Fロンスパ戦で2,11,4とかなりの好時計になっていて、その視座で言うとこのレースの1,59,5はやや平凡、と見ていいのではないかと思います。

 展開は、まず予想通りにプリメラアスールが逃げを打ち、そこに外からショウナンバーキンが絡んでいくも二番手までになります。
 トーセンも好スタートを切って番手を取るかポケットを取るか、というところに、外から珍しく好スタートを決めたマキシマムドパリが上がってきて三番手、必然的にトーセンをポケットに押し込める競馬になります。
 そのすぐ後ろにクインズミラーグロ、そのやや内にアースライズ、ビッシュも思いの外積極的に外から中団まで入ってきます。
 軽斤量の伏兵勢は軒並み後方から、という隊列になり、淡々としたペースが刻まれました。

 ラップは36,0(12,0)-48,5(12,12)-35,0(11,67)=1,59,5(11,95)という推移でした。
 ショウナンが競りかけたとはいえ、ほぼ予想通りに前半はスローに落ち着き、ハーフだと60,6-58,9という流れになっています。
 ただ、先行していったマキシマムドパリが3コーナーから積極的に仕掛けていったことで、800-600m地点から11,7-11,2-11,3-12,5とかなりペースが上がっており、ラストは大きく消耗する、持続力が強く問われる展開になりました。
 その中で、ほぼコーナー地点がずっと最速なので、そこでの立ち回り、後は後半の持続力と前半のポジショニングのバランスが問われたレースになっていると思います。

 勝ったマキシマムドパリに関しては、正直に白状するなら馬自身以上に鞍上不安で、最後の一頭に拾っておくべきか悩んだ結果嫌った経緯があります。いやだってまだクリンチャーの悪夢が脳裏に焼き付いてるんですもの。。。
 勿論ただそれだけではなく、馬自身近走は序盤の出足がどうしてもつかない場面が多かったので、後ろからこの馬の末脚だと、という懸念もありましたが、それもあのポジショニングが出来るなら当然解消されてきます。

 より本質的な話をするなら、3歳時の秋華賞のようなやや前傾気味の平均ペースを前で受けて、他の馬を追走力面で削いだ上でしっかり一脚、という競馬が理想形だとずっと思っていたのですが、なぜかいつも後ろに下げて差し届かずの不完全燃焼だったので、今回こういうポジショニングをしっかり意識する騎乗をしてくれたのは天晴れ、と言いたいです。
 元々かつて藤岡Jが一度だけ乗っていて、その時も先行して勝っていたので、もしかするとそのいいイメージが残っていたのかもですし、或いは流石にダービーの消極騎乗を反省して、あまりプレッシャーのかからないここいらで発奮する、という可能性も見ておくべきだったのかもしれません。どうあれ予想としては先行できない、と決めつけた時点で柔軟性が足りなかったと反省です。

 ただやはり今日にしても、後半勝負の持続力戦ではそこまで強くないんですよね。
 今日の馬場で実質的には3F勝負の数字で、コーナーから外目で勝負に行った分はあるにせよ、ラスト1F12,5は流石にかなり落としていると見た方がいいでしょう。
 実際1000万下でも、こちらは4F戦の様相濃く、11,4-11,5-11,4-12,2という推移でしたが、こちらの方がラストは落としていなくて、持続戦という視座でのレベルではその程度、と言えるかもしれません。

 結果的に勝ち切れたのは一にもニにもポジショニングの優位、その上で持続力面で味のある強敵が少なかった組み合わせに恵まれたのはあると思います。
 無論裏を返せば、苦手な展開でもしっかり早めに吹かす意識を持って勝ち切ったのですから立派ですし、今後も出来れば常にこのくらいのポジショニングを取り戻して欲しいですね。前目からの方がどんなレース展開にも対応できる幅が広がりますし、エリ女あたりでも楽しみは出てくると思います。

 2着のクインズミラーグロも実にらしい競馬、と言えるでしょう。
 今日はスタートもまずまず、枠を利してしっかり先団を見る絶好位を確保できましたし、コーナーからマキシマムドパリが勝ちに行くレースの中で内目を通しつつじわっと進出、直線もビッシュの内側からしっかり伸び脚を見せていて、この辺りの立ち回りの上手さは流石だな、と思わせるのですが、いかんせんこの馬も持続力面では足りないんですよね。
 コーナーである程度我慢できたとは言え、それでもかなり分散して脚を使ってしまっていると思いますし、この馬が勝てるパターンは直線最速でピュッと一瞬で出し抜いて先頭、そのまま押し切りしかないんだろうなぁと改めて思う善戦2着でした。

 ただ競馬の幅はここにきて少しずつ広げていますし、好走スポット広めで安定して上位には食い込んでくれるので、印を打つ上での安心感はある馬ですよね。
 今後も相手関係が強すぎる条件でなければ、と思います。

 3着アースライズも、休養明けで本格化を感じさせてはいましたが、本質的には一瞬しか脚を使えないタイプなのは間違いないんですよね。
 コーナーは完全に我慢して、直線も上手くインに潜り込んで一瞬素晴らしい切れを見せるものの、最後は12,5のところでじりじりとしか詰められず、展開が嵌ってこれなのであまり惜しくない3着かな、というイメージです。
 体質的には安定してきたと思いますので、極端に流れるレースでなければ常にそこそこにはくるタイプと思いますが、やはりこの馬も勝ち切るには何かアイデア、展開の利が噛み合わないと厳しいなと感じさせる1戦でした。

 4着キンショーユキヒメは、折角の好斤量を生かし切れなかったなぁ、という感じです。
 この馬も持続力は持っていますが、追走力も同時にそれなりに高いものを秘めているので、マキシマムドパリのように前目から出し切る競馬がしたいんですよね。
 ただ今日はスタート一歩でしたし、外からの馬が比較的積極的でもあって、結果的に中団より後ろになってしまったのは勿体なかったです。
 ラスト1Fは群を抜く脚を使っていたように、斤量差を含めてもこのメンバーでは持続力最上位、こういう坂でラップが落ちる阪神は噛み合うと思っていただけに、もう一工夫あればなぁ、と思う結果でした。
 馬自身の素材そのものはやっぱりかなり高いレベルにある馬と思っていますので、どこかで噛み合ってくればオープンクラスでも充分に伍していけると思うんですけどね、色々もどかしい馬です。

 5着のビッシュは、一先ず上手く乗られてはいると思うんですが、馬自身はどうしてもこういう切れ味が強く問われる持続力戦向きではないんだろうなぁと改めて感じます。
 秋華賞も似たような、後半4F目からペースが上がっての持続戦でいいところがなかったですし、紫苑Sのようにロンスパでも早いラップを踏まない持久力戦がベスト、という認識でいいでしょう。
 勿論関西圏への輸送もプラスではなかったと思いますが、この馬が噛み合うレースって、特に牝馬限定戦だと中々現出しなさそうなところはあって、常に人気過剰になる中で、大体スローの展開なら甘く見てもいいんじゃないかなとは考えています。

 トーセンビクトリーは本来は番手外目でコントロールしたかったのはあるでしょうが、ショウナンが来て前が離れていったのと、それと同時にマキシマムドパリが外目に入ってきてポケットの動けないポジションになってしまったのは誤算だったのでは、と思います。
 実際に勝負所で前のペースが上がる時に、垂れてくる逃げ馬が諸に壁になって踏み遅れる結果で、まぁこの展開で外々から出し切れていれば勝てたか、と言われるとそれは微妙だと思いますが、結果的にレースを支配する立ち回りが出来なかったのが全てかな、という感じですね。
 負け方としてはひとつ度外視でもいいところではありますし、素材はいいものがあるので改めて、しっかりコントロールできそうなところでは警戒していきたいですね。

**★エプソムC**

 秋に向けての出世レース、エプソムCは、好スタートから上手く好位のインに潜り込んだダッシングブレイズが、直線で鋭く伸びて嬉しい初重賞制覇を果たしました。レースを振り返っていきましょう。

 まず今日の馬場ですが、昨日よりは1段階回復してきたかな、というイメージです。
 午前の未勝利マイル戦も、勝ち馬が千切ったとはいえ47,1-46,6で1,33,7の好時計、8Rの500万下も35,7-35,5-35,6と綺麗な平均ペースで1,46,8が出ていました。
 まぁ10Rの49,5-44,8という東京新聞杯もさながら、というドスローは度外視としても、ペースが上がればそれ相応に時計も出せる馬場ではあったと見ていいでしょう。

 あと、折々付言してきたところですが、今日も逃げ先行馬が直線入り口で馬場の外目を狙ってくる状況がほとんどでした。
 そしてこういう時って、外から早めに被されて馬場の悪いところを通されたくない、という意識が働くのか、往々にして先行馬の仕掛け自体は早まる傾向があるようです。
 今日の芝レースも、新馬以外ほぼ全て600-400m地点のコーナー出口最速ラップになっていますし、このエプソムCもそうですが、この地点で10秒台のえぐいラップを踏んでの、ラップ差の大きい持続力特化戦になる場合がほとんどでした。
 これはインが荒れてきてからの春開催府中の特色として、来年までしっかり頭に入れておいても損はない情報だと思います。秋開催でどうなるかはわからないですけど。

 ともあれ余談はさておき、エプソムCの展開に移りましょう。
 まずスタートから、大半の予想通りマイネルハニーが敢然と逃げを打ち、それをインからマイネルミラノ、外からトーセン、人気のアストラ、ダッシングブレイズにクラリティシチーなどが追いかけていき、先団を形成します。
 タイセイとデンコウはちょうど中団、フルーキーもインから押し上げてそのあたりで、クラリティスカイは珍しく中団より後ろからの競馬となります。
 ヒストリカルはいつも通り後方からで、ナスノセイカンも最後方というポジションになりました。

 ラップは36,1(12,03)-35,3(11,77)-34,5(11,5)=1,45,9(11,73)という推移でした。
 見ての通りに序盤が最も遅く、中盤からじわっと引き上がってのロンスパ仕様、その上で直線入り口手前で一気に最速ラップを踏んでの持続力特化戦、という様相を呈しており、最序盤でのポジショニングとコース取り、そしてなにより後半の持続力が肝だったと思います。
 後半3Fは10,8-11,6-12,1ですが、この10,8の地点ではマイネルハニーが後ろを少し離していて、2番手以降はやや待っての追い出しになっているので、ここまでバランス的に特化しているのはハニーだけとは考えます。
 それでも先行列上位2頭で推定11,0-11,3-11,9くらいのイメージで、かつ残り1000mから11,5-11,7と息を入れられないタフな流れになっているので、後ろから差し込むのは基本的に厳しい、ハニーらしいレースメイクの競馬だったと見ていいでしょう。

 勝ったダッシングブレイズは、総合的に言えば距離延長で、序盤のポジショニングを怖がらずに出していけたのが大きな勝因になると思います。
 どうしても1400m~マイルではポジションが上手く取れませんでしたし、そこが解消されただけでも好走をはっきり予感させました。
 後半要素としてもはっきり持続特化型で、極端な切れ味を問われると辛いので、最速地点では少し待って、自身平均的に持続力を引き出せたのも良かったと思いますし、やはりハニーの作る展開にはバッチリ噛み合ったな、という印象ですね。

