2017年02月23日

2017 金鯱賞 レース回顧

 快晴で芝の青さも眩しい春の中京開幕戦、今年より大阪杯のステップレースとして移行してきた金鯱賞が行われました。
 年末の金鯱賞と同様に、ヤマカツエースが鮮やかに差し切って変則連覇達成となったこのレース、内容はどうだったか振り返ってみましょう。

 スタートからの展開は、パドルはいいスタートでロードも少し外に寄れる感じで出ていくも、そこからしっかり押してハナを主張、その動きを見ながらパドルが番手外を取りに行きます。
 ただ思いの外内枠勢も積極的にポジションを取りに来て、プロディガルサンはあるかな、と思っていましたが、ルージュバックまで先頭列に入ってくるとはちょっと思っていませんでしたね。
 その後ろに外からフルーキー、1枠2頭が前に行ったことでナスノセイカンやルミナスウォリアーあたりは苦も無く1列前を確保できて中団、ヤマカツも出たなりに中団前目での競馬になります。

 ラップは36,5(12,17)-47,6(11,9)-35,1(11,7)=1,59,2(11,92)という推移でした。
 序盤が緩くなるのは形態的に仕方なく、むしろ比較的流れている方で、かつこのレースはかなり中盤が速くなっています。
 スタートから800mあたりでフルーキーが引っ掛かり気味に前に押し上げていったことで、玉突き的にパドル、ロードとペースを上げる形になり、残り1200mからが11,7-11,7-12,0-11,9-11,4-11,8という推移で、地味に6Fのロンスパ戦となっていて、先団でもろにこの流れに乗っていった馬はその面での適性は問われたと思います。
 でもそれでも直線入り口で11,9-11,4とそれなりに加速はしているし、全馬基本的には余力を持って直線に入れる、そこからスムーズに進路を確保できたか、持続力を引き出せたか、という勝負になったと見ていいでしょう。

 勝ったヤマカツエースは盤石の競馬でしたね。
 ややごちゃつく先団をじっくり見つつ道中はインも、3コーナーからじんわり外に出すイメージを持って進めて、4コーナーもそれなりに小さく回りながら前はガラッと空いていてスムーズでした。
 直線でも内のコースはごちゃついたままなのを尻目に、坂地点での切れはそこまででもなかったものの、ラスト200mで2馬身くらいを楽々捕まえる、持続力を存分に引き出した強い競馬、いい騎乗だったと思います。

 自身3Fは11,9-11,4-11,4くらいに見えますので、坂でややもたついた感じがあるのは年末の金鯱賞と同じ、その意味では最後に坂が待つ阪神2000mはベストではないかも、とは思います。
 実際鳴尾記念も同じ様に外からの競馬で伸びあぐねていたり、評価の難しいところですが、でも今の充実ぶりなら一気に突き抜けても不思議はないですね。
 まぁしかし、本当に中京2000mはキンカメが良く走りますよねぇ。素直に人気なら信じておけ、ってところでした。

 そして2着のロードヴァンドールには色々と驚かされましたねー。
 勿論前走が強い競馬だったのはわかっていたのですが、そこではじめてハイペース適正を見せて、今回はそこそこ流れてのロンスパ適性まで見せてきて、坂で番手グループを多少なり出し抜き、最後まで粘り切る強い競馬でした。
 実質6Fの高速持久力戦の中で、しっかりラストに持続力水準にまで加速する余力を残していたのは素晴らしいですし、まあ私の見立て的には、後で触れますけどパドルがこの競馬をしてくれるはずだったんですけどね。。。ともあれこれで更に競馬の引き出しが広がりましたし、先が楽しみな1頭になってきました。

 3着スズカデヴィアスは、出たなりに控える競馬と今回の流れがかなり上手く噛み合ったかな、とは思います。
 極端なスローではないにせよ、この馬の位置ならかなり後傾バランスで入れていますし、前のペースアップに無理についていく必要もなく自分のリズムでスパートできていますから、前目の流れに乗っていた上位2頭とは着差以上の差はあるかな、とは思いますが、今後もスロー展開なら堅実に差し込んできそうな雰囲気ですね。

