2017年01月11日

2017 日経新春杯 レース回顧

 結果的に四日連続の開催となりました中央競馬。
 平日開催でも売り上げ的には盛況のようで、しかしやはり一方で、ローテーションの狂いから調子を崩す馬もいたりで、全体的に難しいレースが多かったと思います。
 京都の馬場も最初は重から途中でやや重、やはり基本的にパワータイプが台頭する馬場状態ではあったし、極端に後ろからではまず届かない、ポジショニングも問われるイメージでした。

 日経新春杯は予想通りにヤマカツライデンがスタートから手綱を扱いて一気に前へ、ただ思ったよりも全体的に隊列が長くならなかったな、という感じで、ピタッと番手でアドマイヤフライトが追走し、その3~4馬身後ろにマドリードと並んで有力馬のミッキーロケットが強気の先行策を選んだことで、全体の意識も前寄りにはなっていたと思います。
 レースの流れは4F-4F-4Fで47,8(11,95)-49,5(12,37)-48,4(12,10)=2,25,7(12,14)と、ほぼほぼ淀みのない綺麗な平均ペース。ハロンごとのラップでも、テンの3Fを除いての最遅が12,5、最速が11,8で波自体は少なく、相対的な追走力と位置取りの器用さ、馬場相応の持久力が総合的に求められたタフな競馬だったと思います。

 時計的にも紅梅Sがハイペースで1,22,4、最終もややスローでも速いラップは踏めずの2,01,3なので、レベルとしても水準には届いていると感じました。やはり改めて、四歳世代の層の厚さを浮き彫りにする結果でもありましたね。

 勝ったミッキーロケットはスタート良く自分のリズムでスッと四番手の外につける積極的な競馬を展開します。
 四角でも自分から前を捕まえに行く感じで、12,5-11,8とヤマカツ基準でやや緩んだところでしっかり順々に加速していく恰好で、直線入り口で一瞬の脚でシャケトラに前に出られるものの、残り200mからしぶとさを発揮、内からジリジリと差し返しての嬉しい初重賞制覇になりました。

 淡々と流れる中で、自身の1000m通過で1,00,7~8くらいなのでほぼフラットに走破している感じで、やはりこの距離での追走力の安定感と、そこからしっかり後半の持ち味を発揮できるのがこの馬の強みになっていきそうですね。
 斤量的にも2kg重くて、という中で、しっかりシャケトラを正攻法、最後は勝負根性で捻じ伏せた形ですし、レッドやカフジとの着差を見ても秋の力関係はそのまま、という感じで、タフな馬場での2400m路線では明確にサトノダイヤモンドに次ぐポジションを獲得した、と見做していいでしょう。高速馬場だとまた難しいですけれど。

 この馬は前半ゆったり入れれば、ある程度切れ味、瞬発力が問われても対応できるのは強みですし、ただ距離適性的に言えば、2000mで流れる競馬になると忙しい、ってのは出てくると思うので、この先の路線が難しいですね。大阪杯や、前半流れやすい宝塚記念はちょい短いかもしれない、でも春天は長い、というイメージがあるので、或いはこの馬こそ、確実にスローバランスになるドバイシーマが面白いかもしれません。
 それでも明らかに成長を見せているので、距離短縮でもやれる可能性はあるし、先が楽しみな馬ですね。

 2着のシャケトラも正攻法でミッキーをマークし、直線入り口では一旦先頭という堂々たる競馬、結果的にやや仕掛けが早かったのか、最後ミッキーに差し返されたものの、これはミッキーが強かっただけと言えるし、そのスケール感を遺憾なく発揮してきたと思います。
 やはり枠順変わって、隊列的に周りの馬が全部前に行ってくれて、壁を作りながらポジションを取りやすかったのはプラス材料だったし、ミッキーが前に行って馬群全体でタフな流れを追走、緩急のない底力とスタミナが問われる流れになったのも良かったのでしょう。後は高速馬場の加速戦でどれだけやれるか、そこをクリアしてくればGⅠを狙える馬に成長してくる可能性は大いにありますね。

 個人的にはひとつ前のジリ脚リッチー戦で(今日の最終も前を捉えきれずの伝統芸的な2着でしたね。。。)、加速地点で詰められなかったところに甘さを感じていて、後続馬群がもう少し離れて、実質的には直線入り口で切れ味を求められるとどうかな?と懸念していたわけですが、正直波の少ない流れとはいえミッキーより反応がいいくらいでしたからね。
 これは正直想定より1段階上の競馬をしてきたなと感じましたし、素直に甘く見てごめんなさいですね。

 3着モンドインテロはいかにもシュミノーJらしく、スタートして内枠の馬が揃って前に行ったのを見越して、スーッとインに潜り込んで中団待機で構えます。
 前も緩みが少なく、隊列が縮まらない中でプレッシャーの少ない位置を選び、坂の下りからやや外目に出して進出、4コーナーではシャケトラの外から馬体を合わせに行くものの、直線入り口の切れ味でもやや前の2頭に劣り、そこからの持久力でも多少見劣って、最後はレッドに際どく食い込まれるも、という、勝負に出たとは思うけど馬キャラのイメージを覆せない3着でした。

 でもこういう総合的な競馬になってくると、ポジショニングで後手を踏むスタミナ優位型はやはりしのげるのかな、というのは見せたし、自分より前で自身より持久力で優位に立つ馬が運んでいては、いくら上手く立ち回っても難しかった、という感じでしょう。
 今後も善戦はするでしょうが、重賞で勝ち切るには相手関係と展開の両方が嵌らないと難しいかもしれませんね。今日は馬場も流れも向いたし、騎乗も素晴らしかった、少なくとも予想段階で期待していたレース運びはしてくれたので満足です。

 4着レッドエルディストは五分には出るもののやはり行き脚は甘く、後方馬群でカフジを見るような競馬になります。
 道中も押し上げるタイミングがなく、流れのままに坂の下りから一番外を通しての進出はいかにも四位Jらしい大味な捌き、けれどしっかり加速扶助して直線を向けた分、入り口からそれなりに鋭さを見せてカフジの前に出て、そこからラストのポテンシャル、持久力でじわじわとモンドを追い詰めるものの、やはり前半のポジショニングの差が響いて恰好でした。

 この馬の面白いところは、後ろから長い脚を使う中でも、要所でもう一段意外と起用にギアを上げてくるところで、無論四位Jのスタイルがそういう足を引き出しやすい部分もありますが、こういう波のないラップ展開でだと、スッと動けないカフジよりは優位に立てるんだな、ってのは改めて認識できましたね。
 距離的にも2400mはベストで、一番いいのは良の高速馬場の2400mで平均に流れてくれる条件、まあ上位条件だと中々出揃わないとは思いますが、後ろからでも切れ味そのものはそこそこあるので、それなりに安定して圏内には食い込んでくるタイプ、でも勝ち切るにはかなり狭いスポットに嵌らないと、という印象です。