 この感じなら今後もこのくらいの距離がベストと思いますし、或いは2000m、秋天まで視野に入れてもいいかもしれません。
 マイルだとかなり好走スポットが狭くなりますので、一度更に距離延長も試して欲しいなと感じます。素質自体は昔からずっと評価されていた馬ですし、今後が楽しみになる勝利でした。

 2着のアストラエンブレムは、んーまぁ強くはなってきている、と思うのですけど、まだワンパンチ足りないのは結果を見ても、ですね。
 スタートを決めて番手外を早々と取りつつ、ハニーとは馬体を放していいところを選んで走っていましたし、本質的にはパワーを要するところより、より切れ味が強く問われる条件の方が、というのはあるかもしれません。
 しかし今日は立ち回りも良かったですし、しっかりロンスパ&持続力戦の中で同斤量でハニーを捕まえましたので、ある程度早めに流れる展開でも、というのは一定見せてくれたと考えます。
 もっともこれが最序盤から流れるとどうか、ってのはあるのですけど、まだ成長途上でしょうしこの馬も先が当然楽しみです。

 3着マイネルハニーは、今日は強気の自分の競馬は出来たなと思います。
 前半4Fまでは48,2とややスローで展開しつつ、残り1000mで57,7という中々のタフなペースを刻んでいて、これを後ろから差すには後半56秒後半の持続力が必要になってくるので、これは生半ではありません。後続の脚を削ぎつつ、極端に切れる脚は少ししか使えない特性を理解してのロンスパ早仕掛けで、これで負けたなら仕方ないと思える競馬をしてくれました。
 強いて言うならやはり4コーナー出口で、後ろからかぶされたくないがために、かなり脚を使わざるを得ない状況だったのは辛かったかなと思いますし、あのあたりをもう少しフラットに入れていれば結果も違ったのではないか、と感じます。

 人気差はありましたが、やっぱり普通に流れるレース展開ならアストラと互角くらいの力量ではあると思いますし、アポジーのように追走面でよりタフなレースを組み立てて押し切れる天敵がいない場面ならば、今後も安定して粘り強い走りを見せてくれると思います。
 この馬も秋の天皇賞は少し見てみたいんですよね。内枠を引けたら相当怖いと思うんですけどね。

 4着クラリティシチーは、上手く好位列で流れに乗れて、直線も持続力特化戦の中でしぶとく食い下がって4着と、人気は弟に持っていかれていましたが、まだまだこのクラスならやれるというところを見せてくれたと思います。
 近走は重馬場だったり、休みがちで安定感が欠けていたので狙い難かったですが、本質的にはモーリスが突き抜けた5Fロンスパ戦のダービー卿でも2着に食い込んでいるように、後半勝負で持続力と切れ味を応分に問われる展開は強いんですよね。
 この馬も今はマイルより、ポジションが取れる1800mが合っている気はしますし、ローカルなら重賞のひとつくらい取れても、というイメージは持てる好走でした。

 5着バーディーイーグルは、上手く内を掬ってパーセーブ、というところでしょうか(笑)。
 馬自身は去年のむらさき賞でも時計勝負の、おそらく先団から後ろの馬は後半の持続力をかなり強く問われる展開でいい勝負をしていて、それを踏まえると今日はまだ最序盤のペースが緩かった、とも言えます。
 でもロンスパの流れの中でしっかり持ち味を引き出し、多少荒れたインの馬場も苦にしないという味のある競馬でしたので、条件が噛み合えば重賞クラスでもワンチャンスは作れる馬、という認識は持てるレースぶりだったなと思いますね。特にラスト100mの持続力面は評価したいです。

 デンコウは昨日嫌う理由書かなかったですけど、基本ハニーが作るロンスパ持続戦に向く馬ではない、という事でいいと考えます。
 府中適正が高いのは確かでしょうが、前走もアルテミスSも中盤の緩みで上手く息を入れ、かつ最速地点が直線と仕掛けの遅い競馬で、瞬発力の質で上位に肉薄する競馬をしてるので、今日の流れですと息も入らず、もっと鋭い脚はコーナーで分散して使わされてしまった、という見立てで、結果的にラストの踏ん張りがきかなかったと思っています。
 こういうタイプはどうしても好走に条件が付きますが、状態は戻っていると見ていいので、適性条件なら侮れないでしょう。関屋記念などは基本400-200m地点最速になるので、かなり合うと思います。
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2017 北海道スプリントC・東京ダービー レース回顧

**★北海道スプリントC**

 不良馬場で開催された北海道スプリントCは、デビュー時は北海道競馬所属だったニシケンモノノフがスタートから押してハナを取り切り、上手くレースをコントロールしてのレコードでの逃げ切りを収めました。レースを振り返りましょう。

 正直ここまで勝ち時計が速くなると思っていなかったのもありますし、その分だけ展開的、ラップバランスでも大分読み違えていたな、というのが正直なところです。
 スタートはアウヤンテプイが一番速く、それを内目から促してハナまで上げていくのは予想通りでしたが、その後の二番手集団がかなりごった返しましたね。
 ゴーイングパワーあたりもややスタートで後手を踏んで馬群の中と苦しい競馬になりましたし、ショコラブランは常に5頭分くらい外、スノードラゴンも中団の馬群の中という位置取りになりました。

 そういう隊列でありつつ、実際のペースはどうだったかと言えば33,8(11,27)-35,6(11,87)=1,09,4(11,57)という推移でした。
 勿論かなりのハイペースなんですが、それでもダートのスプリント戦としては上がり切っている程ではなく、実際にコーナーの入り口で一度息を入れて、もう一度コーナー半ばから再加速しているようなニシケンの動きで、そこで後続、特に人気のショコラに外目を回す不利を大きく食らわせているように感じました。
 全体時計が早くなったことで純粋なスピード能力も強く問われて、その点でもちょっとニシケンを甘く見ていましたね。高速巧者なのはわかっていたつもりですが、1200mのスピード勝負でも対応してくると思っていなかったのは素直に反省です。

 馬自身今回はフェブラリー激走後の前走よりは状態も良かったように見受けますし、今日は完全に力で押し切った格好ですが、重い馬場のスプリント戦でこれが出来るか、そうなるとショコラにも逆転の余地は出てくるかなとは思っています。

 ショコラは外枠からスムーズな方が出し切れていいだろうと思いましたが、ここまで前に入れない隊列になると思っていなかったのと、要所でずっと外々は結果的に響いたのかな、と思います。
 ただスノードラゴンがコーナー内々を回して上手く立ち回ってきたのに、最後差されそうで差されなかったのは地力をつけてきた証と見たいですし、今後も楽しみは充分ありそうです。
 そしてスノーはやっぱり夏場で軽いダートなら走るのか…………。本当に近年は、高齢馬の取捨選択が頓に難しくなってきましたね。ここまで馬体は真っ白になっても燃え尽きないとは、御見それしましたという感じです。

**★東京ダービー**

 こちらは二番人気のヒガシウィルウィンが積極的な競馬から4コーナー先頭で早々と後続を突き放し、血統的な不安もなんのそのの圧勝を見せました。
 馬場状態は重で、基本的に時計は出ていないけれど、特定の馬には走りやすいのか、突き放していい時計で勝つ馬がチラホラいたりと、そのあたりは本当に今の馬場の難しさを感じさせます。

 展開はサイバーが予想通り一気に逃げて、4枠のシェアハッピー、カンムルが追いかけていきます。
 ブラウンレガートは二列目のポケットに潜り込み虎視眈々、その外に早めにヒガシウィルウィンがいて、それをキャプテンキングがマークする形になりました。

 ラップは36,5(12,17)-52,3(13,08)-38,1(12,7)=2,06,9(12,69)という推移でした。
 やはり前半ソコソコ流れてはいるのですが、それでも個人的には思ったよりは落ち着いたな、という感じで、中盤も最初の入りのハロンから13秒台となっていて、そのあたりも含めて見ると、特に勝ち馬にとっては平均くらいの流れになっていたと思います。
 その中で緩みに合わせず3コーナーから早々と勝負に出る形で、キャプテンキングも追いかけていくもののコーナーでの機動力がイマイチで差を一気につけられ、直線でもヒガシは全く止まらず、12,3-12,4というラスト2Fでは後続にはどうしようもなかった、と言えるでしょう。

 結果的にキャプテンキングよりはペースが上がって良さが出たのは確かだと思いますし、要所の機動力も上だったので、ポジショニングでキャプテンキングより外枠なのに、怖がらずに前を取れた時点で勝っていた、と考えられるでしょう。
 血統的にも母父のスタミナ面が強く出ているのか、この持久力を見ればそんなに不安はないですし、更にペースが上がってのJDDでも噛み合えば面白い一頭になってくるかもしれません。ただこの日の馬場に抜群に適性があった、という考え方も出来るので難しいところではありますが、同じように重不良になればなおのことチャンスは広がるのではないでしょうか。

 キャプテンキングはやっぱり少し距離は長いというのと、スローから直線での加速力で勝負するタイプなので、コーナーからロンスパ気味に勝ちに行く競馬では辛かったと思います。
 それでも地力で2着を確保したのは流石ですし、今後はもう少し短い所、マイル戦線くらいで見てみたいですね。

 ブラウンレガートは直線でぽっかり空いた最内を掬ってきて見せ場は作りましたが、ヒガシの豪脚にはなすすべなく、最後はキャプテンキングにも差し込まれて3着と、またしても大井の帝王の悲願は持ち越しになりました。
 ただレース自体はペースも落ち着いた中で完璧な立ち回りでしたし、理想を言えばもう少し流れてしまって、ヒガシが追走に苦慮するくらいの方が、というのがあったかもですが、この日のヒガシにはどう頑張っても勝てなかった気もしますね。
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2017 6月第1週海外GⅠ レース回顧

**★英ダービー [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=R5TGZEbyTfw)**

 今年の本場イギリスダービーは、歴史的な大波乱決着で幕を閉じました。
 かなり馬場状態が良さそうな中で行われた一戦は、序盤から伏兵二頭が飛ばして淡々とした流れになる中、勝負所の4コーナーからデットーリJ騎乗の3着馬、フランケル産駒のクラックスマンが早めに仕掛けて先頭に並びかけていき、それを後方外から人気のオブライエン厩舎ガリレオ産駒、クリフスモアオバーが追撃、内から英1000ギニー6着からの巻き返しを狙った、やはり人気のフランケル産駒エミネントが伸びてきて、ほぼこの三頭の決着か、と誰もが思ったところからドラマが待っていました。

 道中はクリフスより更に後ろ、ほぼ最後方に近いポジションでじっと我慢していた18頭立て16番人気、オブライエン厩舎6頭立ての中でも最も人気のなかったウイングオブイーグルズが、力強く馬群を縫って伸びてきて、途中で進路が塞がり大きく寄れる不利もなんのその、最後の最後に素晴らしい切れ味を見せて前を行く三頭を一気に飲み込むという驚くべき芸当をやってのけたのです。
 騎乗していたペギーJはイギリスでも相当に無名のジョッキーらしく、もう結構長いキャリアがあるのに歴代の勝ち鞍は二桁にも満たない、なんてニュースが出ていたのを見ましたが、そんな騎手がこのイギリス最大の伝統を誇る大レースで、ムーア・デットーリという当代きっての名手の凌ぎ合いを横目に突き抜けてみせたのですから、これは本当に事件といっていいレベルなのでしょうね。