 4着ナスノセイカンもいい競馬は出来ましたが、結果的にインがごちゃついたのを捌くのにやや手間取ったのが勿体無かったですね。
 とはいえ、あの中団のインを苦もなく取れたのは1枠2頭が先頭列に果敢に入っていってくれたから、というのはありますし、でも今回こうして馬群を捌く競馬でも脚を引き出せたのは今後に繋がると思います。どこかで重賞のひとつくらいは勝てる馬だと見込んでいるのですけどねー。

 5着ルミナスウォリアーも文脈としてはナスノと同様、AJCCではナスノにやや不利があった分、実際的な実力は五分に近いのかな、と感じさせる立ち回りと差し脚でした。
 この馬の方が小回り適正、コーナー加速は上手いと思うので、今年のサマー2000あたりで楽しみになりそうです。七夕賞とか面白いと思いますね。

 ステファノスとしては結構理想的に前が流れてくれた、と思うし、直線もかなり外に回したとはいえ今日は普通に外差しもバンバン決まる馬場でした。
 そう考えると一周コースの適性の低さと不器用さは出たかな、と感じますし、やはり本番は大阪杯、という部分での勝負所での本来的な切れを引き出せなかったのかな、と考えます。
 とはいえ本番もコース的にはあまり合うイメージではないですし、この馬向きのスローロンスパにはならなそうな気もしているので、ちょっと狙いにくいかなぁ、と今のところは判断しています。

 プロディガルサンは出していったことで少しかかってしまいましたし、本質的にはロンスパ向きではないだろう、というところで、この流れにもろに入っていったのは、持ち味の切れを削ぐには充分だったかな、とは思います。
 あとある程度パドルが動いてくれればスムーズに捌けたところで、パドルが全くダメだったことで進路取りが難しかったのはありますし、この一戦で2000m適性を決めつけたくはないですね。

 ルージュもあの位置を取りにきたのは素直にやるなぁ、と思ったのですが、結果的にこの馬が先団雁行列に入ってきたことでよりごちゃつく格好になってしまったのはツキがないというべきか、やはり基本的には外からゆったり入って出し切りたいタイプだよなぁと。
 直線も前が空かず、手応え自体は残っているように見えましたけど、実際に捌けてどうだったか、2着はあったかもですがヤマカツには届かなかったんじゃないかなと、適正面から考えると思いますね。
 この馬は素直にVMでいいと思いますし、そこでペースが落ち着いてくれればチャンスはあると思います。去年みたいに平均の高速戦だとやや厳しいかもですが、相手関係的には絶対的に去年よりは楽でしょうしね。

 そしてパドルがこれだけ崩れたのはうーん、ですねぇ。
 ひとつ言えるのは、ここまで極端なロンスパ向きではなく、かつ自分からスイッチを入れるならともかく、外からフルーキーに被せられる形で無謀なタイミングでの仕掛けを余儀なくされた、というのはあります。
 でもロードもそれに巻き込まれて、でも粘り切っているのを見るとちょっとだらしなかったですし、状態的な面も考えておくべきでしょう。小倉遠征の後で大幅にマイナス体重、ってのは確かにイメージは良くなかったですしね。推移だけ見ればシンガポール戦に酷似しているようでこの結果、やはり予想は難しいものです。
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私的名馬列伝 第五話 バブルガムフェロー

**★はじめに**

 元々今日はこの馬の列伝を書こうと決めていたのですが、何の因果か丁度、今年の牡馬クラシックの主役の一翼を担うと期待されていたブレスジャーニーの骨折による戦線離脱のニュースが流れました。
 年明けから調教のピッチが上がらず不安視されていて、スプリングSでの復帰を一度は発表しつつの離脱は、ここまで懸命に立て直しを計ってきた陣営にとっても痛恨でしょうし、ファンとしても今でも手薄な牡馬戦線が更に寂しくなる、ましてそれがこんなにドラマ性のある馬ともなれば尚更に残念です。

 奇しくもバブルガムフェローも、クラシックで有力視させながら直前離脱を余儀なくされ、けれど復帰後も変わらぬパフォーマンスを発揮して活躍した名馬ですので、ブレスジャーニーにもしっかり怪我を治して、またあの小気味よい切れ味を披露してもらいたいものです。