 5着カフジプリンスは、こちらも五分に出るものの内枠勢の行き脚がいい中で、そこに食らいつけずに一列後ろでの待機策、道中もある程度促しながらの追走でズブさを見せており、残り1000mからの坂の上りでもやや置いていかれる感じで後方馬群のすぐ手前、そこから下りの扶助である程度追撃はしてくるもののやはりジリジリとしか動けず、直線でもスッとレッドに前に出られたまま、最後は無理せずに流すような感じで5着と煮え切らない結果でした。

 このタイプはやはり難しいんですが、スピードに乗せる意識をどこで持つか、ってところで、直線で切れ負けするのは必定なので、ある程度向こう正面でポジショニングを押し上げるくらいの思い切りがないと、トップクラス相手では足りない、って結果が増えそうですよね。
 また、こんな風に一貫ペースだと追走力でもやや足りない感じもあり、ベストは前半スローからのロングスパート戦になってくるはずで、その1段目の仕掛けを自分から作れる胆力のある騎手がベスト、となるかなとは思います。
 今日もこの競馬でまだ出し切っている感覚はないので、タフな競馬になりやすい阪神3000mは是非使ってほしい馬ですね。プチゴールドシップみたいな競馬をして欲しいです。

 6着ヤマカツライデンは注文通りの逃げで、ラップ的には決してオーバーペースではないのですが、やはり今日はぴったり背後にアドマイヤフライトがついてきて、道中のどこでも息を入れるタイミングが持てなかったのは苦しかったと思いますし、緩急をつけて後続を幻惑する中での一脚の鋭さを引き出させてもらえなかったなと感じます。
 まあこういうのは逃げ馬の宿命ですし、馬場的に後ろからでは届かない、というイメージが強くあった中で、有力馬がしっかりポジションを意識する競馬をしてきたところでも、地力ではまだ一段劣るこの馬では、って事でしょう。
 あとやはり二日空いての開催で+14kgってのは、元々重かったのか、それともこの二日の調整が上手くいかなかったのか微妙なところですが、多少は最後の粘りに影響はあったのかなとも思いますね。

 ともあれ、改めて競馬は難しく、それを読み解くのが楽しいと思わせてくれる中で、こうして回顧をしっかり積み重ねていく事で、陳腐で安直な視座に陥らないように精進していきたいと思います。
 
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2017 京成杯 レース回顧

 今日は結局雪の影響で早々中京は中止決定、京都は直前まで開催を模索していたものの結局中止で、それぞれ月曜・火曜に代替開催らしいですね。
 京都は出馬投票からやり直すらしいので、メンバー構成や枠順などがガラッと入れ替わって、二日空く事も含めて色々と難しいレースになりそうです。こういう場合海外じゃないですけど普通に出馬投票せずに出走回避、という選択もアリなんでしょうけど、その辺どうなるでしょうか?
 日経新春杯に関しては、枠順が確定したら簡易的に予想は掲載したいと思います。

 中山は逆に猛烈な寒さの中でも好天に恵まれ、寒さを吹き飛ばす熱戦が繰り広げられました。
 そんな中での京成杯は、馬場的には昨日よりは少し軽いかな?と感じるところもあったのですが、結果的にかなり時計を要するレースになったし、その割に色々とあれ?と感じるところも多かったと思います。
 外枠勢がスタートから勢いよく前を主張して、結局メリオラが逃げてベストリゾートが番手につけるちょっと意外な展開、内からはイブキとポポカテが2列目を確保するものの、やはり基本内枠の馬は隊列が軒並み一列後ろになって難しさはあったかな、と感じました。

 ラップは3F-4F-3Fで36,9(12,3)-49,3(12,43)-36,3(12.1)=2,02,5(12,21)となり、3分割で見ればほぼラップの波のない淡々とした流れ、5F-5Fでだと61,6-60,9でギリギリスローの範疇かな?くらいではあり、まあ概ねどの位置からでも力は引き出しやすい展開ではあったと思います。
 ただその割に先行、イン狙いの馬が全滅して外差し決着になったのは、ひとつ前のニューイヤーSが46,7-46,8と綺麗な平均ペースで先行・内差し決着だったことを鑑みると多少違和感はあって、やはりこの時期の若駒は、ポジショニングも大切だけど、それ以上に自分のリズムを守るのも大切だなぁと思わせる結果だったと感じます。

 勝ったコマノインパルスは五分のスタートから馬任せで中団やや後ろ、最初から外目を意識して、向こう正面からじわっと動き始める積極的な競馬、コーナーでも5~6頭分外を回しつつもスピード負けせずに、しっかり遠心力を乗せて直線に向き、スッと一脚を引き出して一気に先頭に立ちます。
 そこから坂でもしっかり踏ん張り、外からガンサリュートに追撃を受けるも余裕を持って退けるという、このメンバーでは力がちょっと抜けていたかな、という勝ち方ではありました。

 内の馬が窮屈になったのはこの馬が内に寄せてきたから、というパトロールが出ていましたが、元々インは密集していた上に、前にいたメリオラ、ベスト、イブキ当たりの手応えがどれも悪くてフラフラしていたから、最後の決定打になったのがこれ、というだけで特に問題はないでしょう。
 実際その煽りでポポカテが首を上げ、連鎖的にその後ろのサーベラも、という形ですけど、このあたりは今日はどうあれ、あの死にポジションに嵌ってしまった時点で詰み、という感じでしたし、結果的にこのあたりの馬はもう少し伸び伸び走れる枠の方が良かったのかな、と感じました。

 ともかく、確かに今日のコマノは完勝でしたが、ラップ的に自身ラストはやはり落としてはいるし、相手関係にも大いに恵まれたところはあるので、強い所と当たると今のままでは厳しいかな、とは思います。
 やはり要所で器用に上げ下げできる脚があるので、それを生かす戦法、位置取りをしっかり出来るような成長が欲しいですね。

 ガンサリュートは、自分より外の馬が一気に押し出していく中でやや立ち遅れて中団より後ろ、結果的にコマノをマークするような形で同じところを通して直線、一瞬の切れでコマノにスッと離されるものの坂下から食らいついてしぶとく足を伸ばし、クビまで詰めての2着、でした。
 先行こそ出来なかったけど、やはり競馬に行って流れに沿うセンスは高いし、勝ち馬をマークして追いかける形でも最後までやれていたので、相手関係はあるにせよやはり地力はあるなと思いましたね。ただ後半の脚では限界がありそうでもあるので、今後は流れる競馬の中でポジショニングの良さを生かしてどこまで太刀打ちできるか、でしょう。
 ダノンシャンティの仔ですけど、距離は2000mでも大丈夫に思えたし、今後も堅実な走りが期待できるのではないでしょうか。