 馬自身はチェスターヴァーズで好走して長距離の適正は見せていたものの流石に、と思われていたのでしょうが、全体的にタフなレースになった印象もあり、それがあの最後のスタミナを生かした逆転劇に繋がったように思えます。
 父のプールモワも、近年ではごく稀にしか出現しない、フランスからの遠征で見事にダービーを制覇した馬で、この時も騎乗していたバルザローナJがまだデビューしたての若い時分だったことで話題になった記憶があります。父仔二代で劇的なレースを演出するとは、これも血の為せるドラマでしょうか。

 ただ、じゃあレースレベルが低いのか、というとそんな事もないとは思います。
 今年はオークスも歴代レコードだったように、馬場が良かったのはあるのでしょうが、それでも勝ち時計の2,33,02は歴代4位の好時計で、これより速いタイムでダービーを駆け抜けた馬はラムタラ、ワークフォース、ゴールデンホーンと全て凱旋門賞馬になっています。それだけこのタフなエプソムのコースを克服するスタミナに加え、スピード能力も傑出していないと、この舞台で速い時計には対応できないという事なのかもしれません。
 だからといっていきなり勝ち馬が前途洋々、と考えるのも難しいところはありますし、2000m戦ではまともに勝ち負けできていない所からもあくまでこの距離のスタミナ勝負になってこそ、と見るべきでしょうが、なればこそキングジョージや凱旋門賞には積極的に挑戦して欲しいところですね。まぁアスコットはともかく、シャンティの2400mはまた別物の気はしますが。

 2着以降の馬も激戦の中で最後までしぶとく粘っていて、総じて高いレベルにあると見ていいと思います。
 しかし結局フランケル産駒は、今年は欧州クラシックは取れませんでしたね。現状初年度産駒で一番強いのって贔屓目なしにソウルスターリングの気がします。勿論馬場の適正面なども色々あるでしょうけどね。
 

**★英オークス [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=gno6RUVFhoo)**

 こちらは突然の豪雨の中で開催され、直線を向いて早々と、デットーリJ騎乗のイネーブルと、ムーアJ騎乗のロードデンドロンの一騎打ちになります。
 しかし馬体が並んでいたのは残り200mまで、そこからはイネーブルがしっかりスタミナを生かして力強く伸び切り、最後にバテたロードに5馬身差をつけての圧勝になりました。

 ダービーでも書いたように、このレースの2,34,13はレースレコードで、その意味でも勝ち馬はかなり強い競馬をしたと思いますし、またロードのオブライエン厩舎の英クラシック完全制覇を阻止した、という点でも大きな意義のある勝利に感じますね。
 勝ち馬の父ナサニエルも今年が初年度産駒で、ナサニエルと言えば2年続けてのキングジョージでの好走、特に敗れはしたもののデインドリーム家と激闘を繰り広げた4歳時のレースが印象的です。
 その父のスタミナを存分に受け継ぎ、またサドラーズウェルズ3×4という、いかにも欧州2400mの為の黄金配合と言える血統構成で、あの最後の粘り腰も納得できてしまうところです。

 2着のロードも充分強い競馬はしましたが、最後は完全に力負けでしたね。
 結果的にやはり血統面、母父のピヴォタルがスプリンターで、遡ってもヌレイエフなどのスピード血脈に通じるわけで、流石にエプソム2400mでここまでタフな流れになってしまうと、という話なのでしょう。
 といってウインターほどの素軽さや切れ味を感じる馬でもないので、現状この先は2000m路線が妥当でしょうか。去年のマインディングのような活躍をしてくれるのではないかと思います。

 あと地味にサンタラリ賞を勝ったソーベツがこっちに回ってきていたんですね。
 結果的に惨敗でしたが、レース回顧した印象からしても、あのレースの圧勝は直線での圧倒的なギアチェンジの素晴らしさに尽きる、という感じでしたので、タフなエプソムの舞台で生きる適正ではなかったと思います。素直に仏オークスなら面白かったと思うのですが勿体ないですね。

**★コロネーションC [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=DL0O_IEJK4Y)**

 こちらはオークス当日のエプソム2400mの古馬GⅠ、かつてはセントニコラスアビーが3連覇したりしていましたね。
 今年はドバイ以来のハイランドリールがスタートからすっと先行、道中びっしり当面のライバルのホークビルにマークされ、直線でも早々に並びかけられる形になりますが、そこからのしぶとさがこの馬の真骨頂です。
 残り200mで粘るホークビルを振り切ると、内から追い込んできた伏兵のフロンティアズマンの追撃をも楽に振り切って、このコースで圧巻の逃げ切りを見せてきました。

 このレースの2,33,34も地味にレースレコードみたいで、それだけ馬場が良かったのでしょうが、といっても逃げて勝つのはかなりきつい舞台なので、流石ハイペース適正抜群だなぁと改めて感心します。
 今年も凱旋門路線に来るなら怖い1頭になりますが、なんかキングジョージの後はアメリカ遠征しそうな雰囲気らしいですね。この馬とキタサンのガチの先行削り合い勝負とか見てみたかったんですけど、さてどうなるか動向に注目です。

**★仏ダービー [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=eOmIpv-2b9I)**

 こちらは表記的には重馬場の条件の中で、仏2000ギニーを勝ち切った、新進気鋭のC・デムーロJが駆るブラムトか、出遅れもなんのその最後方から大外一気の差し切りを見せて、見事2冠を達成しました。
 こちらはレースラップがわかるのですが、2100mという半端な距離で1100m通過が1,05,32と出ていたのでハロン11,9秒くらいのペースになっています。
 そこからの推移が24,6-12,2-12,2-12,2くらいで、勝ち時計が2,06,51と、馬場表記の割には淡々と流れて好時計決着になっている印象ですね。それだけ近年のシャンティが軽くなっている証左かもですが。

 とにかく後半はほぼずっと12,2前後を淡々と刻んでいて、切れ味や加速力はほぼ問われず、この距離での総合力と持久力面を強く問われたレースになっていると思います。
 2、3着馬もある程度後方から、上手いコース取りで直線しっかり前に押し上げていて、そのあたり流石名手ブドーJにペリエJ、という感じですが、最終的に勝ち馬の持久力・底力が1枚上だった印象ですね。

 この馬は2000ギニーもラスト12,9と徹底的に消耗する流れで勝ち切っているし、もしスローになっての切れ味勝負だったらどうか?という懸念は残っていますが、これからも上位クラスのタフなレースには噛み合ってくるかなと思いますね。
 血統的にはややマイラー色が強い感じもあるのですが、この距離のタフなレースをこなしてきたということで、当然2400m戦も視野に入ってくるでしょう。まず1頭、凱旋門賞の有力馬が出てきたというところですね。
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2017 6月第1週新馬戦 レース回顧

 先週予告した通り、今週からは2歳馬のレース回顧を週中は積極的に進めていこうと思います。

**★6/3(土) 府中5R 芝1400m戦**

 日曜よりは土曜の方が少し時計がかかっていて、かつ外差し傾向が強かった芝で、中団から外目を回した、新馬御用達マイネル軍団のヴィオトポスが、直線かなりフラフラしながらも坂上で前を捉え、後ろからの追撃も抑え込んでの新馬勝ちとなりました。

 レースラップは35,6(11,87)-12,1-35,6(11,87)=1,23,3(11,9)という推移で、綺麗な平均ペースでしたね。
 後半ラップも11,7-11,6-12,3と特に秀でたところはないですが、外から差してきたヴィオトポスとブショウはこの坂地点でそこそこの切れ味を引き出しており、ほぼラスト1Fが勝ち馬のラップと見れば11,3-11,2-12,3くらいなので、この時点ではそれなりの持続力も見せて、そこそこのレベルにはあると感じます。

 勝ち馬はただまだとにかく若いですね。
 勝負所で鞭に鋭敏に反応し過ぎて右に左にフラフラしていて危なっかしく、鞍上もまともに追い切れない状況で勝ったのは、まだまだ素質面で伸びしろがあると考えられるかもしれません。
 血統的にマツリダゴッホの仔は早熟傾向が強いですが、母父ナリタブライアンがまた渋いですし、いぶし銀の活躍を期待したくなります。

 2着のブショウも悪くない競馬でしたが、スタートからもっさりで促して促してやっと中団、という競馬でした。
 ダイワメジャーの仔ですが、母父モンズンの方が強く出ているのか、もう少し距離を伸ばして追走で楽が出来た時にどこまで後半要素を伸ばせるか、そこが噛み合えばそこそこの活躍は期待できる印象です。

**★6/3(土) 阪神5R 芝1600m戦**

 土日の阪神は開幕週でかなりの高速状態でしたが、その中で先行して2列目ポケットを確保した一番人気のケイアイノーテックが、そのまま直線も最内を捌いて楽々と抜け出し完勝しました。

 レースラップは36,7(12,23)-26,3(13,15)-33,8(11,27)=1,36,8(12,1)という推移でした。
 実に新馬戦らしい強烈な中緩み戦になっていて、後半5Fが13,7-12,6-11,1-11,2-11,5と、相当に幅の広い加速を問われつつ、一応はコーナー出口が最速の3F持続力戦という見立てでいいと思います。
 まず序盤緩んだところでの折り合い、操縦性が問われましたし、そこから1,1-1,5という強烈な加速に対応するセンス、そこから長く脚を維持する能力を問われていると考えます。

 勝ったケイアイノーテックは、素材の差というよりその器用さ、競馬センスの良さの方がこのレースでは光っていたと思います。
 スタート抜群でハナでも、というところから、内外から一気に来られて下げてポケットという競馬でしたが、そこからのペースダウンにも折り合いを欠くことなく対応し、再加速の地点でも、最内を通している利があるとはいえしっかり反応できていました。
 直線入り口で引き込み線を上手く使って最内に潜り込み瞬時に先頭に立っていて、おそらくこの地点でこの馬は10,8程度の脚を使っており、そこから11,2-11,5と極端には落とさず粘り込んだ、というイメージですね。

 持続面でも評価できますが、それ以上に要所の加速力が目を引いて、勿論コースロスがゼロだったので字面以上の評価にはなりませんが、今後も安定して上位を賑わす能力と自在性があるタイプと感じました。
 こういう器用なタイプは、追走力を兼ね備えているとなお安定するので、次走ではもう少し常識的な流れの中でどこまでこの反応の良さを生かせるかに注目したいですね。

 2着のバイオレントブローも上手く内を掬って最速地点のロスを消しているので、その視座で言うと道中ずっと外々でもラストまでジリっと伸びていたディバインブリーズの方が、将来性という見地では面白い気はします。
 4着馬のラストの脚も目立ってはいましたが、こちらは直線まではインを通しているのでもう少し様子を見たいですね。

**★6/4(日) 府中5R 芝1600m戦**

 日曜の芝は1段階高速化して、同時に内外の有利不利がほぼなくなったフラットな馬場でした。
 その中で、スタートから先団に楽に取りつき、後半要素を総合的にしっかりと発揮してきたステルヴィオが、人気のディープ産駒サトノオンリーワンを楽に退けて、好時計での新馬勝ちを飾りました。