 ともあれ、バブル自身は当時産駒デビュー二年目の、飛ぶ鳥を落とす勢いのサンデーサイレンス産駒、その中でも垢抜けた馬体と雰囲気を持ったエリート然とした馬でしたし、それらしい賢さとそれゆえの詰めの甘さ、時には脆さも見せた、こういってはなんですがあまりはっきりとした強さを感じさせない不思議な馬でした。
 [生涯通算成績](https://keiba.yahoo.co.jp/directory/horse/1993109219/)は13戦7勝2着2回3着3回、着外に敗れたのは3歳時のJCのみと、今でいうなら馬券圏内を外したのは一回だけと非常に安定した戦績を誇っています。
 それでもやはり時代を代表する名馬、とまでは思われないのは、結果論的に見て時代の印象を担う対決で悉く敗れ去った事は影響しているでしょう。
 産駒成績もそこまでパッとしたものは残せなかったですが、そんな風にどこまでもマイペースに飄々とエリートコースを駆け抜けていったこの馬の歴史を改めて振り返ってみましょう。

**★新馬~スプリングS<名門の看板に恥じず>**

 バブルガムフェローは、当時でも既に名門厩舎として名を馳せ始めていた藤沢厩舎の期待馬らしく、秋の府中開催1800m戦でデビューします。
 今だと新馬と未勝利で本賞金が違ったりもして、単純に新馬は競馬に慣らさせる為の叩き台、という考え方は薄らいでいる気はしますが、当時は期待馬であるほどに初戦で無理はさせない、特に当時のトップジョッキーの岡部Jが携わる馬にはそんな傾向が顕著にありました。

 初年度産駒の大旋風を受けて、一層にサンデーサイレンス産駒への期待感も高まっており、その中でも牧場時代から西のダンスインザダークと並んでの評判馬だったバブルは、当然のように単勝1倍前半の圧倒的人気に推されます。
 しかし前出のように、初戦はまず競馬の流れを覚えさせ、かつ競馬が余り苦しいものだと思わせないようにゆったり走らせるモットーがあっただけに、超スローから仕掛けも遅く、ラスト2Fの瞬発力特化戦となったレースを5番手からじわっと差を詰めるも無理はせず、3着という結果で走り終えたバブルガムフェロー。

 その教育の成果は当然2戦目に生かされ、中2週の未勝利戦では一転自分で逃げる競馬を選択、ペースも中盤で緩ませない一貫戦で、改めて競馬の厳しさ、踏ん張りどころを教え込みながら楽に逃げ切って、噂にたがわぬ素質を見せつけます。
 続く府中3歳S(当時はOP)では、スッと番手につけて、坂地点でかなりの加速を要するギアチェンジ戦でも自分から楽に反応するセンスの良さを見せて完勝、勇躍GⅠ戦線に乗り込む切符を手にします。

 そして迎えた、冬の中山の[朝日杯3歳S](https://www.youtube.com/watch?v=HkSUVw5AfLM)
 久しぶりにレースを見ると、うわぁ解説吉田均さんだ懐かしいー、とか余計な感慨が浮かんできますが(笑)、ともあれここまでとは違い急流になりやすい中山マイル戦で、しかしここでもバブルは素晴らしい競馬センスを披露します。

 レースの流れが46,5-47,7とかなりのハイラップのレースを、4番枠から絶好のスタートを切って2列目ポケットで楽々流れに乗って進めていきます。
 残り600mあたりから、前の逃げ馬の手応えが怪しくなり少し待たされる形で、ラップも12,3と急落するところで、バブルをマークしていたエイシンガイモンが一気にフラットに押し上げて先頭、12,3-11,6というコーナーでの加速を作りつつ、前が壁で動けないバブルを出し抜いていきます。
 しかしそれにもあわてず騒がず、残り200mでしっかり進路を確保したバブルは、少し内にささるのを修正しながらも楽々エイシンを捕え切り、あっさりとGⅠタイトルを獲得してみせました。

 これも今レースを見ても本当にエイシンの勝ちパターンになってるのを楽々捕まえているので、非常に追走力が高い上に操縦性が高いなと感じさせますし、それはここまで様々なペースの中でしっかり教育を施してきた成果の結晶、でもあったのでしょう。
 そしてバブルの一連のレースを振り返っていて余談ながら思うのは、この時期の武豊Jって本気で滅茶苦茶上手いし、判断力も鋭くて果敢な騎乗も多いなぁと感じますね。今は今で円熟味があって流石と唸らせるシーンは多いものの、秋天のエアとか宝塚のマーベラスを見てしまうとえげつなさすら感じますからねぇ。