 マイネルスフェーンはスタートは五分に出るもやはり二の脚が甘く、明確に立ち上がったサーベラージュにも外から交わされて序盤は4列目のインとやはり苦しい位置取りになります。
 その位置からじっと動かずに4コーナーに入り、けど前の手応えが怪しいのを見て進路を外に求めるものの、中々スムーズに進路確保できずに多少待たされるロス、それでも前が空いてからはしっかり持久力を感じさせる末脚で肉薄するものの時すでに遅し、という格好の3着でした。
 個人的には展開はこうなるだろう、って形そのままでしたし、その中でよく圏内まで食い込んできたなと思います。結果的に内から足を伸ばしたい馬が、潰れる馬に被せられてどうにもならなかった部分で、結果的に仕掛け遅れでも外差しの方が優位だった、というのはあるでしょうし、前走よりも更にタフなコンディションで、緩急がつかない展開だったのも向いたのでしょう。

 結局要所で自分から動ける脚があまりないタイプなのは違いなく、今後全体のレースレベルが上がる中でどうしたって後手を踏むシーンが増えそうな馬ではあり、特に高速馬場だとかなり疑問符はつくとは思いますね。でも距離延長は全く苦にしないと思うので、その辺りで活路を見出したい馬ではないでしょうか。

 昨日の予想では紙幅の関係で触れませんでしたが、ポポカテに関してはマウントロブソンの全弟、という事で、前半要素を引き出して良さが出る可能性は確かにあって、その意味でこの流れで先行できたこと自体は光明だと思います。
 ただやっぱり要所で自分から器用に加速できないのは500万負けと同じメカニズムで、もう少しばらける展開か、外から自分で動く競馬がしたいですね。結果的に不利を受けてますけど、直線入り口でスッと動ける脚があれば自分が進路確保できていた、くらいの余地はあったと思いますし、常に早め早めの仕掛けの意識、コースロスよりブレーキングのロスを重視するタイプの騎手が合う馬だとは思います。

 サーベラージュも立ち遅れからリカバーの意識があったのはいいんですが、結局前にいたイブキが全く動けずにいたし、そこからどこへ行っても前が壁、という状況、挙句最後は不利を受けて立ち上がったポポカテのラインに自分から寄っていくって、なんか昨年秋のビックアーサーを思い出しました。。。
 正直これだと、脚があったのかどうかもわからないのでなんともですし、改めて自己条件からでしょう。セントポーリア賞あたりでしっかり競馬して欲しいところです。

 メリオラはペース的にはもっと粘れていいはずなんですけどねー、やはり一際小柄な馬で、年末年始で二度の輸送というローテが厳しかったのか、先行策自体はいいにしても大分気負った感じはありました。それとやはり引き付けて動けるタイプでもなさそうなので、もう少しコーナーから分散して足を使いたいタイプかなと改めて思いましたね。
 
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2017 愛知杯 レース回顧

 時折雪が舞うものの、本格的な降雪まではいかずに、大体想定通りのやや重馬場での開催になりました。
 レースは注文通りプリメラアスールが逃げてサンソヴールが番手、ラップは3F-4F-3Fで37,2(12,4)-48,1(12,03)-36,1(12,03)=2,01,4(12,14)となり、序盤はゆったりと入ったものの中盤がそこそこ速く、残り1000mから11秒後半を刻んでの持久力戦、最後は12,6とガタッとラップが落ちていて、馬場の巧拙、総合的なスタミナが問われたレースになっているかなと思います。

 勝ったマキシマムドパリは、外枠からやはり出足は速くなく予想通りの中団よりやや後ろで、正直想定の展開だと切れ負けするだろう、と思っていて軽視したのですが、予想以上にタフな馬場でのロンスパ戦になったことで、急加速が苦手で瞬発力にも乏しいこの馬がフラットに追走できたし、その上でスピードを一貫して持続させる粘り強さを上手く引き出してのラスト強襲、という形になったのだと思います。
 あと今日の馬場は、勿論開幕週だからインが伸びないことはないんですけれど、それ以上に外伸び馬場になっている感じもありますね。ひとつ前の1200m戦でも、残り200mでとても届きそうにない所からの大外一気が決まっていて、どうしても最後ラップが落ち込む中で、スタミナを生かして減速せずに食い込んでこられる馬にピタリ嵌る馬場になっていたと思うし、全てが噛み合ってずっと善戦止まりだったこの馬に嬉しいタイトルをもたらした、と見ます。ただこのレースの流れ自体は先行、イン有利ではあったと思うし、秋華賞同様噛み合った時の強さはやはり中々のものだと感じさせました。
 まあ今回は低調なメンバーだったのは間違いないですし、今後牝馬路線で安定勢力として、と考えるのは早計でしょうが、少し時計のかかる馬場になった時は割増で考える、瞬発力勝負になりそうなら軽視する、というわかりやすさはよりはっきり見えたと思います。

 2着のサンソヴールは、正直いい競馬だったんですけどプリムラを潰しちゃうとまでは思わなかったなぁと(笑)。
 スッと好スタートからプリムラを行かせて単独の番手を確保、そして向こう正面からじわっと前との差を詰めてプリムラをつつきロンスパ戦に持ち込む積極的な騎乗、馬もその狙いにしっかり応えるようにコーナーでプリムラに取りつき直線早々先頭、坂を上っても脚色はしっかりしているものの、大外からのパリの猛追は防げず、負けて強し、という感じの結果でした。
 やはり距離伸びてポジショニングは楽だったし、前半ゆったり入ったことで後半5Fのロンスパ戦でもしっかり持久力を引き出せたわけで、ただ個人的にはプリムラに合わせての直線の加速戦でもやれる馬と思っていたので、ああまで強気に来るとはなぁ、ってのはありました。
 ともあれ正直パリより強い競馬は出来ているのではないかと思うし、牝馬の1800m~2000m路線なら、自分の競馬を作っていける条件なら今後も楽しみが広がるのではないかと思います。

 3着クイーンズミラグロは狙い通りの2列目ポケットを確保、やはり前半自体はスローに入れたことで、後半でロンスパ戦でも一定の脚は使えたし、ポジショニングに進境をはっきり見せてきたのは今後に向けての好材料ですね。
 本質的にはスローからの瞬発力戦向きだと思うし、そういう条件で前目を取れれば勝ち切る競馬まであるタイプではないでしょうか。ただ無論前を取って流れてしまうと脆い、とは思うので、条件が合わなかったときのひとつふたつの大敗で、好走スポットに入りそうな時にまで見切らないようにしておきたい馬です。