 レースラップは35,4(11,8)-24,9(12,45)-34,5(11,5)=1,34,8(11,85)という推移でした。
 ハーフバランスで47,8-47,0とややスローながら新馬戦にしては常識的に流れ、中緩みはあるもののそれも最遅12,5と極端ではなく、総合的なマイルの能力、後半要素がしっかり問われる展開になっていて、その中で上位3頭が完全に抜けていたレース、と見做せるでしょう。
 後半4Fが12,5-11,5-11,4-11,6なので、コーナー出口での加速力も一定問われ、坂地点での加速や持続力もそれなりに、という中で、勝ったステルヴィオは非常にバランスのいい素材の持ち主であると証明する走りだったと思います。

 この馬の上がりは34,2なので、逆算すれば11,5-11,2-11,5くらいで、坂地点で鋭くはないもののしっかり動けている、そしてインから追撃してきたサトノをラスト1Fで逆に突き放しています。
 前半ほぼ48秒ペースに乗っかってこの競馬が出来たのは今後も一定の担保になりますし、距離延長がプラスになるかはわかりませんが、マイル戦線では結構期待値の高い勝ち方をしてきたなと感じましたね。
 安田記念当日に新種牡馬ロードカナロアの産駒というのも趣深いですし、今後の活躍に期待したいところです。ただ切れ味面での強調は出来ないので、新潟2歳Sあたりが噛み合うかはちょっと怪しいところはありますね。ポジショニングと持続力が等分に生きるコースが今のところべストに見えます。

 2着のサトノオンリーワンは、スタートから追走に苦慮していて、モレイラJらしく道中で上手くインに潜り込み、距離ロスを抑えての追撃に出ますが、ラストも突き放されていてここでは完敗でしたね。
 おそらくこの馬はもう少し距離があった方が良さそうで、府中なら1800mはすごく噛み合いそうです。今日は多少追走で削がれたところはあるでしょうが、ゆったり入れれば後半要素でいいものを引き出せてきそうなイメージは持てる競馬でした。

 3着のスプリングマンも先行して外目から早め抜け出しと王道的な競馬で血統面で見栄えする素質馬2頭に食らいついており、これも中々に強い競馬だったと思います。
 父ローズキングダムもキンカメ血統ですし、しかし母父は誰?ってレベルで何とも地味、けれどこういう、競馬に行って人気しないけど堅実に走るタイプは例年そこそこ出てくるので、この馬にもそういうしぶとい活躍を期待したくなりますね。

**★6/4(日) 阪神5R 芝1400m戦**

 変わらず高速馬場の阪神で、昨日とは一転しての超ハイペースが現出し、その中でしぶとく先団から粘り込んだヴァイザーが、こちらも新種牡馬ノヴェリストに初勝利をもたらしました。

 レースラップは33,7(11,23)-11,6-36,6(12,2)=1,21,9(11,7)という推移でした。
 見ての通りの強烈な前傾ラップ、直線で11,9-11,8-12,9と誤差程度に加速していますが、基本的にほぼ一貫ペースの減速戦で、ラストは全馬完全に消耗し切る中、スタミナ面の優位を生かして勝ち馬が粘り込んだレース、という感じです。

 勝ったヴァイザーは、激化する先行争いを外目で追走して比較的余裕がありましたし、コーナーで外を回してもしっかり一瞬は反応してスッと先頭に躍り出る脚を使えていました。
 この感じからはそれなりに追走面の担保と、ペースが上がっても一脚を使える底力を感じさせますが、ラップ的には馬場を考えると流石に落とし過ぎではあり、本質的にはこの距離の馬ではないのを、極端な消耗戦になったことで欧州血統の血が生きた、と見るべきかなと思います。
 少なくともこのレースだけでは後半要素は全く判断できませんし、平均の流れの中で後半に良さが出せないのが、平均的な欧州2400m路線チャンピオンの種牡馬というイメージはあるんですよね。

 ただキングジョージレコード勝ちのハービンがそこそこやれていて、そのレコードを更に一気に更新したノヴェリスト、という構図からすると、スピード面での期待値は持てる部分もあるので、今回に関してはその前半の追走力の高さを評価して、その後後半型のレースでイマイチが続いても、いざタフなレースになれば台頭するかもしれない馬、として見ておきたいところです。

 2~5着馬もこのペースでも先行して雪崩れ込んだ馬ばかりなので、褒めるべき点は勝ち馬と同じところしかないのですが、少なくとも新派未勝利レベルでこれだけの前傾は中々お目にかかれないので、着順だけで人気する次は疑ってみてもいいところかもしれませんね。
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2017 安田記念 レース回顧

 多士済々、好メンバーが揃った安田記念は、古豪ロゴタイプが前年度王者らしい素晴らしい逃げを打って最後まで粘り腰を見せる中、外から最後の最後にサトノアラジンが豪脚一閃、これまでのモヤモヤを一気に晴らす見事な末脚で悲願の初GⅠ制覇を達成しました。レースを振り返っていきましょう。

 今日の馬場は、昨日よりも一段階回復して、ほぼ超高速に近い状態に戻っていたと感じます。
 新馬戦も好時計でしたし、9,10Rの時計も、勝ち時計そのものは遜色ないのですが、昨日より軒並み速いラップを長く踏めていて、かつインコースからでも外からでも伸びる、フラットな条件に整っていたと思いますね。

 展開は、インからまずディサイファ、トーキング、サンライズ、コンテントと出して行く中、果敢に外からロゴタイプがハナを取り切っていきます。
 その動きに合わせるようにブラックスピネルも番手外まで押し上げて、ヤングマンパワーが好位列の外目、ディサイファは少し下げて二列目ポケットと、このあたりまでが先団を形成します。

 そのすぐ後ろにクラレント、そして人気のイスラボニータも馬群の中で流れに乗り、その外目に早めのステファノス、更に出遅れたグレーターロンドンもインから脚を使ってコーナーの入りあたりで中団の後ろまで押し上げてきます。
 それを見るようにビューティーオンリー、ロジチャリスがいて、レッドファルクスはやや後方のインでスペースのない位置、その外にサトノアラジンが悠然と追走します。
 エアスピネルは五分のスタートでしたが今日は完ぺきに注文を付ける形で後方三番手、その後ろに二の足が非常に悪かったアンビシャス、最後方ロンギングダンサーという隊列になりました。

 ラップは33,9(11,3)-23,2(11,6)-34,4(11,47)=1,31,5(11,44)という推移でした。
 ハーフで取っても45,5-46,0とやや前傾で、高速馬場の分ギリギリ平均ペースの範疇とは思いますが、安田記念らしく中盤も緩まず、それでいてコーナー出口の600-400m地点でサンライズが仕掛けていったことで、そこが11,0とはっきり最速ラップを踏んでいます。
 結果として、かなり高いレベルでの追走力と、仕掛けが速い中での持続力、加えて中盤も緩んでいないので、絶対的な総合力、底力が大きく問われたレースになっていると考えます。
 時計の割に上位はかなり団子でもある通り、色々と紙一重な部分のあるメンバー構成だったのは間違いないですが、その中でも流れの上では有利不利の全くない素晴らしい構成の中、どれだけ自分の形でスムーズにレースを作れたか、が最後の決め手になっている感じはありましたね。

 勝ったサトノアラジンは、もう本当にここしかない、というくらい条件が整っていましたし、そこで変に小細工せず、自分の競馬に徹して勝ち切ったのは信念の勝利、と呼んでいいと思います。
 予想でも触れたとおりに超高速巧者で、かつ外枠でもあり、徹頭徹尾外目の馬場のいいところを選んでの追走になりました。
 この馬自身もそれなりに追走力は持っていますが、それでも自身推定46,4-45,1のバランスなのでかなり前半に足は使っていて、それでも要所での切れ味と持続力をしっかり引き出せた、というのが、このレースの大きな勝因になるでしょう。

 レースラップ的には4コーナー出口が11,0と最速で、ここで大外をぶん回しているこの馬はかなりロスは大きかったと思いますが、それでも直線入り口から坂上にかけて、ただ一頭だけ明らかにロゴタイプとの差を詰める切れ味を引き出して、一気に二番手まで上がってきています。
 3F推定ですと大体11,0-10,9-11,6くらいと見ていて、コーナーのロス分を考えると、実質的にこの流れの中で2F10秒台に入るか、という脚を使えている感覚です。
 それだと流石にラストはやや減速気味にはなりますが、それでも跳びが大きい分もあるのか、一気に落とさずしっかり惰性で持続力を引き出せるのもこの馬の強みで、やはり条件が噛み合えばマイルでもここまで強い、と証明してくれたと思います。

 勿論この勝ち方は、色々と嵌った部分もありますが、少なくともハイペースに乗じての前崩れ、というわけでは決してない中で、自力の時計勝負でここまで引き上げてきたのは間違いありません。
 スローならスローで、更に瞬発力の質を引き上げられる馬なので、今日の条件なら余程のドスローでもない限り好走していたと思いますが、結果的に他の持続力タイプや総合力で勝負するタイプが噛み合わなかった、追走で苦慮した、という点を鑑みると、このくらい流れてしまった方が勝つ、という観点ではべストだったのかな、と考えます。本当に見事な差し脚でした。

 そして2着のロゴタイプのほうにこそ、より一層驚かされました。正直サトノは嵌ればあれくらい、と思っていたのですが、この馬が府中のコーナー最速でここまで粘れるとは全く思っておらず、7歳にしてまだ強くなってない?と戦慄すら覚える好走だったと思います。
 基本的にこの馬の近年の武器はポジショニングと総合力で、後半勝負の色合いが強いところだと出来る限り仕掛けを遅らせたい、持続力では足りない、というタイプと見做していて、実際に去年の安田記念も直線坂地点で10,9と最速ラップに持ち込んで、持続力型が脚を出し切れない展開にしたのが勝因だったと考えていますし、それは今でも間違っていないでしょう。

 ただ、この馬には追走力、という面でも武器があることを忘れていましたね。
 本当に最近はスローの溜め逃げしかしてくれなかったのもあるのですが、本来は2歳時の朝日杯で超ハイを楽々番手外で追走して、コディーノの差し込みを凌ぎ切った実績を持つ馬であり、皐月賞などもその追走面の強みを生かして勝ち切ったところはあって、それがここ一番、数年来の雌伏を経て爆発した、という印象です。
 正直田辺Jが狙ってこのペースを作り切ったのかはわからないですけれど、中盤も意図的に緩めていないのを鑑みればおそらくイメージのひとつにはあったのでしょう。馬場を考えるとおそらくあと0,5秒前半が遅かったら、追走面で余裕を持てた馬がもう少しいたはずで、その点非常に巧みなペースコントロールでした。こういうのがあるから田辺Jは面白いんですよね。

 その流れでもみんな結構ついてきた、というのはありますし、コーナーでサンライズメジャーが仕掛けてきて、少し速めにエンジンをかけないといけなかったのは誤算だったかもしれませんが、しかし逆にそこで引き上げたことで、追走で削がれた馬はより苦しくなったと思います。
 実際にこの馬のラップでは11,0-11,3-12,1ですから、坂地点でもう減速ラップには入っているのですが、ここで2列目とは逆に差が広がっていて、進路があった馬で明確にここで詰めてこられたのはアラジンだけ、というのを踏まえると、これがそれだけ厳しい、底力のない馬では耐えられないラップだったというのが如実に見えてきます。