 話が逸れましたが、かくして楽々3歳チャンピオンの称号を勝ち取ったバブルは、冬場を充電に充て、ライバルが台頭してくる中でスプリングSを始動戦に選びます。
 ここも内枠からまずまずのスタートながら、外の馬が一気に押し上げていって道中後方よりのイン、と珍しく苦しいポジションになりますが、それでもスローペースの中を外から押し上げ、直線も軽く促す程度であっさり抜け出して、底知れない強さを見せつけます。

 この年のクラシックはサンデー四天王、なんて呼ばれていて、その中でも弥生賞を完勝したダンスインザダークとこの馬が筆頭に挙げられていましたが、好事魔多し、バブルは骨折、ダンスは熱発で皐月賞を回避することになります。この時の、バブルがはじけてしまった、というウィットに富んだ切ないコメントは今でも印象深いですね。
 結局皐月賞は四天王残りのイシノサンデー、ロイヤルタッチのワンツーで決まり、ダービーでは立て直したダンスが押し切るか、というところを、奇跡の馬、和製ラムタラと呼ばれたフサイチコンコルドに差し切られる結果でしたが、それはバブルガムフェローが無事なら、と思わせる結果でもありました。

**★毎日王冠~ジャパンカップ<エリートの栄光と挫折>**

 幸い骨折は軽度なもので、秋には戦線復帰が可能になったバブルガムフェロー。
 そのローテーションとして、距離適性を考え菊花賞ではなく古馬王道の天皇賞秋路線を選び、その前哨戦として毎日王冠で復帰します。
 ここは骨折明けでもあり、新馬同様にあまり無理はせずにレースを進め、結果的に前を行く2頭を捕まえきれない形で3着とまずまずの結果を残し、最大目標となる天皇賞秋に向かいます。

 この年の[天皇賞秋](https://www.youtube.com/watch?v=G0-xsVApQMw)は、古馬陣が非常に充実していました。
 その筆頭が、春の天皇賞でナリタブライアンとマヤノトップガンを並ぶ間もなく差し切って現役最強に名乗りを上げ、前哨戦のオールカマーも圧勝してきたサクラローレル、次いで重賞4連勝と勢いに乗る、底知れない強さを感じさせるマーベラスサンデー、ローレルには後塵を拝するも、宝塚を勝ちトップホースとして君臨するマヤノトップガンがいて、この面々の中では骨折明け二戦目の3歳馬のバブルが4番人気に甘んじるのも致し方ないことでした。
 ですがこのレースではバブルが4番枠と、府中2000mでは絶好の枠を引き、逆にローレルは16番枠と鬼門の外枠、誰もがローレルをマークしている中で、展開の利を最大限に生かせる土壌は整っていたと言えます。

 好スタートから2列目で積極的に進めていくバブルは、直線半ばまで後続が押し上げてくるのを待ち、馬体を寄せて合わせてから追い出す形でしっかりと粘り切り、見事にグレード制導入後はじめての3歳馬による秋の天皇賞制覇を成し遂げたのです。
 このレースは実際のところ、60,3-58,4とかなり後傾ラップの上に、仕掛けどころも遅くラスト3Fが11,7-11,0-12,0という流れで、ここで持ち前の競馬センス、加速の鋭さと高い瞬発力を存分に引き出した格好ですね。

 外に出していればローレルが圧勝していた、と当時から散々言われ、若かりし頃の横山Jが滅法叩かれたレースではありますが、今から改めて見てもそんな簡単な話ではないですよね。
 流石にコーナーから外々、というのはロスが大きいですし、タイトに回ってきたのは有る程度仕方ないながら、マーベラスとトップガンが完璧に息を合わせてブロックしていてそこから動ける余地も少ないですし、またレースの流れ的にも極端な加速ラップを坂地点で踏む流れは、高い持続力と持久力が最大の武器だったローレルとしては難しい展開だったと感じます。
 勿論スムーズなら際どかったとは思いますが、巷間言われるような圧勝にはならなかった、それだけこのレースのバブルは展開利を最大に生かした点も含めて普通に強かったと私は考えています。