 4~6着馬は内目前目を立ち回った馬でもあり、そういうバイアスが顕著な中で、外からあと一歩まで食い込んできたクリノは地力は見せたと思いますが、この感じだとちょっと距離が長かったかもしれませんね。ダイワメジャーの仔ですし、1800mがベストっぽいジリっぽさを最後は見せてしまいました。
 プリメラはしっかり先手を主張しつつややスロー、に落としたまでは良かったと思うのですが、あのペースとこの馬場で後続につつかれてしまっては仕方ないかな、とは思います。直線はそれでも0,5差で踏ん張ってはいたし、このレベルの相手なら展開ひとつで充分重賞に手が届いてもいい馬だとは思っています。
 シャルール、ヒルノ、ダイワの斤量重たい組は揃って惨敗、シャルールとダイワは状態かな、って思う動きの鈍さでしたし、ヒルノは本質的にコースにも時計のかかる馬場にも適性が低かったところでポツン、ですから仕方ないですかね。しっかり立て直してまた牝馬戦線を賑わせて欲しいです。
 
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私的名馬列伝 第三話 モーリス

**★はじめに**

 第三回目は、昨日中山で引退式を行ったという事でタイムリーでもあり、モーリスを取り上げたいと思います。
 昨日は結局中京・京都が中止になったことで、この引退式にもその分だけ大きな注目が寄せられましたね。その意味では最後までスーパースターらしかったし、史上初めてのパドック引退式という試みも成功だったと思います。
 無論馬に慣れない人達を傍に、という点で細心の注意を払われていたと思いますし、それが可能な馬、不可能な馬もいそうですが、相変わらずの威風堂々とした雰囲気ながら、時折お茶目な側面も見せていたモーリスにほのぼのし、今更ながらに好きになった、という人も結構いたのではないでしょうか?

 私はグラスワンダーの大ファンでしたので、その血脈を引き継ぐスクリーンヒーロー産駒のこの馬にはデビュー戦から注目していましたが、それでもまさかここまでの歴史に残る名馬になるとは思いも寄りませんでした。
 血統的にはスクリーンヒーロー×カーネギー(渋い!)で、やや突然変異的ではあれ、三代、四代と遡ってみれば由緒と活力のある血筋ですし、種牡馬としてもグラスワンダーのサイアーラインを繋げる、自身を超えるような名馬を輩出してもらいたいものです。

 モーリスの[生涯戦績はこちら](http://keiba.yahoo.co.jp/directory/horse/2011100655/)です。
 まずはその、紆余曲折あった競争生活をざっくり振り返ってみましょう。

**★新馬~白百合S<その才は蕾のままに>**

 デビュー戦は初秋の京都1400m、僅差ながら1番人気に押されたモーリスは、ややスローの流れを中団やや前目で追走、コーナーで外から進出する時点ではやや反応の鈍さを見せるものの、そこからグングン伸びて、最後までラップを落とさない高い持続力を見せつけての圧勝でした。
 新馬戦にはその馬の素質の造型が一番よく出る、とは比較的言われる事ですが、この馬の場合も後々後傾型の名馬として大成する可能性をこの一戦が示していた、と言えます。
 その勝ちっぷりを買われ、更に鞍上ムーアJで圧倒的人気に支持された2戦目の京王杯2歳Sでは、しかし一転して苦杯を嘗めます。
 初めての遠征競馬で馬体を大きく減らしレースでも出遅れてしまって後方からと厳しい展開、レース自体が36,7-12,1-34,3と超スローになる中で直線は大外から追撃しますが、坂を上ってからの伸びが今一歩で雪崩れ込むだけの6着に終わります。

 地元に戻っての500万こそ辛勝するものの、年明けてのシンザン記念ではミッキーアイルの逃げに為すすべなく好位から失速、クラシック出走を狙ってのトライアル戦線でも、スプリングS、京都新聞杯とどちらも平均的な流れの中で中団から競馬をするものの、圏内に食い込むほどの脚は見せられずに完敗し、残念ダービー的な位置づけの白百合Sでも、後方から鋭い脚を見せるものの3着と、初戦で見せた才能が開花することなく3歳春シーズンを終了します。

 後年語られる範疇では、この時期のモーリスはまだまだ体質的に弱く、結果的に理想的な体重を維持しつつ(最低でも500kgオーバーの時しか好走はしていない)、きちんと調教を積んで鍛える事が出来なかったようです。
 その中でも細かく見れば、後々の適性・資質を予感させるレースぶりは見せていますが、比較的まともな出走態勢、馬場適性や展開が向いた白百合Sでさえ、後年歯牙に欠ける事もないステファノスに完敗しているあたりからも推して知るべし、なのでしょう。

**★若潮S~安田記念<遅れてきた大器の証明>**

 3歳秋シーズンを、体質の弱さを改善するために全休に充てたモーリスは、同時に関東の新進気鋭、ひとつひとつのレースを大切に使い、高い勝率を誇る堀厩舎に転厩します。
 その初戦、若潮Sでは、46,4-47,3と比較的速い流れを中団で楽々追走、残り200mでほとんど持ったままに突き抜け、L1最速ラップを踏んで押し切り、元々の素材の違いを存分に見せつけます。

 次戦のスピカSではスタートで出遅れ後方から、流れも一転して38,7-36,7-34,7の超ドスロー、その割にレース全体の仕掛けも遅く、後半3Fが11,6-11,2-11,9と明らかに前にいた馬に有利な流れでした。
 しかしここで4コーナー最後方から大外をぶん回したモーリスは、直線入り口でラップが11,2と鋭く加速する地点で、明らかにそれ以上の切れ味を見せて差を詰め、それをラストまで維持しきって突き抜ける圧巻の競馬を見せます。着差こそ3/4馬身ながら、実況に思わず圧勝と叫ばせる凄みがこのレースにはあり、新たなスターの誕生をヒシヒシと予感させるものでした。