 こうなって、ラスト1Fがやや甘いのはどうしようもないところですが、それでも相対的に他の馬も脚が上がっているだけ差は詰まらず、あともう少しで連覇達成、という素晴らしい走りでした。これは幾度称賛してもし足りませんね。
 この最晩年になってこういう競馬に改めて開眼する、というのもなんですが、常にこうしてついてくる馬を振るい落とすレースが出来るなら、まだまだ第一線で怖い存在になってきそうです。
 田辺J的にも、グレーターロンドンには負けられない場面だったでしょうし、落馬明けで心配されましたが面目躍如の好騎乗だったと思います。

 3着のレッドファルクスは逆に、非常に勿体ない競馬になってしまいました。
 元々スプリントで戦える力がある馬ゆえに追走面で苦労はなく、かつ極端な切れ味を問われないコーナー最速の持続力戦は、この馬にとってもこれ以上ない展開でしたが、惜しむらくは枠が結果的に良くなかったですね。
 やっぱり先週のダービーに対する想いはあるのか、レース全体がハイの流れについていく形で凝縮してしまっていて、流石に前目を取れる馬ではないのですが、道中で外に出すポイントも作れずじっと我慢するしかありませんでした。

 直線に向いてもズラッと外まで1列の壁が形成されてしまっていて動き出せず、カニ移動のように外に外に持ち出して、やっと進路を見つけたのが坂上、サトノアラジンの後ろでは流石に辛かったです。
 そこからは流石の持続力で、サトノより明確に伸びて差を詰めていくものの、どうしても吹かし切れなかったのと、そこまで溜めても一瞬の切れには転化できないタイプなので、決定的には脅かせずの3着、と悔しい結果でした。

 でも少なくともマイルでも全然戦える素地ははっきり見せたと思いますし、これがスプリントの時計勝負にも対応できるというのだから素材面ではメンバーでもトップクラスのものがある、と見立ててもあながち間違いではないかもしれません。 
 ただ適性的に京都マイルでどうか、ってところはありますし、この府中マイルがマイルならベストコース、ベストの展開だったのは間違いないので、常にこれ以上を求めるのは厳しいかもしれません。とにかくサトノと逆の枠だったら或いは結果も、とは思わずにはいられない負け方でしたね。

 4着グレーターロンドンにも驚嘆させられました。
 素材面で高く評価していつつも、流石にこのローテーションでは厳しいだろうと思っていましたし、レース自体もかなり厳しい、ロスの多い競馬になっていながらこれなので、その底力には末恐ろしいものを感じざるを得ません。

 スタートはいつも通りもっさりでしたが、ある程度促していったところで、持っていかれ気味にインからリカバーする形になって、このあたりでいつぞやの東京新聞杯のヴァンセンヌを思い出した人もいるかもしれません。
 ただ結果的に馬自身は、前半33,9の地点で脚を使ってリカバーしても問題ないレベルの追走力を秘めていたようで、中団で前に壁を作ってからはスムーズ、直線では外目に出して、綺麗に馬群の隙間を縫って鋭く脚を伸ばしてきます。
 それでもサトノレベルに比べるとエンジン点火までツーテンポくらいは遅かったですが、でもこの馬も一瞬の切れは流石でした。カメラワークもありますが、一瞬馬群の中から突き抜けそうに見せましたからね。

 ただラストのラストでジリっとなってしまったのは、これまで高いレベルのレースをしていない経験の差、と言えるのではないでしょうか。
 加えて、上位三頭はこれまでに58kgを背負った経験がある馬だったことも鑑みれば、レース慣れしてしまえば素質では最上位の可能性もあります。
 タイプ的にはこの馬もサトノ同様出し切ってなんぼ、スローなら切れ味の質の高さで戦えるし、今日のようにハイでもしっかり一脚は確実に使えるとなれば、本当に今後の活躍が楽しみです。どうか今日の激走で足元が無事であることを祈ります。

 5着エアスピネルは、確かに勝つか負けるかの大博打的な競馬だったとは思うのですけど、正直この馬で下げるのはどんなペースであっても得策ではない、とは思うんですよね私は。
 先週がああで、昨日の鳴尾も自身が作ったドスローで逃げ切り、という流れの中で、今日こそはと周りの意識が前掛かりになる筋書きまでイメージしての戦法とは思いますし、実際スタートから手綱は微動だにせず下げていって最内、安田記念らしいコーナー最速の流れを一番大切タイトに回ってこられたのはプラスではあったと思います。
 
 それでも結局、そこから直線ずっと脚を使えるタイプか、と言うと、そういうイメージはないんですよね。
 結果論的に言えば、直線序盤で全く前が空かずに進路を探して内へ外へとなり、コンテントメントの外に進路を見出したのがレッド同様残り200mくらいで、そこから猛然とレッド並の脚で伸びているので、前がスムーズに空いていれば、という議論は成り立つとは思います。
 ただこのタイプは、開いたら開いたで、シュッと脚は使えるでしょうが、それをラストまで持続出来るかはやや疑問で、バッチリスムーズでも3着争いまでだった気はしています。

 勿論この45,5の急流で改めて追走面を問われて、確実に前から脚を使えたか、はわからない、実際にそれが可能だと思っていたブラックスピネルがあの結果ですので、私の見立てなど眉唾以外の何物でもないのは確かなのですが、でもやはりこの馬で勝ちに行くなら最低限中団前までには入っていて欲しかったなぁ、とは思ってしまいますね。
 馬自身はあの位置からなら追走も楽で、どこからでもきちんと一足使ってくる堅実さは健在ですし、はじめての58kgを考慮すれば強いのですが、本当に脚の使いどころが難しい馬だなぁとは感じます。この先もGⅠではしばらくこういうレースが続いてしまいそうな印象でしたね。

 6着ビューティーオンリーは、道中もスムーズで不利なく追走できましたし、進路取りも外目の中でなるべくタイトに回ってくれて、直線向いた時はこれは来るだろう、とほくそ笑んでいたのですが、いざ追い出されてからの伸び脚が案外でしたね。
 勿論この馬なりに伸びてはいますが、坂地点でもラスト200mでもアラジン比較では見劣っていて、総合的にここで底力勝負はほんのちょっと能力が足りなかったのかな、と思います。
 まぁ遠征競馬で-18kgが響いた可能性も充分ありますし、それは前提としてわかっていた上で本命にしたので言い訳にもなりません。ここまでタフなレースになる展開予想ではなかったのもありますし、その中でちゃんと自分の競馬・見せ場は作ってくれたので仕方ない、とは思えますね。

 7着ステファノスは、負けるとしたらこういう負け方だろうな、と想定したそのままではありましたね。
 ただレース内容はかなり良く、騎乗も積極性があって良かったのは間違いないです。この枠からかなりしっかり出して中団を取れたのは驚きましたし、勝負所でも外からスムーズに押し上げて、この馬の脚を出し切るイメージははっきり持てていたと思います。

 けれどこの馬にとって、どうしてもこのペースは追走面でオーバーペースだったと思うんですよね。
 自身46,0-45,8とほぼフラットで走破していますし、その上コーナー最速を外々ですので、道中でじわじわ脚を削がれて、持ち味の最後の爆発力に繋げられなかった、と考えていいと思います。脚が残っていれば後半の持続力勝負でサトノやレッドに引けを取る馬ではないので、マイルで勝ち切るならある程度緩んで時計勝負にならないパターンでないと、という事だと思っています。
 それでも久しぶりのマイルで1,31,8で走り切っているのは非常に立派ですし、もう少し時計がかかる馬場での総合力勝負なら、マイルでも充分戦える目途を立てたと考えます。むしろマイルチャンピオンシップの方が噛み合いそうなイメージなんですけどね。

 8着イスラボニータは、やっぱりこの枠だと難しい競馬になってしまった感じですね。
 道中はそれでもある程度出して行って馬群の中で先団を見る位置と、そのあたりのそつのなさは流石の手綱捌きだったとは思いますが、道中も緩まず凝縮する中で、そういう底力勝負でははっきり足りなかったヤングマンとブラックスピネルの真後ろでポケット状態になってしまったのは苦しかったです。
 実際直線も外から先にグレーターロンドンに抜けられ、その後ろから一瞬は脚を使って伸びてきますが時すでに遅し、という感じですし、この馬のタイプからしてもこの流れで上位に食い込むにはサンライズメジャーの競馬をしていないと無理だったろうと思います。
 
 タイプ的にはロゴ同様に持続力に頼れない馬ですし、追走面には不安はなかったわけで、今日の騎乗はそつはなかったけれど凄みもなかった、その中で馬自身には合わない競馬を強いる形になってしまったと考えていいと思っています。
 勿論この負け方で評価を下げる必要はないですが、今後も立ち回りが難しい場面では疑ってかかっていい馬ではあると思います。もっともマイラーズCも同じ文脈で疑ったらあんな素晴らしい乗り方で覆されたので、ルメールJが乗ってくる限り常にノーマークにだけは出来ないでしょう。

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2017 鳴尾記念 レース回顧

 穏やかな日差しの元、絶好のコンディションでの開催となった宝塚記念の前哨戦・鳴尾記念は、長い休養期間がありつつ、常に素質の片鱗を見せ続けてきたステイインシアトルが、老練武Jの絶妙な逃げにエスコートされて見事に初重賞制覇を飾りました。レースを振り返っていきましょう。

 今日の馬場は、昨日の渋りの影響もほとんどなく、それでいて高速過ぎず非常にいい状態だったと思います。
 内外のバイアスも例年ほどはなく、スローなら内が、流れれば外が、というイメージで、その上で9R500万下が33,2-34,5で1,07,7、10Rの1000万下が36,3-35,4-34,1で1,45,8と、それなりの時計は出ていました。

 その水準からすると、このメンバーで1,59,4はそこまで速くはなく、そして正直ラップを見るまでもなく、マイネルとスズカが来ている時点で直線入り口でかなり切れ味が問われる展開だったんだろうなぁ、と感じましたがその通りでしたね。
 展開は予想通り外からステイがじわっと出して行き、それにミュゼがついていって番手外、フロストが2列目ポケットに入り込みます。
 バンドワゴンは思ったよりスタート良く好位列に入ってきますが前をカットされて掛かり気味、そのやや後ろで、しっかりスマートレイアーがマークする形を作っていきます。
 デニムアンドルビーは中団でこちらもやや行きたがっていて、ラストインパクトは注文を付けて後ろからの競馬になりました。

 ラップは36,9(12,3)-48,4(12,1)-34,1(11,37)=1,59,4(11,94)という推移になりました。
 ハーフで取ると61,6-57,8で、後傾4秒近いドスロー、ではあるのですが、このレースのポイントは、序盤がかなり遅くて、そこからじわじわと加速し続けている、という点にあります。
 レースの3F目からの推移が、12,7-12,5-12,2-12,0-11,7-11,5-11,0と、都合7F連続で加速ラップになっていて、特にコーナーを抜けてからの向こう正面で、しっかり順々に引き上げることで、後続に一気の押し上げを許さなかったですね。