 そしてこの時は、主戦の岡部JがBCクラシックのタイキブリザードに乗るために、代打の蛯名Jだったんですよね。
 これが今では押しも押されぬ偉大なジョッキーとして君臨する蛯名Jの初GⅠでもあり、インタビューとか見ても若っ!?とか思うのですが、それだけ誰が乗っても変わらず強さを発揮できる、賢く安定した馬だった、とは言えるでしょう。

 なればこそ、今でも解せない、この馬唯一の惨敗となった次戦のJC。
 天皇賞秋で上位を占めた古馬陣がこぞって有間直行を決めたことで、日本馬の総大将に祭り上げられての出走でしたが、先団からタフな流れを追走するも4コーナーで脚色一杯、同期の牝馬ファビラスラフィンが、果敢に価値馬シングスピールに食い下がる中、直線ではズルズルと下がっていくだけの、目を疑うほどの負け方でした。

 結果論的に言うなら、本質的にこの馬に2400mが長かったのは間違いないと思います。
 ただ、追走力自体は非常に高い馬ですから、この流れ自体が苦になるほどではなかったはずですし、実際200m違うだけの宝塚ではしっかり粘れていて、ここまで負けたのはやはり体調面で何か問題があった、と考えるべきなのでしょう。
 ともかく、これまでは負けても試走だから、的なスタンスで底を見せなかったこの馬が、ここではじめて大きな挫折を味わい、体勢を立て直すために長い充電に入るのでした。

**★鳴尾記念~宝塚記念<どちらが本物?>**

 半年ほどじっくり英気を養ったバブルは、古馬初戦にこの当時は宝塚記念の前哨戦だった鳴尾記念に59kgの斤量を背負って出走します。
 しかし休み明けなのに馬体が-14kgと過去最低体重、初輸送が響いた部分もあるのかと不安視されて2番人気でしたが、いざ走ってみればややスローの流れを番手から楽々抜け出す完勝を見せます。
 
 そして迎えた[宝塚記念](https://www.youtube.com/watch?v=PNBuUr5d2Ck)ですが、再度の輸送によってか、更に馬体は細化し-6kg、リンク画像だとレースしか映っていないのですが、それで見ても明らかに腹回りの薄いスッキリした体になってしまっています。
 しかしここでもバブルは、天皇賞秋以来の蛯名Jを鞍上に、一貫したタフな流れをスムーズに追走して4コーナーで前を射程圏、直線でスッと抜け出す優等生の強い競馬を見せますが、それを完全にマークする形で直後を立ち回ったマーベラスサンデーに最後僅かに差し込まれ、惜しくも2着となったのです。

 正直この2戦は、個人的にも評価を迷うところです。
 宝塚記念は確かに好走なんですが、おそらくこの時のマーベラスは春天の3強激突、ローレルの超早仕掛けに付き合った後遺症はかなり残っていたでしょうし、だからこそ武Jもあんなタイトなコース取りを選択してきた、とは思っていて。
 ダンスパートナーは弱い馬ではないですが、流石に牡馬相手で常に接戦を演じられるほどの女傑ではなかったですし、この2頭のパフォーマンス自体はこのレースに限ってはそこまで高くなかったのかな、と当時も感じました。超がつくハイペースの中で、追走力の高さを武器に粘り込んだ形なのかなと見立てられますし、流石にもっと年を取ってからならともかく、古馬なり立てで成長をまるで感じさせない馬体は、少なからず物足りなさを漂わせていたのは間違いないですね。

**★毎日王冠~ジャパンカップ<牝馬の時代の幕開け>**

 秋初戦の毎日王冠では、+12kgと馬体をふっくら戻してきて、改めて王道路線での捲土重来を狙うバブルは、相手の弱いここでは59kgを背負おうと問題なく、横綱相撲で楽々後続の追撃を捻じ伏せ、天皇賞秋の連覇に王手をかけます。
 
 この年の[天皇賞秋](https://www.youtube.com/watch?v=ZAFUR9YYVbo)は、去年の2~4着馬が故障や引退、海外遠征などで姿がなく、バブルが圧倒的な1番人気、そして牝馬のエアグルーヴが2番人気に推されるやや手薄なメンバー構成になりました。
 レースは本格化前の3歳サイレンススズカがぶっ飛ばしての58,5-60,5という流れ、ただし番手以降はかなり離れていたので実質的にはスローペースから、やや仕掛けの速い持続特化戦となっていると感じます。
 