 きっちり1か月間隔で次走に選ばれたダービー卿チャレンジトロフィーでは、しかし見ている側の期待を更に上回る驚愕のパフォーマンスを披露します。
 馬場はそこそこ高速化していた時期で、このレースはややラップが特異なので詳しく触れると、35,6-22,4-34,2と前半はスローながら中盤が極端に速く、レース全体の仕掛けが早かったためにスローバランスだけど後ろにいた馬が有利、という不思議な流れになっています。
 ここでもやはりやや立ち遅れたモーリスは後方三番手くらいから、中盤から加速するレースに流れに乗っかる形でじわっと進出、直線入り口ではまだ4馬身くらいあったのを残り200mで1馬身まで詰め、そこから更に加速して4馬身突き抜けるという凄まじい爆発力を見せつけたのです。
 何より驚異的だったのはラスト200mのレースラップ10,9で、坂で勢いを削ぐことなく加速する馬力と、スピードに乗ってからの持続力の高さを衆目に知らしめました。ラップ的にもこの馬のバランスは推定47,9-44,3くらいで、ほぼ後半要素の高さだけでこの時計、ラップを打ち出し、一戦毎に強くなっていると強烈に感じさせたものです。

 その勢いのままに、賞金面でギリギリ滑り込んだ安田記念。
 ここ3戦は中山であり、また一線級との対戦もはじめて、という中でも、その未知の魅力を買われて1番人気に推され、レースでもその人気に恥じない堂々とした立ち回りを見せます。
 6番枠から五分のスタートを決めたモーリスは、包まれたくないのもあり、ここ2戦とは裏腹の先行策を取り、34,3-23,0-34,7という非常に平均的で、底力を試される流れを先頭から2馬身くらいの位置で追走、コーナーを回ってもまだ手応えは楽で持ったまま、坂の頂上付近から追い出して一気に先頭に立ちます。
 しかしそこからは流石に前走、前々走のような爆発力を引き出せずに、ジリジリとヴァンセンヌに迫られますが、最後までしっかり押し切って、見事にわずか半年で、一介の条件馬からGⅠウィナーにまで昇りつめたのです。

**★マイルチャンピオンシップ~香港マイル<圧巻たる王者>**

 4歳秋の初戦は、当初は距離延長も視野に入れたい、という意向を反映して毎日王冠からの始動が予定されていましたが、春の激戦の疲れが抜けきらずに自重、結局復帰戦はGⅠ、マイルチャンピオンシップにまでずれ込みます。
 安田記念で強い競馬をしたとはいえ、調整遅れがあった上でぶっつけでのGⅠ戦、そして京都マイルでは不利とされる外枠を引いたこともあり、ファンもまだ半信半疑、という感じで僅差の4番人気に甘んじた同馬ですが、鞍上に改めて世界NO,1ジョッキーのライアン・ムーアJを迎えてのレースでは、そんな些細な不安を鎧袖一触する強い競馬を見せます。

 春に見せていた出負け癖もここでは出さずに五分のスタートから、枠なりに流れに乗って中団の外に位置取ったモーリスは、レッツゴードンキが刻む34,6-24,2-33,8という中緩み顕著な流れの中で綺麗に折り合い、坂の下りからじわっと進出していきます。
 コーナーも大外を回しつつ直線、入り口から半ばまでで一気の爆発力を見せて一瞬で先頭に立つと、ラスト200mも11,2と全くラップを落とさず、フィエロやイスラボニータの懸命の追い込みを涼しい風とばかりに完勝し、改めてマイル路線での国内無敵を証明したのです。

 国内を制圧したモーリスは、その余勢を駆って年末の香港マイルで海外デビュー戦を迎えます。
 元々間隔を詰めて使うのが難しい馬ではあり、その上初めての海外、そしてここには1年前の香港マイルを大楽勝し、歴代香港史上最強マイラーの呼び声も高いエイブルフレンドが高い壁として立ちはだかっていました。
 しかしここでもモーリスは桁の違う競馬を見せます。
 スタートは五分に出るものの位置取りは後ろから三番手、しっかり折り合って馬群の中からじわじわとポジションを上げるムーアJらしいタイトな動きで、コーナーで一つ外にエイブルフレンドを置く形で直線、序盤で一瞬の切れに勝るエイブルに一度は前に出られるものの、ラスト200mからの持続力を遺憾なく発揮してインから力強く差し返し、更にインから出し抜けを狙ったジャイアントトレジャーも問題なく退けて、圧巻のGⅠ3連勝で2015年のキャンペーンを彩ったのです。

 その国内外含めて年内無敗、という鮮烈な戦績が評価されて、マイラーでありながら王道GⅠ2勝のラブリーデイを退け、2015年の年度代表馬に選出されています。

**★チャンピオンズマイル~安田記念<一敗地に塗れて>**

 5歳春のシーズンも、当初から順調、とはいきませんでした。
 当初はドバイターフに遠征し、欧州最強マイラーのソロウと激突する可能性を示唆していましたが、やはりウィークポイントの背腰の疲れが抜けきらずに自重、結果的に始動戦は再度香港のGⅠチャンピオンズマイルで、鞍上には新たに香港NO,1ジョッキーのジョアン・モレイラJを配されて出走します。
 ここでも綺麗なスタートを決めて、中団やや前目でしっかり折り合ったモーリスは、直線序盤で軽く促されるだけであっさり先頭に躍り出て、最後は流す余裕を見せての盤石・貫禄の勝利、もはやアジアマイル路線で敵なし、は衆目の一致するところでした。

 それだけにその後のローテーションも大いに注目されましたが、様々な要因もあり、結局はもう一度、去年制しているマイル戦、安田記念でGⅠ5連勝を狙うことになります。
 しかし香港からの検疫などの関係で、府中競馬場での滞在調整を余儀なくされたことで、モーリス自身にも過度の負担とストレスがかかってしまっていたのか、新たにオーストラリアの若き名手、トミー・ベリーJを配しての安田記念では、スタートはしっかり出たものの前進気勢が強すぎて、ガッツリと引っかかってスタート直後から2番手を追走する、普段と違う競馬になって。
 行きたがるのを懸命に抑えている様を見てほくそ笑んだのが、その前で果敢な逃げを打ったロゴタイプ鞍上の田辺Jでした。
 テン乗りの鞍上の、早めに仕掛けられない心理を見澄まして、35,0-24,1-33,9と明確にギリギリまで仕掛けを遅らせ、やや渋った馬場の中で1頭だけ経済コースを選択して坂で一気に出し抜き、外から体勢を立て直したモーリスも食らいつくものの普段の爆発力は影を潜め、これまで幾度も子ども扱いをしてきたフィエロにまで危うく差し切られそうになりながらも、王者の意地で何とか2着を死守するのが精一杯でした。

 ただ明らかにこのレースは、そこに至るまでの過程に無理があったのは誰の目にも明らかであり、その実力を疑問視する向きはなく。
 そして改めて、いくらかの不安要素を露呈はしつつも、去年成し得なかった距離延長、マイル王者から中距離王者への飛躍を果たすためのローテーションが模索されていくのです。