 どちらかと言うとこういう幻惑の逃げは横山Jの得意技で、武Jは中盤ラップをビシッと整えることで隙をなくすパターンの方が多いのですけれど、そのイメージを逆手に取る動き方、そして結果的に超スローに持ち込んだことで、コーナーでも11,7-11,5と引き上げて、外を回す組に足を使わせつつ、直線入り口で11,0とかなりの切れ味を引き出すことに成功しています。
 結果的に切れ味勝負、ではあるのですけど、中盤以降の推移で持久力、スタミナ面もそこそこ問われていて、その両面でそれなりに高いものを持っていた馬、またはポジショニングと切れ味の鋭さで勝負できる馬が上位に顔を出したレースになったと考えます。

 勝ったステイインシアトルは、準OP勝ちは普通に評価していたんだから印回しとけ、って話ですが、正直高速馬場でここまでスローに落としたらもっと早めに後ろからつつかれる、と思っていたんですよね。
 純粋な持続力勝負ではちょっと足りないのでは、と踏んでいたのですが、そこを細かい段階加速戦に仕立てることでフォローしつつ、ポジショニングの優位を最大限に生かしてきて、これは正直御見それしました、というしかありません。
 馬自身、タフな馬場でも軽い馬場でも、というのを証明してきましたし、もっともこれで余勢を駆って宝塚記念、となると同タイプのキタサン相手に何が出来ようか、という話ではありますが、まだレースキャリア自体は浅いですし、もう少し距離が伸びてもいいと思うので、2000~2500m路線で楽しみな1頭が出てきたなと感じます。

 2着のスマートレイアーは、なんというか普通に乗って普通に負けたなぁ、という感じですね。
 もっとも外主導の流れであれより前目に、というのはリスキーですし、バンドワゴンが前にいたのでそれを目標に、というのはアリでしたが、結果的にもう少し仕掛けを早くして前をつつき、よりフラットなロンスパ戦にしてしまった方が良かったとは思います。
 結局のところヴィクトリアマイルもそうですが、このレースも11,0の地点ではほとんど詰められていなくて、ラストはしぶとく伸びてきているだけに、持続力+切れ味のレースになってしまうとちょっと足りないんだろうなぁ、と感じますね。

 ただこの馬自身は、宝塚の適正は結構あると考えます。
 ペースが上がりやすい舞台で、みんなキタサンを意識する中で追走面の不安はないですし、キタサンは基本早仕掛けで持続力戦にしてくれるので、2列目ポケットあたりでじっとコーナーを我慢しつつ、直線でスッと進路確保するレースが出来れば、キタサン撃破はともかく圏内ワンチャンスある馬と見ているので、状態が整うなら出てきて欲しいですね。

 3着マイネルフロストは、この馬の好走パターンにある程度噛み合ったレースになってくれたのがまず大きいと思います。
 基本的に鋭い脚は持っているけれどそれを維持できるのは短いタイプですので、レースラップで最速地点が後ろに来れば来るほど好走しやすい、かつそこで絶対的な速度が問われた方がいい、というのは正に傾向通りです。
 個人的に今回は5F分散してのロンスパになる、と踏んで、その点で軽視したのですが、予想以上に前半をゆったり入ってきたことで、ロンスパではありつつもう一段の加速が問われる事になったのが良かったのでしょう。

 無論休み明けからの2走目で堅実に結果を出してくるのは馬も立派ですし、夏場の方が調子はいいのでしょうね。
 おそらく今後はサマー2000シリーズでしょうが、基本ハイペースには強くない、切れ味を問われないロンスパや、最速地点が速い持続力戦向きではないので、意外と人気はするけど狙いどころが難しい1頭にはなってくると思います。

 4着スズカデヴィアスも、基本的にはスロー専門で切れ味勝負がもってこい、ですので、この流れは悪くなかったと思います。
 この馬も使える脚そのものは長くはないので、今日のマイネルとの差はポジショニングに尽きるとは思います。前に行って急流だと何も出来ない馬なのでバランスが難しいですが、勝ち切るところまで考えるなら中団よりは前で受けて、その上でスローになることを祈る、というのが現状ベストになるでしょうか。流石に昔みたいに逃げに拘っていると、適性ペースに持ち込みにくいのは確かですしね。

 デニムはこういう瞬発力勝負の色合いが強くなると脆い持続力特化型ですし、この負け方はさもありなん、ですね。
 バンドワゴンも同様に、やはりここは罠だったか、という感じです。勝ちに行くなら1~2コーナーで外からじわっとハナを取り切ってしまうしかなかったかなと思いますし、流石のルメールJでも、いつもいつもそれが出来るわけでもない、というだけの話で、馬自身の適正から考えると納得のいく負け方ではあります。
 馬自身もう少し距離があっても、と思いますし、一度2400m近辺でじわっと外から逃げる競馬を見てみたいんですけどね。
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2017 5月第4週海外GⅠ レース回顧

**★愛2000ギニー [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=PhkD_pgYXds)**

 今週は紹介したいレースが多いので、ひとつひとつはちょっと巻き気味に行きます。
 まず愛2000ギニーは、いつもながら地元のA・オブライエン厩舎の調教代わりのように、6頭中4頭が同厩舎というレースになっています。

 勿論大将格は英2000ギニーの勝ち馬チャーチルで、僚馬ランカスターボマーが逃げ、更に僚馬を壁にして序盤じっくり足を溜めたチャーチルが、二番手を追走していたゴドルフィンのサンダースノーを楽に差し切って、連勝を7に伸ばしました。
 まぁ力関係的には去年のデューハーストSとほぼ同じ着差、というところで順当ですし、サンダースノーもドバイ&アメリカ遠征の疲れはあるでしょうが、ケンタッキーダービーは結局まともに走らずに終わったので、改めてこちらに戻ってきて、やっぱり芝では今一歩、というのを露呈してしまったかなと思います。

 ただどうも、チャーチル自身が凄く強い、ってイメージを持てない馬なのも確かなんですよね。
 後述するウインターに常に時計面で見劣っている、というのもありますし、より厳しいレースになった時にどこまでやれるか、という感はあります。
 次はおそらくアスコットミーティングのセントジェームズパレスSでしょうが、そこで仏2000ギニー路線とぶつかってどうなるか楽しみです。

**★愛1000ギニー [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=SNVXW-yX9H8)**

 こちらもオブライエン厩舎&ガリレオ産駒の葦毛・ウインターが、道中は馬群の中から直線で鋭く脚を伸ばし、ローリーポリーに5馬身近くの差をつけて圧勝しました。
 ここは予想通り、英1000ギニー2着のロードは英オークスに回して、より距離適性の高いウインターがマイル路線で二冠達成と、今年のオブライエン厩舎はいつも以上に手が付けられない状態になっていますね。

 ラップや馬場状態の正確なところは全く分からないのでなんともですが、でも映像で見る限りスパート態勢に入ってからの迫力は、チャーチルよりこちらの方が大物感、スピード感はあるイメージです。
 着差的にはローリーポリーが仏1000ギニーで5馬身差負けくらいだったので、あちらの上位とそこの比較だけなら互角、というイメージで、仏ギニー戦線もどちらかと言うと1000ギニーの方がレベル高かったように感じているので、今年は牝馬が面白い年かもしれません。
 こちらもコロネーションカップでの激突が楽しみです。

**★タタソールズゴールドカップ [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=42epEEqSl5w)**

 大本命のはずだったマインディングが故障で春シーズン全休となり、かなり手薄なメンバーで行われた一戦は、かなりのスローからデコレ-テッドナイトが差し切っての勝利になりました。
 ここはドバイターフ組が結構出てきていて、直行のデコレ-テッドナイトが、間にGⅢを二つ挟んできたドーヴィルを楽に退け、間にロッキンジSから連闘の牝馬・サムハウが食い込んでくる、という事になっています。

 このレースは毎年オブライエン厩舎の古馬エース格が足慣らしに使ってくるのでそこそこメンバーのネームヴァリューは高く、去年もファウンドが出て2着でしたが、今年は普通にメンバーが揃ったGⅠではちょっと足りない馬同士の戦い、という様相で、馬場が悪かったのも合わせてあまり今後に繋がりそうなイメージは持たなかったですね。

**★イスパーン賞 [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=dQkDCYik_5k)**

 去年はエイシンヒカリが驚愕の10馬身差Vを決めた伝統のイスパーン賞は、今年もロンシャン改修に伴いシャンティイ1800mでの開催となりました。
 ガネー賞でラスト鋭く伸びて2着に食い込んだザラクが圧倒的1番人気で、2番人気がアークール賞2着(勝ち馬クロスオブスターズがガネー賞の勝ち馬にもなっています)のメクタール、5頭立てのやや寂しいメンバー構成でしたが、結果はメクタールが前々から押し切り完勝、ザラクは勝負所での反応が悪く、2度ほど躓いてからは無理せずに手綱を絞って最下位と明暗が分かれました。

 ラップ的には上がりが11,7-11,2-11,5くらいの瞬発力勝負で、勝ち時計も1,49,92と、高速傾向が強いシャンティイにしては遅く、前目でじっくり溜めた馬が加速力と切れ味の差で押し切ったイメージですね。
 メクタールもクロスオブスターズ同様、去年のクラシック戦線では一歩足りない、ザラクにも及ばない戦績でしたが、そこからじっくり休ませたことで成長してきているなぁ、という感じです。逆にザラクは成長力が足りないのか、レース展開が向かなかったとはいえ要所の反応の悪さが目立ち、完全に人気先行に拍車がかかっているなぁと感じます。

 どちらにせよフランスの中距離路線はアルマンゾルが最強なのは疑いなく、そこに改めて挑戦していく上がり馬が続々出てきているのは面白い傾向だなと思います。

**★香港チャンピオンズ&チャターカップ [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=dV_cLXgLqKQ)**

 クイーンエリザベスⅡ世Sでは、緩急の在り過ぎる流れの中で差し損ねた感の強いワーザーが、距離を2400mに伸ばし、早め早めの強気の競馬で完勝してきました。
 このレースも強烈にスローなのは確かですが、それでもクイーンエリザベスⅡ世Sよりはマシで、道中いつでも動ける位置からロングスパート気味に仕掛け、ラスト2Fを22,4くらいでまとめてきているので、後ろの馬では手も足も出なかったですし、切れ味の足りないブレイジングスピードとは距離適性、素材の差をしっかり見せつける格好になりましたね。
 やはりまともに走れれば香港中長距離路線はまだまだこの馬が最強だと思います。

**★ゴールドカップアットサンタアニタステークス [レース映像](https://www.youtube.com/watch?v=H3RLsuVg29Q)**

 サンタアニタ開催になって4年目の伝統のゴールドカップは、ハイペースの中先団の一角を占めていたキューピットが直線で力強く弾け、長期休み明け即初GⅠ勝利となりました。
 去年のクラシック戦線ではクリエイターあたりといい勝負をしていた馬で、かつ勝つときはあっさり、負ける時もあっさりという大味な馬でしたが、このレースではその味がプラスに働いたようです。
 時計的にもかなり前傾で強い競馬が出来ているので、こういう流れでスムーズに競馬出来れば、というイメージですね。

 サンタアニタHでシャーマンゴーストと僅差の2着だったミッドナイトストームがここは4着と崩れてしまっていますが、ハードエーシズとの力関係的に、この馬が調子を崩しているか、この流れでは噛み合わず力を出し切れなかったかで、キューピッドがすごく強い、という力関係ではないと思います。
 それでも現状対アロゲート陣営として、シャーマンゴースト、ガンランナーと肩を並べるくらいまで上がってきたのかな、と思いますし、今後のローテーションに注目ですね。