 その中で3番手を確保したバブルはじわっと4コーナーから差を詰めるも、去年同様に少し仕掛けを待つ形で坂を迎えます。
 しかし今年は、その外から一気に圧巻の切れ味で突き抜けていく稀代の牝馬がいました。
 やや早仕掛けで坂手前で一気にエンジンを点火させ、坂での瞬発力で一期にバブルを出し抜いて先頭に立ったエアを、インから粘り強く追いかけるものの、ラスト11,6という圧巻の持続力を引き出してきたエアの前に僅かに屈し、連覇の夢は露と消えたのです。

 去年のファピラスラフィンのJC激走があったとはいえ、このレースが歴史的に見ると、本格的に牝馬が牡馬に伍して古馬の大レースを制する流れの嚆矢になっていると言えるでしょう。
 それは本質的に持久力・底力に優れる牡馬に対して、牝馬の切れ味が優位性を保てるスピード全盛時代の幕開けでもあると同時に、牝馬自体も底力を秘めた馬を育成できるノウハウが整ってきたことも合わさったもので。
 このレースでは普通に並びかけたら競り落とされると危惧した武Jの出し抜きが非常に大胆不敵かつ完璧であったのもあり、結果的にバブルは仕掛けを待ち過ぎた格好で、本当の勝負は次、という留保を置かれてのJC決戦となります。

 そして一年越し、かつ前走のリベンジをかけて臨んだジャパンカップ。
 枠順の差もあり、前々の内目に潜り込んだエアを、今度はバブルがマークする形でレースは展開していきます。
 レースの流れは平均くらい、ただ少し中緩みがあって直線は速いラップを踏む、前走同様の持続戦となっていて、その中で外から真っ向勝負をエアに仕掛けますが、しかし坂地点で満を持してスパートしたエアにジリっと離され、その内から素晴らしい切れ味で突き抜けてきたピルサドスキーとエアグルーヴの死闘に文字通り首を突っ込むことも出来ませんでした。
 3着と辛うじての面目は保ったものの、2戦続けてエアグルーヴに完敗した事で完全に主役の座は奪われてしまい、そして結果的にこれが現役最後のレースとなってしまったのです。

**★能力分析など**

 このレースの敗因は、やはり2400mは少し長いという部分に加え、秋天同様本当は速いペースをついていってそこから仕掛けを待つ競馬がベストの馬ゆえ、加速し切ってからの持続力にはやや欠けるものがあったのかな、というところですね。
 エアは府中戦の持続力だけで見れば総合的にはサンデーを上回っていたトニービンの最高傑作(ジャンポケやノースフライトも凄いですけどね)ですし、せめて枠が逆で自分が待てるポジションならもう少しは抵抗できたかもしれませんが、絶対的な能力で少し足りなかったのは間違いないと思います。

 道中で色々書いたので、サラッと能力分析の結論を出してしまえば、本質的にはマイルから2000mの馬であったのだろうなと感じます。
 朝日杯や宝塚記念を見ても追走力は本当に高いし、機動性と一脚の鋭さも素晴らしくて、万能的な競走馬に見えますが、やはり特化した武器がなく、超一流の相手がその武器を存分に引き出せる条件だと太刀打ちできなかった、というのが率直な見立てになりますね。
 持久力はそれなりに高かったと思いますが、持続力は特に今一歩ゆえに、最速ラップがゴールに近い地点にあり、そこで先頭に立っている必要はあって、それは岡部Jらしい王者の先行抜け出しの競馬スタイルとも合致していたので、それが完璧に嵌ったのが3歳秋の天皇賞でした。

 とにかく若い頃から完成度が高く、骨折をしてもその能力が減衰しなかった点は素晴らしい名馬ですが、そこからもう一段の成長がなかったのは惜しいところで、いかにもエリートのおぼっちゃま的な、負ける時はあっさりという淡泊さもひとつの魅力として数えられる不思議な馬だったと、改めての結論でもそうなりますね。


 

 
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注目馬:アドミラブル

 日曜阪神の3歳未勝利戦、芝1800mを圧勝したアドミラブルの将来性を見ていきましょう。
 
 まず先週の阪神は基本的に大分高速寄りの馬場にはなっていて、まあスローのレースも多かったのですが、それでも前日のチューリップ賞が46,4-46,8=1,33,2、同日の武庫川Sが47,2-45,9=1,33,1となっています。
 むしろ土曜より更に日曜の方が高速化している可能性もありますが、基本的に流れれば時計が出る馬場ではあったのだろうと思います。