**★札幌記念~香港カップ<競走馬として完成しきらぬままに>**

 この年一杯での引退が発表され、競争生活で更なる勲章を得るために2000m路線へ、その挑戦の第一歩、として選ばれたのが、夏競馬最大のレース、札幌記念でした。
 ここで改めてモレイラJを配し、折り合い面と距離適性を測ったのですが、レースはやや重馬場で僚馬ネオリアリズムが逃げ、35,6-49,2-36,9と淀みのない前傾ラップを刻んで押し切り、モーリスは中団で折り合い勝負所で外から押し上げるものの、前との差は詰められずに逆にレインボーラインに食い込まれる、という微妙に煮え切らない2着に終わります。
 この時点ではレインボーラインはまだ3歳一線級、という評価はされていなかった時期なので、やはり距離延長で持ち味が生きないのではないか、という懸念はありつつも、陣営は当初の予定通りに秋の天皇賞に、1年ぶりのムーアJを配して向かいます。

 そしてその天皇賞・秋では、一抹の不安を払拭する圧倒的なレースを披露します。
 8番枠から好スタートを切り、中団より前でしっかり折り合ったモーリスは、エイシンヒカリが刻む36,9-48,2-34,2というスローの流れも利して、コーナーから一気に進出し直線坂下では早くも先頭、そこから圧倒的な馬力を誇示するように坂を駆け上がって、ラストもリアルスティールの追撃を難なく退けて、あっさりと二階級制覇を達成したのです。

 この結果と、そして鞍上ムーアJの都合なども加味して、引退レースは同じ2000mの香港カップがチョイスされます。
 去年エイシンヒカリがレコードで逃げ切り一躍スターダムに押し上がったこの舞台で、威風堂々とした姿で闊歩するモーリスは、レースでもその圧倒的な存在感を誇示して引退の花道を飾ってみせます。
 香港計時で推定61,1-59,8ほどの流れを、久しぶりに明確に出負けして後方のインから淡々と追走、勝負所からコースロスなく詰めてくるのはいつものムーアJのお家芸で、それでも直線入り口では軽快に逃げるエイシンとかなりの差があり、これで届くのか?と思った人も多かったでしょう。
 しかしそこからが圧巻で、スルスルと左右に進路を切り替えながらも加速し続け、直線半ばでトップスピードに乗ると暴力的な速度で前を一気に捕らえて先頭、そこからも突き放す一方で、現役最後のレースで、今が絶頂期なのではないか、と思わせる驚愕のパフォーマンスを示し、自身の引退に見事な花を添えたのです。

 しかしこの強さをもってしても、堀調教師が引退式で、未だ競走馬として完成しきらないままの引退、と口にしたように、折々に破天荒さ、危うさを醸していた馬ではありました。
 それでいて結果的に転厩してからは11戦9勝2着2回、GⅠ6勝2着1回という凄まじい成績を収めたのですから驚きですし、最後の走りを見てしまうと2400m路線でも、或いは年末の有馬で上位三頭との激突が見たかったなど、ファンとしても様々な可能性を思わせる奥深さを発露しきらないままの引退なのは事実かもしれません。

**★能力分析**

 端的に言えば、総合力を問われても一流馬ではあり、そして後半の爆発力を生かす展開になれば歴代でも屈指の超一流馬だったと思います。
 本格化以前でも、淡々と淀みなく流れるレースよりはスローからの後半勝負になっているレースの方が着差的にはいいですし、本格化してからもその傾向は結構顕著に出ていると思います。

 トップクラスのマイル戦になると、当然勝ち時計は1,32,0前後になる中で、後傾型がその時計で走るのは意外と難しいものがあります。
 まずひとつは後傾型でも最低限の追走力が求められることで、例えば後半4Fを45秒で走れる馬でも、前半4Fを47秒で入らなければならず、中距離路線からマイルに活路を見出してくる馬で、それでも善戦止まりの馬は、前半の追走力か、後半の総合力が足りないパターンが多く、個人的なイメージですが1,32,5前後を分水嶺にマイル適性が高く問われるのではないか、と考えています。

 特にヴィクトリアマイルなんかその傾向が強くて、一昨年のヌーヴォ然り、古くはスイープやカワカミの年然り、去年のミッキーやショウナンはかなり頑張ったほうだと思いますけど、それでも前半要素、後半要素共に高速マイル戦に抜群に噛み合う適性を持っていたストレイトガールには全く敵わなかったですからね。
 個人的にパンパンの良馬場の府中マイルでの、モーリスとストレイトガールのガチンコ勝負は見てみたかったレースのひとつです。

 少し話題が逸れましたが、ともかくトップクラスのマイル戦で常に勝ち切るには時計の裏付けは必定で、そしてモーリスはそれを後半要素の図抜けた資質だけで成し遂げた馬、と見立てています。

 後半要素も45秒、というのは結構大きな壁で、それは基本馬の走りのメカニズムにもかかわってきます。
 馬が走る時、極めて呼吸の回数が少ないのは良く知られていると思いますが、特に全力疾走に移る時は陸上短距離のように完全に無呼吸状態で走っており、だからこそ本当の瞬発力、切れ味を引き出せる限界は、諸説あれど2F~どんなに長くても3F程度だと言われています。
 だから、上がり3Fが速くても、そのひとつ前のL4から速いラップを踏んでいるかどうかは、その瞬発力の持続性の高さを問われる大きな要素であり、4F総合で44秒台を刻むというのは、スパートを仕掛けての出足の加速力、切れ味の質の高さ、そこからの持続力が全て高いレベルで備わってないと出来ない芸当なんですね。
 ただし新潟外回り戦はちょっとメカニズムが特殊なので、基本-0,5~1秒くらい差し引いて考える方がいいです。

 ともあれ、モーリスはおそらく前半の追走力そのものはそこまで高い資質はなかったと思います。
 それはマイル戦でそれなりに苦戦した1度目の安田記念と香港マイル、体調の問題もあれ2度目の安田記念と、自身の半マイル通過が47秒半ばを切ってくるような展開だと、後半の爆発力がやや影を潜めている点で理解できますし、まあそれでも大抵勝ち切るのが凄いんですけれど、やはり圧巻のパフォーマンスを示しているのは後傾がはっきりしているレースになります。

 ざっくり本格化以降のマイル戦の自身の通過推定を並べてみますと……

・ダービー卿  47,9-44,3
・安田記念   46,1-45,9
・マイルCS  48,0-44,8
・香港マイル  47,4-45,5
・チャンM   48,1-45,0
・安田記念   47,3-45,9