 
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2017 さきたま杯 レース回顧

 初夏の浦和名物の交流重賞・さきたま杯は、ホワイトフーガが向こう正面からの一気の捲りで突き放し、強力牡馬勢を蹴散らしての混合重賞初制覇を飾りました。
 我ながら5分で予想した方がまともに当たるってどういう事やねん、とは思いつつ、しかしレース展開は思い描いていたものと全然違っていましたので、しっかり回顧していきましょう。

 まず今日の馬場は、いつも同じこと書いてる気もしますが最近の南関らしく重めの馬場で、そんなに時計が出ている印象はありませんでした。
 レース展開は、内からラブバレット、アンサンブルライフ、外からはニシノラヒート、カオスモスと、地方勢がこぞってハナを狙う展開になり、最終的には外からカオスモス、番手にアンサンがつけて、ポケットにラブバレットという先団になります。
 ベストウォーリアはそれを見ながら先団のすぐ後ろ、それをマークするようにホワイトフーガが向こう正面で外に持ち出し、スタートの2歩目で大きく躓いたモーニンは、一旦先行勢をやり過ごしてから外に出し、リズムを立て直します。

 ラップは36,3(12,1)-12,6-36,8(12,27)=1,25,7(12,24)という推移で、近年ではもっとも好時計での決着になりましたね。
 この3-1-3Fの推移で見るとややハイ寄りの平均、となるのですが、地味にこのレースの勝ち時計を押し上げているのが、600-400m地点の11,3という猛ラップです。

 ここは向こう正面の後半から3コーナーに入っていく地点になり、毎年ペースが上がるところではありますが、今年はここで一気にホワイトフーガが外から捲り切って、一気に後続を突き放してしまいました。
 去年もソルテがこの地点で13,0-11,6という素晴らしい加速を見せて後続を振り切る動き出しを見せていましたが、今年も12,6-11,3と強烈なギアチェンジが問われていて、それに対応できるかどうか、その準備が出来ていたかというところはポイントになったと思っています。

 それにしても、ホワイトフーガってどちらかと言うとこういうスパッと切れる動きが出来るタイプと判断していなかっただけに、この勝ち方には驚嘆させられました。
 ただ今年はある程度前もやり合ってくれて、自身もスムーズにスタートを切っていいポジションが取れていました。
 その上で向こう正面の入り口から早々に動き出すイメージを持って入っていたのは確かで、ベストウォーリアに抵抗する暇も与えず一気に捲り切ったのが結果的にはファインプレーだったと思います。
 流石にあのコーナーで持続力レベルの切れ味を使ってしまっているので、ラストは12,4-13,1と消耗はしていますが、それでもあのリードは決定的でしたし、他の馬も一気に動かされて脚を削がれていたと思うので、そこも含めてこの馬の良さを完璧に引き出せたレースになっていると思いますね。強かったです。

 2着モーニンは、むしろよく2着に来たなぁと思います。
 2歩目の躓きは結構大きくて、そこからダッシュを効かせられずに馬群の中、の時点でダメかな、と思いましたが、流石に絶好調のルメールJというべきか、慌てず騒がず外目の進路を選んで、馬のやる気を削がない事を優先して外々を回す競馬で、しっかり最後までこの馬のしぶとさを引き出してきましたね。
 べストとの対比で言うと、元々4歳時の根岸Sなどでも、追走を高く問われつつ要所の一足で鋭く抜け出す、という競馬は出来ていて、加速適応はこちらのほうが上だと思っていたので、このコースで起きやすいラップの乱高下に対しても噛み合ったのかな、と思います。

 3着ベストウォーリアは、負けのメカニズムとしては去年同様、加速地点でついていけずにジリジリ、となってしまいましたね。
 最後もバテてはいないと思いますが、要所でスッと動けないのはこの馬の弱みで、だからこそ後半のラップの波が少ないハイペースの方が噛み合うわけですね。
 このレースも、去年の当レースも字面だけ見ると平均からややハイ、くらいの推移で合いそうに見えますが、共に勝負所の加速度が非常に高いので、条件として不得意、と見做していいのだろうと思います。
 確かに一時期の超絶の安定感は影を潜めだしましたが、まだ能力自体に衰えはないと思っているので、適性舞台の南部杯あたりは当然侮れないでしょう。

 アンサンブルは大分力をつけてきていますね。距離もこのくらいが合うのでしょうし、まだ4歳ですので今後の成長に期待、ソルテに続く南関スプリント路線の雄に育って欲しいですね。
 ラブバレットは位置取りは良かったですけど、直線やや狭くなるところもありましたし、そこをグイッと来られないのも距離なのかな、と感じます。クラスターCは全力で狙います。
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2017 安田記念 プレビュー

**★はじめに**

 まだまだダービーの残響も冷めやらぬ中ですが、今週は古馬の春のマイル王決定戦、安田記念が行われます。
 ここ数年はダービーを機に賞金編成が一新されるので、そのせいで伸び盛りの4歳馬が出走しにくい事になっていたりもして、毎年直前までメンバーが読みにくいのが特徴的です。
 ただ近々降級制度は廃止されるかも、という話も出ていますし、そうなれば傾向も変わってくるとは思いますね。
 やはり今までの感じを見ると、ここまでに無理せずローテーションを組めた馬の方が強いイメージはありますが、色々な路線の馬が入り混じっても来るので、ペース的にも波乱の多い、一筋縄ではいかないレースになっていると思います。

 今日はちょっと時間がありませんので、少し駆け足で進めていこうと思います。決して昨日のダービーのレース内容で意気消沈している、というわけでは…………なくはないですけど。

**★レース傾向分析**

 府中マイル戦で、Cコースでの開催になります。
 昨日の時点でもうかなり内側は掘れていたので、良馬場でもコース取りは難しくなってくると思いますし、また今の時点で週末金曜土曜に雨マークがついています。
 基本的にはコース形態的にも流れやすいレースではあるのですが、また雨の影響が残るようなら、去年のようなスローの展開も十分有り得ます。メンバー的にも絶対に逃げる、と言う馬がいませんし、あまり傾向には捉われず柔軟に判断はしたいものです。

 とりあえず過去10年の平均ラップを見てみましょう。
 34,2(11,4)-23,4(11,7)-35,1(11,7)=1,32,7(11,59)という推移になっています。
 これだけ見ても基本的には前半からガンガン入って、中盤もあまり緩まず、末脚勝負にはなりにくい、というのが見て取れます。もっとも上がりに関しては超不良馬場のジャスタウェイの年の37,7がありますので、それを抜きにすれば34,8くらいと、ややハイの平均くらいの閾値に収まってきます。

 ともあれ、そんな馬場のジャスタウェイの年ですら35,1-24,0-37,7というペースだったわけで、去年の35,0-24,1-33,9という推移がいかにこのレースとしては異端だったかはよくわかります。
 でも今年も雨が残りそうな馬場で逃げ馬不在、ヴィクトリアマイルもそういう条件でドスローになったことを考えると、必ず流れる、とは言い難いのが悩みどころになってくると思います。
 ただこれはちなみに、ですけど、2010年もダービーがドスローで、するとこのレースでは一転して超ハイペース、という事になっていたり、先週不甲斐無い乗り方をしてしまったという気負いがここで極端に振れるパターンもあるので、本当に枠が出てもペース予想は最後まで悩みつくすだろうなと感じています。

 脚質的には基本スピード勝負ですので、高い追走力が問われます。
 加えてコーナーでも緩まず仕掛けも速いのが特徴的ですので、後方から大外ぶん回しではまず届かず、中団後ろからとなる場合もコーナーはタイトに、直線で上手く進路を確保して、という器用な動きが出来た馬が好走しているイメージです。
 無論極端な前傾になった年は追い込みにも出番はありますが、近年の騎手の意識の下がり方を見ても、そこまでのレースになる可能性の方が低い、と見ていていい気はしますし、最序盤のポジショニングの上手さと、総合的な後半要素、かつ持続力面で相対的にいいものを持っていれば面白い、という感覚でいいかなと思っています。

**★有力馬所感**

・イスラボニータ

 ルメールJの4週連続GⅠ制覇なるか、という点でも注目の、2014年の皐月賞馬が、前走マイラーズカップで嬉しい復活の美酒を味わった余勢を駆って二つ目のGⅠ制覇に挑みます。

 この馬の最大の武器は加速力と瞬発力の質にあり、反面持続力は甘くラストで差し切られる、或いは届き切らない、という競馬になりやすいです。
 追走力は高いものがあるので、どんなレースでもポジショニングの意識は大切で、最低でも3列目くらいにいれば、インからでもスッと動ける強みはあるので、まず大崩れはしないタイプになってくると思います。

 ただ一貫スピードレースになると、この馬の武器である加速と切れ味はあまり問われなくなってくるので、この馬自身としては程良い平均ペースで二列目くらいに入っていけるパターン、かつ仕掛けもやや遅めで坂地点最速が顕著、という展開が最善で、完璧に勝ち切る、という絵図を描くための枠はそんなに広くはない、と考えています。
 今回は他の馬の出方も読みにくく、騎手の意識的にもいい加減ルメールJ一人にいいようにやられっぱなしには出来ない、とマークされる意識も強まると思うので、圏内と言う意味での信頼度はそれなりに高く置けますが、本命を打てるか、と言うと悩んでしまう馬ですね。

・エアスピネル

 今年からマイル路線に転向し、着実に結果は残してきたエアスピネルは、悲願のGⅠに手が届くのでしょうか?

 この馬もタイプとしてはイスラ同様持続力は甘いタイプで、かつイスラほどの自在性はなく、馬の後ろにつけると頭を上げてしまう悪癖も解消されていないので、レースへの入り方が難しい一頭です。
 前走のように本仕掛けそのものが遅れるパターンは歓迎ですが、より本質的に考えると、イスラを凌駕出来る武器は追走面にしかないかな、と思っています。

 ある程度前を自分から突っついて厳しい流れを演出しつつ、仕掛けをギリギリまで待つ、という強気の競馬が展開出来れば逆転の余地はあると思いますし、同時にこのレースを勝ち切る絵図も見えてくるでしょう。
 理想的にはある程度中目~外寄りの枠から何かを逃げさせて、それを番手で積極的につついてペースを緩ませず時計勝負に持ち込むしかない、と思いますし、昨日のダンビュライトでは、そういう持ち味を生かす強気の競馬が出来ない位置に押し込められた無念を、この馬で合わせて晴らして欲しいなと思っています。

 並び的に強気な先行が出来そうなら評価を上げますし、内枠だとまた展開待ちになってしまうので少し下げて評価したい、今のところはそんなイメージでいます。

・レッドファルクス

 前哨戦の京王杯スプリングカップを制し、距離延長に大きな可能性を見出しての安田記念参戦になります。
 この馬の場合は基本的に後傾タイプで、前半ゆったり入れれば強烈な持続力を使ってきます。
 その点追走が楽になる距離延長は決してマイナスではないと思いますし、近年は中京1200mで後傾型の強い競馬が出来ている馬が府中マイルで活躍する傾向にあるので、その点も強みになってきます。