 その中での当レース、ラップ推移は34,8(11,6)-35,7(11,9)-35,0(11,67)=1,45,8(11,76)となっています。
 単騎での逃げ馬がいましたが、番手以降も極端には離れておらずに勝ち馬や2着馬の付近でも1000m通過で60秒切るか切らないかくらい、相当に良質な追走力が問われています。

 その中でのアドミラブルの後半4Fラップは、推定ですが12,0-11,5-10,9-11,6くらい。
 道中は中団の外目でじっと待機、コーナーの下り地点でじわっと勢いをつけて直線を向き、400-200m地点、レースラップが11,5のところで、およそ3馬身差を一気に詰めて残り200m標識の前に既に先頭に立っています。
 ですのでラスト1Fは丸々自身のラップですし、ここで追いすがってきたメルヴィンカズマを悠々突き放す強い競馬を見せました。

 このレース内容で誉めるべき点は当然多く、まずはこの追走力を問われた上で、直線での最速地点で推定11秒を切るほどの切れ味を引き出せているのは大したものでしょう。
 ただ、最速地点の切れそのものだと、実は2着馬の方が鋭く、この地点で1馬身くらい詰められていて、残り200m地点では半馬身差くらいでした。
 しかしそこからラスト1Fを11,6でまとめて、2着馬を2馬身ほど突き放してきたのは中々凄まじかったと思います。

 この日の他のレースを見ても、ある程度スローで流れた古馬戦は流石に600-400m地点から持続力加速の範疇に入っているために、ラスト200mは消耗していて武庫川Sが11,1-11,2-11,9、大阪城Sが11,1-10,9-11,7という推移です。
 流石にドスロー過ぎて参考外の大阪城Sはともかく、武庫川Sから12,7秒加算ですからほぼ内容としては互角、となると本仕掛けが遅いとはいえ、一介の未勝利馬が出せるラストの持続力ではありません。
 前日の500万戦も、全体のペースが遅く1,47,4、かつ400-200m地点が11,2、11,5-11,2-11,4という推移ですから、よりラスト2F勝負の色合いが強く、それと遜色ない持続、後半2F時計を引き出していますし、素材的にはあのレースの上位をも圧倒していると見ていいでしょう。

 もっともじゃあ、この馬が前日の500万戦に出ていたら圧勝できたか、となるとそうはいかないのが競馬の難しさですが、ただ少なくともこの追走力の裏付けは、レースのレベルが上がった時に当然大きな武器になってくると思います。
 今回は2着馬もこれまでより一気にハイペースでパフォーマンスを上げているのは、同じく未勝利上位の常連であるスパイクナードとの差を見ても明らかですし、勝ち上がってペースの上がるレースに出てくれば上でも、という素材かなとは感じますが、それを持続で圧倒してきた勝ち馬は、まともな流れの中なら既に3歳OP・重賞クラスにはあると見ていいと思います。

 正直こういう、追走力があって坂でしっかり踏ん張れるタイプは皐月賞にピッタリなんですけどね、流石に間に合わないでしょうか。
 でも中2週で毎日杯に出ても、もし今回同様にペースが上がるなら、サトノアーサーと互角に戦えそうな印象はありますね。流石にドスローだとあっちの方が明らかに切れそうですけれど。
 ともあれ、どういうローテを踏むのかも注目ですし、ダービー路線には間に合って欲しい馬ですね。

 …………しかし、これだけの馬が休み前の新馬戦ではいいところなしの惨敗、なんですよね。
 ムーヴザワールド、エアウィンザーの新馬戦は確かに普通にレベルは高かったですけれど、でもレースで一切不利もなく、脚を出し切りやすい流れで3コーナーからおっつけ通しでしたから、本当に当時はまだ馬に全く芯が入ってなかったのかな、という感じです。
 3歳の春先に一気に良化する事が多いディープの仔らしい変わり身ですが、あまりに鮮やか過ぎてアンビシャスが代わりに走ってるんじゃないの?と思ってしまうくらいでした(笑)。順調に育てばあの馬くらい活躍できる素材ではあると思いますね。
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