 とこんな感じです。香港は自身ラップがきちんと出るので正確、ただし日本式に合わせて前半を-1秒で計算しています。
 こう見ても、後傾度合いが強いレース程、他の馬が引き出せないレベルの後半要素で突き抜けて楽勝しているのがよくわかると思います。
 特にダービー卿の44,3、ラスト1F10,9は圧巻で、超高速馬場でもその分だけ天井知らずに後半を高められるというのは、現代競馬ではかなり突出した資質だったと思いますし、後半要素だけで見れば歴代マイル王者で最強、総合的に見てもほぼ最強ではなかったかなと感じますね。

 2000m戦でも、流石にマイルほどの爆発力は見せられずとも、やはりスローとハイでは明確にパフォーマンスが違いました。
 自身の通過でも60秒前後で、相対的な追走力を高く求められた札幌記念では後半で良さを発揮できませんでしたが、全体で2秒くらいのスローになっている秋天や香港カップでは自身後半4Fで45,6~7の脚を使って、特に勝負所での切れ味の質の高さで圧倒してきたと思います。
 天皇賞でも坂下からの加速で勝負をつけたし、香港Cも直線半ばが自身最速なのは画像的にも明白で、ステファノスとの着差を見る限り、見た目の印象は明らかに香港の方が強かったですが、内容的にはどちらもレースも同じくらいの走り、4Fあたりの瞬発力持続戦で強いステファノスに対し、それと同質の持続力にプラスして、切れ味の質・破壊力で安定して上回ってきた、と見做すのが妥当かなと思います。

 少なくとも前半で必要以上に急かされなければ安定して爆発力を引き出せる、という意味で、距離延長も存外平気だったのではないかな、と思いますし、本当に有馬記念でその雄姿を見てみたかったですね。

**★総括**

 気性面で前向き過ぎたり、体質的に使い込めなかったり、競走馬としてのウィークポイントもそれなりに抱えていながら、本格化以降ここまで安定した成績を収められたのは、無理使いせずに出すからには一戦必勝を心掛けている堀厩舎の水が合ったのは間違いなく、元々の厩舎には失礼な話にはなりますが、きちんと馬の事を考えての英断だったのかなと思います。
 実際にこれだけ強い馬でも、成長の段階で使い方を間違えれば一介のOP馬程度で終わってしまっていた可能性もないわけではないですし、ファンとしてもこれだけの名馬の足跡を2年余り追いかけてこられたのは本当に幸せでした。

 最後まで底知れない強さを秘めたまま、綺麗な花道でターフを去っていく名馬・モーリス。
 夢は夢のまま、数年後にこの馬の仔がターフを席巻し、盛り上げてくれることを楽しみに待ちましょう――――。
 

 

posted by clover at 04:18| Comment(0) | 名馬列伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

先行力、追走力について

 以前に競走馬のタイプについての話題を書きましたが、それに連なる形で、私が馬の適性判断をするのに大切にしている要素についても少しずつ腑分けして触れていきたいと思っています。

 今回取り上げるのは先行力・追走力に関してです。
 当然ながらレースは生き物であり、所与の条件が違えば流れや結果も全然違ってくるものです。
 例えばマイル戦で、一口に前半48秒のペース、と言っても、先週のシンザン記念のようにズブズブの馬場ならハイペースになるし、パンパンの良馬場ならスローペースに分類されるわけで、当然ながらそこは相対的な判断を必要とします。

 ただ長く競馬を見ていると、そういう相対的な部分とはまた違う、絶対的なスピードにおいての限界値がある馬もそれなりにいて、そしてそれは当然前半要素と後半要素で必要とする素養が違ってくる才能です。
 例えば前半どれだけスローで足を溜めても、後半で使える速い脚に限りがある馬は多いし、逆に溜めれば溜めるほど爆発力を引き出せるけど、少しでも前半で急かされてしまうとその破壊力があっさり削がれてしまう馬もいて、その辺のタイプをきちんと見極めていくのは非常に面白い作業になります。

 では、先行力・追走力に必要な素養とはどのようなものでしょうか?
 まず単純にひとつ言えるのはスタートセンスの良さ、ですね。これは騎手の腕や相性も関わってくるので一概には言えませんが、やはりしっかりレースを見ていると、常に他の馬より頭一つはやくスタートできる馬、というのはそれなりにいます。
 本質的な部分で、やはり競馬は先行有利ではありますから、一歩目で先んじられる、というのはそれだけで大きなアドバンテージになる能力、素質と言えます。現役だとやはりミッキーアイルやマルターズアポジーのスタートセンスは凄いですし、常に安定して逃げを打てる、というのは、レースの展開を読みやすい、流れも想定しやすいので助かる馬、とも言えますね。

 そして次に出てくるのが、いわゆる二の脚、となります。
 競馬とはレースラップを見れば一目瞭然なように、ほとんど例外なくスタートから2F目に前半の最速ラップを踏むので、そこでのポジション争いを制するためには当然より優れたダッシュ力、加速力が必要となります。
 どんなにスタートがいい馬でも、最初の1Fで12,0を切るような脚は使えませんし、レースの距離にもよりますが、1F目から2F目で大体平均して1~1,5秒くらいの加速を求められるわけで、総じて逃げ・先行馬はこの加速力に優れている、と言えます。
 裏を返すとこれは、後半で極端な加速ラップを踏む時にも有用なスキルではあり、その意味で逃げ・先行馬は、序盤で加速してポジションアップ⇒中盤緩めて息を入れる⇒終盤で再加速して後続を出し抜く、というレースパターンに噛み合いやすい脚質、適性とも言えます。

 ただ、いずれ後半要素で詳述したいところですが、大概加速に優れている馬はそのトップスピードの持続にやや難があるタイプが多くて、如何にその出し抜きをゴールに近いところで使えるか、が大切になってくる場合が多いです。
 特に大概の逃げ馬は早めにつつかれて直線に入る前からペースアップを余儀なくされたり、一気に捲られて被されたりすると脆い馬が多いので、目標にされると辛い、というのは言うまでもないですね。ミッキーアイルも、現役の逃げ馬の中では出し抜きの鋭さはトップクラスだと思いますが、それでもイスラのようにもっと加速が上手い馬にマンマークされてだと辛いところを阪神Cで露呈しましたし。

 キタサンブラックが偉いのは、逃げ馬らしいレースをしながらも逃げ馬っぽい脆さがまるでないところなんですよね。
 特に宝塚での、序盤からつつかれてハイペースになっても、ついてきた馬を振り落とす様な王者の逃げも出来る、と証明した事、そして逃げなくてもレースは出来るところから、マークをされながらも自分のリズムに持ち込めるし、差し返す脚も使えるのは本当に立派だと思います。
 今年も春はGⅠ3戦を予定しているようですし、本当に楽しみです。