 一方この馬は後半型としてはほぼ持続力特化型であり、加速や切れ味そのものはそこまででなく、エンジンがかかればながーく11,0前後の脚を繰り出し続けられるのが特徴的です。
 故に動き出しのイメージはとても大切になりますし、それこそ他の馬に先んじて動いてしっかりロスの少ない進路を確保する戦略は大切になってくるでしょう。あとこの距離で、ポジショニングの面でも進展、中団前後を取れるかどうかも焦点になってきます。

 デムーロJはここ二週、前受けしたルメールJにいいようにやられてしまっているので、ここで肚を据え直して、この馬が勝つための競馬を強気に展開して欲しいです。
 このレースの平均的な流れになれば基本切れ味はそんなに問われませんし、脚を出し切れれば勝ち切れる可能性は充分にある一頭でしょう。この馬も包まれたくはないのでやや外目の枠が理想ですね。

・ロゴタイプ

 昨年は玄妙なスローペースに落とし込み、番手で引っ掛かったモーリスの鞍上の意識すらも利用した段階加速で見事に出し抜いたこの馬が、連覇を狙ってきました。

 去年はああいうトリッキーなレースになったのであまり参考にはしづらいですが、まず前提として、決してこの馬は追走力は低くありません。
 近走はスローにコントロールする事が多いですが、むしろそうなっての早仕掛け、持続力戦の方が苦手で、それをポジション差で誤魔化していると言えます。

 なので実のところ、例年通りの流れで前目内目につけ、後ろの仕掛けをワンテンポ待って、という競馬の方が楽しみは大きく、内枠を引いて何かが引っ張ってくれる展開ならかなり面白さが出てきます。
 逆にまた自分で逃げてしまうと、去年がありますから早めに後ろからつつかれて仕掛けを待てず坂上で失速、となりかねませんので、今年は位置取りのバランスと全体のペースが重要な好走要因になってくるでしょう。

 個人的に内を引き、外から2~3頭行ってくれて2列目ポケット、イスラより前を取ってじっと仕掛けを待つパターンはかなり怖いですし、逆に外からなし崩しに足を使う展開だとちょっと厳しい、と考えます。
 それこそ番手外で上手く支配出来ればまた違ってくるかもですが、結局のところイスラ、エア、ロゴあたりは好走条件が似ているので、その中でポジションの優位とレース支配権をどれが取れるか、という観点で序列を決めるのもアリかな、と思っています。

・サトノアラジン

 去年で1400mがベスト、1600mではちょっと足りない、というのは露呈してしまった感はあるのですが、ひとつ光明があるとすれば、去年のマイルGⅠふたつはどちらも馬場がかなり荒れていました。
 今年も天気は微妙なのですが、もしもあまり雨が降らず、昨日の高速馬場のままで安田記念を迎えることになったら、その時は一気にチャンスが広がると考えてもいいと思います。

 基本的に後傾型で溜めれば溜めるだけ切れ味に転化できるタイプで、その質もこのメンバーなら間違いなく最上位です。
 ポジショニングの面でどうか、というのはあれ、同じところからのヨーイドンならレッドファルクスには切れ味の差で優位に立てるでしょうし、後は動き出しのイメージがあまり良くない川田Jが、ここでしっかりこの馬のタイミングで動いてこられるか、となります。
 レース展開としてもコーナー出口が最速、という早仕掛けになってくれれば言う事はないですし、少しでも渋りが残るようなら軽視しますが、土曜の時点で高速が維持されている、と見做せば一気に浮上させる可能性も残っている馬ですね。

・アンビシャス

 この馬の場合は、どうしても一度出して行こうとするとガツンとハミを噛んでしまってブレーキを効かせ辛い、というのが大きな欠点になっています。
 そのせいで、本質的にはかなり質のいい追走力を持っているのにそれを生かせず、総合的な良さを引き出せずに後半要素だけで勝負して足りない、というもどかしい競馬が続いてしまっています。

 その意味でこの舞台はかなり合うとは思っていて、上手く流れに乗って中団やや後ろ、くらいを取れれば怖さはあります。
 距離短縮馬にありがちなスピード負けをする馬とは思っていませんが、後半要素としては一貫持続型、レッドファルクスと同様同じくらいの速い脚を長く維持するのが最大の武器で、トップギアに入れてしまうとそこからの持続は短いので、その脚の使いどころが鍵になってきますね。

 枠的には壁を作れる内目の方がいいと思いますし、後は近走中距離ばかりなのであまり後ろになり過ぎないポジションをしっかり意識的に確保できるかどうか、魔術師横山Jの手綱捌きが非常に楽しみな1頭です。好きな馬でもあるので、重く狙うかはともかく印は打つつもりです。

・ステファノス

 この馬の場合は逆に、スローからの持続力勝負特化型になってきます。
 過去に同じ舞台の富士Sを勝ってはいますが、あのレースも47,6-45,6とかなりのスローからの600-400m地点最速の持続力特化戦になっていて、安定して上位に食い込んでくるとなるとこういう流れが必須ではあると思います。
 前半からガンガン流れて、このレースの平均的な46,2-46,5くらいのバランスになってしまうと追走面で厳しさがあると思うので、スロー決め打ちでかつ誰かが早仕掛けする、と読める並びなら狙い目は立ちますが、マイル全体のスピード勝負になると踏めばあまり重視しなくてもいいかな、と考えています。

・ブラックスピネル

 この馬も前走の負け方で人気を落としそうですが、安田記念が本来的な流れになった時に怖さは充分ある1頭です。
 京都金杯を見ても追走力はかなり高く、かつ高い持続力を持っていて、前走に関してはプラス切れ味の質を問われたところで足りなかったですし、ポジションも悪かったので仕方ない負けと見做せます。

 どうしても先団の並びが読みにくいわけですが、東京新聞杯で逃げてもOK、と言うところは見せたので、この馬がペースを作っても面白い、とは考えています。ボンセルヴィーソみたいなレースが出来れば、あの馬よりはしっかり粘れると思います。
 ただ逃げるの大嫌い音無厩舎で、前走もその辺の含みがあってあの位置、という気もするので、松山Jに替わってより指示としては溜めていけ、ってなりかねず、その辺はしっかりコメントを見ていきたいところです。

 でもミッキーアイル同様、逃げて味のある馬は沢山いるわけですし、こんな混沌とした構成の中では主導権を強い意思で取り切ってしまった方が断然優位、というのは昨日のダービーを見ても一目瞭然です。
 そのダービーではいいポジションを取りながら、動き出しの意識の中で後手に回って何も出来なかった、と反省を見せている松山Jですし、ここで腹を括った強気の仕掛け、ポジショニングでレースを盛り上げて欲しい、その上で結果にもつなげて欲しいですね。勝てる力はある1頭だと考えています。

・グレーターロンドン

 まだ出否未定ですが、出てくれば当然注目の1頭にはなります。
 とにかく後半要素の絶対量が化け物で、特に瞬発力の質/持続力面ではこのメンバーに入ってもサトノアラジンと双璧か、むしろそれを凌ぐかも、というくらいの素材ではあります。

 ただ弱点というか、まだ見えていない適性の部分が余りにも多いです。
 まず追走面は未だに半マイル48秒ペースをクリアできるのかがわかりません。
 仮に48秒で削がれない、としたら、後半44秒前半でまとめられる脚力があるので、机上の計算では勝負に加わってこられますし、前半を47秒まで詰められるなら確実に勝ち負けでしょう。

 ただそれはやってみないとわかりませんし、またこの馬は加速力、動き出しの面ではやや鈍さがあり、特にコーナーで動くのはあまり得意ではありません。
 その意味で、動き出しの意識が高い田辺Jから、流れに合わせてじっとしている事が多い福永Jへの乗り変わりはプラスに転じるか、と言われると微妙で、踏み遅れればいくら末脚を持っていても、という事になるので、そのあたりも不安視できます。
 また、ここまで出るかどうか悩むあたりから調整も微妙でしょうし、個人的には無理せず関屋記念あたりからでいいんじゃないかな、とは思いますね。出てくると評価に悩みますが、流石に打っても連下まで、というのが妥当なラインかなと思います。

・コンテントメント/ビューティーオンリー

 他にも触れたい馬はそこそこいるのですが、時間がないので最後に香港勢の評価を。
 この2頭はチャンピオンズマイルの1、2着馬となっていて、去年のモーリスの調整が頭を過ぎりますが、向こうから来る分にはさほどハンデにはならないでしょう。

 今回コンテントメントにはモレイラJを配してきて、それだけで穴人気しそうな気はしますが、少なくともレース全体が常識的に流れた時にはビューティーオンリーの方が上だと思っています。
 コンテントメントはスローからの持続力型で、前走も一旦外のヘレンパラゴンに切れ味で見劣りつつ持続特化で差し返す芸当を見せていて、適正面では位置を取れるステファノス、という感じでいいと考えます。

 なのでもしも他の日本馬が誰も行かない中で、この馬がスッと逃げてペースをスローにコントロールしてくれば怖さはありますが、普通に46秒ペースで流れたなら基本甘くなるので軽視でいいかなと考えます。
 去年は位置取りからどうにもならなかったですし、場慣れと展開面の利ががっちり噛み合えばチャンスはあるものの、流石にそこまでこちらの層も薄くない、と思いたいですね。

 ビューティーオンリーのほうが、しっかり馬群の中からでも動けるし、かつハイペース適正がかなり高いので楽しみはあります。
 去年末の香港マイルでも、ロゴは詰まったところはあるとはいえ、香港では珍しいハイペースの展開でこれを撃破していますし、進路取りのタイトさ、追い出しの力強さではバートンJも素晴らしいものを持っていますので、まともに脚を出し切る展開になれば警戒はしたいと思っています。

**★思い出の安田記念**

 やはりこのレースだとウオッカが一番先に出てきますね。
 1年目の、ヴィクトリアマイルをスローペースで取りこぼしてからの積極策での押し切りもインパクト充分でしたが、より凄みを感じたのはインからスペースがなく、残り100mまで前が壁のまま動けない所から、ラストで猛然と追い込んでディープスカイを差し切った2年目でしょうか。

 とにかくウオッカはレース全体の総合力勝負に強い馬でしたし、前半が流れないと顕著にコロッと負けるのが印象的で、その意味でも安田記念は一番噛み合う舞台だったのだと思います。
 ウオッカの場合、低レベルメンバーのダービーを後半特化で勝ち切れてしまった事から実像が見えにくい馬だったと思いますが、府中マイルでは史上最強クラスに強かったですし、絶対能力と根性で距離をこなせるマイラー、それこそオグリキャップと同類の異質な化け物でしたね。

 あと凄い地味な所では、ツルマルボーイも好きです。
 末一手で中々勝ち切れなかったこの馬を、上手く馬群のど真ん中からスルスルと動かして差し切ってみせた安藤Jの妙技には唸らされましたし、この年はこれでダービーからの連勝と、バイオリズムの良さを見せつけた格好になりました。
 その意味で今波に乗り切っているルメールJが、基本GⅠではちょっと足りずを繰り返していたイスラを戴冠させれば、歴史は繰り返す、というのを地で行くことになるなぁと考えたりしています。

 ともあれ、古馬のマイル王決定戦らしい締まった流れを期待したいですし、全馬が力を出し切っての大激戦になるといいなと思います。流石に2週続けてスローはイヤです…………。
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