 やや話題が逸れたので話を元に戻しますが、そういう先行のメカニズムがある中での、追走力という概念が何か?と言いますと、基本的にはその馬が持つ、レース前半でその流れを追いかけても、その馬の後半のストロングポイントをきっちり引き出せる分水嶺がどこまでか、その幅がどのくらい広いか?という考え方です。
 丁度先週シンザン記念で人気になっていたペルシアンナイトに対して、ハービンジャーの仔だから追走力が不安、と書いたのも、総じてハービン産駒が、レースのレベルが上がって前半の絶対的なスピードが問われるようになると脆い、という傾向が顕著だからで、この辺は血統からもある程度類推出来ますし、あとどちらかと言えばピッチ走法の馬は加速が得意で、前半要素が問われても粘れるタイプが多く、ストライドが大きい馬ほど加速は不得手で、ゆったり入ったほうが味が出る、という部分でもざっくり判別は出来ます。

 ただ勿論それは素人目にざっくり、であり、より確信的に判断するのには、実際にハイペースでどんな走りをしているか、を精査していくのが一番です。
 でも単純にハイペースになったレースで結果を出しているから、と決めつけるのは早計で、その流れの中でどの位置で競馬をしていたかも当然しっかり見極めないといけません。
 例えば去年の皐月賞は58,4-59,5のハイペースでしたが、その流れを主導したリオンディーズ、中団の59秒ペースに乗っていったエアスピネルとサトノダイヤモンドに対し、後方から60秒ペースで入ったマカヒキとディーマジェスティでは、その追走力の幅には差があった、というのは、秋の一連のレースを見る中で見えてくると思います。
 6ハロン戦なら、上がり3ハロンの数字を見るだけで前後半のバランスがわかるのでいいですが、それ以上の距離のレースで特定の馬の追走力の幅を見極めたいなら、しっかり序盤の位置取りを実際の映像で確かめる必要はあるでしょう。

 その辺りを踏まえた上で、追走力という概念の面白いところは、明確に得手不得手が出やすい、という点と、あと存外に鍛えにくい、という部分にあるかなと思っています。
 これも先週のレースを例に出すと、フェアリーSはかなりのハイペースになりましたが、以前のレースで既にハイペース適正を含め、多彩な適応力を見せていたアエロリットは当然人気になり、前々で粘り込む強い競馬を見せてくれました。
 ただ他の人気馬はその追走力の裏付けがなかった、けれど戦績的に傷が少ないから、という意味で押し上げられた部分は強く、特に2歳戦、3歳戦ではその傾向が顕著に出やすいので、いざいきなりハイペースになって、それに面食らって人気馬が全く伸びない、というパターンも頻発しやすく、高い追走力と持久力を秘めていた馬が穴を開ける事もままあります。その辺りをフォームや血統から類推するのもまた醍醐味のひとつだと言えますね。

 そしてこの要素が鍛えにくい、というのは、ある意味では必然的な話です。
 純粋に熱戦を期待するファンの心としては、常に全部の馬が力を出し切れるややハイ~平均くらいの流れになってくれるのが一番楽しいわけですが、やはり馬は生き物ですし、高い商品、という要素もあるので、なるべく大事に使いたい、勝つにしても消耗を抑えられればそれに越したことはない、という観念は相応に働くため、特に近年においてはスローペースからの後半勝負、の比重が増していて、ハイペースそのものを経験する確率が低くなっています。
 人間でも、普段走り慣れない人がいきなり速いペースで走れ、と言われたら想像以上に苦しいものですし、それは当然馬も一緒で、いきなり急流に巻き込まれて対応できる馬の方が少ないと思いますし、といってそれを鍛えようにも、調教にしろレースにしろ序盤はゆったり、となる事の方が断然多いからその経験値を獲得する場そのものが少ない、と言えるでしょう。
 ただそれでも、幾度も速い流れを経験する中で、元々苦手だったのに得手になる、とまでガラッと変わりはしなくとも、ある程度耐えられるようにはなっていくわけで、古馬で数回ハイペースを経験しているけど戦績的には良くない、って場合はその成長力を見切ってもいいでしょうが、若駒の時は一度急流で大敗したから、と見切らずにおきたいところです。

 個人的に近年で一番この追走力の適応の面で驚かされたのはホッコータルマエですね。
 4歳後半から完全にダート界の王者として君臨し始めた同馬ですが、基本的にこの馬の勝ちパターンはややスローからの出し抜きで、唯一の中央GⅠ勝ちであるチャンピオンズカップにしても、このクラスにしては有り得ないくらいにゆったり流れたのが幸いしたと、総合的には判断できます。

 そして6歳になっての、ドバイで急流を自分から刻む逃げを打って5着健闘した後の帰国初戦の帝王賞。
 このレースで2着になったクリソライトは、現役でも屈指の追走力の高さを秘めた馬で、逆に後半要素は非常に乏しく、とにかくハイペースで他の馬の末脚をなし崩しに削らないと、というタイプであり、そのくせ出足そのものは鈍かったりするから非常に難しい馬です。
 ただこの時は武Jが非常に馬の素養を生かし切った完璧なレースを展開してくれそうな枠・メンバー構成でもあり、自分の土俵ならドバイ帰りのタルマエなら充分勝負になると自信の本命にして、実際のレースも前半1000mを59秒台、それでいて向こう正面でも極端には緩まないタフな流れになって、これは押し切れる、と思ったわけですよ。
 けどこの、本来のタルマエの良さがほぼ問われない消耗戦で、その流れに完璧に付き合いながら最後きっちり捉えてみせたのは、元々の素質の違いもあるにせよ、厳しいレースを蓄積する中で追走力も高めて、いよいよ隙のない馬になったな、と思わせるに足るパフォーマンスでした。

 ただ、そう感じたのと裏腹に、その後の戦績自体はやや冴えないものになっていって。
 当然それは年齢的な衰えもあるでしょうが、そういうタフなレースで勝ち切る底力を備えたのはいいものの、実際にそれを振り絞るレースを続けてしまった事で活力を消耗しすぎてしまったのかなと、厳しいレースは本当に面白いけど、競走馬生命、という点では諸刃の件なんだなとつくづく思わされたものでした。

 ともあれ、そういう成長的な面も含めて、追走力は面白いファクターです。
 中には流れそのものにはついていく脚はないけど、ハイペース自体は得意って馬もいるし(ゴールドシップとかラニとか)、ハイペースでも楽に先行できるけど前半無理するとすごく脆いってタイプもいて(シングウィズジョイとかエアソミュールとか)、またそういう馬のキャラをわかっている騎手とそうでない騎手も当然いるので、レース検討の中でポジショニングを考える場合に参考になる要素であり、また馬のタイプをざっくり区分けするのに便利な判断基準になりますね。
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